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国家プロジェクト

「ーなるほど。…確かに言われてみれば『セブンミステリー』がこの星系全体の『伝承』なら、その考えはかなり的を得ているでしょうね」

「…ただ、問題は『何処に的を絞るか』なんですよね。さっきまでは、他の惑星を探していたのですが結局『アタリ』は見つかりませんでしたし」

「…ふむ。惑星範囲内の『旧式の宙域実験プラント』とかはまだですか?」

すると、学長は気になるキーワードを言った。…相変わらず、『デタラメ』な性能してるよな。

俺自身、未だに慣れない『コンパス』の能力にまた驚かせられつつ首を振る。

「…いえ、アルスター少尉の話しによるとそう言った施設は『かなり』あるらしいので、『地道に残りを攻略して探す』って事になったんですよ」

「そうでしたか…。…確かに、『黎明期』だけでも相当な数が建設されましたからね」

「…っ(『~らしい』じゃなくて、まるで『携わっていた』ような口振りだな。…まさか。)…あの、ひょっとして学長先生は『プラント職員』を経験した事があるのでしょうか?」

「…っ!?」

「…本当に、ブライト先生にはいつも驚かされる。

ーその通りです。私は、『第7惑星』近辺に建造された『宙域実験プラントG-37』…通称『スペースファーム』のベジタブル部門の職員でした」

「…凄。…あの『伝説のプロジェクト』に、学長先生が携わっていたなんて」

すると、リコは感激した目で学長を見た。…確か、元々は『地上と同じ条件を再現した場所で、地上と同じ-結果-が得られるか』を実験する為に立てられた、いかにもこの星系らしい『国家プロジェクト』だったな。

…ただ、確か結果としてはー。


「…嬉しいですね。私達の歩んで来た『ルート』を若い人達が知っているというのは。

…はあ、ただ出来れば『格好はつけたかった』ですね」

学長は俺とリコが『功績』を知っている事に、とても嬉しそうにしつつ……若干苦笑いを浮かべた。

「…『結果としては、国家プロジェクトは50:50の結果に終わった。宇宙船舶や科学物質等の無機物生産は問題なくクリア出来たが、有機物…特にファーム系は散々な結果と言わざるを得ない。

農産物は規格外に育ち過ぎ、とても流通に出せる物はなかった。一方、家畜等は精神的に落ち着かない種類が多数見受けられ育成不良を起こす種類もいた』」

「……いや、良くご存知ですね~」

「実家に居た時は、祖母が良くドキュメンタリーを見てましたし俺も大好きでしたから」

「…あ、家も祖母や母が良く見てましたね。

…えっと、『何がいけなかった』んでしたっけ?」

「まあ、農産物の場合は『環境が良すぎた』のだろう。何せ、『害獣』という最も危険な存在の気配がないんだから。

確か、一説によると農産物は『外敵に食べられないようにする為にあまり成長しない』進化を遂げて来たんでしたよね?」

「流石、元本職の方は博識だ」

「…へぇー」

「…まあ、害獣の気配がしない宇宙空間だと『思い切り』成長出来た訳だ。

そして、動物の方だが。

こっちの場合は、逆に『悪かった』」

「…でも、地上と同じ条件なんですよね?それに、害獣が居ないのならー」

「ー…『直感把握』」

リコは首を傾げるが、その時ふといつの間にか戻って来ていたロランがぽつりと言った。

「あ、シュミット学長。こんにちは」

「こんにちは、レーグニッツ君」


「…どした?」

「えっと、子供連れの方が並んでいたので打ち切りました」

何か見つけたのかと思ったら、ロランは『非常に素晴らしい答え』を返した。これには、『保護者』も『スタッフ』もニッコリだ。

「…素晴らしい。流石、『この星系の学生』だ」

「…どうも」

「…で、結局どういう事?」

「…要するに、動物に本来備わっている直感で周囲の状況を把握する事だ。

んで、動物達はそれで『此処がいつもとは違う』って察知してそれがストレスになった…と思うんですけれど」

「その通り。…俺達ヒト種でさえ急激な環境変化は相当なストレスになる。

それに対し、動物…特に畜産系の種類は品質向上に伴い『繊細』だからな。

多分、自分達の居る場所が『宇宙』だって気付いてしまったんだろう」

「…ええ、当時の私達や『あの方』もそう結論付けました」

「…(…『これ』だ。……っと、それにはー)……」

学長は当時を思い出したのか、哀愁漂う表情を浮かべた。…その瞬間、『直感』と『コンパス』のアクティブが重なり直ぐに確認しようとする。…だが、一度冷静になり自分たちの周囲を確認する。

「(…大分、混雑してきたな。聞き耳立てる人が居ないとも限らないし…。)…リコ、多分シュミット学長の話しの方が『役立ちそう』だから探索は終了だ」

「…へ?…っ。うん、分かった」

リコの肩をそっと叩き、『含み』を持たせて切り上げるように言う。すると、彼女は首を傾げるが瞬時に察して頷いた。

「…っ」

「ふふ、ありがとうございます。…では、場所を変えましょうか」

「そうですね(…『あそこに-あの人-』、行ってないかな?)」

ロランも気付くが、学生は額面通りに受け取り提案して来た。…その際、『秘密の話し』に最適な場所に『会員カードを持った知り合い』が居ないか思い付いたので、確認のメッセージを送ってみる。

そして、リコがチェアから立ったので固まって展望フロアから出た。


ー…っ!早…。

その数秒後、『イエスですわ。やはり、貴方様はいつも私の心にアメイジングな刺激をお与え、潤わせてくださる』という熱量の高いメッセージが返って来た。…そして、文末には『話しは通しておくので安心なさって下さい』という内容が添えられていた。

「(…いや、俺自身も結構驚いているんですがね。)あ、学長先生。

ーもし宜しければ、『エグゼクティブラウンジ』に居る『プレシャス』のベテランメンバーの方々にも続きの話しをして頂けますか?」

「…へあっ!?」

「…んなっ!?」

唐突な俺の『ムチャ振り』に、隣を歩くロランとリコは当然驚愕する。…勿論、学長も声やリオーバーなアクションはしなかったがゆっくり振り返ってこちらを見る目には、明らかな『驚愕』が浮かんでいた。

「……私の過去の話しが、役に立つと?」

「ええ。少なくとも、私はそう予想しています」

「…凄い自信ですね。…いやはや、とんでもない『ピンチヒッター』の方々が来ましたね。

ー分かりました」

実際、こちらには『確信』があるからか学長にはよほど自信に満ちているように見えたのだろう。…そして、改めて俺達が来た事に驚きつつ了承してくれた。

「…え、えと、兄さん?」

「わ、私達は?」

話しが纏まり再度歩き出すと、ふとロラン達が挙動不審になりながら確認してくる。

「そうだな(…まあ、学長が居る手前どのみち『ミーティング』は後日になりそうだし…)。

せっかくだから、一緒にフォトでも貰ったらどうだ?」

「「…っ!………」」

なんとなく『何を希望』しているかを察し口に出すと、見事当たっていた為2人はびっくりした。…そして、2人はやや照れながらに頷いた。

「ははは、君達はなかなかの幸運の持ち主ですね」

「…一生分の運でも足りない気がしますがね……」

「…右に同じく」

「何言ってんだよ。『ウチの家系』の血を引いてるんだから、『これぐらい』はアタリ前なんだよ。…っと」

そんな話をしていると、『エグゼクティブラウンジ』が見えて来たので会話を止め先頭に立つ。

…すると、ちょうどその時ラウンジのドアに立っているセキュリティガイノイドのヒトがスッと前に出て来た。


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