『……っ。…ど、どうして、私達が?』
数秒呆気に取られていたアイーシャさんは、困惑しながら質問する。すると、女史は慈愛に満ちた微笑みを浮かべる。
『簡単ですよ。
ー貴女達が最も適任だと判断したからです。…例えば、-イアン-の武装であるショックグローブとブーツに装着しているショックスタンプは、市販されている物をカスタマイズしたモノですよね?』
『…確かに、そうですけど……。でも、それは-マダム-を始め誰もがやっている事では?』
困惑する最中唐突に話しを振られた『イアン』は、それでもしっかり気を付けながら返した。…うん、やっぱり『間違い』じゃないな。
『勿論そうですが、イアンはそれらを-自分の手-で仕上げていますよね。そして、メンテナンスも欠かさずに自分でやっている。
…それは、到底真似できる事ではありません。第一私達は、専門の技師にクルーになって頂くかファクトリーに依頼するしかないのですから』
…そうなんだよな。実際俺も、『メンテナンスマシン』頼りだし。
『それだけではありません。基本的に二人は、ほとんどの技術面を分担してやっていますよね?
…それがどれだけ凄いか、2人は分かっていないようですね』
『…え、マジで?』
『…ソフトとハードだけじゃなくて、船や武装のメンテナンスまで?…確かに、真似できないな……』
女史の言葉に、メンバーは驚きながら2人にた。…まあ、『出身』を考えると第三者は『乗せない』・『触らせない』ってした方が露見するリスクは減るだろうが、実際にそのプランを徹底して行う為には相当な努力と様々な才能が必要になるのは言うまでもないだろう。…その上、『結果』も出さないといけないとなるとー。
『ー…それで、結果を出せるってマジで凄い事だよ。…私だったら、絶対途中で大ポカするな』
『…言えてる。まず、真っ先にメンタルがやられるわね……』
その時、女性メンバー達が感心しながら『同じ事』を口にした。勿論、男性メンバーも何度も頷いていた。
『…てか、まず間違いなくモメるでしょうよ……。…二人には、そういう事はなかったの?』
『…えっと、船の運用の事はおろか私生活でも滅多にケンカになった事はないですね』
『…だね』
『…うらやましい~』
『私も兄弟いるけど、流石にそんな風に言い切れる自信がないな…』
その返答に、メンバー達は更に感心した。…うん、これなら『大丈夫』かな?
『ーさて、皆さん。この2人よりリーダーに優れていると思う方は、挙手をして下さい』
すると、俺と同様に成り行きを見守っていた女史が『パンパン』と手を叩き最終確認をする。
『………』
『では、-異議なし-という事で。』
しかし、当然誰も名乗り出なかった。無論、女史はそんな事は分かり切っているのでさほど時間を開けずに結論を出した。
『ーという結果となりましたので、二人共宜しくお願いします』
『……了解です』
『………』
女史が凛とした表情で改めて2人に『頼む』と、2人は諦めの混じった表情で返事をした。…『フォロー』は入れておこう。
『では、他に何か報告したい事がないようなら一旦解散しましょう』
「私は大丈夫です」
『私もでーす。それじゃ、失礼しまーす』
『失礼しますー』
そして、女史が終了宣言を出したので通信は切れるのだった。…するとー。
「「ー………はあ~」」
どうやら、今まで背筋を伸ばしていたロランとクリスティンはほとんど同時に脱力した。…ホント、見事なまでの『アーミー気質』である。
「クリスティン、ありがとう。…君のおかげで良い格好が出来たよ。それと、ロランもクリスティンを紹介してくれてありがとう。
いや、ホントお前もリコも『デキる』奴になったな~。俺は、そんな2人の『兄貴』で居られて鼻が高い」
「…っ!き、恐縮です」
「……。…兄さんの役に立てて、嬉しいよ」
2人の肩に手を置きながら礼を言うと、2人は凄く嬉しそうにするのだったー。
◯
ー1時間後。俺はランスター姉妹や他メンバーとは別ルートで、郊外にある『旧技術棟』に来ていた。あの後、首都の『サークル』に問い合わせた結果此処が一番可能性があると言われたのだ。…で、何で俺だけ別行動をしているのかと言うとー。
「ー懐かしいですね…。『先代』と共に『工房』で学んだのが昨日の事のように思いだされます」
すると、『リトルレッグ』のサイドカーに乗っていた『俺』…『ブライト』に変装したカノンが懐かしそうに建物を見た。
ーなんでこんな事になっているかというと、今日此処を攻略する事をロゼとセリーヌに伝えたところ『彼女』の性格と『どういう行動を取るか』を聞かされ、『勧誘を断る理由の1つ』として『プラトー』になったのだ。…そうなると、当然『ブライト』としては参加出来ないので…そして何より、『後々の事』を彼女と話し合った結果彼女が『代役』を引き受けてくれる事になったのだ。…ホント、有難い存在だ。
『ーBULL…』
改めて内心で
ーそして、数分後。…まあ、当然『プラトー』が参加すると思っていなかったのか合流したメンバーには相当驚かれたが、流石メンバーだけあって彼らは直ぐに切り替えた。…尚、未だランスター姉妹は恐縮しっぱなしだったがメンバーと俺はそんな2人を真剣な顔で先頭にして、旧技術棟の敷地に入る。
ー…っ。
すると、案の定キーもないのにドアのロックは解除されゆっくりと開いていった。…ホント、どうゆう関連があるのだろうか。
『ー良ク来タナ。-証-ヲ求メル者達ヨ』
疑問を抱きながら中に入ると、直後に電子音声のアナウンスが流れた。…今回はいかにも『マイスター』な口調だな。それに、やっぱり『外』にもある程度詳しいようだ。
『…ハテサテ、オ前達ハ私ノ-試練-ヲクリア出来ルカナ?楽シミニサセテ貰オウ』
…んで持って、大層な自信家なようだ。よほど、『クリアしがいのある試練』らしい。
そう感じた俺やベテランメンバーは『やってやる』、『上等だ』、『こっちこそ楽しみです』という意味を込めてニヤリと笑う。…勿論、姉妹や若手メンバーは不安を感じていた。
『……デハ、始メルトシヨウカー』
『…っ』
その様子を見た『マスタースミス』は、まるで『ほう…』といった顔をしているかのような間を空けた後、開始を宣言する。すると、エントランスから伸びる3つの通路の入り口に突如鋼鉄のドアが出現した。
『マズハ、ソレヲ通過シテミロ』
それだけ言った『マスタースミス』はアナウンスを切り、黙りこくった。…なるほど。『こういうタイプ』の試練か。
「…さて、『リーダー』。此処はどういう分担で行くべきでしょうか?」
「…っ。…とりあえず、まずは3ヶ所を確認しましょう」
ふと『ブライト』が質問すると、アイーシャさんはぎこちない感じでそう言った。…ちなみに、当然彼女達には『変装』の事は事前に説明済みだ。けれど、やっぱり『慣れる』のには時間が掛かるかな?
「…えっと、キャプテン・プラトー。確か、貴方の所有する『ドローン』に調査が得意とするのが居ましたよね?」
「ああ。
ーカモン、『リトルトルーパー』」
そんな事を考えていると、アイーシャさんは『打ち合わせ通り』の事を確認してきた。なので、『ドラゴン』の『エリアワイド』をインストールしたバックから『ハウス』を取り出し『トルーパー』を呼ぶ。
『CHUCHU…』
『おぉ…』
『ハウス』から『ネズミ』が出てくると、メンバー達から歓声が上がった。…『奪還』に参加したメンバーから聞いているってのもあるだろうが、多分『ファン』としての反応が多いだろう。
ーだって、アイーシャさんみたいに『感動』している人が大半なんだから。
そうこうしている内に、『ネズミ』達は3ヶ所のドアにたどり着き『情報』をこちらに送って来た。