ーその日。ポターランカップでの衝撃と同等の激震が銀河中に走った。
『ーロストチップの座標データが、-オメガデータベース-に公開っ!』
その情報は、連盟各国は勿論非加盟エリアのメディアでも取り上げられその日の『オメガデータベース』へのアクセスは過去に類を見ない凄まじい数になった。
そして、銀河の至るところで活動する『秘宝ハンター』達はその座標…の中で『安全で近場な3ヵ所』にこぞって『航行許可』を取ろうとすが、その内2ヵ所は『連盟の合同調査チーム』とほんの数日前に発足した『秘宝ハンター同盟』が既に調査を開始していた為、『保安上』の理由で許可は出なかった。
なので、残りの『超地方』か『教育向きの技能を持つ兼業トレジャーハンター』を雇用する『研鑽の銀河』の2つの場所に彼らは流れた。…ただ、片方は『トラップ』なので実質一ヶ所だが。
ーそして、その『研鑽の銀河』…イデーヴェス星系側は突然の『人員補充』に驚きつつも、とても『喜んだ』。…何故ならー。
○
ーSide『フューチャークルー』
ーその『話し』を父親より聞いた彼女は、その胸をかつてない程に高鳴らせた。
『ーもう、お前も立派なレディだ。だから、私達からとやかくは言わない。…-決める-のはお前自身だ』
「…私、自身が……」
改めて、父親達に『大人』として認めて貰っている事を実感した彼女の心には嬉しさが押し寄せた。
『…流石に、直ぐに決められないか。…まあ、先方も急いでいないようだし良く考えて決めなさい。勿論、誰か信頼のおける友や先生に相談をしても良いがー』
「ー『手で覆い隠しながら話せ』…ですわよね?」
『その通りだ。…では、明日も勉学にしっかりと励むように』
「はい、お父様。
ー…~~~~っ!」
そこで通信は終わり、直後に彼女は両手を握りしめ歓喜に奮えた。…そして、しばらくして彼女は冷静さを取り戻し個室の通信スペースからゆっくりと出た。
「ーあ、終わったようですね」
「はい。…お忙しいところ、ありがとうございました」
すると、職員と顔を合わせたので彼女は深いお辞儀と共に心からのお礼を述べた。
「いえいえ、職務ですから。
…それでは、気をつけて帰って下さいね」
「(…やはり、お疲れになっていますわね)ありがとうございます。
それでは、失礼致しますわ」
その職員はなんともない風に言うが、その顔には明確に疲労が溜まっていた。しかし、彼女はそれを口に出さず代わり心の中で再度感謝し通信ルームから出た。
「ーあ、出て来た」
「お待たせしました、皆様」
そして、エントランスに着くと一緒に来た学友と合流し揃って建物を出た。…すると、外は夕暮れの時間になっていた。
「…すみません、付き合わせてしまって」
「行く時も言ったけど、私達も家族から通信が来てたからね。だから、気にしないで」
「…むしろ、こうして先輩達と集団で行動する事が出来て光栄です」
「ですです」
彼女が申し訳なさそうにしていると、同級生と後輩の少女達がフォローした。
「…ありがとうございます」
「…さ、お嬢様方。そろそろ行きましょうか」
『はい』
彼女がいつもの調子を取り戻したのを確認した、その集団の纏め役…というよりは『ボディーガード』的な格好をした女性がそう言うと、彼女達は頷き女性を先頭にして学生寮へと歩き出した。
ー…そう。今、このイデーヴェスではとある重大な問題が発生していて生徒は登下校の際は集団で行動し、その上1つのグループに星系防衛軍の地上部隊と『学生警らチーム』の合同チームのメンバーが1人~2人ボディーガードとして道中の警護しているのだ。
『ー……?』
歩き初めて15分位経ち、もうすぐ『リニアレール』のステーション着くというところで、生徒達の腕に装着された学生用端末がバイブした。
「…なんか、嫌な予感がするんですけど?」
「…同感です」
「…けど、見ない訳には行きません……」
彼女達は気が重くなりながら、とりあえずプラットホームに向かう。すると、タイミング良く『リニア』が来たので彼女達は乗り込んだ。
『ー…っ』
そしてキャビネットの中に入ると、ちらほらとサークル終わりの学生達とボディーガードが居たのだが数人がこちらに気付くだけで、後は端末に釘付けになっていた。
「ー…それじゃ、見てみましょうか」
『……』
1人がそう言うと、全員頷き一斉に端末を見た。
『ー来週より、登校日を通常通りに戻します』
「……嘘」
「…これは……」
『ー生徒の皆さんにお知らせします。
先月より、やむを得ない理由で登校を隔日にしていましたが来週より登校日を通常通りに戻します』
「…ど、どういう事ですか?」
「…実は、先週辺りから急な『人員補充』があったのですよ」
ふと、後輩の少女がボディーガードの女性に聞くと彼女は小声で答えてくれた。
「…もしかして、それって『兼業船乗り』の方々ですか?」
「…っ!…その通りです」
なんとなく『予想』が浮かんだ彼女の確認に、女性は驚きつつも頷いた。
「…なんで分かったの?」
「…あら、ご存知ないですか?
ー今、此処イデーヴェスはかなりの注目を集めているのですよ?」
同級生の割と鋭い質問に、彼女は予め用意していた答えを返した。
「……?」
「…本当、貴女ってニュースに疎いわね。
ー『秘宝』の『手掛かり』が、この星系にあるのよ」
「……リアリー(マジで)?」
衝撃のあまり、同級生は母国語でもう1人の同級生に確認した。
「…全然知らなかった。…て事は、来週から来る『兼業船乗り』の人達って『手掛かり』狙いって事?」
「そうなりますね」
「…けど、それって『目当てのモノ』が見つかったらまた『逆戻り』って事ですよね……」
「…まあ、直ぐには見つからないでしょうからしばらくは大丈夫でしょうー」
ふと、後輩の少女が不安げに呟くと、ボディーガードの女性は希望的観測を口にする。…そして、どういう訳かその表情に不安はなかった。
『……?』
「…あのー」
『ー間モナク、女子学生寮前デス』
居合わせた少女達は首を傾げ、ふとその中の1人が質問しようとするがそのタイミングでアナウンスが入った。
「…さ、降車準備をお願いします」
『…は、はい』
少女達はとりあえず頷き、そして数分後にはリニアを降り女子学生寮へ帰宅するのだったー。
○
ーSide『シルバーネームレス』
「ーそれでは、こちらが職員用のIDカードとなりますので紛失しないで下さいね」
「ありがとうございます」
夜の帳が降り始めた頃、イデーヴェスの首都惑星『ファストディーン』のセントラルエリアにある『スタッフタワー』では、『臨時職員』の採用試験が行われていた。…採用試験と言っても、人手不足な現状なので余程の事がない限りは採用が決まる簡易的なモノだ。
(まあ、そのおかげで『超絶地方』に行かなくて済んでるだけどな…。…いや、本当技師スキルを身に付けておいて良かった)
彼は安堵しつつカードをファスナー付きの胸ポケットにしまい、とりあえず地上での活動拠点にした格安ホテルに向かう。
(ーさて、『勤務開始』は3日後からだが明日は『挨拶』と『ルート』とかの『準備』に重点を置くから、情報収集は明後日にしよう)
予定を考えていると、この星系特有の交通機関である『リニアレール』のステーションが見えて来た。
(…しかしスゲーよな。あれ一本で、地上の移動をまかなっているんだから。しかも、『学校関係者』は割引で乗れるって……)
改めて『凄さ』に驚愕しつつ、彼は『ライバル』でごったがえすステーションに入って行った。
『ー……』
(…うわ、そこそこ『リード』している奴らばっかりだな。……?)
そこに集う顔ぶれは、『界隈』で注目を集めている者達ばかりだった。…そして、ホームに上がろうとした時ふと『どよめき』が聞こえて来た。
(ーっ!まさか、あの『いかにも』な人だかりは……)
直後、『女性船乗り』達の姦しい声が反対のホームから聞こえて来たので彼は察しつつそちらを見る。
すると、予想通りその中心には『マダム・クルーガー』が慈愛の表情を彼女達に向けていた。
(…やっぱり、此処にはマダムが来ていたか。…って、おいおいおいおいっ!)
ふと、彼女の従者に目を向けた彼はまたまた驚愕する。…何故なら、『その2人』には凄く見覚えがあったからだ。
『ー間もなく、1番ホームにセカンドホテルエリア行き到着します』
そのままフリーズしている内にリニアが来てしまったので、彼は仕方なく『後回し』にするのだったー。