「ーな、なんという事だ…。…まさか、我が校の生徒の保護者が、連中に依頼を出していたとは……」
その後、ブリーフィングルームにて緊急会議が開かれた。…当然、スクールの理事長は終始頭を抱えていた。
「…エージェント・プラトー。1つ聞きたい事があるのですが、宜しいですかな?」
「『連中の目的』ですね?」
そして、ある程度方針が決まった所でふと星系防衛軍のお偉方の1人が質問して来たので、先読みしてみる。
「…本当に頼もしいですな。…いや、貴官が来てくれて良かった。我々だけでは、仮説すら立てられなかっただろう」
「恐縮です、准将閣下」
「……でだ、『連中』は何を『益』とするつもりだったのだ?
貴官の推理では、依頼人に『余計な事』に割く経済的な余裕はないのだろう?」
ー…まあ、当然そうだろう。尚、此処に通うお金は『彼ら』が流れついた『共和国』政府の政策によって立て替えられている。
「…何も、『金銭』だけが益とは限りません。
例えば、今ハンター達が探している『手掛かり』も莫大な利益を生みます」
「…?…確かにそうだが、事件が発生したのは先月で此処に『手掛かり』があると判明したのはついこの間ではなかったか?
流石に、その時点から狙っていたとは…」
他のお偉方や別組織のトップ陣営も首を傾げるので、俺は更に続ける。
「…私が言っているのは、『連盟中』にある『手掛かり』の事ですよ。
…つまり、何を言いたいのかと言うと『連中』は連盟の『安全神話』を崩すプランから、『教育体制』を蝕み間違った知識を広め将来的に連盟のあらゆる分野を瓦解させ『とって変わろう』としているプランに切り替えたという事です。
…そして最終的に連盟を掌握し、自由に『手掛かり』を探し始める気なのでしょう」
「…っ!…バカな、一体どれだけの時間と労力を掛けるつもりだ……」
「連中の『秘宝』に対する執念は、それほどまでに強いのです。…でなければ、『この間』のような事は起きないでしょう」
『………』
「……エージェント・プラトー。私から…『スクールサイド』から1つ聞きたい事があります」
「どうぞ」
再び、お偉方が唖然とするなかスクールの理事長が挙手をした。…今度は、あえて予想せずに続きを促した。
「…ありがとうございます。
ー…聞きたい事は、『安全』です。エージェント・プラトーや防衛軍の皆様は、どのようにして『そんな連中』から我がスクールの生徒と職員を守ってくれるのですか?」
「…既に耳にしているかと思いますが、現在2つの『プラン』を実行しています。
1つは、私が保有する『サポーター』に職員と生徒が頻繁に利用する経路の巡回をさせ警備態勢の穴を埋めるプラン。…これは、有効に機能し昨日だけで数件の襲撃を未然に防いでいます。
そして2つ目。
ターゲットとなる教科担任に、私も愛用している『ネックシールド』を装備させるプラン。…これは、つい先程その性能を発揮しました。
ーただ、現状では代理の方々に行き届いていないのと『首以外』を狙われる可能性を考慮し、本日より第3のプランを実行に移します」
「…っ!」
「…それは、言うなれば『リサイクル』ですよ。
いやー、まさか『自爆機能』を付けていないとは『連中』は余程『こちらを甘く見ている』らしい」
「…っ!まさか、連中が犯行に使っていた『ドローン』…『レプリカ』を使用するのか?」
「その通りですー」
そのタイミングで、キャンベル少佐はモニターについ先程ろ獲した『ヘビ』と『トリ』のレプリカを映し出した。
「…てっきり、破壊したものと思っていました……」
「…というか、『大丈夫』なのですか?」
「『コントロール』は、既に『書き換え』済みです。ですから、暴走する事はありませんのでご安心下さい」
「…手慣れていますね」
「…実を言うと、これが初めてじゃないのですよ。『先日の一件』で『ネズミのレプリカ』を同様の方法で入手したので」
「…なるほど」
「…それで、具体的にはどのような内容なのですか?」
「…それはですねー」
俺がプランを説明し始めると、またもやブリーフィングルームは静寂に包まれるのだったー。
○
ーSide『シルバーネームレス』
ー明くる朝。その『知らせ』は、イデーヴェスに来ている全ての『秘宝』ハンター達に瞬く間に広まった。
『ーチーム-プレシャス-が、一歩リード』。…それは、他の有象無象のハンター達にとって『ワープ中にエンスト』なビックリ情報だった。
だが、同時に『セブンミステリー』が当たりだと裏付ける情報でもある為彼らはさほど慌ててはいなかった。
ー…さて、今日の授業が終わり次第早速行ってみるとするか。
彼もまた、昨日の内に下見をしていた場所を調査をしようと決め拠点を出て『整備スクール』に向かう。…しかし、彼を含めた他のハンター達は肝心な事を知らなかった。
「ー…っ!おはよう…」
「…おはよう」
そんな事とはつゆ知らず、彼は技術系スクールで代理をしている『ライバル』に出会った。…とりあえず、彼はその女性ハンターの元に行く。
「…ビックリな話しね。まさか、初日の疲労をものともせず『調査』に行っていたなんて」
「…ブライトはなんとなく分かるが、後の2人がタフだとは思わなかったな……」
「…確か、ロックスミスは『大将』。シュバルツは『マダム』の関係者だったわね?」
「…らしいな。…はあ、俺も大物とのコネが欲しかったぜ。そしたら今頃ー」
『ー間モナク、-第1整備スクール-前デス』
彼が思わずぼやくと、まるでそれを遮るように目的地のアナウンスが流れた。
「…流石にそれは『無い物ねだり』じゃない?そりゃ、私だってマダムと知り合っていたらと思う事はあるわよ。
…でも、ああ見えてマダムって凄くスパルタってマガジンのインタビューに書いてあったから、『ついていける』とは思えなかった」
「……確かに、そうかもな。
大将や老師も、宇宙の過酷さを身を持って何度も体験しているからクルーを徹底的に鍛えるって何かのインタビューで言っていた気がする。
…でも、そう考えるとブライトって『BIG3』とコネがないのになんであんなにスゲーんだ?」
「…ポターランカップのインタビューで『それっぽい』事は言っていたけど、それじゃ説明がつかないのよね……。…っ。なら、『彼』に聞いてみようかしら?」
「…イアンか。でもあいつ、今姉貴と一緒にマダムの従者的なポジションにいるから俺はちょっと近付きにくいな…。…なんか聞けたら、教えてくれるか?」
「分かったー」
そして、2人の話しが纏まったタイミングに合わせるようにリニアは減速を開始し彼は降りる準備をしたー。
『ーなにあれ、凄ーいっ』
『…一体どうゆう調教をしたら……』
(……なんだ?)
数十分後。ステーションを降りた彼は、代理を勤めるスクールに向かう途中の公園で人だかりが出来ているのを見つけた。…なにやら、ストリートパフォーマンスが繰り広げられているようだ。
(…っ!なんでマダムのクルー達が、此処でパフォーマンスなんて……。…一体何が目的だ?)
気になったので覗いてみると、見覚えのある女性達が動物を使ったパフォーマンスをしていた。…どう考えても、ただパフォーマンスをしている筈はないと考えるが……。
(ー…さっぱり分からん。……にしてもあの『鳥』、あんまり見掛けない種類だよな。
マダムの知り合いが飼育してる希少種か?)
当然分かる筈もなく、彼は考えるのを止め彼女達が操る精密な動作をする美しい銀の身体の『鳥』をぼやっと見るのだったー。