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激変-近付く日常-

ーSide『ドクター』



『ープログラム、インストール完了。-治療システム-ヲ起動シマス』

 地上ではいろいろと『改善』し始めている頃、宇宙軍港の『エクストラスペース』に停泊している『アドベンチャーカノープス』の格納庫内の『ホスピタル』…『レスキューウィング』の中では、今尚『日常を取り戻す』為の治療が行われていた。

 …そして、その治療は先日の一件の『おかげ』で急速に最適化されていた。

「ーっ。…良し」

「…上手く行っていますね」

 被害に遭われたスクールスタッフの治療を担当するワインレッドのショートヘアーの女性…班長補佐のビオラと医療班長のアデルは、情報班と支援班と協力して作り上げたでプログラムとシステムが問題なく機能しているのを見て、ほっとした。

『ーセシルです。班長、バーキン中尉、今大丈夫ですか?』

 すると、タイミング良くコバルトブルーの三つ編みの女性班員が外からコールして来た。

「大丈夫よ」

「ー失礼します」

 アデルが許可を出すと、その班員…セシル=ブリックが入って来た。そのファミリーネームの通り、彼女はホワイトメルのトップである『ブリック大統領』の親戚に当たる優秀なドクターだ。

「お疲れ様です、お2人共」

「ブリック中尉もお疲れ様。…それで、『そちら』は?」

「こちらはいつでも。…その、『より良い物を考える時間』は沢山あったので」

「それはなによりです」

「なら、それを直ぐに実行させなきゃですね」

 セシルの言葉に、アデルもビオラも反感は抱かなかった。…『それだけ待たせしまって申し訳ない』という思いもあるが、彼女が嫌味で言ってはいないと理解しているからだ。


『ー報告。患者達ノ体内ニ潜伏シテイル敵性ナノマシン群ヲ検知シマシタ。

 コレヨリ、-除去作業-ヲ開始シマス』

 そんなやり取りをしていると、治療マシンから電子音声が流れた。

「…しかし、この『トリ』は凄いですね。最新の微細物検知システムと同スペックのモノまであるなんて……」

「…それに、回復カプセルは格星系軍の主力部隊で採用されている最高峰のモノですし……」

「…極めつけは、なんと言っても『あのシステム』でしょう。…まさか、『現物』をこの目で見る日が来ようとは思いもよりませんでした……」

 改めてセシル達は、『トリ』の凄さに驚いていた。…ここ最近は忙しくてとにかくスルーしていたが、ようやく『目処』が立った事で気にする余裕が出てきてしまったのだ。

「…はあ、ホント凄い所に転属しちゃいましたね」

「…同感です。…しかも、凄いだけじゃなく此処まで『忙しい』とは正直予想していませんでした」

「…今回の件とこの間の任務は、何もかも違っていますからね。…まあ、ドローンという『沢山いて頼りになる助手』がいるから言うほど大変ではありませんが……」

「…ですね。…というか、『トリ達』もそうですが他の『サポーター』達もなかなか規格外ですよね」

 セシルが何気なく言った感想から、話しは『ドローン』の事に移った。

「…いや、ホント『オーダー理解』が早いんですよ。…まあ、今まで頼っていた『助手』には流石に敵いませんが……。

 それでも、軍の病院に居た時に見た案内ドローンとかとは格段に凄いです」

「…それと、自分的にはあのフォルムに『グッ』と来ます。…それだけに、『レプリカ』が存在しているのが、受け入れ難い事です」

 セシルは、少し興奮した様子で言い直後に残念そうな表情をした。…何せ、彼女は『物心ついた頃』から『プレシャス』の大ファンなのだ。


「…問題はそこですよね。あれほどの高性能の存在の『コピー』を、一星系の兵器会社がどうやって生み出したのでしょうか……。

 …こう言ってはなんですが、いくら『副産物』を悪用しているとはいえ、『まともな生産能力』があるとは到底思えないんですよね」

「…まあ、資金や資材等はいろいろな所から受けてたりこっそりと持ち出したりしていそうですが、『人材』はどうにもなりません」

「…仮に能力を持った方々を連盟から連れさっていたとしても、意識の疎通さえもままならいでしょうし。…何より、発覚した場合は連盟が『厳正な対応』を取りますからね。そんなリスクを冒すかくらいなら、自分の所でなんとかするでしょうね……。…けれど、やはり『想像するのが難しい』です」

『ー除去完了。患者達ノバイタルチェックヲ開始シマス』

 3人があれこれ話している内に、今までと違い圧倒的なスピードで残りの患者達の治療が終わった。

「ー…いや、『手段がない』とは限らないですよ」

「「……っ」」

 その瞬間、アデルは患者達が入っている医療カプセルをじっと見た。…すると、2人は彼女の言わんとしている『推測』を察した。

「…なるほど。『ラーニングカプセル』ですか」

「…確か、かつてイデーヴェスでも研究されていましたよね。…結局、脳への負担が大きい事が判明しプロジェクトは凍結してしまいましたが……。…まさか、実在している可能性があるとは」

「…恐らく、それらの問題解決にも『副産物』は使われているのでしょう。…、一体敵はどれだけの数を所持しているのでしょうか」

「「……」」

『ーバイタルチェック完了。問題無シデス。

 治療システムヲ終了シマス』

 その呟きに、2人は沈黙してしまうがちょうどそのタイミングで治療マシンは終了宣言をした。


「…とりあえず今は、私達が出来る事をやりましょう」

「「イエス、マイロード」」

 アデルの言葉に、2人も意識を切り替え敬礼をした。そして、直後に『トリ』達が治療ルームに入って来て次々と医療カプセルを予め指定された場所…『リハビリルーム』へと運んで行った。

「それでは、ここからはブリック中尉主導の元患者達のリハビリを行って行きます」

「お任せを。…えっと、まずアデル中尉は『彼女達』への連絡をお願いします」

「了解ー」

「…では、行きましょう」

「ええ」

 ビオラが通信を開始したのと同時に、セシルとアデルは治療ルームからリハビリルームに移動する。

「ーあ、ホーク班長、バーキン中尉。お疲れ様です」

「お疲れ様です」

 すると、直後ライトグリーンの髪をサイドテールにした女性班員…エマ=バフティヤールとグレーの髪をシニヨンにした女性班員…リンデ=ノイエスが入って来て敬礼した。

「バフティヤール少尉、ノイエス少尉。お疲れ様です。…早速、始めましょう」

「「イエス、マイロード」」

 その2人が再度敬礼すると、ちょうどビオラが入って来たので5人は随行していた専属のサポーターに掴まり無重力状態のルームを移動する。

『ー…うわっ!』

 すると、ちょうど医療カプセルから次々とスクールスタッフが出て来るのだが彼らはふわふわと浮遊していた。

「ーあ、今『ドローン』でサポートさせますね」

 エマは室内アナウンスを流し、リンデは待機していた『トリ』をアクティブにする。


『…凄』

『…え、ちょっ、嘘……』

 スタッフ達は次々とサポートされていくのだが、何人かは『身体が動く事』に驚いていた。

「ー皆さん、おはようございます。…そして、完治おめでとうございます」

『…っ!マジで……』

『……』

 セシルの言葉に、スタッフ達から歓喜が伝わって来た。

「…ですが、まだ『元』の状態には戻っていないので今は決してご無理をなさらないようにして下さい」

『…っ!』

 すると、スタッフ達の興奮は直ぐに冷静になった。…それを見て、彼女は続ける。

「…なので、これよりリハビリを開始ししますー」

 そう言って彼女は、エアウィンドウを展開するのだったー。


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