ー…てな訳で、こうして『現場班長』と一緒に地上に戻る事になったのだ。
「それでは、『リムジンレッグ』を発車させますのでお2人共ご着席下さい」
「ああ」
「分かりました」
カノンの言葉に従い、俺と彼女は隣合わせの席に座る。そして、少しして『リムジン』は『ドラゴン』から発車した。
「ーそれでは、本題に入りましょう。
カノンの話しだと、貴女は『今後も稀有な逸材の-同性-をクルーにするのか?』という事を聞きたいとの事でしたね。
…まずは、その『理由』を聞いても良いですか?」
そのタイミングで、俺は早速本題に入る。…その前に真意を問うべく質問する。
「…確かに、それが先ですね。
…あ、別に『異性』が苦手という訳ではないんです。…ただ、なんというかー」
彼女は真っ先に『否定』を前置きし、話し始める。…けれど、やっぱり答えにくいのか言い淀んでしまう。
「(ー…ふむ。……いや、まさかな)…答えにくいようでしたら、無理には聞きませんよ?」
こちらでも『予想』してみるのだが…その際、ふと『似たシーン』を思い出した。けれど、いくら『ファン』とはいえ『そこまで影響されてはいない』だろうと思い、内心で否定しつつそう口にする。
「…いえ、こちらとしても『確認』する以上はきちんと『理由』を答えるのが『スジ』というモノです。
ー…実は、私達の『人格』は『友人達』をモデルにしているのですが……」
…あ、なんか『ニアミス』っぽいかも。
「…『友人達』は、共通して『男なんかには負けない』っていう思想の人達だったのでそれをモデルにした私達も、『そういう考え方』なのです」
「…なるほど。
ー確か、『当時』は『歴史を動かして来た人のサポーター』も大部分が男性でしたね」
それを聞いて、俺は納得した。…つまり、彼女達は『自分達だって-役立ちたい-』という純粋な思いを、『テイクオオーバー』したという訳だ。
「…流石、『エージェント』を務められているだけあって『歴史』にもお詳しいのですね」
「まあ、『教師』も『その時代を生きその時代で-輝いた-方』のお弟子さんですから」
「……っ。そうでしたか…」
…いや、本当授業の時は『熱弁』だったな。
話していると、ふとその時を思い出して懐かしくなったが直ぐに意識を切り替える。
「…理由を聞かせて頂きありがとうございます。
…つまりは、『自分と同じスキルを持つ異性が居ると-不和-を招いてしまうかも』という事ですね?」
「…っ。…すみません、『面倒くさい性格』で」
「とんでもない。むしろ、『カノープス』にはそれぐらい『眩いくらいのメンタル』を持っている『ヒト』が必要だ」
彼女は申し訳なさそうにするが、俺は首を振る。…何故なら、『それぐらい』でなきゃ『ついてはこれない』だろうから。
「……」
「…いや、貴女達には本当に感謝しかないですね」
「…へ?」
彼女がぽかんとする中、ふと感謝を伝える。…だって、おかげで『募集の条件』が固まったのだから。
「ー分かりました。…今後クルーを勧誘する際は、貴女達に『配慮』する事をお約束しましょう」
「…へ?……いや、凄く有り難いんですけれど良いんですか?」
「勿論です。…というか、万一『不和』が起こって『探索』や『任務』に支障をきたす方が『命取り』ですから」
「……。…っ」
あっさりと約束する俺に、彼女は恐縮しながら聞いて来た。なので、はっきりとこちらの考えを伝える。…すると、彼女はー。
「ー…やっぱり、『カノープス』のマスターは凄いですね。
そして、私の持つ『スキル』がそんな凄い人の助けとなるのなら……喜んで貴方の『力』となりましょう」
彼女は胸に手を当て、『宣言』をする。…だから俺は、ニッコリと笑う。
「貴方を歓迎します。…えっと、『名前』はどうしましょうか?」
「…そうですね。…多分、『同胞達』も同じようにしていると思うので『アンゼリカ』とお呼び下さい」
すると、彼女はロゼ達同様『自身のモデルとなった友人』の名前を口にした。…本当に、『カノープス』向きなヒト達だ。
そんな事を考えながら、俺は彼女にタブレットを差し出すのだったー。
◯
ー翌日。今日は平日だが、俺は朝からファストディーンに来ていた。というのも、今日はイデーヴェスの『建国記念日』なので全スクールが休校になっているのだ。…それにしても、長く『此処』に居るけどちゃんと街を見るのは初めてだな。
「ーあ、ロラン兄っ!」
そんな事を考えていると、一緒に来たリコが待ち合わせ場所の前に立つロランを見つけブンブンと手を振った。ちなみに、今日はせっかくだから『家族』で過ごす事になったのだ。だから、今日は3人共私服だ。
「よお、リコ。おはようございます、オリバー兄さん」
「おはよう、ロラン。…んじゃあ、今日は『頼む』」
「お任せ下さい」
改めてそういうと、ロランは拳を握り胸をトンと叩いた。実は少し前から、ロランには『観光ガイド』をお願いしていたのだ。…この様子だと、入念な準備をしているのだろう。
「で、まずは何処に行くの?」
すると、兄の頼もしい応答を見たリコはワクワクしながら聞く。…此処に来る道中、リコは『こっちに来るのは-入学式-以来だから楽しみです』と言っていたので、多分俺よりも『初めて-家族-と過ごす』今日を楽しみにしていたのだろう。
「そう慌てるな。それじゃ、行きましょう」
「ああ」
「はいっ!」
ロランは彼女を落ち着かせ、ゆっくりと歩き出したので俺達はその後に続いたー。
ーまず、最初に向かったのはファストディーンの『アクティビティエリア』…『スポーツ施設』が建ち並ぶエリアだ。その中の1つに、ロランは入る。
「ーいらっしゃいませーっ!あ、ロラン『候補生』じゃないですかっ!」
店内に入ると、受付のスタッフが元気良く挨拶して来るのだが…どうやら、ロランはこの店の常連らしい。確か、この店は『士官スクール』の生徒がトレーニングの為に利用しているようなので、自然と顔見知りになったのだろう。
「…ん?そちらの2人は………っ!?」
すると、スタッフはこちらに目線を移し……案の定仰天した。…いや、本当『ポターランカップ』ってウルトラメジャーな番組なんだな~。
「どうも、初めまして。
『弟』が世話になっているようですね。ありがとうございます」
「…へ、へっ!?『弟』っ!?…いや、でも『ブラザー』はリコリスちゃんだけって言ってたよね?」
改めて、『出演番組』のスケールの大きさを実感しつつとりあえずは簡単に関係を開示しつつ、礼を述べる。…まあ、向こうは更に混乱した。てか、大分仲が良いようだ。
「正確には、母の従弟の方ですけどね。…で
、そろそろ良いですか?」
すると、ロランはこの反応に慣れているのか普通に詳細な情報を口にする。そして、ニッコリと『速やかに受付して下さい』と言った。…流石、士官スクールの生徒だけあって『しっかりしてる』な。
「…っと、失礼しました。
ーそれでは、改めましていらっしゃいませ。何名様ですか?」
「3名です」
その言葉にハッとしたスタッフはコホンと咳払いをして業務を再開したので、代表してロランが答えた。
「分かりました。それでは、右エリアにある『ルーム15』をご使用下さい」
すると、スタッフの頭上にあるガイドボードの『該当箇所』が点滅した。…『人数ごと』に細かい振り分けが出来るようになってんのか。ホント、『都会』って一つの『ハコモノ』にスゲー数のルームがあるよな~。
「分かりました」
内心で『地方丸出し発言』する中、ロランは頷き右に伸びる通路に向かって歩き出した。なので、俺達もその後に続いた。
「ー…うわ、これがそうなんだ~」
通路を進む事、数分。俺達は『ルーム15』に入る。すると、真っ先にリコがルームの中心に置かれた『マシン』に目を輝かせた。
ーそれは、一見すると『旅客シート』のようなのマシンだ。しかし、清潔な印象のカラーの『それ』とは違いボディはクールな印象のメタリックブルーのカラーだ。そして、フォルムも『安全性重視』のモノでなく『今向き』の洗練されたデザインになっている。
「俺も、実際見るのは初めてだな。
ーこれが、今話題の『サイバーフロンティア』か」
まあ、要するに最新の『シュミレーションマシン』である。…いや、テンションが上がって来たな。
「流石、情報通ですね。…これなら、『3人』で楽しめるでしょう?」
「正解だ」
ー実は、『ガイド』を頼むにあたって少し『オーダー』を出させてもらったのだ。…それは、『リコリスと一緒遊べる場所を探す事』。
まあ、俺とロランにも相当な『差』があるがそもそもリコリスはスポーツが苦手だから、どうしたって『3人一緒』には楽しめない。
だから、『オーダー』を出したのだが……まさか、此処に『これ』があるとはな。流石、『研鑽の銀河』だけあって『学習に使えるモノ』は何でも揃ってるな。
「…そうなんだ。ありがとう、ロラン兄、オリバー兄さん」
「どういたしまして」
「喜んで貰えてなりよりだ。…で、『ゲーム』は?」
「それは、入ってのお楽しみってやつですよ」
「ほう?」
「じゃ、早速やろうっ」
彼女が急かすようにそう言ったので、俺達は頷きゲームチェアに座る。…そして、ヘッドギア型の『コントローラー』を装置した。
『ーカウント5!
5、4、3、2、1、レディ、ゴー!』
すると、オートカウントが始まり俺達は『サイバーフロンティア』に『ダイブ』するのだったー。