ーSide『シルバーネームレス』
「ーハア、ハア、ハア、ハア、ハア、ハア、ハア……」
その頃、ファストディーンのシップスクールのでも他のエリア同様に『同士討ち』が繰り広げられていたのだが、『彼』は『事』が始まった直後に同行していた『共犯者』達から離れ運良く開いていたドア(オマケに『教材保管倉庫』)に逃げ込んだ。…そして、奥の棚に寄り掛かり荒い呼吸をした。
(…何がどうなってんだよっ!…途端に全員が敵になるって、おかしいだろうがっ!)
呼吸を整えつつ、彼は不可解な現実に混乱していた。…そもそも、『甘言に誑かされた』自分が悪いという事に気付いていないのだからとことん彼は『ダメ人間』なのだろう。
(…クソッ!…上手く行ってたのに、全部台無しだっ!…こうなった以上、取っ捕まる前に俺だけでもー)
直後、『最悪のケース』を回避する為に頭を回転させている彼のデバイスが『更に彼を焦らせる情報』を伝える。
「ーっ!嘘だろっ!?」
当然、彼は思わず叫んでしまった。…何せ、『通信が可能な状態』になっているのだから。
(…バカなっ!バリアの発生装置は、『外から』は手出し出来ない筈だっ!……まさか、『ドンパチ』の一部がスクールの外に流れたのかっ!?
…ああ、もうっ!最悪だっ!)
どんどん『追い込まれてる』事を否応なしに感じた彼は、頭をガシガシと搔き近くの棚に八つ当たりする。
『ーっ!……っ!………っ!』
そうこうしている内に、外から怒号や悲鳴やら『ショックビーム』とおぼしき音が聞こえて来た。…間違いなく、彼の元に『制圧部隊』が近くまで迫っていた。
(…ヤバい、ヤバい、ヤバい、ヤバい、ヤバい、ヤバいっ!このままじゃ、『イリーガル判定』食らって『降格』か最悪『取り消し』だっ!…クソッ!『なんで俺ばっかりこんな目に』っ!?
………こうなりゃ、『イチかバチか』ー)
『お先ブラックホール』が着々と迫る中、『棚上げ不遇』な自分の境遇に筋違いマックスな理不尽さを抱いた彼は激しい怒りを沸き上がらせた。…そして、ついに彼は『更に自らの首を絞める愚策』を思い付いてしまう。
『ー大丈夫ですかっ!』
『は、はいっ!大丈夫ですっ!』
…そんな中、まるで『後押ししてくれた』と誤解してしまう程の絶妙なタイミングで外から『加工された音声』と『一般人』の声が聞こえて来た。
(ー『チャンス』だ……)
彼は『新たに購入した』プラズマガンをほるすから抜き、なるべく静かにドアに向かう。…そして、そっとドアの隙間から顔を出し外を伺った。
ーすると、ちょうど制圧部隊とルームに閉じ込められていた生徒達がやり取りをしていたので、彼はそこに向かってトリガーを引く……直前。
『ーBOW!』
(…っ!な、何だっ!?………マジかよ)
不意に彼の背後から電子的な『犬の鳴き声』が聞こえ、慌てて振り返ったその視線の先には眩い白銀のボディの『イヌ』2匹が高速で接近していた。…それを見た瞬間、彼は諦めよりも驚きと感動を抱いていた。
『ーBOW!』
「ーぐわっ!」
『ー………っ!』
その隙を、『イヌ』達が見逃す筈もなく彼はのし掛かれた。そして、鳴き声の時点で駆け出した制圧部隊の隊員2名が彼の元に来た。…すると、何故か2人は彼を見て驚愕した。
(……?…何だ?)
まるで顔見知りのようなその反応に、彼は疑問を抱くのだったー。
◯
ーSide『ランスター』
(ー…どうして、フリッツさんが……)
(…キャプテンが言っていたのは、『こういう事』だったんですね……)
ランスター姉妹の所属する『ストライク7』の班長…遊撃隊攻撃班のクレア=キンケイド少尉が生徒達の安全確認をしている最中、ふと周辺警戒をしていた『イヌ』達が『第2級』の警戒音を発したので2人は率先して『そこ』に向かった。…しかし、到着した2人は片や唖然とし片や作戦前に『プラトー』が言っていた『もしかしたら、-2人-にとって厳しい現実が待ち構えているかも知れません』という言葉の意味を理解した。
…そして、2人が次の行動に移れない中『イヌ』の背中に乗っていた『インビジブルチルドレン-FAKE-』によって『偽装』はされた。これは、2人が『クルー』であるが故に『ヘビ』は『さほど急ぐ必要がない』と判断したから…なのかも知れない。
『ー誰か居たんですかっ!?』
『(…『この間』の一件で、『分かっていたつもり』だった……。)っ!ハイッ!-犯行グループのメンバーとおぼしき不審者-を発見しましたっ!』
尚も2人が動けないでいると、現地の女性軍人が確認しに来てくれた。…その最中、アイーシャは『オリバーのクルーになる意味』を改めて認識した直後に『決意』した。
「ー…ま、待ってくれっ!俺は『…何が-違う-の?』……っ」
そして、そんな姉の決意を感じ取ったアインは言い逃れをしようとする『暴徒』の言葉をピシャリと遮った。
『…-お前達-は、さっきまでスクールを不法占拠していたじゃないか。…そして、-彼ら-が激しい注意喚起をしたのという事は我々を背後から襲撃しようとしたんだろ?』
「……っ」
最早、アインは彼に対する敬意を捨てて淡々と事実を告げた。…それを聞いた彼は、だらだらと冷汗を流した。
『…ですから、我々は一切の妥協しません。
ー厳しい沙汰を覚悟して下さい』
「……っ!………っ」
そして、アイーシャは冷めたく宣告した後『催眠ガス』を吹き掛けた。…直後、彼は即座に夢の世界に旅立った。
『ーお見事です。流石、-プロ-ですね』
『ありがとうございます』
『…恐縮です』
それから速やかに拘束していると、駆け付けた現地の女性軍人が2人を称賛した。…だから、2ふ気持ちを押し殺しながらペコリと頭を下げた。
『…しかし、-コイツら-は一体-何処から-侵入したのでしょうか……』
『…それはー』
『ー……はあ、やってくれたな……』
作戦上答える事の出来ない疑問に、アイーシャは『どうやって切り抜けるか』を考えるが……不意に天井に収納されていた校内アナウンス用のスピーカーが一斉に出現しそこから『苛立つ男』の声が流れた。
『ーっ!うわっ!な、なんだっ!?』
ー直後、スクールの外で待機しているバックアップチームの身に何かが起きた。
『…っ!あれは…』
ランスター達は直ぐに窓から外を確認した。…そこには、『ビッグサイズのサポーターのレプリカ』が出現していた。
『もう、面倒くせぇから-全部人質-にさせて貰う事にした。
ーさあ、とっとと-カギ-全部差し出しなっ!』
男は凶悪な感情を乗せて、『全てのスクール』に宣言した。…のだが、ランスター達はヘルメットの中で表情を歪めたりはしなかった。
『ー…おい、聞こえてないのか?…そうか、なら………っ!?』
全くリアクションをしない『ストライク』に、男は苛立ちながら『見せしめ』をしようとする。…だが、直後に男は驚愕する。
『…っ!こ、今度は何だっ!?』
最も、一番驚いているのは外に居る『現地部隊』のバックアップチームだろう。…何せ、突然巨大なビーストタイプのマシンが出て来たと思ったら、直後にそれらは一斉に『小型サイズのビーストタイプのドローン』に『戻って』いくのだから。
『バ、バカなっ!?何で勝手に-ドッキング解除-がっ!?…くそ、どうなー』
そして、少しして不快な放送も強制終了した。…その理由はとっても単純だ。
ー恐らく銀河連盟において『最強のハッキング』チームが、その『牙』で襲い掛かったのだから。