「ーじゃあ、『フロートチーム』お願いしまーす」
『了解~』
自分の分の工程を終えた俺は、待機していたメンバーにバトンタッチした。すると、旧式特有の小さなモニター画面の中では後方に整列していた『フロートマシン』が、右から1機ずつフロート動作を始め俺や他のメンバーが乗る『陸上マシン』の頭上を通り過ぎて行った。
そして、俺達『地上チーム』の前にそびえ立つぶっとい鋼鉄のピラーズのてっぺんにたどり着いた『フロートチーム』は、搭乗するマシンの両脇から生えた『マジックアーム』をてっぺん付近に伸ばした。
『ーじゃあ、-収納動作-を始めますね』
「お願いします」
『サブリーダー』を名乗り出てくれたベテランハンターの人が開始宣言した直後、『フロートチーム』は作業を開始する。…いや、慣れてるな。
まあ、こっちに来てくれたメンバーはジュール大将の推薦した『重機ライセンス』持ちだったから、当然だが。
彼らの行う作業は、正確で丁寧で何よりスピーディーだった。
『ー作業完了。後退します』
そして、ものの数分で作業を終えた彼らは後退した。すると、行く手を阻んでいたピラーズは高速で床に収納されて行った。
「ーありがとうございます。
…では、地上チームは前進を再開します」
『了解』
そして、機体の中にまで伝わって来る振動が収まった後に再度地上チームは前進を始めた。
ーちなみに、今俺達『機械操作チーム』がワークマシンを駆っているのは『マシン格納庫』の真下にある、これまた広大なスペースの『トレーニングサーキット』だ。…ホント、技能を身に付たい人にとって『至れり尽くせり』な環境だよな。…と。
感心していると、次の『課題』が見えて来た。…なるほど。『降ろし』か。
モニターの先には、『メガトラック』の荷台が横にずらりと並んでいたのだが…それらには積載量ギリギリの『積み荷』が乗っていた。
「ークレーン班、お願いします」
『ラジャーです』
オーダーを出すと、『メガクレーンカー』数台が先行してくれた。そして、精密なクレーン捌きで積み荷を1つ1つ降ろしていく。…にしても、『マスタースミス』は一体『何』を考えてるんだろうな?
その作業を見つつ、ふと俺は考察を始めた。…要するに、この試練には『何か裏があるのでは』と考えているのだ。
勿論、『才能ある者を見出だす』という目的があるのだろうがそれ以外にも目的があるように思えてならない。
…そう考える理由は、今乗っているワークマシンにある。『これ』一見『アンティーク』に見えるが、スペックは最新のモノにひけを取らないのだ。…何より、なんか『カノープス』に乗っている気がしてならないのだ。
そんなモノに俺達を乗せていて、『何もない』筈がない…と思うのだがー。
『ー積み降ろし、終了でーす』
「ありがとうございます。…じゃあ一応、中を確認しましょうか。
もしかしたら、『試練』をクリアのに役立つモノが入っているかも知れませし」
答えが見えずに悩んでいると、クレーン班がし作業を終了した。なので、念のため積み荷…コンテナを見てみる事にした。
『…確かに』
『オッケーです』
すると、俺と同じ安全確認用の『チェックカー』に乗っている『セキュリティ班』のメンバーが動き素早く動き出した。…えっと『スキャニング』ー。
俺も車両を動かし、担当するコンテナ群にスキャナーを照射した。………え?
すると、モニターには透過映像が映し出されたのだが『それ』を見た瞬間俺は唖然とした。
『ー……?何だこれ?』
『まあ、多分もれなく-アンティーク-でしょう』
……っ!…いや、びっくりした。てっきり『ホンモノ』が入ってるかと思ったがコンパスが反応してないって事は『イミテーション』だって事だ。
直後俺は『確認』をするが、『偽物』だという事が分かったのでホッと胸を撫で下ろした。そして、直ぐに意識を切り替えて通信ボタンを押す。
「ーすみません。どうやら、そう甘くはなかったようです」
『良いよ良いよ』
『…んじゃあ、邪魔だし-デカ荷台-をどっけちまおう』
「お願いします(…けど、これで『マスタースミス』の真意が読めた気がする。後は、本人に確認するだけだ)」
ーそして、巨大な荷台はコース脇にどかされコンテナも再度その上に素早く積み上げられていった。
『ー良し、終わりだ』
「お疲れ様です。…ん?」
再びモニターに視線を移し、メインカメラをコースに戻すとその先にはゴールが見えた。
『どうした?…なるほど。どうやら、-試練-はこれで終わりみたいだな』
『え、マジ?…ホントだ』
「まあ、前の2つも『短い時間』でクリア出来るモノでしたしね。
じゃあ、行きましょう」
『了解』
そして、俺達は足並みを揃えてゴールに向かう。…すると、その道中ー。
『ー…はあ、もっと乗れるかと思ったのに……』
『…楽しい時間て、ホントあっという間に過ぎて行きますね……』
ほとんどのメンバーは、心底残念そうにしていた。…ホント好きなんだな。
『ークリア。マシンカラ降車シテ下サイ』
だが、彼らは何とか我慢ししっかりとゴールををくぐり抜けた。直後、モニターにメッセージが表示されたので速やかに降りる。
『……はあ』
『…残念です』
すると、他のメンバーも降りて来るのだがやっぱり未練たらたらだったり沈んだ表情をしていた。
『ー見事ダ、-プレシャス-ノ諸君。…ソレデハ、-証-ヲ渡ソウー』
『ーっ!』
そんな中、『マスタースミス』がアナウンスをして来たのだが…次の瞬間『ワープ』させられた。……あれ?……っ!?マジか。
そして、飛ばされた先で俺はふと微かな違和感を感じたので、念のためデバイスで確認してみる。…すると、やはり『変装』が解除されていたので驚愕した。
…驚いたな。まさか、『サポーターキャンセラー』まで『作り上げて』いたとは。
しかし、俺は焦ってはいなかった。…だって、直前まで同じルームにいた他のメンバーは居なくなっているのだから。恐らく別のルームで『一人一人』授与されているだろう。…お。
そんな予想を立てていると、目の前の無機質な壁に『ドア』が3つ出現した。勿論、俺は慌てて変装したりはしなかった。何故ならー。
「ーっ!キャプテン…え?」
「…ウソ、どうして……」
「…やはり……」
入って来たのは、俺の正体を知る『クルー』達だったからだ。…どうやら、『気を利かせて貰った』ようだ。…っ。
『ーマサカトハ思ッテイタガ、オ前ハ本当ノ意味デ-後継者-ナノダナ……』
すると、右の壁から旧式のファクトリータイプのワークロボットが現れ話し始めた。…なんか、電子音声なのに凄い『懐かしさ』が伝わって来るな。
『…ソシテ、久シブリダナ。カノン嬢。……?』
そんな事を考えていると、『マスタースミス』はそのロボット…リモート操作している『マスタースミス』に挨拶したのだが、少しして疑問の空気を纏った。
「「……」」
まあ、事情を知らないランスター姉妹がびっくりしていたのだから当然だが。…けれども、『躊躇い』があるのか質問はして来なかった。
『……ッ。………』
すると、『察したのか』ロボットはこちらを向いた。…心なしか『冷や汗』をかいているように見えるな。
「…お久しぶりですね、『マスタースミス』。
ー相変わらず、『おっちょこちょい』なようですね?」
やれやれと思っていると、カノンも俺と同じ表情をしながら挨拶を返した。…なので俺は、2人に事情を説明する。
「…まあ、要するに『先代』も此処で船乗りに必須の技術を学んだんですよ。
これ、他のメンバーには内緒ですよ?」
「…っ!やっぱりですか…。…あ、勿論分かっています」
「…顔が広過ぎない?」
「ですよね~。
ーそれで、何で俺達だけ呼んだのかそろそろ教えてくれますか?」
俺は気持ちを切り替えて、『マスタースミス』に質問した。