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協力者-管理者の恩返し-

『ーおはようございます……?』

『おはよう~……え?』

 …うわ、ホントに待ってたよ。

 翌日。スクールのあるステーションに到着すると、ランドマークである時計台の前にパリッとしたスーツに身を包んだグリーンの髪ガイノイドが立っいた。…当然、通行人はミスマッチ感に首を傾げ彼女を見ながらスクールに向かって行った。

「ー…あ、兄…ブライト先生、おはようございます。…どうしたんですか?」

「おはようございます、ブライト先生。…?」

 …勿論、予想外という訳でもないのだが少し困惑してしまっていると、『校外実習』の為早く登校して来たリコリス達のグループと出くわした。

「(…はあ、仕方ない。)…おはよう、皆さん」

『おはようございます。…?』

 とりあえず彼女達と挨拶を交わし、そのまま『彼女』に近付いた。

「ーおはようございます、ブライト教諭。

 お待ちしておりました」

「…おはよう」

 すると、彼女は恭しくお辞儀をして来た。…まあ、当然ー。

「ー…え?この人、先生の知り合いなんですか?」

「いえ、私はブライト教諭の『お手伝い』をさせて頂いている、『ロゼ』と申します。

 どうぞ、お見知りおき下さいませ」

『……へ?』

 その説明に、彼女達はぽかんとした。…まあ、やっぱりこうなるよな。

 俺はやれやれとしながら、昨日の事を思い出したー。



 ー昨日。会議を終え、拠点に戻ろうとすると戦闘班のスターリン大尉から連絡が来た。

『ー助けたロボットが、どうしても俺…『プラトーの後継者』である俺に直接お礼を言いたい』…と。

 …どうやら、予想通りただの『AI』でない『管理者』はこちらの正体に気付いたらしいので俺は直ぐに『ビックレッグ』の元に向かった。

『ーマサカ、後継者殿二オ会イ出来ルトハ思イモヨリマセンデシタ…。

 コノ度ハ、危ナイ所ヲ助ケテ頂キ誠二アリガトウゴザイマス』

 そして、シートエリアに入ると守護者は俺に会えた事に歓喜し深々と頭を下げて感謝を述べた。

『…どういたしまして。…あ、聞いているかと思いますがー』

『ー心得テオリマス。貴方ノ正体ハ、例エ-同志-デアッテモ決シテ明サナイ事ヲオ約束シマス。

 …ソシテ、言葉ダケデハ不安デショウカラー』

 こちらが念押ししなくとも、守護者は口外しない事を約束してくれた。…ここまでは良いのだが、守護者は更にとあるモノを表示した。

『ードウカ、此処二滞在シテイル間ハ貴方達ノ-オ手伝イ-ヲサセテ下サイ』

 …そう。『契約書』を差出しながら守護者はそんな事を言って来たのだ。…勿論、『そこまでしなくても信用している』と言ったのだが『私に出来るお礼はこれくらいしか思いつかない』…と返されてしまったし、なにより、『任務』の『現地協力者』はいなかったので守護者の申し出を受け入れる事にしたのだー。



 ー…とまあ、そういう理由で『第0プラントの守護者』がこうして俺の前に立っているのだ。…しかし、『準備は心配ない』って言っていたけどこうも簡単に『体』と『名前』を用意するとはな~。…やっぱり、『ただモノ』じゃない。

「ー…い、いつの間に、こんな『素敵なヒト』を助手に……」

 改めて、『彼女』の素性が気になっているとリコリスはふとそんな事を言った。

「…とりあえず、道中で説明しよう」

『ーっ!は、はいっ!』

 俺は彼女達にそう言って、スクールに向かって歩き出した。当然、彼女達はハッとして慌てて着いてきた。

「ー…へっ!?……この方に『守護者』の人格プログラムが……」

『………』

 …まあ、流石に『全部』は話せないのである程度ぼかして説明した。当然、彼女達は更に唖然とする。…やっぱり、これが普通の反応だ。

 ーけれど、どういう訳かカノンだけはあまり驚いてはいなかったんだよな。…『シンパシー』を感じているのだろうか?

「…てか、『管理者』ってAIだったんだ……」

「…驚きですね……。…もしかして、他の『セブンミステリー』にもこの方の『同志』の方が関わっているのですか?」

「だろうね。…まあ、『そこまで』手伝って貰うのは流石に申し訳ないから『仕事』だけの助手だよ」

「なるほど…」

「…それにしても、『守護者』に認められるなんて凄いです。…もしかしたらー」

「……ん?」

 ふと、フェンリーさんは『何か重要そうな』事を呟きそうだったのであえて聞き返した。

「ーどうかなさいましたか?先生」

 彼女の方を向くと、当人はキョトンとしていた。…なんとも素早い『対応』である。

「(スゲーな…。)いや、何でもないよ」

 それに感心しつつ、俺も素知らぬ様子で『応答』したのだったー。



 ○



「ー…てな訳で、ロゼ『先生』は私の助手をしてくれる事になったのです」

『……』

 そして、1コマ目のミドルスクールの授業の冒頭にてロゼを紹介した。…まあ、当然生徒達はぽかんとしていた。

「…何か質問のある子は、後で聞きます。

 さて、今日は昨日の続きを…『害獣の侵入経路』を学んで行きましょう」

「ーっ!」

 すると、やぱり彼らは見事に切り替えノートタブレットのペンを取った。

「…さて、昨日は主に『地下からの侵入』や『天井からの侵入』を説明したが、今回はそれとは別の侵入経路を教えておこう」

『ーチュッ』

『……っ』

 すると、教卓の上に何処からともなく一体の『ネズミ』が現れた。当然、生徒達は驚く。

「…さて、昨日も見せたこの『ネズミ』だが今日は事前に『仕込んでおいて』貰ったんだ。

 …では、このコは一体どうやって入って来たのかな?」

「…は、はいっ!」

 ロゼがそう言うと、1人の男子生徒が手を挙げた。…確か彼は、寮で『例の生徒達』の隣の部屋の子だった筈だ。

「ーどうぞ、お答え下さい」

 情報を思い出していると、またもやロゼは『それっぽく』言った。…『彼女達』の『友人』とやらはとてもユニークな人達のようだ。

「……。…え、えと、外にある道具を入れる『箱』に紛れて入って来た…とかですか?」

「…残念、ハズレです」

 …あ、今回はタメがなかったな。まあ、タイムスケジュールをインストールしてあるから当然だろうが。

「…ですが、検討違いという訳でもありません。

 実際、『小規模』の所では道具は別の所で保管しているので『過去』にはそういう事例もあったようです」

「…っ!そうだったんですか…」

「(…しかも、フォローも完璧だ。)…他に、『こうじゃないか?』と思う人はいないか?」


『……』

「……ー」

 再度聞くが、皆悩んでいて手を挙げずにいた。…しかし、とある男子生徒は何か言いたげな表情をしていた。

「(ー…いや、まさか『あの人』の子供が此処に通っていたとは…。)…『クレイグ』学生。君なら、『知っている』のではないかな?」

 そう。彼は、『ファロークス運送』のクレイグ専務の『お孫さん』なのだ。…ホント、世間は狭いな。

「…っ!…えと、祖父から聞いた事があるんですけど、『一緒に入って来た』んですか?」

「その通り。…やはり、運送業の方々も当時は大変苦労していたようだな。…あ、座って良いよ」

 立ち上がった彼を座らせ、ロゼに合図を送る。すると、背後のモニターに『授業前の様子』が映し出された。

「ークレイグ学生の言うように、このコは物陰に隠れていたのさ。そして、君達の誰かと一緒にこの教室に入りオーダーを出すまで教室の後ろのゴミ箱の後ろで、気配を消して潜んでいたのさ」

『……』

「ホントビックリだよな。床と天井に対策を施し『もう大丈夫』って思ったら、まさかそんな『大胆』な侵入をしてくるんだから。

 …では、次にこれの対策を教えよう。まず、プラントの周辺の見通しを良くする事。

 これは、プラントの周辺に物を置かなければ良い。つまり、毎日整理整頓をきちんとしていれば良いんだ。

 例えば、道具や箱を出しっぱなしにしないとかゴミをそのままにしないとかだな」

『…っ!』 

『良い例』と『悪い例』のフォトデータを見せながら説明すると、生徒達は熱心にタブレットに記載していく。…ちなみにこの『教材』、ロゼが準備したモノだ。

「(…助かるわ~。)…次に、夜間はなるべくプラントに入らないようにする事。

 最近は、出入り口用の夜間照明なんてモノがあるが『現場』の意見を言わせて貰えば『あんまり必要じゃない』。

 というのも、周囲が薄い時って足元が見えないから『一緒に入られるリスク』が高くなるからだ。…まあ、これは夜間作業が必要な作物があるから必ずしも遵守する必要はないよ。

 そして最後は……まあ、1つ目と似たようなモノでプラントの中を毎日綺麗にしておく事だ。

 そうすれば、自然と整理整頓を行い『本物』に付け入る隙を与えなくなる」

『ー……』

 …しかし、基本的な事しかやってないのになんでボイコットなんてしてるんだろうな?

 真剣に授業に望む生徒達を見て、ふと『例の生徒』の事を考えるのだったー。


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