ーSide『エクストラチーム』
「ーお待たせいたしました。では、帰りましょう」
「「はい」」
ー同時刻。今日の業務を終えたアイーシャと『アイン』は、クルーガーと共に地上警備隊の基地から拠点に戻るところだった。
「「…っ!」」
「…あら、どうやら『彼』の予想が的中したみたいですわね」
すると、ランスター達とクルーガーの通信デバイスがバイブした。…それを見て、3人は纏う空気を変えた。
「ーこちらでしたか。…では、『参りましょう』」
「「「はい」」」
直後、情報班班長のキャンベルがやって来た。…そして、彼女の言葉に3人は即座に頷き彼女の後ろに続いて基地の中に戻った。
ー何故なら、これから『遠隔操作』している『実行班』を押さえなくてはならないからだ。…尚、戦闘班と支援班はサードリスニで発生しているであろう『襲撃』に対処している上
にー。
「ー少佐、皆さん。お疲れ様です。
自分たちは外でバックアップしますが、どうかお気をつけて」
その道中、カーバイドを含めた『男性班員』達と合流し共に地下駐車場に向かうエレベーターに向かう。
ー…そう。実は『予想された場所』が『男子禁制』の場所…すなわち『女子寮』なのだ。…では、何故オリバーは『そこ』だと予想したのかたのか。
「ー…それにしても、まさか『あんな方法』で予想を付けるとは思いませんでした」
「ご安心…と言って良いか分かりませんが、我々でさえも考えつかなかったので…」
「…うん、やっぱり安心して良いか分からないね……」
エレベーターの中で、ふとアイーシャが呟く。すると、キャンベルは苦笑いをしながら言いそれを聞いたイアンはツッコミを入れた。
「…最初、『トレーニングスクール』を開講すると言った時は『何故』とか『お身体の心配』をしましたが、彼の話しを聞く内にすぐに分かりましたわ。
勿論、『再び起きないように』…という考えもあるのでしょうが最大の目的は『予想』を立てる為でしたのね。
…はあ、私もまだまだですわね……」
『……』
クルーガーの反省の言葉に、姉妹と班員達も沈黙する。…まあ、『移民生徒』全員を『同類』と決め付けていたので気まずいのだ。
『ー地下駐車場デス』
やがて、エレベーターは地下駐車場に停車したので全員は無言のまま降りた。
「ー敬礼っ!」
そして、『ミドルレッグ』の前まで行くとミルスティンを含めた女性班員4名…ウォンにワインレッドの髪に明るい雰囲気のカリファ=ラダメス少尉と、黒髪で前髪で目が隠れたミスティ=アマルティア少尉が敬礼して来た。
「ーお疲れ様。…では、協力者並びに班員は『ウマ』に搭乗して下さい」
『イエス・マムッ!』
『了解』
キャンベルが即座に指示を出すと、まずクルーガー達が先に乗り込み次に班員達が乗り込んだ。
「ー作戦メンバーの搭乗完了。『ミドルレッグ-5-』発車」
『ヒヒーンッ!』
全員がシートに座ったのを確認したキャンベルは、『イミテーション』の運転席に座りオーダーを出した。…すると、まさに『ウマ』の電子音声が流れ『ミドルレッグ』は起動した。
「ー…凄い変な所にまでこだわってるね」
「…ですね……。…このシートも、なかなか快適ですし……」
それを後ろの座席から見ていた姉妹は、驚き半分呆れ半分のリアクションをした。…ちなみに、『フルオートパイロット』にはクルーになった当初から散々見て来たので感覚が麻痺していたりする。
「…元々『レッグシリーズ』の運用目的は、私達のような協力者や災害時に民間人を運ぶ為『らしい』ですから」
作戦中であるからか、2人は小声で話していた。すると、隣に座るクルーガーが説明する。
「…『らしい』って、お姉様も詳しい事は教えて貰っていないんですか?」
「ええ。…具体的な性能は勿論、『どうやって入手』したかも『先代殿』は教えて下さいませんでした。
…まあ、『当時』は私も精神的に未熟だったのでしつこく聞いてしまったのですが、同乗していた『閣下』に追及を禁じらてしまったのです」
アイーシャの質問に、クルーガーはやや恥じた様子で答えた。…しかし、その回答は更に謎を呼ぶ。
「…そういえば、ブラウジス閣下は先代の上司でもあるだよね。
つまりは、閣下は『知っている』事ですか?」
「…可能性はあるでしょうね。
…ただ、そうなると私達にはどうする事も出来ないかな……」
「……そうだね」
すると、2人は最近習慣付いてしまった深いため息を吐いたのだった。
ー…まさか、近い将来に『転機』が訪れるなど夢にも思わずに。
○
ーSide『ターゲット』
「ーな、なんなのよ、あの連中っ!?まるで、『見えて』るみたいに的確に…」
「…っ!ちょっ、邪魔よっ!」
一方その頃。女子寮のとある一室では、数十人のガラも身だしなみも悪い生徒達がモニターの前で『ゲームコントローラー』をガチャガチャしながら叫んでいた。…何故なら、モニターの向こうではオリバーと『キャプテン・プラトー』率いる遊撃隊が、彼女達の操作する『ヘビ』と『トリ』の不可視の奇襲編成を次々と『捕獲』していっているからだ。
「…くそ、『あいつ』が来ているなんて聞いてないわよ……」
「…や、やっぱり、『姉御』達は連中にー」
やがて、だんだんと彼女達は劣勢になっていきついにレプリカ達を運んでいた『車両型の移動式格納庫』に迫られていた。…そんな時だ。
『ー注意、-監督生-ガ自室ニ接近シテイマス』
『ーっ!?』
…彼女達は、アラートと共に流れた電子音声にぎょっとした。
「…な、なんで……。点呼は終わったはずなのに……」
「…くそっ!」
彼女達のリーダー格の女子生徒は、憤慨しながらコントローラーを投げ捨て立ち上がる。
「…『エスケープ』」
『…っ』
そして、他の生徒達も悔しそうにしながらコントローラーを床に捨てるように置き急いで立ち上がった。
「…この借りは、いつか、必ずー」
リーダーの女子生徒は、モニターの向こうで動作停止したレプリカ達を回収するオリバー達を睨み付けながら、『出入り口』の前に立った。
「ー………あれ?」
…だが、何故かドアは開かなかった。そして、次の瞬間ー。
『ーっ!?』
彼女達の居る空間は、突如真っ暗になった。当然、彼女達は慌てる。
「誰か、ライトッ!」
「は、は…痛っ!」
リーダー格の生徒はすかさず指示を出し、直ぐに誰かが応えて動きだす。…だが、ただでさえ暗闇い上に足元に散乱した私物に足を取られた誰かは、派手に転んだ。
「ちょっ、大丈夫?」
「…どうなっ……っ!」
他の誰かがその生徒を心配していると、再びルーム内の照明が起動した。…それと同時に、モニターも起動するのだがー。
「ーっ!あははっ!『甘い事』しているから、そうなるのよっ!」
その向こうから送られて来た映像を見たリーダー格の生徒は、思わず嘲笑した。…なんと、レプリカ達を格納していた車両が突如起動したかと思ったら、高速でバックして地上警備隊の運搬車両から飛び出したのだ。
…そして、遊撃隊が慌てている内に車両はその場所から急速に『逃走』した。
「…っと、いけないいけない。早ー」
『ーう、うわっ!?なんだっ!?』
彼女は笑いを堪えながら、自分たちも逃げる為に再度出ようとする……が、直後予想外の事態が映しだされた。
「………え?」
なんと、車両は通行人に構うなく『学生寮』の方向に爆走していたのだ。…それも、『ステルスオフ』の状態で。
「…嘘、何で……。…っ!」
『……ぁ……』
そして次の瞬間。彼女達の顔から血の気が引いた。…車両が、『女子』寮前の重厚なゲートを容易くぶち破り勢い良く建物に突っ込んだからだ。
『ーきゃあああっ!』
『な、な、な、なんなのっ!?』
『…ね、ねぇっ!今、-誰か飛ばされなかった-っ!?』
『…わ、私、警備隊に連絡して来るっ!』
直後、モニターの向こうからは悲鳴や慌てふためく声が聞こえて来た。…しかも、どうやら『被害者』が出てしまったようで誰かが寮内に掛け込んで行った。…その光景を、彼女達はただ呆然とそして『恐怖』しながら見ていた。
「…っ!………嘘」
しかし、リーダー格の生徒はハッとして咄嗟にコントローラーを探し何とか車両をその場から逃がそうとする。…だが、『先程強く投げた』せいか目当てのモノは『スクラップ』になっていた。
『ー注意、監督生ガ三階-フロア-ニ来マシタ。至急、該当ノ生徒ハ自室ニ戻リマショウ』
「…聞いてない。こんな事になるなんて、聞いてないっ!」
「ま、マズイよっ!…こ、このままじゃ退学どころの騒ぎじゃないよっ!」
「へ、下手したら『檻』に……」
『ーそう。貴女達は、それだけの事をしていたのですよ』
『ーっ!?』
すると、顔面蒼白になった彼女達の耳に厳しい声が聞こえて来たー。