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情報収集-念には念を-

 ー…あそこだな。

 穏やかな昼過ぎ。俺はファームスクールとリニアステーションのちょうど中間くらいの場所にある、『第1事件現場』に来ていた。…すると、ちょうどそこでは地元の捜査チームと『調査班』が現場調査をしていた。

「ーっ!お疲れ様です、『主任』っ!」

 彼らの元に近付いていくと、調査班のメンバーがこちらに気付き『コードネーム』で呼んだ。…まあ、『念のため』っヤツだ。

「お疲れ様です。…それで、どうでした?」

「…こちらをー」

 彼…モンド=ライサンダー少尉は直ぐにタブレットを取り出し、当時この近辺を巡回していた警備員の通信デバイスの記録映像を見せてくれた。

 ー映像は、ちょうど警備員がうつ伏せに倒れるハミルトン先生をタイミングだった。そして、警備が駆け寄り先生に呼び掛けるが当然先生は反応しなかったので警備員は直ぐにレスキューコールをした。……これは。

 その映像の最後で、先生の後頭部がしばらく映っていたのだがそこには『小さく赤い反応』があった。

「ーやはり、『手掛かり』は映っていないですね」

 しかし、『それが見えている』筈の少尉は表情一つ変えずにそう言いながら『メモアプリ』を起動した。…すると、『予め記録されていた報告書』が表示された。

『ーやはり、エージェント・プラトーの予想通り実体物が使用されていたようです。

 つい先ほど医療班に連絡をした所、もの凄く小さな-何か-に刺されたような痕跡があったそうです』


「(…やっぱりか。)…そうですか。

 …ああ、そういえば『医師』はなんと?」

 そして、俺はやや困惑した表情を作りながら『茶番』を続ける。

「…そちらも進展はありません」

 少尉の表情も声も、とにかく困惑を感じさせた。…だが、『メモ』は違った。

『ーつい先ほど医療班から返答が返って来たのですが、どうやら-ナノマシン-が神経機能を阻害しているようです。

 なので、-トリ-への搬送申請が医療班より出ています』

「(…少ない情報から『診断』するとは。やっぱ、実力派エリートは違うな~。)…困りましたね。

 …仕方ない。あまり公道を占領する訳にもいかないので、『一旦撤収』して下さい」

「了解しました。…『主任』はこの後どうされるのですか?」

「…とりあえず『医師』に『挨拶』して来ます」

「分かりました。…一応、『連絡』しておきますね」

「ありがとうございます」

「…では、失礼します」

 少尉は断りを入れてから合同チームの向かったので、俺もステーションに向かったー。



 ○



『ーお待たせ致しました。受付番号C-23のナンバープレートをお持ちの方は、面会カウンターにお進み下さい』

 それから1時間後。俺はセントラルエリアの病院に来ていた。…にしても、それなりに待ったな。

 ここ最近で入院患者が増えたせいか、面会受付に30分くらい待ちたった今呼ばれた俺は面会カウンターに向かった。

「ーこんに……っ!?」

 カウンターに居た担当のスタッフは、こちらを見るなり仰天する。なので、叫ぶ前に『クワイエット』のジェスチャーをした。

「……っ。…失礼しました。

 …えっと、どなたに面会でしょうか?」

「『ファームスクール』のハミルトン先生です。…実は私、『代理』になりましたのでそのご挨拶に」

「……へ?………っ、重ね重ね失礼しました。

 ハミルトンさんの病室はウェストサイドの305になりますー」

 まあ、案の定彼女はキョトンとするが直ぐにハッとして頭を下げそれから案内をしてくれた。

『ーゴ案内シマス』

「ありがとうございます」

 そして、彼女は脇に置かれた端末を操作する。その直後、『ガイドドローン』がカウンターから出て来てふよふよとしながらゆっくりと進み始めたので、お礼を言ってからその後に続いたー。



『ーハミルトンサン、面会者ガオ越シニナリマシタ』

『どうぞ~』

 ドローンに着いていく事数10分。エスカレーターや『歩く歩道』を乗り継いで、ようやくハミルトン先生の居る病室にたどり着いた。…いや、マジでドローン居なかったら迷ってたわ。

 ホワイトメルの病院もそうだったけど、『都会』の病院マジでコワい……。

 地方出身者の地を出しながら、ドローンが開けてくれたドアをくぐる。…すると、気の良さそうな中年男性がベッドの上にいた。

『ソレデハ、面会ガ終了スル頃ニオ迎エニ上ガリマス』

「ありがとう」

 そう言って、ドローンは待機場所に戻って行った。……?

「………」

 ふと、ハミルトン先生から視線を感じたので振り返えると彼はあんぐりと口を開けていた。

「あ、初めまして。私、本日付でファームスクールに臨時着任致しましたオリバー=ブライトと申します。担当は、ハミルトン先生の担当しておられる害獣対策学になります」

「……っ、…なるほど。

 学長が、『凄い人が代理になる』と言っていましたが納得だ…」

 ベッドの傍らに立ち名乗ると、先生はハッとしてポツリと呟いた。

「…あはは、『凄い人』は過大評価ですよ。先生や他の講師の方々の方が余程『凄い』ですよ」

「謙遜する事はない。…なにせ、君は『実務経験』を積んでいる『元農家』なのだからね。…さ、どうぞ」

 面映ゆい気持ちで頬をかいていると、やはり俺の経歴を知っていた先生は称賛しながらなにやら操作をし、椅子を出してくれた。


「…失礼します」

「さて、学長から聞いたのだが君は『何』が聞きたいのかな?」

「あ、その前に『ボイスレコーダー』使っても大丈夫ですか?」

「ああ、構わないよ」

 一応確認すると、先生は許諾してくれたので直ぐにポケットからレコーダーを取り出し起動させる。

「…では、質問させて頂きます。

 ー先生は『どういう風』に授業を進めているのですか?」

「……。…そうだなー」

 先生は少し困惑したようだが、丁寧に答えてくれた。そして、その中で『専門的な知識』を『分かりやすく』説明するコツ等も話してくれた。

「ー…とまあ、こんな感じだな」

「…ありがとうございました」

「……ところで、どうしてこんな質問を?…正直、『君の経験』を話せば事足りると思うのだが?」

 レコーダーを止めてポケットにしまうと、先生は疑問顔で聞いて来た。

「…あくまで私は『代理』です。だから、生徒さん達にはなるべく『いつも通り』の授業を生徒さん貰えば良いなと思った次第です」

「なるほど。私が復帰しても違和感なく授業が継続出来るように考えてくれたのか。

 …いや、若いのに随分立派だな」

「…あはは(まあ、本当は『別の意味』もあるんだけどね。)。

 …では、そろそろ失礼します」

「おや、そうですか。

 …そうだ。多分、君なら大丈夫かと思うが『気をつけて』おくように」

 そろそろお暇しようとすると、先生は真剣な口調で忠告してくれた。…まあ、実際『気をつけよう』がないんだけどな。


『ーハミルトンさん、面会者がお越しになりました』

「はーい、どうぞ~」

 そんな事を考えていると、別の面会者が来たようだ。

「…それではお大事に」

「ああ」

「ー…あら、お客さんが来てたの」

 病室を出ようとすると、ちょうど大きいトランクを持った女性アンドロイドと婦人が入って来た。まあ、多分後ろの方は先生の奥方だろう。

「こんにちは」

「こんに……っ!?」

 すれ違いながら挨拶すると、奥方は挨拶を返す途中で仰天した。…まあ、説明は先生にお任せしよう。

『ーオ待タセ致シマシタ。ソレデハ、-エントランス-マデゴ案内致シマス』

 奥方の凝視をスルーし病室を出ると、ちょうど良いタイミングでドローンが来たのでその後ろに続いてエントランスに向かい始めたー。


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