『…ソノ前ニ確認シタイノダガ、ソチラノ姉妹ト後継者ハドウイウ関係ナノダ?』
「そうですね。
ーお互いの『プライバシー』を把握している、『キャプテン』と『クルー見習い』…っていうのが、一番正確なデータですかね」
『……ナルホド。……ソレト、モウ1ツ。
オ前達ハ、-此処-ニ有ル-標-ヲ手入レタ後-ドウスル-?』
質問に答えると、『マスタースミス』はまた質問をしてくるのだが……今度はやけに『真剣な空気』を纏っていた。
「(…『始まった』のかな?)…そうですね。
出来れば、2人にはこのまま『ライトクルー(正規の乗組員)』になって欲しいですかね。
勿論、『2人の安全』を守るという意味もありますが……私自身が『そうなったら良いな』と思っています。
「「……」」
『…-安全-?……先程言ッタ、プライバシーニ関ワル事カ?』
『意図』察した俺はそう答える。…すると、やっぱり彼女達は嬉しそうにした。
一方、当然事情の知らない『マスターキーパー』は疑問を抱く。
「ええ。…実は、彼女達はその『生まれ故』に常に素性を隠して生活しているのです。
…そして、厄介な事に『非加盟エリア』に蔓延る『ならず者』達にその『プライバシー』が漏れ伝わっている可能性があるのですよ」
『…ダカラ、オ前ガ守ッテイルト言ウ訳カ。
……。…ソレデ、オ前達2人ハ-ドウシタイ-?』
一応納得した『マスタースミス』は、再度同じ質問を姉妹に投げ掛けた。……ー。
「…私は、『解決』次第元の『メンバー』同士に戻った方が良いような気がします」
「…僕も、それがお互いにとって一番良い事だと思う。…まあ、『今の環境』は凄くリラックス出来るから、『元に戻す』のは大変だろうけど……」
ーやっぱりか…。…だけど。
チラリと、カノープスの『ライトクルー』たるカノンに視線を向ける。すると、案の定彼女もこちらを向いていた。
「ーっ。…それは大変、残念な事です」
それを『許可』だと察した彼女は、少し嬉しそうにして……だが、直後表情は『悲しい風』になり口を開いた。
「「……っ」」
「私は、出来ればお2人には『ライトクルー(正規船員)』になって欲しいと思います。
その理由は、1つは先代と同じ時代を駆けた方の意思を継いだ方々だから。
そして、もう1つはマスターに世代が近く…何より『プレシャス』を愛する方々だからです」
「……」
「…いや、僕は貴女の言うように『そこまで』は……」
カノンの言葉に、アイーシャさんはまじまじと彼女を見つめ返した。…しかし、一方のイアンさんはその言葉をやんわりと否定する。だがー。
「ー…おや?私の記憶違いでなければ、そろそろ『アサルトホーン』を入手するところまでたどり着いていませんでしたか?」
「……っ」
カノンの観察力に、当人はびっくりする。…そして、微妙に恥ずかしそうにしていた。
「…へぇ、もうそこまで。…確か、読み始めたのはマダム救出の少し後だった筈だが」
「アナタも、すっかり魅力されたようですね」
「…うん、そうだよ。『アレ』に出てくる『カノープスサイド』のメカとか、マダムの昔話のまんまの『応用テク』が出てきて興奮しましたよ」
それを見た俺とアイーシャさんは、ニヤニヤしながらそちらを見た。すると、やや自棄気味に自供した。
「…悪い悪い。けど、嬉しいよ。
ーそこまで2人が、『プレシャス』の事を大好きになってくれて」
「「……」」
「…それに、『貴女』もそうだと確信したから2人を『呼んだ』のではありませんか?」
「「……え?」」
『ソノ通リダ。ソシテ、オ前達2人ナラ私ノ-テクニック-ヲ完璧ニ吸収シ、イズレカノープスノ-助ケ-ニナル存在ニ成長スルト思ッタノダ』
「「……」」
『マスタースミス』の熱い思いを聞いた2人は、真剣な表情で考える。
「…そこまで、カノープスの事を考えてくれていたんですね。
…うん、やっぱり2人にはライトクルーになって欲しいです」
「……本当に、良いんですか?」
「…これから先、僕達を狙ってくる連中をずっと相手にしないといけなくなるんだよ?」
そして、改めて俺の思いを聞いた2人は真剣な眼差しで聞いて来た。だから、俺はあえて笑顔になる。
「そんな事は百も承知ですよ。第一、それを言うなら俺だって『いろんな所』に狙われる身です。
ー『理由』が1つ2つ増えた所で、大した事じゃないんですよ」
「……っ!…ホントに、貴方って『キャプテン・プラトー』の血縁者なんですね」
「…敵わないな。……姉さん」
その答えに、アイーシャさんは『先代』と俺を重ねつつニコリと笑いイアンさんはうっすらと目尻に涙を浮かべていた。…そして、2人は互いに顔を見合い頷いた。
「ーアイーシャ=ランスター。謹んで、お誘いを受けさせて頂きます」
「…同じく『アイン=ランスター』。改めて、これから宜しくお願いします」
「ありがとうございます。
ーこちらこそ、宜しく。『アイーシャ』、『アイン』」
「「はい。キャプテン・『オリバー』」」
2人は横に並んで、『宣言』をした。だから、俺も『ライトクルー』として2人をファーストネームで呼び手を差し出す。
勿論、2人は異を唱える事もなく俺と同じようにファーストネーム呼びで応じそれぞれ手を握り返してきた。
「おめでとうございます。マスター。そして、私も貴女達を歓迎します
ーアイーシャ様、アイン様」
「ありがとう、カノン」
「「どういたしまして」」
『…私モ、貴重ナ場面ニ立チ会エテ嬉シイヨ。…ダガ、2人ノ身ノ安全ヲ考エルト少シ考エル必要ガアルナ』
感動的なムードの中、成り行きを見守っていた『マスタースミス』はふとそう言った。…しかしー。
「ーなら、『カノープス』で直接指導したらどうですか?」
『………エ?』
「「……」」
俺は、『試練』をしている最中考えていたアイデアを口にする。…まあ、当然『マスタースミス』はおろかランスター姉妹もぽかんとしていた。
「…え、だって此処で行われた『試練』って『カノープス』をリペアする『環境』を整える為でしょう?
なら、いっそのこと実際にカノープスでやった方が効率が良いと思いませんか?」
『…イヤ、確カニソウダガ……。…トイウカ、イツ気付イタ?』
すると、『マスタースミス』は困惑しつつ『確認』してくる。…だが、ちょうどその時ー。
『ーっ!』
俺達4人の端末が一斉に鳴り出した。…どうやら、ゆっくりしてしまったようだ。
「マスター、マダム・クルーガーより連絡が入っていますが…」
「…仕方ない。
すみませんが、気付いた理由とか後日お話しします。…それと、返事は此処での探索が終わるまで待っていますのでしっかりと考えて下さい
い
ー…ただ、もし了承して下さるのなら『最高の待遇』を用意する事をお約束します」
『……』
「あ、『証』をくださいますか?…後、ついでに『出口』をー」
『ー…ッ、ソウダッタナ。
ソレト、-出口-ハ後ロダ。…ト、-無力化-モ解除セネバナ』
呆気に取られていた『マスタースミス』は、リモート操作しているロボットを介して『バッジ』入りの箱を差し出した。そして、言った通り後ろの壁に『出口』を用意してくれた上に『キャンセラー』もオフにしてくれた。
「ーありがとうございます。
んじゃ、行きますか」
「「「了解」」」
直後、俺とカノンの変装が再起動したので俺は礼を言ってから3人を引き連れてルームを出た。
『ーっ!』
『あ、来たっ!』
そして、出口を抜けると先に『箱庭』の屋外に出ていたメンバーがこちらに気付き駆け寄って来た。
「ー良かった、4人共無事で」
すると、真っ先に駆け寄って来たクルーガー女史は非常に安堵した様子でそう言った。多分、連絡を受けていてもたっても居られずに駆け付けてくれたのだろう。…はあ、先に連絡……いや、多分出来ない可能性があったかもしれない。
「…も、申し訳ありませんお姉様」
「…ご心配をお掛けしました」
「…いえ、こうして無事に戻って来たのだから謝る必要はありませんよ。………?」
微笑みを浮かべ首を振る女史は、ふと姉妹をじっと見つめる。そして、今度は俺…『プラトー』をじっと見つめた。…あ、多分2人の雰囲気が変わった事に気づいたな。
「……。……ー」
「「ーっ!」」
すると、女史は更に2人に接近して小声で何かを言った。…それを聞いた2人は、当然ぎょってした。
ー『おめでとうございます』的な事を言われたのかな?…いや、ホント女性って恐ろしいほどほど鋭いな。
「…ところで、『何』があったのですか?」
そして、2人から離れた女史はこちらに話しを振って来たので俺はメンバーの手前『少しぼかした』事実を話したのだった。…まあ、当然メンバーは驚愕するが女史は予想していたのか特に驚かずに聞き……というか、『そういう事にしておきましょう』的な笑みを浮かべるのだった。…イヤ、ホントこの人に隠し事は出来ないな~。
俺は、心底この人が味方で良かったと思うのだったー。