「ー(…ふう。)…~~~~っと…」
今日も無事に仕事が終わり、俺は1つ伸びをした。…さて、とりあえずはー。
「ーあ、ブライト先生。上がりですか?」
「はい。お先に失礼します」
「はーい」
「お疲れ様でーす」
他の先生方に挨拶し、俺は教員ルームを出て真っ直ぐスタッフ用出入口に向かう。…おや?
そして、敷地から出ようとするとフェンリーさんがゲート付近に居るのが見えた。確か、今日は『アルバイト』の日なのだが……何だか、物思いに耽けていた。
「やあ、フェンリーさん。…どうかしましたか
か?」
「……あ、ブライト先生。…えっと、その……」
気になったので声を掛けると、彼女はぼんやりとしながら返事をする。…そして、少し悩んだような感じになった。
「(…ふむ。)…ひょっとして、『今日案内した生』の事でも考えていたのかな?」
「っ!…はい」
その様子から予想を立てると、彼女は驚きながら頷いた。…どうやら、昼間の出来事に混乱しているようだ。それはー。
「…まあ、『正直驚いたよ』。まさか、相当な『訳あり』だったとはね」
多分彼女は、『どうして彼らは此処に居るのか』を考えているのだろう。そう予想して同意してみると、どうやらアタリらしく彼女は目を見開く。
「…先生も、『彼ら』について考えていたんですか?」
「まあ、流石に気になりましたから。…お、『時間ピッタリ』だ」
すると、ちょうど良いタイミングでウェンディー少尉とミハイル少尉の操縦する『リトルレッグ』2台がやって来た。
「「ーお疲れ様です。お迎えに上がりました」」
「ありがとうございます」
「……ありがとうございます。……」
そして、目の前に停車した2人は礼儀正しくこちらに挨拶して来た。…すると、フェンリーさんはふと『え?』という顔をした。
「…ああ、実は私も地上部隊の基地に『用事』があってね。
…と言っても、『かの人』が所有する『特別病棟』に入院している『先生方』に今日あった『喜ばしき事』を報告するだけなんだがな」
けれど、『その反応』を想定していた俺は『紛れもない事実』を口にした。…勿論、他に『やるべき事』はあるんだけどね。
「…そうか。先生は『プレシャス』に所属されているから『連絡』を頼まれたのですね?」
「そういう事。あ、それじゃあ、お願いします」
「っ!お願いします」
とりあえず話しを切り、改めて戦闘班の2人にお願いする。そして、それぞれサイドカーに乗り込み地上基地に向かったー。
○
『ー…そうでしたか。しかし、まさか-伝説の塾-が関わっていたとは……』
その後、俺はミハイル少尉の案内で通信ルームに来ていた。そして、早速『トリ』に連絡を入れハミルトン先生を呼んで貰い報告をした。…当然、先生は驚いていた。尚、こうして『真実』を話したのは十分に協議した結果『そうするべき』だと言う結論が出たからだ。
まあ、なんとかコミュニケーションを取ろうとした矢先に訳も分からず襲撃され、そして現場を離れている間に何から何まで『部外者』にあっさり解決されてしまったのだから、なんか『面白くない』と思っているかも知れないと俺が予想したからなのだが……杞憂だったかな。
見た感じ、ハミルトン先生は『なんか言いたそうな』表情は出していなかったので俺は少しホッとする。
「…なんか、『かの人』のプランが全く予期しない結果となったみたいなんですよね」
『…というと?』
「…その『プラン』というのは、ついこの間までいた『一般ハンター』達にもあえて『試練』の情報を流し、一緒に参加させる事で『反感を抑える』つもりだったんですが。
なんと、それのおかげで『塾』が満員になったんですよ。…その光景に『塾長』は大層喜んだらしく、翌日には『その恩返し』として協力を申し出た『らしい』んです」
「………」
俺は、『第三者視点』になりながら説明した。勿論、先生は唖然とした。…いや、振り返って見ると凄い『運が良い』よな。
『…っ。…いや、-当代-もなかなか凄い人ですね。……あ』
なんとか復帰した先生は、率直な感想を口にする。…と、その時先生の付けている腕時計型の『バイタルチェッカー』がコールした。
「では、そろそろ通信は終わりとしましょう。…あ、最後に1つ確認しておきたいんですが『後どれくらい』と言われましたか?」
『えっと、-後2週間は掛かる-と言われましたね。…すみませんが、もう少しだけ代理をお願いします』
先生は『退院予定』を告げた後、申し訳なさそうに頭を下げてきた。…ちなみに、すでにドクターサイドから聞いているが後で『疑問』を抱かれないように、こうして当人から聞いている。
「(…まあ、ホントは此処までやる必要はないんだが『勘が良い』のが直ぐ近くに居るからな……)分かりました。それでは、失礼します」
『はいー』
俺は、同じ敷地内に居るフェンリーさんの事を考えながら通信を終えた。…そして、直ぐに通信ルームから出て隣の『小ミーティングルーム』に入る。
「ーお疲れ様です、キャプテン・ブライト」
そこには、眼鏡を掛けた『地味な男性』ことライサンダー少尉が居た。…まあ、何をするかと言うとー。
「ーじゃあ、早速始めましょう」
「了解です」
すると、まず少尉が『素の俺』に『変装』した。勿論、予めカメラルームには別の情報班のメンバーに入って貰っているのでこのルームの映像は『当たり障りのないムービー』に差し替えられている事だろう。…それにしても、完璧に『俺』だな。
いくら『ガジェット』の力を借りているからといっても、癖や立ち振舞いを完璧にトレース出来るのはやっぱり凄い。…まあ、それを言うとカノンも凄いのだが彼女は『ちょっと特殊』だからな。でも、『変装担当』の人は自力で身に付けた訳たがらな。
…一体、どれだけの訓練を積み重ねて来たのだろうか?
改めて、情報班に敬意を抱きつつ俺は姿と意識を『プラトー』に切り替える。
「ーでは、『キャプテン・ブライト』。後はお願いします」
「お任せ下さい、『キャプテン・プラトー』。それでは、失礼します」
そして、『ブライト』は『お辞儀』をしてから先にルームを出た。それから少し間を開けて俺もルームを後にした。
「ーすみません、お待たせしました」
「…いや、時間通りだよ」
それから数分後。俺は、基地の人に無理を言って貸して頂いた『レセプションルーム』に入る。すると、先に来ていた『利発そうな』雰囲気を漂わせる黄緑のショートヘアのガイノイド…まあ、『箱庭』の管理人である『マスタースミス』がソファーで寛いでいた。
「今日は、わざわざ足を運んで抱きありがとうございます」
「…何、お前の『サポーター』に此処まで丁寧に運んで貰ったから大して労力は使っていない。
それに、私自身こうして『直接』話したいと思っていた所だ」
とりあえず社交辞令から始めると、彼女は真面目に返して来た。…俺は、その言葉に『少し期待』を持つ。
「…なるほど。では、まずは『話』をしましょうか」
「ああ。…話と言うのは、他でもない。
1つは、どうして私が『サポーターを育成しようと』していた事に気付いたのか?
そして、もう1つは『最高の待遇』とな何なのか?
それの2つを聞きたい」
彼女は、凄く興味津々な雰囲気を纒
「分かりました。
…まあ、1つ目は割と偶然に気付いたんですよ。
ー最初は、『ファンらしい』試練だと思いました。…でも、『ワークカー』を操縦している時何だか『カノープス』みたいな雰囲気を感じ取ったんです。
そして、決定的だったのは『最後のコンテナ』に入っていた『イミテーション』です。
ぶっちゃけると、あれを見なければ気付きませんでしたよ」
「…本当に、お前には驚かせれる。いや、良く考えれば『知っていて当然』か」
「こちらこそ驚きましたよ…。
『先代』とカノンが、貴女に『カノープスの秘密』を打ち明けていたのもそうですが…。
ー何より、『サポーター達の好物』を生産していた事に」
「…私1人で成し遂げた事ではない。
『同胞』達の協力あっての事だ」
「…やはりでしたか(…予想以上の『人材』だ)」
彼女は、頭の中に思い浮かべた同胞達の事を自慢気に語った。それを聞いた俺は、ますます『交渉』を頑張ろうと思った。