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Seven Mystery③-マスタースミス-

 ー数日後。イデーヴェス全土がようやく落ち着きを取り戻し始めた頃、俺はファストディーン市街地にあるライスフードが売りの定食屋の前でぼんやりとしていた。…もうすぐディナータイムなのにも関わらず店に入らないのは、待ち合わせをしているからだ。

「ーオリバー兄さんっ!」

 そして、待ち合わせの10分前になったその時。育ち盛りの『弟』…俺より頭半分低いロラン=レーグニッツがこちらを見つけ、嬉しそうに駆け寄って来た。

「よお、ロラン。『久しぶり』だな」

「うん、直接合うのはホント久しぶりですね」

 こちらの『言葉』を額面通りに受け止めた彼は、ニコニコしながら返して来た。…まあ、実際ライシェリアに居た頃やこっち来てからもちょくちょく通信していたから、『なんにもおかしくない』。

「ーうわ、凄い『ファミリー空気』…」

 そんなやり取りをしていると、後からロランと同じ士官スクールの制服を着た男子学生が俺と彼の放つ空気を感じてぽかんとしていた。

「そりゃ親戚だからね。

 ーあっ、紹介します。彼は同じ士官スクールので切磋琢磨しているアンドリュー=クリスティンです」

「はじめまして。『主計科』所属のアンドリュー=クリスティンです。お会いできて光栄です、ブライト『教諭』」

 ロランが紹介すると、その生徒…クリスティンが名乗った。…『主計科』って、確か軍のサポート部署だったよな。…てかー。


「ー…いや、ロランから聞いてた通りですね。

 まさか、民間の方が『実家』を知っているとは思いませんでしたよ」

 彼のファミリーネームに強烈な『見覚え』を感じたので、『もしかして?』という視線を向ける。すると、彼は唖然としながら肯定した。

「やっぱり、『造船』業界のトップである『クリスティンシップ』の人だったか…」

 ー『クリスティンシップ』。それは、銀河連盟において最大規模を誇る『軍用船』専門の造船カンパニーだ。…つまり、彼は大企業の『若様』という事になる。

「まあ、まだまだ修行中の身ですがね…。…てか、そろそろ入りませんか?」

 彼は謙遜し、そしてお腹が減っているのかそこを押さえながら店を指差した。…まあ、士官スクールって結構ハードだって聞くしその上育ち盛りだからな。

「…ったく、少しは行儀良くー」

 ロランは同級生の行動を嗜めようとするが、ふと店から香ばしい焼き肉の香りが漂って来たせいで、彼の『ハラのムシ』が盛大に鳴った。

「ーヒトの事言えんのか?」

「………」

 クリスティンがジト目でツッコミを入れると、ロランはだんまりとしてしまった。

「はは、『健康の証』だから気にすんなよ。

 それじゃ入ろうか。あ、勿論料金は俺持ちだから安心しな」

「ありがとうございます」

「………ご馳走になります」

 ロランにフォローを入れ、俺は2人を引き連れて店に入る。その際、『オゴリ』だと告げるとクリスティンは普通に返して来るがロランはやや恥ずかしそうにするのだったー。


 ーそれから、注文を済ませた俺達は料理が出て来るまでは軽く『事件』の事を話し合った。そして、がっつりメニューを平らげた後は場所を寮の『トークルーム』に移しいよいよ『本題』に入る。


「ーえっと、確かブライト教諭は『セブンミステリー』の事を調べているんでしたよね?」

「ああ。…それが、此処に眠っている『秘宝の手掛り』に繋がると確定したからな」

「っ!?」

 すると、クリスティンはぎょっとした。…まあ、『超ドリーム』な存在が身近にあるのだから当然の反応だろう。

「…やっぱりでしたか。…あの、もしかしなくても『此処で発生している事』って?」

 一方、ロランはそもそも『理解』していたから特に驚いてはいなかった。それどころか、鋭い『推察』を見せた。

「……マジですか?」

「(日々薫陶を受けているんだな…。…ま、隠す事ではないから良いか)…正解だ。

 あ、一応『時期が来るまで』は第三者に言わないように…って通達が来ているから出来れば2人も守って欲しい」

「「勿論です」」

 こちらの要請に、流石名門士官スクールのだけあって2人は真剣な表情で即答した。

「…あ、すみません。トークのウェストを折ってしまって」

「良いよ。…んで、確かクリスティンは1つ心当たりがあるんだよな?」

「はい。

 ー実は、私の実家には不思議な『言い伝え』がありまして。…何でも、『我が家を発展させた祖父は-万能の技師-の居る工房で修行をした』らしいんです。

 それまで、『クリスティンシップ』はホント何処にでもあるような造船カンパニーだったんですが、祖父が工場に入ってから数年後で受注数が爆発的に増えたんです。

 やがて、銀河連盟加盟国の星系防衛軍からも依頼が来るようになり……後はブライト教諭も知るように、伯父が社長を引き継ぐ頃には『軍用船専門』のカンパニーとなりました」

「なるほどな。…確か、その当時の船は『アタリハズレ』凄かったんだが『クリスティンシップの船は安全性抜群』だったって話しだったな」

「…ホント良くご存知ですね」

「ウチの祖父も、その時代に生きた船乗りだからな。当時の『航海日誌』を読んでると必然的に覚えるんだよ」

「…っ!?ちょ、それ初耳なんだけどっ!?」

 またもや驚くクリスティンに、『ちょこっと』真実を話す。…まあ、当然ロランは驚愕とした。


「いやー、知った時は『ミラ曾祖母ちゃん』を始めとする家族一同が今のロランとおんなじ心境だったよ…」

「…マジですか……」

「…あの、もしかして曾祖父様は『軍と関わりある方』だったのですか?」

「(…まあ、そうなるよな。)…うーん、『その辺りの事』は記述がなかったな。

 ーただ、祖父は『手掛かり』を決して自分だけで独占しようとはしなかったらしい。例えば、座標が『入りにくい所』だったらそこを管轄する行政機関に情報を開示してたみたいだな。

 勿論、『情報料』はしっかりと貰ってたみたいだか。

 多分、その『スジを通す』性格が当時の連盟のお偉方に気に入られたんだろう。…その関係で、クリスティンシップを知ったんではないかと思う」

「「……」」

 俺の『事実とボカシ』を混ぜながらの話しに、2人は唖然とした。…しかし、『それだけの技術』を習得させられるって事は間違いなく『アタリ』だろうな。

「…っ。すみません…。…あの、この情報はお役に立ったでしょうか?」

 確信を得ていると、クリスティンハッとしやや不安そうに聞いて来たので俺はしっかりと頷く。

「いや、助かったよ。早速、『全体』に報告させて貰うー」

「えっ!?」

「…やっぱ現役船乗りは判断が早いな……」

 俺が専用デバイスで『全体通信』を始めると、クリスティンとロランはベクトルの違うリアクションをした。

『ーはいはーいっ!』 

『どうしましたか?』

『…あれ、全体通信になってる?』

「あ、皆さん。お疲れの所失礼します。今、通信宜しいですか?」


『ー大丈夫ですよ。…全体通信を使ったという事は-ヒント-を得られたのですね?』

 一応確認すると、クルーガー女史が率先して返事をした。そして、表情を凛としたモノから真剣なモノへと変えた。

「はい。『情報提供者』はこちらの彼…アンドリュー=クリスティン学生です」

「…っ!?……えと、どうも」

 デバイスを彼に向け紹介すると、彼は凄く緊張しながらお辞儀をした。…彼にしてみれば、憧れのスター達がモニターの向こうに居る訳だから当然だろう。

『…クリスティン。…なるほど、-あの逸話-には-そういう事-でしたか。納得ですね』

 すると、女史はそれだけで大体を察したようだ。…まあ、女史も『その時』から活躍されていた船乗りだから知っていても不思議じゃないな。

『…えと、どういう事ですか?』

『…クリスティン……、あれ、何処かでー』

『ーまあ、その話しは後にしましょう。…それで、具体的には-どういう試練-なのですか?』

 他のメンバー達は、疑問に思ったり埋もれた記憶を掘り起こしたりしていた。…だが、今回の『パーティー』のナンバー2であるレモンイエローの髪の『ゴールド』傭兵…セドリック=グリフォンさんがコースアウトしかけた話しの軌道を戻した。

「おそらく、『技術的なモノ』になるのは間違いありません。…何せ、管理者の通り名は『万能の技師』らしいですから」

『…-マスタースミス-という訳ですか。なるほど……。

 となると、私程度の技術力では足を引っ張ってしまうでしょうね』

 彼は、苦笑いを浮かべて先んじて辞退した。…うーん、となると現場のリーダーポジションはー。


『ー皆さん。私から提案があります。

 今回のリーダーは、ランスターの2人に任せるというのはどうでしょうか』

『ーえ゛っ!?』

『…………』

 すると、俺の『思惑』を察した女史は凄く嬉しそうに提案をした。…まあ、勿論指名された2人は驚愕するのだったー。


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