ーSide『ガーディアン』
『ーっ!』
その瞬間、遊撃隊のデバイスは一斉に『アラート』を発した。なので、彼らは速やかに『行動』を開始する。
『…っ!?』
「ー申し訳ありませんが、『緊急指令』が発令された為お先に失礼します」
『失礼します』
共に訓練をしていた警備隊の面々は突然の事に唖然とするなか、戦闘班班長のスターリンは断りを入れ他のメンバーを率いて訓練ルームを退室した。
「ースターリン大尉。発信位置は、サードニスリ郊外D-15区画にある試験プラントです」
そのまま地下駐車場に向かっていると、道中で情報班と合流した。すると、班長のキャンベルが彼に報告する。
「…随分と変わった場所ですね。…もしや、『アレ』関係ですか?」
「先日の『報告会』で調査すると言っていたので、間違いないでしょう。
…本当に、凄いスピードですね」
「全くですー」
そして、彼らは列を乱さず地下駐車場に入り借りているスペースに停めてある『ミドルレッグ』に乗り込みシートに着席する……のだが、どういう訳か『ウマ』は動かなかった。
しかし、彼らは慌てる事なく『その時』を待った。
ーすると、数分後。『ウマ』の中に大きな『コウモリ』…『ワープバット』とそれらと同じサイズの『ドラゴン』…『アドベンチャーチルドレン』が姿を現した。
『ー戦闘班並び調査班、確認。現在現場急行中の-第3ビックレッグ-への-転送-を開始します』
直後、エアウィンドウが全員の目の前で展開し、カノープスにいる支援班がそう告げた。…そして、次の瞬間ー。
『ー転送完了。後3分で現場に到着します』
窓の外の景色は、人工的モノから自然溢れるモノへと劇的に変貌していた。…つまり、彼らは首都から第3都市へとワープしたのだ。
「ー…本当、あっという間ですね……」
「ええ。…ですが、問題は『敵』も同様のシステムを持っているという事です」
「…いずれは、例の企業と癒着している『軍需プラント』の稼働を止める任務があるのでしょうか?」
「…どうでしょうかね。それを決めるのは、隊長殿や彼…ひいては、『連盟議会』です」
「…そうですね。ならば、せめて備えだけはしておきましょう」
「ええ、情報収集はお願いします」
「お任せを」
『ー警告!プラント周辺に-無登録-ドローン多数確認しましたっ!充分に注意して下さい』
スターリンとキャンベルがそんなやり取りをしていると、支援班から報告が来た。
「…此処の職員を襲っているという例のドローンですね。…なるほど、『代理』でさえも容赦なしですか」
「…やはり、最初にこちらの方々から聞いたように私怨によるものではないようですね。
…となると、『首謀者』は『何』を目的としているのでしょうか……」
「…実際に『現場』に身を置き始めた彼は、何か言っていましたか?」
「……」
その質問に、彼女は他の隊員がいるからか躊躇いを見せた。
『ー間もなく現場に到着します。どうかお気をつけて』
「…どうやら、『中々に複雑』な事情があるようですね?」
「…はい。彼からは『裏が取れるまでは他の隊員には明かさないで下さい』と言われていますから」
「…分かりました。ならば、これ以上は控えておきましょうー」
「ースターリン班長っ!戦闘班、準備完了ですっ!」
「キャンベル班長。情報班準備完了しました」
彼がそう言った後、タイミングを見張らっていたヴォルスとカーバイドは報告する。
「良し。戦闘班各員は、プラント内部に籠城している3名の職員代理の支援並びに保護を迅速に行え」
『サー、イエッサーッ!』
「情報班各員は、『トルーパー』と『チルドレン』と連携しドローンの無力化と周辺封鎖に尽力して下さい」
『イエス、マムッ!』
『ー報告っ!ドローン数機が接近していますっ!-インフィニットチルドレン-スクランブルッ!』
それぞれがやる事を確認していると、『敵』が『ウマ』の足止めに入ったようだ。
「支援班、カウント30の後レッグを停車してくれないか?」
『っ!了解っ!カウント、スタートッ!』
マクダエルが頷くと、ウィンドウではカウントダウンが始まったー。
○
ーっ!…これは……。
襲撃され始めてから数十分は経った頃。ふと、周囲に展開している『ネズミ』と『ヘビ』から『危険信号』が飛んで来た。
『ードウカサレマシタカ?…アア、ゴ心配ニハ及ビマセン。コノプラントハ、-バッジ-ノ守護ヲ任命サレテカラズット、強化ヲー』
ロボット…を操作している『守護者』、俺が不安を感じているのかと思ったのか自慢気に語った。…しかし、直後。
「……はあ」
足元から振動が伝わって来たので、俺は大きなタメ息を吐いた。
『ー……バ、馬鹿ナ。コノプラントノ壁素材は、現存スル重機デハサエモ突破スル事ナド…』
「…確かにそうなんでしょうが、『相手』も同様のモノを使っていますからね。いや、むしろ『更に進化』させたモノを投入しているでしょう」
『……マ、マサカ、-ソノヨウナ人間-ニ-アレ-ガ渡ッテイルノデスカ?…トイウカ、何故貴方ハソノヨウナ事ヲ……』
「…その質問にお答えするには、まずー」
当然の質問を『守護者』はして来るが、不意に鋼鉄のドアが激しく振動した。…どうやら、もうおいでなすったようだ。
「『離れて』いて下さい。…流石に、『守る』余裕はないんでねー」
『ーナ、ナニヲ……』
俺は3体のロボットに『ワープボム』を投げて、近くに来ているであろう『ビックレッグ』へと転送させた。そして、すかさず『仕込み』を始める。
ー直後、ドアは枠から外れ部屋の中にぶっ飛んで来た。…やれやれ、脳筋しかいないのだろうか?
『ーっ!誰も居ませんっ!』
『はあ、んな馬鹿な…。……マジかよ』
相変わらずの品性の欠片のなさに呆れていると、パワードアーマーに身を包んだ5人位の小隊がモニタールームに侵入して来た。…しかし、連中は目の前に居る俺の事を見つける事は出来なかった。多分、『ヘビのレプリカ』は『トリのレプリカ』と同数しか準備していなのだろう。
『ーっ!他の班は、-例のクソハンターチーム-のメンバーを見付けた模様っ!……って、おいどうしたっ!?』
冷静に分析していると、通信担当の奴が急に慌て始める。…にしても、ヒドいネーミングセンスだな。よほど、『プレシャス』の事が気に入らないんだろうな。
『ーどうしたっ!?』
『そ、それが、-首に針が命中した筈なのターゲットはぴんぴんしてる-って……』
『………はあ?………っ!やっぱり、-あのクソの大将-のキャプテン・プラトーが来てるんじゃねぇかっ!-現地の職員-はなにしてやがったっ!?』
『ぎゃっ!』
報告を聞いた小隊長の男は、凄く重要なワードを言い通信担当の男に八つ当たりした。…うわー、超パワハラ&ブラック体制やん……。マジでロクでもない企業だな。
『……待てよ。つう事は此処に居たのはー』
ふと、男は意外にも『予想』を立てたが次の瞬間には隊員ごと外に飛ばされた。
「…ふう(…もうちょい情報を聞きたかったが、『連絡』される訳には行かないからな。)。
ーあ、プラトーです。…ええ、今しがた『届けた』のがそうです。…あ、それとー」
俺は『透明化』を解除し、他の2人が装備している『ネックガード』から発せられる微弱な信号を頼りにして、その近場に向かうように遊撃隊に指示を出したー。
…その後、俺は何食わぬ顔で遊撃隊と一緒にプラントを出て先に救助された2人と合流するのだった。…はあ、初日から『ハード』だな。
俺は先が思いやられ、またまたタメ息を吐き出したー。