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雨天

「ー…あー、降ってるな~……」

 数十分後。ゲームを終えリアルに戻って来た俺達は、施設を出て次の目的地に向かおうとしていた。…しかし、外に出ようすると他の利用者達が受付ホールに密集していたので施設に設置されている『アウトサイドモニター』を見た。

 すると、外ではどしゃ降りの雨が降注いでいた。

「…これは、しばらく待ちですかね……」

「…はあ、せっかくの『家族』の休みなのに……」

 後ろでは、ロランとリコが兄妹揃って深いため息を吐いていた。…しかし、俺は全然がっかりしていなかった。

「ー仕方ない。『インドアシフト』に切り替えるか」

「「…へ?」」

「…キャプテン・ブライト。まさか、『予想』していたのですか?」

 そう言ってデバイスを操作すると、兄妹はぽかんとし少尉は的確な予想を口にした。なのでー。

「ーだって、今日は『家族と過ごせる貴重な日に』ですから。ある程度の『備え』をしておくのは当然だと思いますが?…っと、これで良し」

「「…兄さん」」

「流石ですね…」

 すると、兄妹は感動したように俺を見つめ少尉は小さく拍手をして称賛してくれた。…『当たり前の事』なのに大げさなリアクションだな。

「…察するに、『オートキャビネット』の手配したのですか?」

「ええ。…そうですね、『そろそろ』ー」

 そんな話しをしていると、デバイスがバイブする。…うん、流石『都会』だけあって直ぐ来てくれるな。

「…え?もう来たの?」

「みたいだな。さ、行きましょう」

「分かりました」

「「…は、はい」」

 リコが不思議がっていたが、とりあえず移動を告げて歩き出した。すると、少尉は素早く俺の真後ろについて来るが兄妹は慌ててついて来た。

 そして、施設内を歩き地下パーキングに着くと施設の案内システムが『キャビネット』の場所を教えてくれたので、そこに向かう。



『ーゴ利用アリガトゴザイマス』

 そこには、丸っこいボディの乗用車が停車してたのでそのままそれに近く。すると、4つのドアがオートで開くと共に電子音声が流れた。

「…では、私と少尉が前でロラン達は後ろに」

「「「はい」」」

 俺がそう言うと、3人は特に異論なく返事して乗り込んだ。それを確認し、俺も乗り込む。

「ーそれじゃあ、『目的地』までお願いします」

『畏マリマシタ。ソレデハ、安全ノ為シートベルトヲ展開シマス。

 ……。シートベルトノ展開確認。発車致シマス』

 オーダーを出すと、アナウンスの後にシートベルトが展開しその後ゆっくりと車が動き出した。

「ー…で、何処に行くんですか?」

「『エレベーターステーション』…正確には、宇宙港の展望フロアだな」

「「…へ?」」

 外に出たタイミングでロランが質問して来たので、勿体振らずに答える。…まあ、やっぱり『意味』が分からない2人はぽかんとした。

「…な、なんでそこに?」

「…あ、そうか。よくよく考えたら2人は滅多に宇宙港を利用しないだろうから、ピンと来ないのも当然か。

 ー首都宇宙港の展望フロアには、『ハイパーテレスコープ(超距離望遠鏡)』が設置されていて天体観測が出来るんだよ」

「…あ、そういえばそんなのがありましたね」

「…確かに、ちょっと興味がありますね」

「……あの、キャプテン・ブライト。どうして、『そこ』をチョイスしたのか聞いても宜しいですか?」

 兄妹が納得したり少しワクワクしていると、ふと少尉が質問して来た。多分、『たまたま』選んだとは思ってないからだろう。

「勿論、『好奇心』もありますが…1番の理由は『予想』を立てる事です」

「…予想?……まさかー」


「…え、え?」

「…どういう事ですか?」

 それだけ言うと、少尉は直ぐにピンと来たようだ。一方、兄妹は置いてきぼりになる。

「…そうだな。

 ー『ヒント』を出そう。…2人も知っている通り、この星系に眠っていると予測される『手掛かり』はこの地に昔から伝わる『セブンミステリー』を辿る事で手に入る可能性が高い。

 まあ、既に『4つの証』が手元にあるからほぼ間違いないと思うが……。…間もなく『5つ目』に挑もうという段階で、『2つ』の問題が浮き上がって来た」

「…2つ?」

「……あっ」

 2本の指を兄妹に見せるが、ロランはいまだにピンと来ていないようだ。…だが、『-それ-を調べるサークル』に所属しているリコはハッとした。

「…リコは分かったようだな。…まあ、当然か」

「…うん」

「…何だ?」

「……」

「良いぞ」

 ロランに見つめれたリコはこちらに『私が話しても良い』という感じの目線を向けて来たので、俺は頷く。

「…えっとね、1つは『アタリの数が足りない』のよ」

「…『アタリの数』。…もしかして、『アタリのセブンミステリー』の事か?」

「正解。…実は、一昨日の時点で『全部のアタリ』は割り出しているの。で、問題は此処からなんだけど、『あと2つ-しか-無い』のよ」

「…ちょっと待て、『あと2つ』って事は『合計6つ』しかない事にならないか?」

「その通り。…いや、聞いた時は全員で頭を抱えていたよ。けれど、『クルーガー女史』だけは割と落ち込んでいないようだった。

 ー曰く、『セブンミステリーは-この地-に伝わる逸話です。…つまり、3つの都市惑星に無いのなら-他の場所-に有る可能性が高いのではないですか?』……てな。

『いや、ホント鋭いお方だ』」

 俺は、さも女史だけが『広い視野』を持っている風に語る。…まあ、実際は俺と『ベテラン勢』も『その可能性』を口にしているがわざわざ言う必要もないだろう。…だって、割と『普通』に出て来る予想だから。

「…はあ、流石『ファースト世代』の『秘宝ハンター』ですね……」

「…凄いです。…となると、もう1つの問題は『目当てのモノ』が何処に眠っているかですか?」

 リコと同じような感想を口にしたロランは、ピタリと残りの『問題』を言い立てた。

「…そう。まあ、『7つの証』を手に入れたら見つかるっぽいが『予想は立てておこう』ってなったのさ」

「…なるほど」

「…これが、『秘宝ハンター』という訳ですかー」

 その後、エレベーターステーションに到着するまでの間兄妹のキラキラした視線を受けるのだったー。



 ーそんな状態が数10分続いた頃。…ようやく、エレベーターステーションが見えて来た。

『ー間モナク、エレベーターステーションニ到着シマス』

 すると、車内アナウンスが流れ車はだんだんとタワーに近く。…おや?

 その時、対向車線から別の『車両』が見えた。どうやら、考える事は皆同じらしい。そして、その車両の後ろに続いて敷地内に入りそのまま奥の駐車スペースに入った。

 すると、進行方向に大きな鉛色の『箱』が見えて来たのだが…前の車両とこちらの車両は迷う事なく黒い『箱』に入った。

『ー降下シマス。ゴ注意下サイ』

 後ろのシャッターが閉まり、箱…『車両降下エレベーター』が起動する。…雨を地下に入れない仕組みか。良く出来てるな。

『ー目的地ニシマシタ』

 感心していると、それから少しして車両は停止した。…ふう。

「…よっと」

「…っ」

「…すみません、キャプテン・ブライト。私の『分』まで」

 直ぐに兄妹は車両を降りるが、ふと少尉は申し訳なさそうにしていた。

「構いませんよ。…いつも、少尉にはー」

「ーふぇっ!?」

 言葉の途中、急にリコが地下パーキングで大声を出した。…?何をそんなー。

「ーあら、キャプテン・ブライト。奇遇ですね」

 …その理由は直ぐに分かった。何故なら、『芸術的』なセットが施されたエメラルドの髪をなびかせる、美しい『女傑』…クルーガー女史が満面の笑みわ浮かべながらこちらに近いて来たのだから。


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