「ーはい、それでは『報告会』を始めたいと思います」
『はい』
イデーヴェスに到着して間もなく24時間が経とうしているなか、俺は『関係者全員』に『会』の開始を宣言した。
「では、まずは私から報告します。
1つ目は『事件調査』ですー」
俺は、今日発覚した内容を報告した。…当然、全員は不安な表情になる。
「ーですから、『講師代理』のクルーガー女史達には地上部隊経由で『ネックガード』をお渡しします…と言いたいところですが、実はそろそろ『替え時』なんですよね」
『…まあ、そろそろ-ガタ-が来る頃だと思っていましたわ』
『…どうするんですか?
-針-を防げなければ代理の方々は講師陣の二の舞ですよ?』
「…なので、少し早いですが『マイスター』をこちらに引き込みます」
レンハイム少佐の疑問に、俺は冷静に答える。
『…っ!もう、彼女…アイリスさんにお会いしたのですね?』
「はい。…いやまさか、今日会えるとは思っていませんでしたよ」
『…えっと、彼女もファームスクールの生徒さんだったんですか?』
すると、クルーガー女史のサポートをしているアイーシャさんがふと質問をして来た。
「いえ、彼女は『マニュファクチャースクール(繊維加工学科)』の所属です。…まあ、『いろいろな都合』でファームスクールの生徒さんとかと一緒に行動しているようです」
『…あ、もしかして-安全-の為に?』
「1番の理由はそれでしょうね。…まあ、今のところは生徒達への被害は出ていませんが今後はその可能性もあり得るかもしれません」
『……』
「そうならないように、一刻も早く事件を解決する必要があります。…それと合わせて、『手掛かり』を『連中』より先に見つけ出さなければなりません」
『…まさか、今回も-レプリカ-が使用されていたとは思いませんでしたわ……。
ーそれも、-ヘビ-と-トリ-の2種類も…』
『…結構手が込んでる。けど、-連中-はどうやって-仕込んだ-の?』
「…問題はそこなんですよね。…まあ、かなりの確率で『内通者』がいるでしょう」
『……っ』
『…-スクール-の誰かが、あんな連中に手を貸している事があるというのですか……』
「残念ですが、そうなりますね。…そして、恐らくは『その人物』と『首謀者』は近しい関係かあるいは同一人物でしょう」
『………』
その予想に、女史やこの星のスクールの卒業生である幾人かは唖然とした。…しかし、面と向かっては異は唱えてこなかった。まあ、1番自然であると同時に『あり得ない事』ではないからだろう。
『…っ。では、会議が終わり次第至急彼女に連絡を取ります』
「お願いします」
『ならば、場所は地上部隊の基地が良いでしょう。部屋を貸して頂けるよう交渉しておきますね』
「ありがとうございます、レンハイム少佐。…っと、私からは以上です」
『…では、次は私ですねー』
ーその後は、工作班が『発進場所』の捜索状況。医療班が『搬送開始』。戦闘班がそれの警護開始を報告していった。
「ーありがとうございます。…では、医療班と戦闘班はくれぐれもお気をつけ下さい」
『了解』
すると、遊撃部隊の隊長の内ホーク大尉とスターリン大尉が『離席』した。
『…では、最後は私ですわね』
「お願いします。…すみません、お待たせしてしまって」
『良いのですよ。隊長の方々の報告は、私達にとっても大事な事ですから。
…さて、今日は私は勿論他の方々は-挨拶-で忙しかったようですから大した情報は得られていませんわ。…やはり、職員の方々が-知らない-というのがネックになっていますわね……』
「こちらも同じでした。…それどころか、『先達』からも『手掛かり』の事を聞いた事がないとまで。
…つまり、現状誰も『引き継いで』いない事になります」
『…実のところ、私も在学中そんな事一度も耳にした事がないのですよ。これは、中々に難航しそうですわね…』
「(…そんだけ歴史が長いのに、『手掛かり』が今まで見つかっていないのも奇妙な話しだよな。……待てよ?)…クルーガー女史、1つお聞きしたいのですが」
『なんでしょうか?』
「ーこの『学園』に、『セブンミステリー』的なモノはありますか?」
『……なるほど。盲点でしたね』
その質問に、女史はこちらの意図を瞬時に察したようだ。
『…え?ど、どういう事ですか?』
「…おかしいとは思いませんか?帝国と『15age』違いの歴史を持つこの『学園』に、『手掛かり』が未だに誰の手にも渡っていないこの状況が」
『…それは、-座標-が分からなかったから……、いや違うな。お祖母ちゃんや、お姉様達は自力でチップを探していたのだから』
すると、アインさんはこちらの意図を口に出した。…そう。当然此処にだってハンターは来ているのだ。それにー。
『ーそれに、-発展-の過程で発掘されたり-ミステリー好きな方々-が見つけていそうなモノですがやはりそう言った話しは今まで耳にした事がありませんわ』
そして女史は、予想を裏付けをしてくれた。…いや、ホントこの人が此処の卒業生で良かった。
『…でも、ホントにそのセブンミステリーにヒントがあるんでしょうか?』
「まあ、現状それぐらいしか『手掛かりの手掛かり』はありませんからね」
『…それもそうですね』
「では、明日からは『セブンミステリー』の聞き込みを始めて下さい」
『はいー』
そして、最後に俺は終了を宣言し初日の『報告会』は終わったー。
○
ーSide『シスター』
『ー……本当か?』
モニターに映る色黒のがっしりし体型の青年…首都の『士官スクール』に通うロラン=レーグニッツは妹の報告を信じられないでいた。
「…私も信じられないよ。まさか、オリバー兄さんがファームスクールの臨時講師になった…なんて事はね」
『…目的は、ロストチップ等の-手掛かり-だろうな』
「…だろうね。いや~、この間の『ポターランカップ』はおっ魂消たね…」
『同感だ。…しかし、オリバー兄は大丈夫だろうか?』
「…そうだね」
兄の心配そうな言葉に、リコリスは同意する。…いくら腕が立つといっても、流石に不安は拭えなかった。
現に、士官スクールのベテラン講師も何人か被害に遭っているのだ。
『…現状、講師の警護に人員を割けられないと警備隊の人も言ってたしな』
「…そうなんだ」
『…ただ、-監視の眼-は増加すると言っていた』
「…『監視の眼』?…警備ドローンを増やすって事?」
『…それが、-機密-に抵触するからとかで詳細は教えて貰えなかったんだ』
「……。…もしかして、『例の部隊』でも来ているのかな?」
『…実はな、その-独立遊撃部隊-が来ているんだ』
「……本当?」
今度はリコリスが、兄の言葉を信じられなかった。
『ああ。しかも、有難い事に午後に地上部隊との合同訓練にも参加させて頂いた。
…そうだ、1つ伝えなければいけない事があった』
「…何?」
『…その独立遊撃部隊の隊員の1人は、ウェンディ少尉だ』
「ふぇっ!?ウェンディ『姉さん』がっ!?」
まさか懐かしい名前を聞くとは思っていなかった彼女は、変な声を出して驚いた。
『…いや、ホントびっくりしたよ』
「…ウェンディ姉さんが、そんな凄い部隊に……」
『…何でも、ポターランでの活躍が偉い方の目に留まり打診を受けたそうだ』
「え、姉さん『あの場』に居たの?」
『ああ。…確か、会場警備だと言っていたかな』
「…知らなかった。……そういえば、兄さんもあそこに居たんだよね」
『…そうだな。…ただ、-どういう風-に決着が着いたかはニュースでは-ぼかして-いたんだよな』
「…ねえ、お兄ちゃん。確か、その事件には『あの人』が関わっているって-オメガデータベース-の『噂コーナー』にあったよね……。
もしかしてー」
『ー考える事は一緒だな。…まあ、-そういう事-なんだろう』
「…なら、大丈夫かな?」
『…だが、-あの人-も忙しいだろうから手放しには安心は出来ない。かといって、学生の俺達に出来る事は……いや、あるかも知れない』
「……あ、『秘宝』探索のお手伝いなら出来るかも知れないね。でも、正直どうやって?」
当然の事だが、彼も彼女もついこの間『手掛かり』がこのイデーヴェスにある事を知ったのだ。つまり、力になれるような事はない……かと思われた。
『…おいおい、妹よ。
ーこんな時、-彼-ならどうする?』
「…『お宝を探すなら、まず伝承を調べる』。…そうか、『セブンミステリー』だね?」
『その通り。…確か、-あのサークル-は3都市の各所に支部がある上年齢制限もなかった筈だ。
…まあ、俺は基本学生警備隊で忙しいからサークルその物に参加は出来ないが先輩や地上部隊の人に聞いて回ってみようと思う』
「…私の場合は、出来れば調査にも参加したいところだけど今は危ないから…連絡役かな?」
『頼んだ。…っと、こっちはそろそろ消灯時間だから切るぞ』
「うん。お休み兄さん」
2人は互いのやる事を決め、通信を終えた。…まさかそれが、『あんな事』になるなんてこの時は知る由もなかったー。