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顔合わせ-時々再会-

『ー総員、敬礼っ!』

 俺と第1遊撃隊の隊長陣がイデーヴェス防衛軍の地上基地内のブリーフィングルームに入ると、地上部隊の隊長陣が出迎えてくれた。

「ーそれでは、改めて現状の説明をさせて頂きます」

「お願いします」

 そして、互いに挨拶を短く済ませると地上部隊のトップの人が切り出した。

「…事の発端は、先月下旬。第3都市『サードニスリ』郊外にある『ファームスクール』の校舎に勤務する座学講師が、帰宅中何者かに襲撃されました。

 事件当時は夜中だった事もあり、目撃者等はいませんでした。…第1発見者は、巡回中の警ら部隊の隊員です。

 そして、その日から各都市で毎夜襲撃事件が発生し未だに犯人を確保する事が出来ないまま現在に至ります。

 …その原因1つは、『犯人』の痕跡が見つかっていないからです。

 それに被害者の方も、『帰宅中気付いたら地面に倒れていて、直後ゆっくり意識が遠退き目が覚めたら病院のベッドの上だった』と証言している事から、おそらく突然襲われたのだと推測しています。

 …ここまでで、何か質問はありますでしょうか?」

「はい」

「なんでしょうか、エージェント・プラトー」 


「…1番最初の現場の『事件発覚直後』の状況は、どうなっていましたか?」

「…こちらをご覧下さい」

 すると、モニターに目当てのモノが映し出された。…ふむ。

「まず、幸い…という言葉はそぐわないですが被害に遭われた職員は目立った外傷はありませんでした。…当然、路面にも損傷はありませんでした」

 トップの人の言うように、モニターに映る現場はまるで事件がなかったかのように『いつも通り』を感じさせた。

「…『反応』等は確認されましたか?」

「…それが、どういう訳か『熱反応』も検出されなかったんです」

「(…痕跡と熱反応は無しか。となるとー)

 ありがとうございました。以上で質問を終わります」

「…では、他に質問のある方は?」

「宜しいでしょうか?」

 次に挙手をしたのは、ブロンドの髪をアップにしたレンズスタイルの女性…遊撃隊の生命線である『医療班』のアデル=ホーク大尉だ。

「なんでしょうか、ホーク大尉?」

「被害に遭われた職員の方は、現在どのくらい『回復』していますでしょうか?」


「…本日ホスピタルに確認を取りましたところ、『ほとんど回復していない』と仰っていました」

「…という事は、未だ『原因』は分かっていないのですね……」

「…はい」

 …まあ、今の会話からも分かるように事件発生から現在まで何の手掛かりも得られていないのだ。無論、彼らのせい等ではなく『敵』が恐ろしく『厄介』なのだ。

「分かりました。…それでは、ミーティング終了後に『班』はホスピタルに向かいますが宜しいでしょうか?」

「ああ、頼んだ」

「是非ともお願いします」

 彼女の申し出に、レンハイム少佐と俺は即座に了承した。…彼女達の実績に『トリ』が加わるのだから、間違いなく『原因』は解き明かされるだろう。そうなれば、『対策』も『解決』もし易くなる。

「…他に質問のある方はいらっしゃいますか?」

「…宜しいでしょうか?」

 次に挙手をしたのは、『情報班』のキャンベル少佐だ。…その表現は、やや恐縮したようだった。


「…何でしょうか、キャンベル少佐?」

 当然、向こうもそれを察し緊張した様子になった。

「…これは、あくまでも『捜査の為』にお聞きしたいのですが『彼ら』の評判は分かりますか?」

『……っ』

 …いや、本当に頼りになるな。…『こういう事』って結構聞きづらいのに。

「…『悪い噂』は聞きませんね。どの方々も、大変素晴らしい教育者なのは疑いようがありません。

 何せ、生徒さんや同僚の方が時折見舞いに来るのですから」

 …つまり、誰かの恨みを買うような事はしていないって事だ。…これは、中々に複雑な事件だな。

「…ありがとうございました。それと、失礼しました」

「とんでもない。…正直、我々も1番最初に『その可能性』を疑いましたから」

 キャンベル少佐が頭を下げると、トップの人は首を振った。

「…他に質問のある方は?」

『……』

「…無いようなので、捜査方針決めに移りたいと思いますー」

 ーそれから、捜査の動きやら『貸し出すサポーター』のデータ等を向こうと共有し最初はミーティングは終了した。…その後、俺は一旦本部を離れとある場所に向かったー。



 ○



 ー…えっと、確かマップだとこの辺りに……。…あ、発見。

 それから数時間後。『変装』を解除した俺は第3都市の『サードニスリ』に来ていた。…というのも、来週からー。

「ー…おや、此処にお客さんとは珍しいですね」

 ふと、その施設…『ファームスクール』の校舎の校門近くに居た穏やかな雰囲気の壮年が声を掛けて来た。

「あ、始めまして。私、来週より此処で働かせて頂く事になりましたオリバー=ブライトと申します。

 宜しくお願いします、『シュミット学長殿』」

 俺はその壮年…ファームスクール責任者のシュミット学長に頭を下げた。

「…っ!…そうですか、君が『ハミルトン先生』の代理の……。…なるほど、通りで校舎の先生方がざわざわしている訳ですか」

 どうやら、既に俺の『情報』な校舎に伝わっているらしい。

「…お騒がせして申し訳ありません」

「フフ、構いませんよ。…ピリピリした空気が流れるよりずっとマシです」

「…それは良かった。…話しは『それとなく』お伺いしましたが、こちらでは『さほど問題』になっていないようですね?」


「…ええ。この校舎で被害に遭われたのはハミルトン先生だけです。…一体、何故彼のようなー」

 学長は、正体の見えない犯人に憤りを抱いた。…本当に『良い先生』なんだな。

「ーっ!失礼。…それでは、中にご案内しましょう」

「ありがとうございます」

 学長は、ハッとして冷静さを取り戻しコホンと咳払いをして歩き出した。なので、俺は『普通の顔』で着いていった。

「ー…そういえば、ハミルトン先生はどのように授業をしていたんですか?」

 そして、来客用の玄関から中に入ったタイミングで『職務』に関する質問をする。

「基本は、フォトデータを用いた授業ですね。時折、『実寸大の模型』を使う事もあります」

「…ほう。…ちなみに、それらの教材ってお借りする事は可能でしょうか?」

 すると、学長は申し訳なさそうな表情になった、…あ、嫌な予感。

「…実は、先生が襲われた日の翌日に『保管ルーム』が何者かに荒らされていたのですよ……。…その中にあったハミルトン先生の教材『全て』は、全て物理的にボロボロにされていました」

「…そうですか(…いや、マジで犯人の目的が分からんな。…恨みでは無いとすると、一体?)」

「ーあ、学長先生。こんにち……っ!?」

 新たな事実に二重の意味で困っていると、廊下の奥から小柄な少女がやって来た。…そして、彼女は学長に挨拶をした直後『凄く見知った俺』を見て凄く驚いた。


「…こんにちは、『レーグニッツ』さん。……どうしました?」

 当然、学長は困惑したので早めに『解決』すべくオレンジの髪の少女にそっと歩み寄る。

「ー大きくなったな、『リコ』。…そういえば、去年からこっちに通っているんだったな」

「…っ!お、オリバー『兄さん』、ど、どうして此処にっ!?」

 にこやかに挨拶をした直後、彼女…リコリス=レーグニッツはハッと復活しこちらに詰め寄って来た。

「どうしてって、そりゃ『教師の代理』する為だよ」

「……へ?」

 質問に答えると、彼女はさらに混乱した。…何故だ?

「…もしかして、ブライト先生とレーグニッツさんは2人は知り合いなのですか?」

「親戚ですよ。彼女の母が、私の従姉にあたる人なので」

「…なるほど」

「……えと、本当なんですか?」

「ええ。彼は、ハミルトン先生の代理ですよ」

「……」

 …本当、母親に似たな。

 恐る恐る確認して来た彼女は、学長の言葉を聞いてまた唖然とした。…その姿は、カーリー従姉さんを彷彿とさせるのだったー。


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