『ーっ!エージェント・プラトー、お疲れ様ですっ!』
離脱したその足でコクピットに入ると、既に遊撃隊のメンバー…『こういう時の為』のバックアップを得意とする『支援班』の5名が着席したままこちらを向き敬礼した。
「お疲れ様です。
ー既に状況は聞いているかと思いますので、速やかに『奪還』並びに『回収』をお願いします」
『ラジャーッ!』
パイロットシートに座りながらオーダーを出すと、彼らは再度敬礼し『担当』するコンソールに意識を集中させる。
「ー『アドベンチャーアーム』、マニュアルモードにスイッチ」
「ラジャーッ!」
2つ目のオーダーを出すと、班長のシン=マクダエル大尉がコンソールを操作する。すると、俺用のモニターに『切り替わり』が表示された。
「『ドラゴアイ』、サーチスタートッ!」
「ラジャーッ!
『ドラゴアイ』、『最優先奪還物』のサーチを開始しますっ!」
次のオーダーに応じたのは、ゴーグルを装着した班員…アリオス=グランセニック曹長だった。
直後、俺のモニターには偽装船の後部がアップで映し出された。すると、偽装船は『透明』になっていきー。
「ーっ!『スピカ号』発見っ!」
「『ドラゴアーム』、『奪還』スタート」
「ラジャーッ!」
すかさずオーダーを出すと、グランセニック曹長の人の右側に座るリエ=トウジョウ中尉が応じた。すると、モニター上では『ドラゴン』のボディからデカい『アーム』が『そこ』目掛けて伸びた。
そして、船体に当たる直前で『アーム』は『ワープ』によって中に直接入った。
「続いて、『重要参考人』のサーチッ!」
「ラジャーッ!
『人感センサー』を起動しますっ!」
「ー『アーム』到達っ!『メインフェーズ』スタートッ!」
画面には再び『クリア』な偽装船全体が映し出される一方で、『アーム』担当のトウジョウ中尉はスピカ号を『掴み始めた』ようだ。
「ーっ!センサーに反応有りっ!『責任者』はどうやら中央に……っ!?」
そう報告したグランセニック曹長は、数秒後にぎょっとした。…まさかー。
「エージェント・プラトーッ!
『異常な生体エネルギー』が『両ターゲット』に接近中っ!」
「…『セカンドアーム』、『回収』開始。
『ファーストアーム』、状況を」
案の定、その予想は的中してしまったが俺は冷静にオーダーを出す。
「ー…っ。『セカンドアーム』、ラジャーッ!」
「『ファーストアーム』、現在船体を『ワープ』中っ!10秒後、船外に出ますっ!」
「了解です。
ならば、出た直後に『ファーストアーム』の出力を『掴む』のみに抑えて下さい」
「っ!ラ、ラジャーッ!」
「『ファーストアーム』、間もなく船外に出ますっ!」
「ー『セカンドアーム』、到達っ!『メインフェーズ』、スタートッ!」
そのオーダーにグランセニック曹長の左隣にすわるルネ=ハロルド曹長が応答した。直後、最初の『アーム』が偽装船から出たようだ。そして、入れ替わるように2つ目のアームが船内に突入したようだ。
「ーエージェント・プラトーっ!
『異常な生体エネルギー』が全て『責任者』の元に向かっていますっ!」
すると、予想通り『エネルギー反応の弱くなった』最初の『アーム』の方に向かって来ていた『モノ』も中央に向かって行くのが分かった。
「『セカンドアーム』へ、『コールドファー』を」
「ーっ!ラジャーッ!
『セーフティーバリア』、展開しま……っ!」
マクダエル大尉がそう言った直後、画面には『異形の大型パワードアーマー』が映し出された。…うわ、キショッ!
『……っ』
俺とメンバーは、全く同じ感想を抱いた。…何せ、そのパワードアーマーの手足に当たる部分からは極彩色の『機械的な触手』が大量に生えていたのだ。
「ー…っ。『セーフティーバリア』、対象に展開完了っ!『コールドファー』発動っ!」
それでも、マクダエル大尉とハロルド曹長は速やかにオーダーをやり遂げてくれた。…その直後ー。
「ーっ!『エネルギー体』、『責任者』の元に到達しますっ!」
「『セカンドアーム』、確認しましたっ!」
すると、モニター上では先程見た巨体触手がルームの下に見える壁を突き破り『責任者』の元に伸びてそいつを掴もうとするが、直ぐに『コールドファー』によって凍結されて…ー。
「(ーっ!?おいおい、『此処まで』とは流石に予想外だそ…)…『ファーストアーム』、至急スピカ号を回収して下さい」
その隙に『セカンドアーム』が回収を始めるが、触手に予想外の変化が起きた。…なんと、凍結した部分が徐々に『解凍』されていっているのだ。なので、最優先でスピカ号を船に収容しておく。
「ら、ラジャーッ!」
「『セカンドアーム』、偽装船通過開始っ!」
「『ファーストアーム』、スピカ号を『ゲスト用格納庫』に収容完了しましたっ!」
「ありがとうございます。…では、トウジョウ中尉は友軍に『前倒し』の連絡を」
「ラジャーッ!」
「ー『エネルギー体』、活動再開っ!」
最初の『アーム』を担当していたトウジョウ中尉が宙域に居る友軍に通信を開始した直後、『眼』のグランセニック曹長が報告した。…早いな。
「ー『セカンドアーム』、偽装船中層を通過っ!」
「『エネルギー体』、ルーム天井へのアタックを開始っ!『責任者』への追跡を開始した模様っ!」
そして、2つ目の『アーム』を担当するステラ=バニングス少尉が途中報告をした次の瞬間には、グランセニック曹長が報告してきた。
「ーエージェント・プラトー、友軍への通信完了っ!
ー『離脱後』、友軍は一斉に艦砲射撃を開始するそうですっ!」
「分かりました」
「『エネルギー体』、天井突破っ!続いて『キャプテンルーム』、突破っ!
『セカンドアーム』に再到達しますっ!」
彼の言うように、触手は『責任者』を捕らえるべくその大きさからは予想出来ない早さでそいつの『異形のアーマー』へ伸びた。…当然、再び凍結するが先程より早く『解凍』が始まった。
「(…『ブラックホール』は『ウシ・トラ・トリ』を使用するから『リンク』に負荷が掛かり過ぎるし、何より『再生』されるだろうから効果は見込めない。…となるとー。)
ー『セーフティーバリア』、解除。『パージワープ』、発動」
「「…っ!ラジャーッ!」」
マクダエル大尉とハロルド曹長は一瞬戸惑うが、直ぐに作業に入ってくれた。
「『セーフティーバリア』、解除完了っ!
『ワープシステム』、出力上昇っ!」
「ー『ファーストワープ』ッ!」
ハロルド曹長が報告した瞬間、マクダエル大尉はスイッチを押した。
すると、モニターの向こうでは『責任者』が例のアーマーごと凍結された状態で『パージ』した。…まあ、神経接続型だろうから本来はきちんとした手順で外さなければならないが、『余裕』はないからせめて悪影響が出ないように凍結状態にしたのだ。
「『セカンドワープ』ッ!」
そして、間髪入れずに彼はもう一度スイッチを押した。直後、そいつは『トリ』の中に飛ばされた。
「ーホールド、解除っ!」
そしてすかさず、2つ目の『アーム』は例のアーマーを離した。するとー。
「ー…っ。『エネルギー体』、追跡中断っ!
「『セカンドアーム』、偽装船離脱っ!……回収、良しっ!」
「メインブースター起動。全速力で安全域まで撤退します」
「ラジャーッ!」
「ーっ!『エネルギー体』、偽装船の侵食を開始っ!船体表面への突出まで、およそ180カウントッ!」
「ありがとうございます、グランセニック曹長。もう、大丈夫ですよ」
「…っ。ラジャー」
「メインブースター、オンッ!」
彼がゴーグルを外した直後、『ドラゴン』は急加速し艦隊の後ろに待避した。…そして、その数10秒後。偽装船は、艦隊の一斉砲撃によって宇宙の藻屑となるのだったー。