目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
マイスター

「そして、2つ目の『最高の待遇』とは……。

『貴女達全員を勧誘し離ればなれにならないように』させて頂くのと、『カノープスでスムーズに活動するのに最適なボディ』を用意させて頂く事の2点です」

「………え?」

 その説明に、当然彼女は唖然とした。てっきり自分だけが乗り『指導』はデバイス経由でやろうと考えていたのだろう。

「…ちょ、ちょっと待て。『私達全員』を勧誘するだと……?…しかも、『最適なボディ』と言う事は……。

 どうして、『そこまで』?」

「だって、あまりにも『勿体ない』じゃないですか。

 貴女達程の『稀有な能力』を持った人達が、その能力を存分に発揮出来ずにいるのは。…だから、私は『その環境』を用意したいと思っています。

 何より、貴女達の持つその能力は『カノープス』に…いや、『秘宝』の探索に欠かせない物になると私の直感が告げているんですよ」

 何故『そこまでしてくれるのか』という彼女の問いに、俺は自分の考えと『勘由来』の答えを返した。

「…私達が、『秘宝』を見付ける『キー』になると……。…それに……ー」

 彼女は、しばらく考え込みルームはサイレント状態になる。…果たして、彼女はー。

「ー分かった。その申し出を受けれいれよう。…ただし、『残りの4人』の内誰か1人でも『否』とした時は『サブ』以上にはならない。

 それで、良いか?」

「(よっしゃあっ!)勿論です。…ではー」

 彼女の答えと『条件』を聞いた俺は内心で歓喜し、例によって『仕事用』のタブレットを差し出した。そして、彼女は素早く内容を見て軽く頷きサインをする。


「ーこれで良いか?」

「ええ。…はい、確かに。

 では、今日から宜しくお願いします。…えっとー」

 俺はタブレットを脇に置き、彼女に手を差し出した。…その時ふと、彼女の『コードネーム』をどうしようかと考えるがー。

「ー『ティータ』。そう呼んでくれ」

「分かりました。

 ーではティータ。早速だが、オーダーをしたいが良いか?」

 多分、予め考えていたのか彼女はすっと名乗り俺の手を握って来た。だから、直後に切り替えて早速仕事を頼む。

「『イエス・キャプテン』。…ひょっとして、此処に居る『サポーター』に関する事か?」

 彼女も直ぐに受け入れつつ、的確な予想を口にした。…いやホント、凄いな。

 俺は感心しながら頷く。

「その通り。…実は、そろそろ『サル』と『ヒツジ』に『ご褒美』をあげなくてはいけなくてな。

 ティータには、それをサポーターして貰いたい」

「任された。…というか、なんとなく『そんな気』がしたのでもう『サポーター』に運搬して貰っている」

「(…マジかよ。)助かります。

 じゃあ、行きましょうか」

「イエス・キャプテン」

 内心驚きつつも彼女に感謝し、2人並んでレセプションルームを後にしたー。



「ーあ、こんにち……?」

「……」

 それから数分後。俺とティータは、基地の機密エリアの奥にある『エージェント専用格納庫』で『バイト』に勤しむフェンリーさんの元に向かった。…まあ、当然『職人』2人は今日顔を合わせたので片方は困惑し片方はこちらに『紹介しろ』という視線を向けた。

「お疲れ様です、フェンリーさん。

 ー紹介しましょう。彼女は本日より、カノープスの『サブ・メカニック』となった『サポートノイド』のティータです」

「…宜しく」

「……へ?」

 なので、簡潔に紹介すると当人は深くお辞儀をした。…そして、案の定フェンリーさんは唖然とする。

「そして、彼女は『サブ・スーツマイスター』であるアイリス=フェンリー嬢だ」

「…っ!よ、宜しくお願いします……」

 次に、フェンリーさんを紹介すると彼女はハッとし慌ててお辞儀をした。…すると、ティータはじっと彼女を見つめてー。

「ーなるほど。『イフィンド』の生まれか。…なかなか面白いのを見付けて来たじゃないか」

「っ!…恐縮です」

 彼女はペコリと頭を下げた。…ホント、『どうゆう友人』何だろうな?

「…あの、プラトーさん。もしかして、この方『セブンガーディアン』の方ですか?」

「正解だ。私は、『技能の箱庭』を管理している」

 すると、彼女は鋭い勘でティータの正体をピタリと言い当てる。しかし、当人は大して驚かずにあっさりと身分を明かした。

「…やっぱり……。…まさか、立て続けに3人もお会い出来るとは。

 …えと、それで今日はどうしたんですか?」


「何、ちょっとした『用事』だよ。

 ー…そうだな。『今後の為』にも見せておこう」

「……?」

 当然フェンリーさんは首を傾げるが、とりあえずそのまま『進める』事にして『ウマ』にコールをする。

「……え?」

 直後、格納庫が…いや正確には俺達の居る『工房』が揺れ始めた。…どうやら、『久しぶりのご褒美』に歓喜で奮えているようだ。

「ーはいはい、『マイスター候補』がびっくりしてるから落ち着け~」

『ー…UKY!』

 なので、天井に向かって『制止』のオーダーを出す。…すると、『サルっぽい電子音声』が流れた後振動が止まった。

 ーそう、実はこの『工房』こそ『サポーター』の1つ…『EJ-09:クリエイティブハンド』なのだ。

「……」

「すみません、驚かせてしまいましたね」

「……いえ。……あ」

 取り繕う彼女だが、コンソールの周辺にはいくつもの『ワークグローブ』が散乱していた。どうやら、よっぽど驚いたのか『トランス』が解けてしまったのだろう。

「…あ、えと、本当に大丈夫ですからっ!」

 こちらに気を使った彼女は、素早くコンソールに『髪』を伸ばしワークグローブを『装着』していった。そして、次に足元に落ちたグローブを器用に回収していく。



 ーこれこそ、『イフィンド』星人の持って生まれた『スキル』だ。

 彼女達は髪を自在に操る事が出来き、更に特殊な素材で出来たワークグローブを装着する事で繊細な作業が可能になるのだ。だから、イフィンドの人達は『無限の手を持っている』と言われているのだ。

 ちなみに、イフィンドの人は大抵マイスターの仕事をしているのだが……彼女の実家の『フェンリー家』は長い歴史とトップレベルのスキルを持つ名門だったりする。そして、彼女自身も学生のレベルに収まらない程のテクニックを既に身に付けているのだ。…いや、ホント良い巡り合わせだよな。



「ーいや、凄いな。…『話し』には聞いていたがやはり実際に見ると実に見事だと思う」

「…どうも」

 それを見たティータは、興味津々といった感じだった。勿論、当人はまた恐縮してしまう。

『ーUKY!』

 すると、ちょうど良いタイミングで『サル』が合図を出した。なのでモニターを確認すると、『ウマ』がこちらの格納庫に到着していた。

「フェンリーさん。すみませんが、ちょっと一緒に来てくれますか?」

「…え?は、はい、分かりました」

 彼女はちょっと困惑しつつも了承し、そして3人で『サル』から出る。

『ーBLH…』

「ありがとう、『コンテナレッグ1』。

 ああ、紹介しましょう。『コイツ』は、貨物専用『トランスポートレッグ』の『コンテナレッグ』です」

「…は、はあ……」

 俺が紹介すると、彼女は上を見上げてながら唖然とした。まあ、『ビッグレッグ』より若干大きいから無理もない。

「…で、『このコ』は一体何を運んで来たんですか?」

「じゃあ、とりあえず『ボディ』の中に入りましょうか。

『コンテナレッグ1』、ドアオープン」

 彼女の質問に、俺は直ぐに答えずに『ウマ』にオーダーを出す。すると、ヘッドサイドに取り付けられたドアが開いたので3人で乗り込んだ。


「ー……?これは……」

「あ、今から『動かす』んで近くの手刷りに掴まってください」

「…っ!は、はい」

 中は当然薄暗いが、外から入って来る光のおかげで『積み荷』を見たフェンリーさんは不思議そうにした。そんな彼女に注意を促すと、直ぐに彼女は手刷りに掴まった。

「ー私も良いぞ」

「はい。

 ー『コンテナレッグ1』、ポジションセット」

「…っ」

 ティータは自ら報告してくれたので、『ウマ』に新たなオーダーを出す。すると、コンテナはゆっくりと動き始め『サル』に接近する。

「ーフルオープン」

 そして、良いポジションに着いたのをエアウィンドウで見届けたので停車の後『コンテナ』を開かせた。

 ーすると、積載されていた『積み荷』…『青白く僅かに発光する果物のようなモノ』が姿を現した。


コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?