「…これは……」
「…どういう仕組みなの?」
「…実は、祖父や俺も良く分かっていないんですよ。
ー何せ、これは『手掛かり』の副産物から産みだされたモノですから」
「「…えっ!?」」
不思議そうに『コンパス』を見ていた2人は、唖然とした。…いや、マジでびっくりだよな。本当、『副産物』って何でもありだよな…。だって、『当時の技術』で『こんなの』が作れるんだから。
「…なるほど。つまり此処は、『アタリ』という事になりますね」
「…だけど、それが『条件』に当てはまるのかはー」
懐疑的にしていた彼女は、直後に言葉を止めた。…何故なら、安全の為ロックされているであろうドアがゆっくりと開いていったからだ。
「ー……本当、どういう仕組みなの?」
「…凄いな」
「ええ…。…お借りして来たガードキーが無駄になってしまいましたがね」
「……とりあえず、入るとしよう」
「了解です」
「うん」
改めて、ロックスミスさんが先陣を切って歩き出したので俺とシュバルツさんはその後に続いて『第0プラント』に足を踏み入れた。
「ー…うん、見た感じはホント『プロトタイプ』の農場プラントだねー」
そのまま進むと、広いメインエリアに出た。…当然だか中は薄暗く土も水も農作物を育てている筈もなく、棚プランターを始めとする生産用のマシンには分厚い保護シートが掛けられておりただがらんとしてるだけだった。
「…はあ、これが『始まりのプラント』か~」
実は、リコから話しを聞いた時から内心ワクワクしていたが実際に見てテンションが上がった。
「やっぱり、農家としてはこういう所に惹かれるんですね」
「…目的が変わってるよー。まあ、正直言うと私も似たような感情を抱いているけど」
シュバルツさんはやや呆れつつ、ふとそう言った。…もしかしてー。
「ーうん、ウチの実家も農家なんだ。…だから、なんかだか実家のプラントを思いだしてなんか懐かしくなった」
「おや、そうだったのですか。…ちなみに、私の実家はフルーツショップでした」
「…へぇ。なんか、意図した訳でもないのに『面白い組み合わせ』になりましたね…」
「…だねー」
「……っ。2人共、少し静かにして貰えますか?」
「「……っ」」
ふと、ロックスミスさんが何かに気付きそう言った。なので俺と彼女は気持ちを切り替え、周辺を警戒する。…すると、直後『何か』の気配を感じた。
「……『居る』ね」
「…それも複数。…そして恐らくー」
「ー『侵入したモノ』ではないですね」
俺達3人は、神経を研ぎ澄ませ『それ』の数や正体を探る。…って、まさか……。
「…囲まてる?」
「…ええ。これは間違いなく、『管理者の従者』…すなわちー」
ーすると、『それ』は姿を現した。…やっぱりか。
『それ』…プロトタイプの『小型管理ロボット』達を見て俺は少し緊張を緩める。
『ー第0プラントヘヨウコソ』
そして、胸部からライトの光を放つ恐らく管理ロボットのリーダー機は、プロトタイプ特有のゆっくりとした動作と抑揚のない電子音声で俺達を歓迎した。…しかし、『従者』がいるなんて話聞いてないんだけどな。
『デハ早速デスガ-テスト-ヲ開始シマス』
「「「ーっ!」」」
少し予想外の事にワクワクし始めていると、管理ロボットは唐突にそんな事を言う。…まあ、そう簡単に事が運んだら『面白くない』よな。
ある程度『予感』していたので、俺達は素早く『非殺傷系』の武器…俺は予め組み合わておいた『ロングバトン』を。ロックスミスさんはエッジの部分が柔らかい素材でできた『スタンハルバード』を。シュバルツさんは細長い警棒のような形をした『スタンキャリバー』を武器バックから取り出した。
『ーソレデハ、-会場-ヘ移動シマス』
すると、ロボットはまた唐突にそう言った。…直後、俺達は『ワープ』させられた。……おいおい、マジか。
直ぐに周囲を見渡そうとすると、2人が居ない事に気付いた。どうやら、分断されたようだ。…プロトタイプの農場とは思えない『システム』だな。
気を引き締め直し、『モニタールーム』の中で『その時』を待った。…すると、突然照明が灯りフロア全体が明るくなった。そして、同時に何処からか『足音』が聞こえた。
ー……これはまた、随分『大物』だな。
数分後、俺の前には大型のロボットが3体立ち並んでいた。すると、左の1体が手に持っている細長い折り畳み式の机…『実家』で良く使っていた『立ちトレニア』数台をゆっくりと床に置いた。
その後、右の1体が持っていたこれまた実家で良く使っていた『段ボール』3箱を床に置きその中から何かの苗が植えられた小型のプランターを出し机の上に並べていった。…どうやら、『実力テスト』とかではないらしいな。てか、このロボット『運搬ロボット』なんだ。…そういや昔は、コンベアで流れて来た作物をトラックまで運ぶのにもこういうロボットが必要だって聞いた事があったな。
『ーコノ中ニ、-コノ状態デ食用デキルモノ-ガアリマス。オ答エ下サイ』
そんな事を思い出していると、真ん中のロボットがそう言いトレーを前に出した。…ふむ。
俺は武器をしまってから左側のトレニアに近付き、ゆっくりと見て言った。そして、真ん中の机に移った時早速『当たり』を見つけたので、それを少しだけ奥にずらす。
それから再びプランターを見て行き、右の机の真ん中に2つ目の『当たり』があった。
「ー答えは、この2つ。
『豆苗』と『かいわれ大根』だ」
そして、俺はその2つの苗…『プレシャスで度々キャプテン・プラトーが口にしていた-古代文明のとある小さな国-』で食されていたとされるモノ2つを『正しい名前』で呼びトレーに置いた。
『ーファイナルアンサー?』
すると、ロボットはまるでクイズ番組のようにユーモアある確認をしてきた。…なんか、最初の印象とは随分違うな。
だが、せっかくなので俺も乗る事にし『緊張感』を出して口を動かす。
「……ファイナルアンサー」
『……………………ー』
「…っ」
すると、ロボットは『溜め』始めた。なので、俺はごくりと唾を飲んだ。
「ー…………………正解デスッ!」
「……ふう」
そして数分後。ロボットは正解を宣言した。…もしもこれがテレビだったら、間違いなくコマーシャルが挟まれてただろうな~。
『流石ハ農場出身者ニシテ-プレシャス-ノファンデスネ』
「…っ!(…やっぱり、『このテスト』はそれを見極める為か。…にしても、セキュリティの観点から外部に『通信』は出来ないって聞いてたんだが……。…どうやってこの『守護者』はそれを知ったんだ?)」
『…フフフ、-私達-ニハ-外-ニ-友人-ガ居ルノデスヨ。ソノ方ニイロイロナ事ヲ教エテ貰イマシタ』
…『友人』ねぇ。どう考えても、『ただ者』じゃないよな。それに『私達』か。…これは、本腰を入れる必要があるな。
『デハ、コレニテ-テスト-ハ終了デス。
ドウゾ、コノ-バッジ-ヲオ受ケ取リ下サイ』
改めてやる気を出していると、ロボットは小さなケースから『1』と刻まれた緑色のバッジを取り出し俺に渡して来た。…どうやら、『7つ集める必要』があるようだ。
『ソレデハ、-ゲート-マデオ送リシマー』
言葉の途中、ロボットの音声が止まった。…次の瞬間、モニタールームに警報が響き渡った。
『ー侵入者ヲ確認シマシマ。-ゲスト-ノ安全確保ノ為、各ルームノドアヲロックシマス』
すると、ルームのドアから電子ロックの作動する音が聞こえた。…やれやれ、もう『嗅ぎ付けた』か。
『侵入者』の正体を察した俺は、ため息を吐くのだったー。