目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
尋問

『ー……っ!此処は……』

「おはよう。…と言うには遅い時間かな?」

 その日の夜。俺は首都の地上部隊基地にて、遊撃隊が捕獲した『不審者』…まあ、十中八九『サーシェスカンパニー』の私兵の1人を尋問に掛けていた。尚、当然ではあるが向こうからは俺が見えないし声も加工されている筈だ。

『……クソが。また-テメェ-か……』

 しかし、向こうはこちらの正体に勘付いているようだった。…やれやれ、随分と『人気者』になってしまったな……。

「ーならば、今自分の置かれている状況が分かっている筈だ。…そして、『答えなければ』どういう末路を辿るかも」

 非常に迷惑がっていると、隣に居るカーバイド大尉が低い声で向こうに話し掛けた。…うわ、流石『元』本職はオーラが違うな。

『……っ。

 ーハッ、甘っチョロいテメェらに-そんな事-をす……っ!?』

 嘲笑う男は、『聞こえて来た』重々しい音に表情を変えた。…『目隠し』と軽めの『拘束』しているから余計に怖いだろう。

「…確かに、犯罪者や海賊であっても拷問をしないというのが『連盟』のルールだ。

 ーだが、それはあくまでも『過去を払拭』する為に『華やかな表舞台で活躍する部隊』が守るべきルールなんだよ。

 俺達のような、『裏』の連中がお行儀良くそれを遵守するとでも思っているのか?」

『…っ、お、おい。じょ、冗談だろ……。…だって-お前達-は、連盟の新設精鋭部隊なんだろっ!?』

 カーバイド少尉の言葉に合わせて、男の居る部屋に入ったライサンダー少尉とウォン少尉はガチャガチャと『準備』を立てる……『フリ』をする。まあ、『表』だろうが『裏』だろうが『それ』は連盟のルールで固く禁じらているからな。…ただ、男のあの様子から考えて『詳しく』は知らないのだろう。


「ー正確には、『特務捜査官』付きの『独立遊撃部隊』さ。…つまり、『-星-にする以外どんな捜査方法』も許可された人物の指示で動いているのさ。…ここまで言えば、『理解出来る』よな?」

『……や、や、やめろっ!そんな事をしたらウチの会社と国が黙ってないぞっ!』

「はあ?…まさかとは思うが、『連盟』と『そちらの国』で起こるかも知れない『戦争』を危惧しているのか?

 ー『武器商人』の私兵にしちゃあ、随分な『平和主義者』だな?」

 …というか、いくら『レプリカ』や『生体兵器』とか脅威的なモノがあるとはいえ軍事力に圧倒的な差があるだろうから、確実に向こうが先に『ジリ貧』になるだろう。

『…っ……。…っ!?』

 そうこうしている内に、2人の少尉は男が拘束されている椅子を持ち上げた。…2人がれっきとした軍人だというのが良く分かるな。それに、『演技』だと分かっていても淡々と無表情で『準備』をするのは見ていて少し怖かった…。

『わ、分かった分かったっ!全部話すから、勘弁してくれっ!』

 男は見事に引っ掛かり、青ざめた顔で喚いた。

「…おや?『そんな事』をして大丈夫なのか?『今までのパターン』を考えると、お前は間違いなく『無職』になるぞ?」

 …そうなんだよな~。過去取っ捕まえた幹部やら関係者からは『証言』は取れても『証拠』は取れなかったんだ。…何故なら、『情報漏洩』を阻止する為か『捕まったのが分かった瞬間』に、アクセス権限やデバイス内部のデータがリモートで『消える』のだから。

 しかも、『そんな人間は我が社にはいない』を通す為に迅速かつビックリするほど巧妙に『改ざん(-あくまで可能性-)』もするから、今までの事は全部『会社を辞めた人間が勝手に起こした事件』扱いにせざるを得なかったのだ。…まあ、今回は一応女史奪還の際に使った『虚偽報告』をしたけど通用しているかは微妙だな。


『そ、そんな事より、じ、自分の命が大事に決まってんだろっ!』

「…というか、そもそもそれが『正しい情報』というのは判断出来ないからな……」

『じ、じゃあ、まずは、アクセスコードを言うっ!』

「…それこそ、『捕まった』と判断されるのではないかな?つまり、『証明』は出来なくなるという事だ」

『…っ!い、嫌だ、や、やめてくれっ!……くそ、-あんな連中-に関わるんじゃなかったっ!』

「…っ!…流石にイジメ過ぎですよ、『シルバー(カーバイドのコードネーム)』」

 その時、男は絶望の中でポロっと『聞きたい事』を言った。

「…『ボルドー(ライサンダー)』、『スカイブルー(ウォン)』。そいつを下ろせ」

「「イエス、マイロード」」

『っ!……』

「…とまあ、『こちらの本気度』は充分分かったと思うのでそろそろ本題に入るとしよう。

 ーちなみに、きちんと答えてくれたら『後を保証』すると約束しよう」

 男が少し落ち着いた所で、今度は『飴』を差し出した。すると、男はぽかんとした。

『………ホント、ビックリするほど甘……-お人好し-だな…』

「どういたしまして。…で、どうする?…ああ、勿論部下達の事も心配は要らないぞ?」

『…本当に、どうかしてるぜ……。…分かった。…だが、さっき隣に居る奴が言っていたが、言葉だけで-信じてくれる-のか?』

「『本人達』…あんた達に-こんな事-を頼んだ奴らに確認を取れば良いからな」

『…っ!…まさか、-依頼人-に目星がついているのか?』

「…非常に残念な事にな。

 ーじゃあ、そろそろ『答え合わせ』といこうか」

『……』

 声のトーンを変えそう言うと、男はごくりと唾を飲み頷いた。


「アンタ達『サーシェスカンパニー』に『最低』な依頼をしたのは、『此処の生徒』……の-保護者-だな?」

『ー……正解だ。…なんで、分かったんだ?』

「簡単な事だ。

 ー最初に被害に遭われた職員の方々は皆、『人格者』ばかりだという事。…つまり、私怨を買うような人物は1人もいないという事だ。

 …そして、彼らの代理になった『今日着任』したばかりのハンター達も狙われたとなれば、『その目的』は1つに絞られる。

 …そう、『授業を止める事』こそが首謀者の真の目的だ」

『……』

「…では、そんな事をして『得をする人間』は誰か。それは、『外』からの移民の子供……特に、『追放』された人間の子供だ。

 …こう言ってはアレだが、『教育体制が整備』されていない地域からの移民の子供が此処の勉強に付いて行けるとは到底思えないんだよ。

 …というか、そもそも『勉強する気持ち』がないから予復習も質問もしない。けれど、無駄にプライドだけは高いから指名されて答えらなくて恥をかき実習で情けない姿を晒してまた恥をかけば、スクールに来る事事態嫌になるだろう。

 …それだけならまだ良かったが、その生徒の親もその子以上にプライドが高いが故に『落第生の親』というレッテルが追加されるのを黙って受け入れる筈もないんだよな。

 だから、『授業を止める』なんて蛮行に出たのさー…というのが俺の推理だが、どうかな?」

『…ミリ単位のズレもなく、合ってるぜ……。…これが、連盟の平和の番人か』

『………』

 ひとしきり推理を披露すると、男は当然だが現場に居る情報班やリモートで様子を見ていた軍事と政治と教育の上層部陣営は皆一様に唖然としていたのだったー。


コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?