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再起-復活の学舎-

「ー…さて、何で呼ばれたのかは説明しなくても分かりますよね?」

 同日昼。俺は、首都の地上警備隊基地の遠距離通信ルームにて『目の前』に居る複数の男女…移民生徒達の『ペアレント』に向かって、『笑顔』で確認した。

『……わ、私達ガ、一体何をしタというのだ?』

 …しかし、この期に及んで彼らはダラダラと冷汗を流しながらしらばっくれるのだった。だから、こちらは無言で『とあるデータ』を再生する。

『ーはじめまして。こちらは、-アーリアルサポート-です。この度は、-ご相談-頂き誠にありがとうございます』

『…ほ、本当に、-援助-してくれるのか?』

『ーっ!?』

 突如流れ始めた『音声データ』に、向こうはぎょっとした。…まあ、多分こうなるだろうと予測していたので『侵入者』達の船のログデータをコピーしておいたのだ。

『ーサイトのキャッチコピーに、偽りはありません。

 …ましてや、○○様は○星系の重鎮だったお方です。その方の-再起のお手伝い-をさせていただく事は、弊社にとって大変な名誉な事です。

 どうか、遠慮なく弊社を-お使い-下さい』

『…そんな事まで……。…ならば、そうさせて貰おうー』

 相手の話術に、ペアレントの1人は驚愕しつつ気を良くし『困窮する現状の打開策』を求めた。…そして、『アーリアルサポート』…まあ、サーシェスカンパニーの下部組織であるその会社は、『今回の事』を提案した。

「ー…とまあ、このように『証拠』はちゃんとあるんですよ。

 これが何を意味するか、元『お偉方』の皆さんなら分かりますよね?」

『………』

 今度は真顔で問いかけると、向こうはガタガタと震え出した。…だが、俺は更に追い討ちをかける。

「…つまり、皆さんは『銀河連盟』の『平和維持』を乱す『騒乱ほう助』罪を犯したという事です。

 ー…だから、今回呼んだのは『罪を裁く』為だって事だよ。分かったか?」

『……っ!』

 最後に言葉を崩し、低い声で圧を掛けると向こうはビクッと震えた。


「…じゃあ、早速だが『沙汰』を言い渡す。

 ーアンタ達には、『連中』の情報を洗いざらい喋って貰う。その後は、『トレーニングスクール』に入り『こっちの一般常識』を始めとした様々な事を学習して貰う。

 そして、学んだ事を『再起』に役立ていずれ『銀河連盟』の更なる発展に貢献する事を約束しろ。…それが、アンタ達への罰だ」

『………へ?』

 予想外の『罰』に、彼らは唖然とした。…まあ、正直俺も大分『甘い』と思う。だが、『連盟議会』が出した結論なので仕方ない。

『……何ガ、目的なんダ?…それじャ、罰にはなラナイじゃないか?』

 ペアレント達の代表っぽい男は、心底『理解出来ない』と言った様子で呟いた。

「…1つ言える事は、『それ』は決して同情から出たモノではないと言う事だ。

 ーだって、アンタ達は『自業自得で国を追われた』んだから」

『……っ』

 当然、こっちも彼らの『過去』は調査済みなのだ。…なのに、何故『甘いと思われる』判決を出したのか?…それは多分ー。

「ー…だが、過去がどうであれ今のアンタ達は紛れもなく『銀河連盟』の一員だ。つまりは、『身内から重犯罪者』を出したくないっていうのと……『健全で自立した生活』を送って貰いたいって思惑があるだろうよ」

『……え。…そんナ、だったラ何で話しヲ……』

「…まあ、多分アンタ達が流れ着いた時から『連中』は目を付けていたんだろうよ。

 …恐らくだが、『サポートセンター』の人はまともに取り合ってくれなかったのではないか?」

『…そ、そうダ。……ア、まさカ、-妨害工作-か?』


「だろうよ。…共和国政府に確認したところ、『支離滅裂な上に、無理難題を言って来るせいでアドバイザーが次々とノイローゼになったからじきに取り合なくなった』って言われたよ。

 つまり、連中は『取り替え』をやったのさ……。まあ、何が言いたいかって言うと、一番の理由は『アンタも-連中-の被害者』だから『軽く済んだ』んだろうよ。

 その『幸運』に感謝する事だな」

『……』

「…んじゃ、そう言う訳だからお次は『尋問タイム』だ。

 ー…『遠慮なく』喋ってくれ」

『…そうサせて貰ウ。…そうダ、出来レバ妻にも、-取り調べ-をしてくれナいか?』

 完全に決別した様子の男性は、ふと提案して来た。…これは、『重要情報』があるとみた。

 俺は即座に了承し、ミルスティン中尉に聞き取りを頼むのだったー。



 ○



 ーSide『スクール』



「ーフンフフーン、フンフンフフーン~」

 その日の午後。『塾』の一室では、管理者であるセリーヌがウキウキしながら『準備』に勤しんでいた。

「フンフフーン…っと」

 そんな時、ふと彼女の手元にあるオールドタイプの内線がコールしたので彼女は素早く取った。

『こちらロゼ。今、全教室の清掃と-最適化-が終了しました』

「ありがとうございます。…すみません、お休みの所手伝って貰ってしまって」

『お気になさらず。…むしろ、-同胞の再出発-のお手伝いが出来て嬉しいですよ。

 それに、ほとんど-彼のサポーター達-がやってくれたので』

 相手は、休日にも関わらず手伝いに来ていたロゼだった。セリーヌは申し訳なさそうにするが、彼女は心底嬉しそうにしながら答える。…尚、彼女の言うように清掃は『トリ』と『ネズミ』が行い、リモート設定などの部分は遊撃隊の情報班と『プレシャス』のメカニックチームが手早く済ませたので彼女の労力は微々たる物だった。

「…彼らにも、後でお礼を言わなくては行けませんね。そして、彼らを派遣して下さった『あの御方』にはー」

『ー…セリーヌ、-戻って-ますよ』

「…失礼。…しかし、まさか半日で準備が完了するとは思ってもみませんでした。

『サポーター』の方々は、大変優秀なスキルを習得されているのですね」

 興奮したセリーヌは、ついオリバーを特別な呼び方で呼んでしまう。それを、ロゼに指摘されると彼女は咳払いをして話題を変えた。


『…まあ、-トリ-や-ネズミ-は-あの船-や彼を直接サポートするモノ達ですし-部隊-は銀河連盟の若い世代の選りすぐりです。

 そして、-プレシャス-の方々も-あのお三方-に技能や実力や人格を認められた素晴らしい方々です。

 …本当、私達は幸運ですね。様々な形で-プレシャス-に関わる存在達と知り合っているのですから』

「…ええ。……これは、『残りのメンバー』も何らかの形で関わっていくのでしょうね」

『…あ、でも-彼女-はちょっとビジョンが浮かびませんね』

 ロゼが呟くと、ふとセリーヌが『1人の同志』の事を考えた。

「…まあ、『彼女』は集団より個にじっくりと関わるタイプですから。…そうなると、ブライト教諭の指導役でしょうか?」

『…どうでしょうか。…彼は、プレシャスの中でもかなりの実力者と認識しています。

 -彼女-の指導対象とはならないでしょう』

「…それほどでしたか。…まあ、『あの船』のキャプテンならば当然でしょうが。

 …そうなると、『彼女』も私同様に『例の』生徒の誰か指導をするのでしょうか?」

『…でしょうね。…それかー』

「ー…っ。すみません、どうやら『向こう』も準備が出来たようです」

 2人が予想を立てていると、部屋に備え付けの端末が『生徒が来た事』を告げた。

『いえ。…それでは、影ながら応援しています』

「ありがとうございます」

 そして、通信は切れ彼女は『塾長』と表示された電子プレートの置かれたデスクから立ち上がり、『放送ルーム』に向かったのだったー。



 ー尚、『先程の予想』の結果は案の定『予想外』な事になるのだが、当然誰も…『当人』でさえも知る由もなかった。


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