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調査-効果テキメン-

『ーすみませんっ!道を開けて下さいっ!』

 ー休日の日の朝方にも関わらず、『ファストディーン』の郊外は慌ただしかった。…何故なら、今日の今朝方またもや『襲撃』が発生したからだ。

 そして、駆け付けた地上警備隊の数人の隊員が集まった野次馬を左右にかき分け道を作り、1人の隊員が『ヒーリングストレッチャー』に入った女性職員を救急車まで運んでいく。

「ー『主任』、第1発見者をお連れしました」

「ありがとうございます、『スカーレット』さん」

 その様子を、事情聴取用の『内装』にチェンジした『ミドルレッグ』の窓から見ているとミルスティン中尉が第1発見者…昨日再会したリコリスの兄のロランと一緒に入って来た。

「(…しっかし、デカくなったな~。)やあ、『初めまして』。今回、『連続襲撃事件』の解決を任された特務捜査官の『プラトー』という者です」

「…っ!…じ、自分は『士官スクール』所属のロラン=レーグニッツでありますっ!…お、お会い出来て光栄ですっ!」

 俺はその成長に驚きつつ、『初対面』を装い挨拶した。一方彼は、当然といえば当然だが瞬時にガチガチに緊張してしまった。…にしても、『噂』がかなり広まってるな。こりゃ、早いところ『情報屋』を見つけないとな。

「…さ、どうぞお掛け下さい」

 最近発生している少々厄介な問題に頭を悩ませていると、中尉は俺の対面の椅子を引き彼に座るように言った。

「…あ、ありがとうございますっ!失礼しますっ!」

「(…なるべく早く、解放してあげよう。)…では、早速当時見た事を教えてくれますか?」

 そう決めた俺は、より一層優しく丁寧な口調を心掛けて彼に質問した。

「は、はいっ!えっとー」

 彼は緊張しつつ、数10分前の事を語り出した。


 ー簡単に纏めると、早朝のランニング中に『レスキューコール』を受けた彼は『支給しておいたゴーグル』を装着し、現場に急行。

 …そしてそこでは、『新たなガーディアン』が『トリのレプリカ』の放つ『攻撃』から女性職員を守っていたのだ。なので彼は、即座に地上部隊へ応援を呼び加勢に入った。…すると、執拗に『攻撃』していた『それ』は彼に気付くやいなや急にターゲットを彼に変更したのだ。

 当然、その隙を『自慢のガーディアン』…特殊な『偽装』を施した『フレンドノーズ』と『インフィニットチルドレン』が見逃す筈もなく『敵』は強烈な『コンビアタック』を背後から受けた…のだが、かなりの『ガード』を持っていたのか『隠密』だけが一瞬解除されただけだった。

 しかし、直後『敵』は撤退したのだ。…多分、『隠密』が解除されたからだろう。

 まあ、つまり『レプリカ』は『リモート』と『プログラム』で行動しているかも知れないという訳だ。

 尚、幸いな事に襲われた女性職員は『無事』だったがまあ『念のため』搬送して貰ったのだ。

 …そして、当然今回の件は今までと違い『針』という物証ともう1つー。


「(ーいや、ホント『効果テキメン』ってやつだな。)…災難でしたね。

 それで、『それ』はどの方向に撤退したか分かりますか?」

「…えっと、多分『第3資材倉庫エリア』ではないかと思います。姿は見えませんでしたが、『ガーディアン』の攻撃でショートしたのか火花を散らせながらその方向に飛んで行ったので」

「(良い視力してんなー。ま、後で確認だ。)なるほど。…いや、流石『帝国一の士官スクール』の生徒さんだ。かなり危ない状況だったにも関わらず、『敵』から目を離さない度胸を持っているのだから」

「…あはは、持ち上げ過ぎですよ。…『ガーディアン』が居なかったら、教官も自分も新たな被害者になっていた事でしょう」

「…落ち込む事はないよ。そもそも、相手は陰湿で高度な『ドローン』を使っているのだ。つまり、『正々堂々』とした戦いをする人間と相性が悪いんだ。

 …それに、勇敢な君が来たから『ガーディアン』は攻勢に出れたんだ。そのおかげで、初めて『被害』を防ぐ事が出来たんだよ。

 だがら、私は最大の感謝を君に送ろう」

「……」

 無力感を感じていた彼は、その言葉に『何か』を感じたのか少し元気を取り戻したようだ。

「…そうだ。これは、あくまで『念のため』に聞きたいのだが。

 ー何故『ターゲット』になったか、分かるかな?」

「……正直な話、見当も付きません。スクールの人達に聞いて貰えば分かると思いますが、私は誰かとトラブルを起こした事はありません」

 彼は、困惑しつつきっぱりとそう言った。…だよな~。…うーん、でも『可能性』が潰れた訳でもないんだよな。

 …実は、彼が襲われたと聞いた時『とある可能性』を強く感じたのだ。


「そうですか。…いや、失礼しました」

「…っ!?と、とんでもないですっ!」

 こちらが非礼を詫び頭を下げると、彼はぎょっとした。…いかん、緊張させてしまったな。

 身に付いた礼節を反射的に出してしまった事にちょっと反省しつつ、俺は背筋を伸ばした。

「…では、以上で聴取を終わります。

 それと、分かっているかと思いますが『機密保持』…もとい『混乱を避ける』意味と『君の安全』の為私に聴取を受けた事や内容等は口外しないで下さい」

「…っ!は、はいっ!理解していますっ!」

「ならば、結構です。

 ー『スカーレット』さん。念のため、彼を地上部隊の隊舎まで送って上げて下さい」

「了解しました」

「…あ、ありがとうございますっ!し、失礼しますっ!」

 彼は俺と彼女な深くお礼をしてから立ち上がり、『ミドルレッグ』から出る際も深くお辞儀をしてから彼女と共に出て行った。…いや、ホント『最高の教育』を受けているな~。

 その成長振りに感動しつつ、俺は『報告データ』の確認を始めるのだったー。



 ◯



 ーそれから1時間後。第3都市『サードニスリ』に戻って来た俺は、その足で地上部隊の隊舎に向かいお借りした部屋にて『その人物』が来るのを待っていた。

『ーし、失礼しますっ!』

 すると、約束の時間の10分前になったタイミングでインターフォンが鳴った。…やっぱ、代理を立てるべきだったか?…いやー。

『彼女』…アイリス=フェンリーのガチガチな様子にふとそんな事を考えるが、やはり『スジ』を通す意味でも直接頼むべきだと思いその考えを消し応答する。

「ーどうぞ、お入り下さい」

「ー……っ。し、失礼しましゅ…」

 応答するとドアが開き、まるで古いタイプのアンドロイドのようなカチコチな動作で彼女が入って来た。

「…さ、どうぞお掛け下さい」

「…ひゃ、ひゃい」

 そして、彼女は呂律がうまく回らないのかカミカミな口調で椅子に座った。

「…まずは、休日にお呼び立てしてすみませんでした」

「…っ!と、と、と、とんでもないでし…す」

 こちらの謝罪に、彼女は首をブンブン振りながら『気にしていない』と言ってくれた。

「…ありがとうございます。

 それでは、本題に入りましょう」

「…っ!」

 なので、気持ちを切り替えるとそれが伝わったのか彼女はごくりと唾を飲んだ。


「ご当主殿と、マダム・クルーガーより話しは聞いているかと思いますが…。

 ーカノープスの『装備工房』である、『クリエイトハンド』の『マイスター』を引き受けてはくれませんか?」

「……」

「…本当に、急な事で申し訳ありません。

 本来なら、しっかりと貴女のタイミングでお答えして欲しかったのですが『現状』を鑑みて『早く』答えて頂かなければならなくなってしまいました…」

「…そうですか。…あ、あの、1つ、質問しても宜しいでしょうか?」

「…何でしょうか?」

「…ありがとうございます。

 …もしかして、『まだ』被害者は増えるのですか?」

「(…まあ、当然そこに気付くよな。)…情けない話しですが、今日ようやく首都の方で『拠点』の手掛かりを掴んだばかりでして。

 それに、『ガーディアン』ではカバーしきれないというのも理由の1つです」

「…っ!す、凄い…。…っ!?す、すみません、決して『不安』とかそういうのではなく、『そんな気』がしただけですからっ!」

 彼女は慌ててマイナスの意図はないと言った。…って、ちょっと待て。

 俺は、彼女がまくし立てるように言った言葉の最後の部分に引っ掛かった。

「…(…先に『契約』だな。)…良かった。

 …それで、『お答え』は?」

「…勿論、謹んでお引き受けさせて頂きます」


「…っ!本当ですか?」

 まさかの即答に、俺は驚いてしまった。…まさかー。

「ー…実は、今日此処に来る時には決めていたんです。…なんとなく、『予感』がしたものですから」

「(この娘、なかなかに『鋭い』。)…やはりですか。…ならば、こちらをー」

 俺はタブレットと電子ペンを取り出し、彼女の前に置いた。

「ー…っ!……ふぇっ!?」

 彼女はそれを取り『契約書』の中身を読んでいく…のだが、途中で仰天した声を出した。

「…あの、何か『気になる』ところがありますか?」

「…い、い、い、いえ……。…いや、本当に『こんな待遇』で、い、い、良いんですか?」

 彼女は仔犬のように震えながら、内容を再確認して来た。

「(…どうやら、金銭感覚は庶民派のようだ。…ひょっとして、『あの事件』で思うところがあったのだろうか?)勿論です。

 ーああ、『給料』は貴女が成人になるまでは基本的にご実家の財務担当の方に管理して貰いますが大丈夫ですか?」

「…そ、それは大丈夫です。…で、でも、『基本3時間・時間的余裕がある日』はいくらなんでもー」

「流石に、学生の貴女に『学業』と『プライベート』を削ってくれとは言えませんよ。…それに、貴女と『サル』に掛かれば『今日の3時間』で十分成果を出してくれると信じていますから」

「…っ!…ご、ご期待に添えられますよう、頑張りますっ!」

 その言葉で、彼女の中から恐縮や困惑が吹き飛びそのまま流れるように『契約』は成立するのだったー。


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