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増員-斜め上の結末-

ーSide『マスター』



『ー……驚キマシタ。マサカ、貴女ガ-外-デ活動シテイルトハ』

『テスト』の日の夜。ロゼは頃合いを見計らい、自室の端末から『旧友』に連絡をしていた。…当然、最初『塾長』は彼女が誰か分からなかったが『例の友人』の名前を出すと、向こうは驚愕の言葉を口にした。

「まあ、ほんのつい最近『いろいろ』とありましたから」

『……-イロイロ-?シカモ-ツイ最近-?…モシカシテ、-例ノ事件-ト関ワリノアル事デスカ?』

「やはり、貴女も感知していましたか。…実は、今日こうして久々に連絡をさせて頂いたのは、まさに『それ』関連で頼み事があるからなのです」

 ロゼの『匂わせ』に気付いた塾長は、ピンポイントで『予想』を導き出した。…ロゼは、『やはり話しが早いですね』と思考しつつオリバーからの『指示』を実行に移す。

『……。…本当ニ、今日ハ珍シイ事バカリデスネ。夕方ニ、久々ニ私ノ塾ガ満員トナッタカト思エバ…同日ノ夜ニハ久々ニ同胞ガ連絡シテキテ、ソノ上頼ミ事ヲシテクルノデスカラ』

「…私も、ついこの間まで『こんな現状』になるとは予想すらしていませんでした。……」

『…ナルホド。ソノ頼ミ事ハ、貴女ヲ-助ケタ-人カラノ-指示-デスネ?』

 塾長が驚きを語ると、ロゼも同意した。…その際、ふと彼女は『あの時』の事を思い出していたのだが塾長はその表情で、大体察した。

「…やはり、貴女に隠し事は出来ませんね。

 ーええ、その通りです。…実は、ほんの数日前に私の『テストに挑まれた』方に『私』のみならず『プラント』さえも守って貰ったので、その恩を返すべくその方の『助手』をさせて貰っているのです」

『……ヘ?…チ、チョット待ッテ下サイ。…ソレホドノ事ガ起キタトイウ情報ハ、-見テイナイ-ノデスガ?』

 ロゼの詳細な説明に、塾長は『聞いていない』といったニュアンスの反応を見せた。


「…無理もないかと。『彼』は『不法侵入者』を一切の抵抗を許さずに捕縛しましたから、私のプラントは『ドアが損壊』した程度の被害で済みましたし……そもそも、『その事件』は公表されていませんから」

『………待ッテ下サイ。…モシカシテ、ソノ方ハ今日ノ-テスト-ノ参加者ダッタリシマス?』

 …もし塾長が、ロゼと同じように最新の『身体』に宿っていたとしたらきっとその美しい表顔には冷汗が浮かんでいた事だろう。それくらいの驚愕を、ロゼははっきりと感じ取っていた。

「ご明察です。…さて、誰だと思いますか?」

 彼女は肯定した後、ふと『クイズ』を出した。

『……。……っ!』

 すると、塾長はすぐさま画像データを調べ始めるが『答え』を見つけるのにさほど時間は掛からなかった。…何故なら、『該当者』の事を思い出したからだ。

『…マサカ、アノ-赤髪-ノ青年ガ……。……ッ!

 ー…今日ハ、何トイウ日ダ……』

 直後、塾長は全てを察しそして感嘆する。…何故なら、記憶領域の奥底に沈んでいた鮮烈な思い出が一気に表層に浮上してきたからだ。

「…流石ですね。まあ、貴女や『他の何人』かは『直接』の接点がありますからね」

『……エエ。……私ハ、今初メテ-時間ノ経過-ヲ体感シマシタ。……マサカ、-教ワル日-ガ来ヨウトハ。……ッ、失礼。

 …ソレデ、ソノ方ハ私ニ何ヲ頼ミタイノデショウカ?』

「…実はですねー」

『ー………』

 ロゼは塾長に、オリバーからの『依頼』を伝えた。…すると、塾長は黙りとしてしてしまった。

「…えっと、引き受けて下さいますか?」

『…何トイウ、オ方ダ。…今一度、私ニ-使命-ヲ果タサセテ下サルトハ……。

 ーエエ、謹ンデ引キ受ケサセテ頂キマス』

 同胞の初め見せるリアクションに、ロゼは少し困惑しつつ『答え』を聞いた。…すると、塾長は明らかにオリバーに対して深い敬意と感謝の念を抱いた様子で快諾したのだったー。



 ○



 ー……嘘だろ?

 翌日。『プレシャス』の日課の1つである早朝市街地ジョギングを終え、セントラルホテルの自室に戻って来た俺は自分の端末を見て固まった。…いや、『早過ぎ』だろ。

 あまりにも早い『お返事』に、俺は困惑しつつ一旦シャワー室に向かいさっぱりしてから端末を操作する。…すると、眼鏡型のデバイスを装着したガイノイドがエアウィンドウに映し出される。

「ーあ、もしもし。こちら、ブライトです(しかし、この星系『デザインスクール』もあるからか色々な外見の『ヒト』のパターンがあるよな。…ロゼは『親族にいそうな』純朴タイプだし、彼女は眼鏡も相まって凄く理知的に見える。…これは、『残りの5人』に会える日が楽しみになってきた)」

『…は、初めまして、ブライト-様-。わ、私は-セリーヌ-と申します』

 挨拶しつつそんな事を考えていると、彼女…『セリーヌ』は昨日とはまるで別人のように緊張しながら挨拶を返して来た。

「…あの、私は『一介の秘宝ハンター』ですので『様』とかの敬称は不相応ですよ。むしろこちらがー」

『ーとんでもないです。…あ、お言葉を遮ってしまい申し訳ありません……』

 すると、彼女ははっきりと異を唱えた。…そして直後、申し訳なさそうにした。…おかしい、昨日の今日でメッチャ『敬意』が爆上がりしている……。

 あまりの急変振りに、ますます困惑してしまう中ふと『別ウィンドウ』が展開した。

『ーおはようございます、ブライト教諭。…おや、どうされましたか?』

「…実に良いタイミングだ、ロゼ。…ちょっと申し訳ないが、『この状況』をなんとかしてくれないか?」

『……。…はあ、やはり-こう-なりましたか……。申し訳ありません、ブライト教諭…』

 非常に頼もしい事に、ロゼは一瞬で状況を察し深いため息を吐いた。…そして、唐突に深く頭を下げ謝罪して来た。

「…何で君が謝るのか分からないんだが……。…とりあえず、1から説明してくれ」

『……。…了解しましたー』

 説明を求めると、彼女はゆっくりと頭を上げて昨晩の事を話し出したー。



 ー……まあ、結論から言うと『原因』は自分にあった事が分かった。…どうやら、昨日の『依頼』の際に俺の『正体』に気付いたらしい。…その時に初めて、『時の流れを教わる』という経験をし直後に『依頼内容』を聞いて『使命』を再び果たしていける事に感涙し、機会を設けた俺に深い感謝と敬意を抱いたようなのだ。…いや、ホント驚きだよ。



『ー…私も、昨晩は攻略完了の知らせを受けて浮かれておりました。…そのせいで、つい調子に乗って-ヒント-を出したせいでこんな状況に……。

 面目次第もありません…』

「…まあ、『先代』を知っているってのは『テスト』の時に察していたから遅かれ早かれ『気付いて』いただろう。…それに、俺も『やり過ぎた』みたいだし今回は『なかった事』にしよう。

 …とりあえず、次気をつけてくれれば良いよ」

 彼女は物凄く反省していたので、フォローを入れた。

『…寛大なお心に、感謝致します』

「…で、肝心なのは『ここから』だ」

『……』

 俺は1つ目のウィンドウに視線を戻す。すると、その様子を静かに見ていたセリーヌは期待の目を向けた。

「…まあ、そもそも頼んだのはこっちだ。だから、本来は条件とかはあんまり付けたくないんだが…。…『やらないと』に後々非常に面倒な事態が起こる…ってのは理解して欲しい」

『勿論です。…なので、こちらを用意しましたー』

 …やはり彼女は『分かっている』ようで、直後彼女の左隣に3つ目のウィンドウが展開した。当然そこには、『契約書』を表示されていた。

「(…ホント準備が良いな。)…では、今日から宜しくお願いします。『セリーヌ先生』」

『こちらこそ、宜しくお願い致します。ブライトさ…教諭』

 彼女は一瞬敬称を付けてしまいそうになるが、なんとか『我慢』してこちらに合わせてくれた。…ちょっと不安だな。

 その様子を見て、俺はそこはかとなく不安になるのだったー。


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