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「ーはい、おはよう~」

『ーっ!?』

 そして、時間は流れて翌日。俺は授業開始のチャイムと共に『実技ルーム』の準備室からメインフロアにに入った。…当然、生徒達はぎょっとした。

「当番さん、号令を」

「…っ!は、はいー」

 すると、例のフェンリーさんが始まりの号令を出した。

「(…いや、まさか代理初日がいきなり合同とはな。)…まあ、多分皆私の事は知っていると思うが、一応自己紹介をしましょう。

 私はオリバー=ブライト。ハミルトン先生の代理として教鞭を取らさせて貰います」

『……』

 すると、生徒達はまたもやぎょっとした。…『良かった』。

 ハミルトン先生の話し方を模倣してみたが、どうやら『反感』や『悪意』の感情はないようだ。

「それでは、授業を始めようー」

 俺はこの中に『首謀者』がいない事にホッとしつつ、指をパチンと鳴らした。

『ーっ!?』

 すると自身の背後にセットしておいた5つの『ホーム』から『リアルな姿』の偽装が施されたビッグサイズの『ネズミ』達…『リサーチトルーパー』が出て来て俺の横に整列した。

「ー彼らは今回の為に『手掛かり』の副産物によって生み出して貰った『生きた教材』だ。…勿論、『リーダー』と認識している私の指示がないと『動かない』から安心してくれ」

『……』

「…さて、今日はまず最初に中断してしまっていた『先月の復習』の続き…。

 ー『実戦捕獲』だ」


『…っ!』

 すると、生徒達はハッとし複数の班に分かれて準備…『捕獲ネット』やらを用意し始めた。うん、ちゃんとしている。…正直、『あんな事を依頼する』生徒がいるとは思えないな。

「ーぶ、ブライト先生、準備が終わりました」

 そんな事を考えていると、フェンリさんが若干緊張しながら報告をして来る。

「(…まあ、じきに慣れてくれるだろう。)分かりました。

 では、1班から5班はスタンバイを。残りの班は、ルーム後方に」

『は、はいっ!』

 彼らもまだ緊張しつつ、言われた通りに行動した。そして、5つの班はルームの中央にて適度に距離を開けてスタンバイをした。

「ー『P1』、ゴー」

 直後、彼らから見て右端の『ネズミ』に指示を出した。すると、『ネズミ』は予め『決めておいたターゲット』…3班の元に突っ込んで行った。

『ーっ!』

 しかし、生徒達はさほど動揺せず『ネズミ』の突進に備えた。…ハミルトン先生から話しを聞いて予想はしていたけど、スッゴく『慣れている』な。…良い事だ。

 プロ並みの『心構え』を身に付けている事に感心していると、まず『ガッチリ』と装備を固めたガタイの良い2人が持つネットに『ネズミ』が捕らえられた。

 そして、すかさず2人はネットの上から押さえ込み間髪入れずにフェンリーさんが『スタンバトン(イミテーション)』を頭部に振り下ろし、寸前で止めた。

「ーお見事。…いやはや、やはり『イデーヴェス』の学生は優秀だ」

 気付けば、俺は自然と拍手をしていた。それほど、彼らは素晴らしかった。

『……』


「…では、どんどん行こうかー」

 ーその後、各班は難なく『復習』をしていった。…どの班も『教材』が変わっても臆する事なく捕獲をしていたので、実際の場合も大丈夫だろう。

「ーじゃあ、次は去年学んだ『品質保持』…万が一害獣に保管場所を襲撃された際に『被害を最小限に抑える』保管方法の実戦して貰おかな」

『っ!はいっ!』

 称賛したからか、生徒達はハキハキと返事をした。なので、俺は『とある教材を取り出す』をリモコンのスイッチを押した。

 ーすると、壁の一部が開き複数の『棚』が一列になって出現した。…ちょー便利だよな。マジでこの機構があったら、いろいろ楽になりそうだよな~。

 内心で感動しつつ、俺は棚の前に移動し棚の中から1つのケースを取り出した。

「知っての通り、害獣は食料品のみならず『自然素材』の加工品も養分にしてしまう恐るべし消化吸収能力を持っている。その為、『マニュファクチャー』の生徒もしっかりと取り組むように」

『はいっ!』

「…ちなみに、箱の中には既にいろいろと詰めてある。なので、1つ1つ確認しながらやっていこう。

 じゃあ、各班棚の前に移動後早速実戦してみてくれ」

『はいー』

 すると、生徒達は迅速に棚の前に移動し基本に忠実な行動…棚から全ての箱を『中身』を確認しながら取り出し始めた。そして、『大まかな種類』で分けて種類と種類を離して床に置いていく。

 次に、それらを『とある』法則で下から戻して行った。


「ーはい、各班終わったようですね。

 …では、皆を代表して1班の班長は説明をしてみてください」

「はいっ!」

 それに応えたのは、またもやフェンリーさんだった。…今日は大変だな。

 そんな事を考えていると、彼女は下段にある箱の1つを取り出し蓋を開ける。

「ーまず、一番下はコストを抑える目的で何割か科学繊維を混ぜた品や農薬を使用した農作物を置きます。

 その理由は、害獣は科学物質を嫌うからです」

 その言葉の通り、箱の中には帝国領でポピュラーな『ハーフタオル』…つまり科学繊維と自然素材を50:50使った品だ。まあ、科学繊維の比率が多い物も出回っている。…ただ、安価の代償としてあまり使い心地は良くないし物持ちも良くない。

「そして、中段には規格外の品や制作途中の商品等を置きます。…まあ、出来るなら後者は別の場所に保管した方が良いですがスペースや資金等を考えた場合此処が良いと思います」

 …ほう、良いとこのお嬢様にしてはなかなか分かっているな。ハミルトン先生がしっかりした教育をしてそれを彼女達がしっかりと吸収している証拠だろう。…やっぱ、本職には叶わないな~。

 中身の『少し大きい』果物の模型をこちらに見せながら説明する彼女に感心しつつ、本職の凄さを改めて実感した。

「そして、上段。ここには、手前が売り物や出荷直前の農作物。奥が自然素材です。…以上です」


「はい、ありがとう。

 ーでは、それを踏まえた上で『今の現場』の状況を再現しよう。

 とりあえず、下がってくれ」

『……っ』

 その言葉に、生徒達はハッとしながら棚から距離を取った。

「『P1・P2・P3』。

『タワー』」

 それをきちんと確認した後、5体の『ネズミ』にオーダーを出す。すると、『ネズミ』は小走りで近くの棚に近付き1体の上に1体が乗り最終的に3段のタワーになった。

 ーそして、一番上の個体が上段に移りそこにある箱を全て床に落とした。

『………』

「…とまあ、非常に厄介な事に害獣はこういう悪知恵を身に付けて来ているんだ。

 その為、既存のやり方では甚大な被害を被る可能性が非常に高い。

 …では、どう対策をするか?

 今日は、私の故郷のグリンピア…つまり『帝国流』のやり方をいくつか教えよう」

『はいっ!』

 ーその後は、順調に授業は進みやがて終了の時間は近付いて来た。

「ー…っと、とりあえず今日はこんなところかな?

 …じゃあ、ちょっと早いが号令を」

「…っ!起立ー」

 フェンリーさんは少し驚きつつ、直ぐに終わりの号令を出してくれた。

「ーじゃあ、次は明後日に会いましょう」

『はいっ!失礼しますっ!』

 最初の時とは違い、生徒達は笑顔で実技ルームを出て行った。



 ー…ふう、代理一発目は何とか無事に終わったな。…えっと、確か次は『ミドルクラス(12~15エイジャー)』のクラスだったかな。内容は……ん?

 俺は準備室に戻り、授業の進捗状況を更新しそれから次の授業を確認をした。…その時、担当するクラスのリストが一覧で出てきたのだが『気になるメモ書き』がとある生徒のフォトデータの下に添えられていた。

『ー最近授業を欠席・◯日に3者面談を実施』

 ー…………。…いや、流石に『ない』だろう。

 その瞬間、俺の頭に今回の『真相っぽいモノ』が浮かんだが自分の考えに自ら鼻で笑った。…だが、俺はその男子生徒の顔を『一応』記憶するのだったー。


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