「「お疲れ様です、キャプテン」」
「お疲れ様」
すると、先に来ていたランスター
…正直悩んだが、2人は真剣な眼差しで頼み込んで来たのでキャンベル少佐とカーバイド大尉は勿論だが、上司であるブラウジス閣下にも相談した。
ー結果、三者共に許可を出してくれた。そして、閣下にいたっては『2人の決意を尊重して欲しい』とまで仰ったのだ。…恐らく、閣下は『いつかこういう時』が訪れると予想されていたのかも知れない。だから、こちらからの話を聞いただけで2人が『エージェントの役割』に直面した事を察し、直ぐに許可を出せたのだろう。
…しかし、まさか彼女達の知り合いまでもが『暴徒』になるとは思わなかったし…なにより、『こんなに早く2人が決意する』とは思わなかった……。…はあ、だまだ未熟だな。
「ーエージェント・プラトー。ハンター達が到着しました」
反省していると、ルームの『もう1つのドア』のインターフォンを見ていたキャンベル少佐が
報告してくれた。
「分かりました。
…じゃあ、2人はカーバイド大尉の後ろに」
「「イエス、キャプテン」」
2人はやや緊張した声で応じ、指定した場所に向かった。それを見送り、俺も所定の場所…取り調べ用のデスクに向かい事務スタイルのチェアに腰を下ろした。
ー直後、超硬質マジックミラーが隔てる『ルームのもう半分』のスペースに『一般ハンター達』と護送を担当する『戦闘班』がぞろぞろと入って来た。…やはりというか、ハンター達の大半は、青ざめた表情をしていた。
まあ、『やらかした』のだから当然だろう。
『ー座れっ!』
『…っ』
そして、スターリン大尉が号令を出すとハンター達はその厳しく大きな声にビクッとしながら、用意されていた簡易チェアに座った。
「ー大尉並びに戦闘班の皆さん。護送任務ありがとうございます」
ハンター全員が座ったのを確認した俺は、彼らを取り囲むような陣形で『警戒』を始めた戦闘班にお礼を言う。
『はっ!恐縮でありますっ!』
「…さて。
ーこんにちは、『ハンター』の皆さん。
…多分、私が『誰なのか』勘づいている方もいると思いますが自己紹介させて貰いましょう。
私は、帝国政府宰相直属の特務捜査官、プラトーと申します」
『…っ!』
それから俺は、ハンター達に名乗る。…当然、ほとんどのハンター達は驚愕した。
「…では、本題に入りましょう。
ー既に『理解』されていると思いますが、皆さんには『襲撃容疑』が掛けられています」
『……っ』
だが、俺がまごうことなき『事実』を突き付けると彼らは一瞬で表情を暗くさせた。…どうやら、相当重く受け止めているようだ。
「(…これは、あんまり『突っつく必要』はないな。)
…しかし、それらは『サーシェスカンパニー』の卑劣なトラップによって引き起こされた『事故』だという『推測』も出ています」
『……っ』
「まあ、それでも貴方達が『襲撃』したという事実と…『目を付けられている』という事実は変わりませんがね」
『……』
一瞬希望を抱いた彼らだが、直ぐに顔をしかめた。…結局のところ、『連中』に『引っ掛りやすい』と認知されているのが最大の問題なのだ。…それはつまり、いつか彼らが『連中』に『手掛かり』を手渡してしまい結果『最悪の事態』が発生するかもしれないという事だ。
「…今でも、信じられませんよ。
ー貴方達のような『甘言に弱い』人達が、目の前にいるという事実が」
『……』
『……っ』
痛烈に批判すると、大半は俯いたり目を逸らしたりするが……中にはこちらを睨み付け、『反感』の意思を見せる者もいた。
「…ほう、何か『文句』を言いたい人も居るようですね。
ー例えば、『地元に娯楽がなかったから、最初に入った-そういう店-がたまたま-ヤバい-所と繋がってた』とか?」
『…っ!?』
その視線を軽く受け流しつつ、『いかにも』な予想を口にした。すると、何人かがぎょっとした。
「それか、『知り合った先達や最初の就職先がが-デブリ(クズ)-だったから、その関連で認知されてた』とか?」
『…な……』
2つ目の予想を出すと、更に何人かが唖然とする。
「あるいは、『外に出てモテ出したと思ったら実はハニートラップで、相当屈辱的な思いした』とか?」
『……っ!』
その瞬間、『心当たり』のある数人のハンターは此処に来る前に起きた『唐突な精算劇』を思い出し苦悶の表情を浮かべた。
「…なるほど。確かに、『文句』も言いたくなるだろう。
ーけど、それはきちんと『事前準備』をしなかったアンタ達も悪いと思うぞ?」
『………っ』
けれど、俺は厳しい口調で『急所』を撃ち抜いた。…すると、今度は全員が一斉に俯いた。
「故郷に居る間に『資金』を貯めるだけでなく、『データニュース』も定期購読してれば『そういうのを事前に知れた』筈だ。…けど、『娯楽もない故郷』からとっとと出たったり『秘宝を見つけてちやほやされたい』アンタ達は、時期と資金の2つが満たされた瞬間に船乗りになった。…違うか?」
『……』
「そして、『技術』や『戦闘』の鍛練もロクにしてないから『そういうのに属する』しかなかった。…そうだよな?」
『……』
「あるいは、『厳しい事』を言う先達や『目立つ同期や後輩』との関わるのが嫌で『そういうのに近付いた』。…もしそうじゃないヤツが居たら教えてくれ」
『………』
最早、彼らに反感の意思は感じなかった。…つまり、全て図星だという事だ。
「…その3つこそが、アンタ達が『プレシャス』に加盟出来ない最大の理由だ。
俺達は、ただ『お三方のコネ』で選ばれた訳じゃない。
日々情報収集や鍛練を怠らず、『清廉潔白』に歩んで来たから『認めて貰った』んだよ。
ーなにより、『-秘宝-を最終的な目標にはしていない』。『その後どうするか』…すなわち『ビジョン』が明確に定まっているのさ」
『……』
それがトドメとなったのか、彼らは脱力したり天井を見上げたりした。…どうやら、『敵わない』と悟ったようだ。
「…とまあ、アンタ達への『指摘』はこれくらいにして……次は『提案』のフェーズだ」
『……?』
「さっき言ったように、アンタ達が『ハメられた』という事は分かっている。だから、俺や『彼ら』等のごく一部の人間を除いた人達…例えば、マスコミや一般人はアンタ達を『協力者』として認知している」
『…っ!?』
唐突に言われた『事実』に、彼らはぎょっとした。…まあ、確実に『裁かれる』だろうと思っていたのだから当然か。
「…だが、アンタ達が『事件』を起こしたというのは紛れもない『事実』だ。
ーだから、『黙っていてやる』代わりにアンタ達には『とある役割』をやって貰う。
拒否すれば…『どうなるか』分かるよな?」
『……っ』
『助かった』と思った彼らは、再び表情を青ざめながらコクコクと頷いた。
「ー大尉、お願いします」
それを確認したので、俺は一度隣への通信を切ってからカーバイド大尉にオーダーを出した。
「了解しました」
そして、大尉が応答した直後隣のモニターに『契約書』が表示されるのだったー。
ーそれから、さほど時を置かずして『一般ハンター』達は全員『支援者』になった。…まあ、つまり『後援会専属のガードチーム』にしたのだ。…いやはや、まさかこんな『面倒事』をクリアしないといけないとは思わなかった。
はあ、『他の専属チーム』の結成は『ラク』に出来るかな?
俺は報告書を作りながら、そこはかとない不安を抱くのだった。