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エリート兄妹

 直後、ロランはボールを高く…やや前方に落ちるように投げた。そして、数秒後には彼は助走を着けて飛び上がりー。

「ーせいっ!」

 気合いの入った掛け声と共に、ボールをこちらサイドに向かって叩き込んだ。…砂浜でも走りがブレないとは、『良い体幹』してるぜ。

 彼の日頃の努力に心底感心しながら素早く『落下予想地点』に移動し、腰をしっかり落としカバーの体勢にはいる。

「ふんっ!」

 そして、高速で飛んで来るボールを渾身のレシーブで受けボールを少尉の立つ方向に浮かせる。するとー。

「ーお任せをっ!」

 既に少尉は、いつでも『トス』を打てる体勢になっていた。…頼りになるな。

「リコ!」

「はいっ!」

 すると、『アタック』を読んだロランはリコを呼んだ。そして、2人揃ってネットの前に陣取りブロックの体勢になる。…良い判断だ。だがー。

「ーふっ!」

 直後、少尉はトスを高く打ち上げる。そして、俺は更に『高めのトス』で返した。

「…っ!」

「ーせいやっ!」

 2人は『まさか』と思ったが、少尉は超人的なジャンプを使い余裕でボールの位置に到達し渾身の一撃を相手サイドの奥深くに叩き込んだ。

『ーポイント、-オリバー・ウェンディーチーム-』

 直後、ブザーが鳴り俺達に得点が入った。

「ナイスプレー」

「ありがとうございます」

 そして、俺達は自然にハイタッチをする。…一方ロラン達はいまだ唖然としていた。

「やれやれ、『仕様』を忘れたのか?

 ー『此処』では『全員の身体能力』が『イーブン』に設定されるんだぞ?」

「っ!…いやいやいやいやっ!ウェンディ姉さんが『あんな動き』してるの見聞きした覚えがないんですけどっ!?」

「……っ」

 俺が呆れながら言うと、彼はすかさず突っ込みを入れ妹は何度もコクコクしていた。


「確かにそうですね。というか、私も『調整』を受けた側ですね」

「「……?……っ!」」

 すると、少尉はそれを肯定し……2人にしてみれば衝撃の発言をした。…2人は最初こそ首を傾げたが、すぐに揃って俺を見て来た。

「あ、そういえばお前達は俺の『特異体質』…『ヴィクター大叔父』から受け継いだ『モノ』の事を知らないんだったな」

「「…っ!?」」

「ま、説明するより『見た方』が早いだろ。

 ー構えな」

「「…っ」」

 俺の纏う空気が変わった事を察知した2人は、即座に身構えた。…それを確認し、俺はボールを天高くそして高速で放り投げる。

 直後、俺は『軽く』駆け出し……数秒後にはボールの位置に到達していた。そして、間髪入れずにボールを『優しめ』に叩く。

『ーポイント、-オリバー・ウェンディーチーム-』

「「………」」

 地上に戻って来ると、俺達のチームにまたポイントが加算され……兄妹は唖然としていた。…いや、それにしても『此処』は『リターン』がないから『思いっきり』やれるな~。

「ー…な、な、な、な、な、なんですか今のっ!?」

「…ひ、ヒトの動きじゃ……」

 数分後、ようやく再起動した2人は片やネットまで詰め寄り片やガタガタ震えていた。余程、衝撃だったようだ。

「…まあ、『リアル』じゃ『余程の事』がない限りは『セーブ』してるけどな」

「「いや、それでも『ヤバい』です…」」

 とりあえず、落ち着かせる為に軽い感じで言うのだが…2人はハモって突っ込んで来た。…息ぴったりだな。


「どうしました?

 ーまさか、『臆した』とか言いませんよね?」

「「…冗談ですか?」」

 すると、少尉は珍しく挑発をした。…当然、2人は一瞬で闘志を再燃させた。流石、扱い慣れている。

「…じゃあ、もっかい『行くぞ』?」

「っ!…兄さん、『上までお願い』っ!」

「…分かったっ!」

 だから、俺はきちんと宣言した上でさっきと同じ動作を始める。すると、飛翔の直接で2人が何かやり取りを始めるのが見えた。

「ーせいっ!……とおーりゃっ!…ほう」

 直後、また俺は上空にたどり着きボールを叩く。…すると、地上からリコが飛んで来てー。

「ー…っ!兄さーーーんっ!『そこ』からはバックに10ウォークーーーーッ!、ライトに3ウォークーーーーッ!」

 彼女は、大声で地上に居る兄に落下予想地点を伝えた。…いやはや、いきなり『飛んで来る』とは『母方譲り』の度胸だな。しかも、早速俺由来の動体視力を使うとか飲み込みが良過ぎる。流石、『エリート学校』に中等部で『余裕』で一発合格しただけはある。この辺りは、やっぱり『英才教育』故だろう。

 俺は、『妹』の優秀さに大して驚いてはいなかった。むしろ、感心すらしていた。…さあ、『弟』のほうはどうかな?

「……(分)かったっ!」

 すると、彼の返事が微かに聞こえて来た。果たして、彼は受け止められるか?

「ーっ!どぉりゃゃゃゃゃあーーーーーっ!」

 直後、地上に戻ると彼は渾身の力でボールを受け止め再度上空に打ち上げる。…ほう、『そう来た』か。

 勿論、彼は適当な場所に打ち上げたのではない。


「ーせいやっ!」

 数秒後、落下中のリコリスは力強い掛け声と共にボールを叩く。…しかし、落下予想地点には既に少尉が陣取っていた。

「ふんっ!」

 そして、落下して来たボールは少尉によってまたまた天高く飛び上がる。勿論、俺は最適なポジションに移動済みだ。

「ーせいっ!」

「「おりゃっ!」」

 そのボールに向かってジャンプした俺は、相手サイドに強烈な一撃を叩き込む。だが、鉄壁の『兄妹ブロック』に阻まれカウンターとなってしまう。

「フォローしますっ!…であっ!」

 直後、前に来ていた少尉はボール目掛けて腕を伸ばし地面に落ちる寸前でボールを浮かせた。

「ナイスフォロー。次、上げますっ!」

「っ!はいっ!」

 俺はそう言いながら、2人に見えないように『ハンドサイン』を少尉に送る。すると、『理解』した少尉は素早く立ち上がり最適のポジションに移動した。

 そして、俺は少尉にトスをー。

「ーっ!リコッ!」

「…っ。分かったっ!」

 その直前、ロランはリコに『なんらか』のオーダーを出した。…驚いた。『読んだ』のか。

 俺は『予想された』事に驚きつつ、フォームをトスから急速にアタックに変えハイジャンプをする。

 ーしかし、勢い良く打たずに『超軽く』真下に向けて叩いた。

「ー甘いっ!」

 だが、後ろに居た筈のリコは俺が空中に居る間にネットまで来ていた。…さあ、『どう甘い』のかな?

 当然、少尉もネットに来ているので『カウンター』が発動するだろう。……っ!

 ーそう考えていたが、直ぐに『間違い』だと思い知らされた。


 なんと、彼女は急に反転し後ろにトスを出したのだ。…そして、当然その先にはロランが居る訳でー。

「ーそいっ!」

 彼は、飛んで来たボールに向かって飛びこちらの『スキマ』に的確に打ち込んで来た。…やれやれ、少し甘く見ていたようだ。

『ーポイント、-チーム・レーグニッツ-』

 直後、得点のコールが入った。

「「ーしゃあっ!」」

 そして、2人は近付き歓喜の雄叫びを上げながら勢い良くハイタッチをした。…一方、こちらはー。

「ー…申し訳ありません、キャプテン・ブライト」

「…いえ。これは、相手が1枚上手だっただけの事です。

 大事なのは、『これ以上の失点』を防ぐ事ですよ」

「ですね。…しかし、しばらく会わない間に随分と成長したものです」

 素早い反省を行い直ぐに切り替えた。…すると、少尉は嬉しいそうに彼らを見た。

 まあ、俺みたく大半が『画面越し』じゃなく『直接』関わって来たから感慨深いのだろう。

「ーどうですか?『兄さん、姉さん』」

「私達もなかなかやるでしょう?」

 その時、兄妹はドヤ顔で話し掛けて来た。…やれやれ、こういうところは『可愛い』な。

 俺は、そんな感想を抱きながらー。

「ーああ、正直驚いたよ。…だが、『此処まで』だ」

「「……」」

 そう宣言すると、2人は直ぐに表情を引き締めた。…それを見て、俺は獰猛な笑みを浮かべて続ける。

「こっから先は、お前達を『秘宝争奪のライバル』と思い『容赦なく』いかせて貰う」

「…そうですね。改めて私も、貴方達を『勝たなければならない相手』と認識するとしましょう。

 ーそれが、最大の敬意でしょうから」

「「……っ!」」

 すると、少尉も昨日のような『ソルジャー』の顔になり宣言する。…そんな俺達『プロ』のプレッシャーを受けた2人は冷や汗を流すのだったー。


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