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確認-見え始める真相-

『ーお昼時にすみません、マスター』

 時間は流れてお昼時。早めに昼食を済ませ午後の授業の準備をした後、実習ルームの準備室にてカノープスと連絡をしていた。…というのも、昼前にカノンから『捜査に関する重要な報告があります』というメールが来たのだ。

「気にするな。…で、何が分かったんだ?」

『-重要参考人-達の情報です。…先ほど情報班から-とある仮説が浮かび上がったのでマスターに共有して欲しい-と連絡を受けました』

「…?…それで、彼らはなんと?」

 いまいちピンと来ないので、続きを促す。すると、カノンはエアウィンドウの向こうで軽い操作を行う。

『ー今、ロゼにデータを転送しました』

「確認しました。モニターに投影します」

 すると、カノンからデータを貰ったロゼは『それ』をモニターに転送する。…しかし、昨日初めて会ったとは思えないコンビネーションだな。カノンは会ったばかりロゼの事を信用しているし、ロゼは初対面の時からやたらカノンに敬意を抱いでいるし……。…『プレシャス』の繋がりってだけで、なんでこうも『面白い事』になるのだろうか?

 そんな事を考えていると、モニターに画像データが浮かんだので気持ちを切り替えた。

 ーそれは、監視カメラの映像だった。…そして、画面の中心辺りに赤い枠組みがありその中に複数人の私服を着た子供がいるのだが…多分彼が『移民組』なのだろう。

「ー……っ」

 すると、映像は動き出し彼らは駅から公園に向かって行った。…その道中、休日にばったり出くわした同級生らしい生徒が挨拶をするのだが、彼らは話しに夢中になっているのか無視してさっさと歩いて行ったのだ。…やれやれ、相当『来ている』な。



 ーそれから数分後、また彼らに同級生達が声を掛けるのだが…なんとそのグループと彼らは合流をしたのだ。…つまり、彼らも『移民組』という事だ。

 そして、彼らは公園に到着し遊ぶ…事はしないで何か話し合うのだった。…問題はその場所だ。

 なんと、彼らは『入らないで』と書かれた看板がある『花畑』の中でそんな事をしていたのだ。…おいおい、『学習出来ない』以前の問題だろ。つまり、『公用語』を学習しないでスクールに来てるって事か?…いや、流石にそれだと願書や入学テストは……。…っ!

 その時、頭の中に恐ろしい仮説が浮かんだ。

『…マスターも気付かれましたか』

「…ああ。つまり、今回の事件は最初から連中の思惑通りに事が進んでいた可能性が高いって事だ。

 …となると、早急に『転居先』を突き止めていたかを聞く必要がー」

 ーそう決めた矢先の事だった。映像では、案の定『そこ』で話しをしていた彼らをたまたま来た数人の大人が注意するのだが、やはり彼らは無視をしたのだ。…当然大人達はより厳しく注意する為に近くのだが、『ちょうどその時』別の大人がやって来て彼らと最初のグループの間に入り生徒達を注意した。

 すると、彼らはあっさりとその場所を離れたねだ。…やっぱり『言葉』も学習してないな。それに、『あのタイミング』。間違いなく、四六時中『監視』してやがる。

 …そして恐らく、『通訳機』を着けさせていないのは『会社の人間以外に頼れる』存在を作らせない為だ。なんという周到さだ…。

「…ここまで恐ろしい連中が、『手掛かり』をー『秘宝』を狙っているのですか……」

「…厄介極まりない事にな。

 …だが、『実行部隊』を捕らえている今なら『かなり進展』する事が出来る」

『……っ。何か秘策があるのですか?』

「…ああ。

 …カノン。至急宙軍本部へ連絡して欲しい事があるー」

 俺は、間近に迫った『とあるスケジュール』の事を話しそれを利用した『プラン』を話した。

『ー畏まりました。…それでは、早速開始しますので失礼致します』

「…はあ。

 …ロゼ。すまないが、放課後地上警備隊にて『向こう』の公用語を確認して来てくれ」

「畏まりました」

 …さて、忙しくなるぞ。…あ、そうだー。

 俺は気を引き締め、残った時間で『出来る準備』を始めるのだったー。



 ○



 ーその日の夕方。俺は自室に帰宅した後、私服に着替えてからとある場所に向かった。

『ーいらっしゃいませ~っ!空いてる席にどうぞ~っ!』

 …まあ、商業エリアの端っこにあるこじんまりとした『ダイレクトオーダー』タイプの飲食店なのだが。しかし、システムといいインテリアといい…なんかライシェリアを思い出すな。…っと。

「ー『やあ、お待たせ』」

 懐かしさに浸っていると、『目当ての人物』達が店の隅に居たので『彼らの母国語』で声を掛けた。

「…っ!『…こ、こんにちは……』」

「『…スゲ、国の言葉まで……』」

 当然、彼らは俺が異郷の言葉を口にした事に驚いていた。…まあ、流石に日常会話は無理なのでまず人数分の通訳機を取り出した。

「『…これは通訳機と言って、私と君たちの-言葉の壁-を取り払ってくれる物だ。とりあえず、これを装着してくれないか?…あ、勿論-お金は要らない-から安心してくれ』」

『ーっ!……』

 彼らの『境遇』を予想した上でそう付け加えると、またもや彼らは驚く。…そして、おずおずと通訳機を顔に装着した。…しかし、随分とイメージが違うな。

 ーもしかすると、更に複雑な『事情』があるのかも知れないな。

「…じゃあ、せっかくだからオーダーをしてみよう」

『ーっ!……』

 そんな事を考えながら、今度は普通にそう言ってタブレットを渡す。すると、『はっきりと理解出来た』彼らは仰天した。

「…ス、スゴイ!先生ガ何ヲ言ッテイルカ分カリマス……」

「ッ!ハハッ!オイ何カオ前話シ方変ダゾッ!」

「ソウ言ウオ前モナッ!」

 そして、彼らはせきを切ったように話し始めた。…へぇ、あれを使うと『カタコト』っぽく聞こえるのか。


「…ッ!文字ガ読メルッ!」

「…ホントダッ。…ア、コレ気ニナッテタンダ。…エット、コノ料理ノ絵ヲ押セバ良インデスカ?」

「ああ(『お茶漬け』が珍しいのか。まあ、あれはライスを主食にしている地域でもあまり見掛けないからな。…それかー)」

「ージャア、俺ハ『茶色』ナコレニシヨット…」

 …『茶色』?豚カツとかのフライ系か?…てか、やっぱり大衆食堂のメニュー自体が珍しいのか。…普段、一体何を食べているんだ?

 嬉々として注文する彼らを見て、俺は少し心配になって来た。…これは、もしかすると『最低限』の扱われ方をしているのかも知れないからだ。

「ー…じゃあ、皆決まったから最後に俺が選ぶな」

 勿論、俺は顔に出さずに素早くメニューを決め『オーダー発注』のアイコンを押した。

「ーはいっ!7番テーブルオーダー頂きました~っ!少々お待ち下さい~っ!」

「…さて、料理が来るまでの間に少し『本題』を話しておこう」

「…ッ。…エット、確カ『勉強ノ遅レ』ヲ解消スル『プラン』ガアルトノ事デジタガ……」

「そう。…だが、それを説明する前に君たちに1つ聞いておきたい事がある」

「…?」

「…何デスカ?」

「ー君たちは、これからも此処で勉強したいか?…もしもそれを望まないのであれば、料理を食べた後に寮に帰る事を勧める」

『………』

 こちらの質問に、生徒達は困惑した。…しかし、すぐに真ん中に居る『ファームのミドル生徒』が意を決し口を開いた。

「…最初ハ、両親ヤ『足長オジサン』ニ言レルママ此処ニ来マシタ。…デモ、言葉ガ分カラナイノデ来タバカリノ頃ハ凄ク故郷ニ帰リタクナリマシタ……。

 …ソンナ時、ハミルトン先生ガ最初ノ授業ノ時ニ『モシカシテ言葉ガ分カラナイノカ』的ナニュアンスノ『ボディランゲージ』デ話シ掛ケテ下サッタンデス」


「っ!そうだったのか…(多才だな…。……待てよ?…いや、勿論最初の推理したように『授業を止める』って意味もあるのだろうが、ひょっとしたら『それ』もあるのか?)」

「…トテモ嬉シカッタデス。…ソシテ、ソノ後先生ハ『ゴ両親ト話シガシタイ』ト言ッテクレテ両親モ承諾シタノデ、明後日に面談ノ日ガ決マッタノデスガ……」

 …ハミルトン先生は、襲われた。これは、ほぼ『確定』だ。

「…ボク、怖クナッテシマッタンデス……。『モシカシテ、ボクノセイデ』…ト。

 ダカラ、『保護者代理』ノ人達ニ言ワレタノモアッテ今マデ寮ニ籠ッテイタンデス……。

 ー…コンナボクデモ、此処ニ居テ良インデショウカ?」

 彼はひどく怯えながら…そして後悔の念を浮かべながら俺に聞いて来た。


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