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奪還⑨

『ー……っ』

 ついにジェネレーターフロアにたどり着くというところで、不意にカノンが膝をついた。

『…っ!?ど、どうしたんですか?』

『……?』

 当然、『インスタント・アルファチーム』の面々は動揺するが俺は慌てずに彼女な寄り添った。

『…-大丈夫-か?』

『…はい、-問題ありません-。…少し、-疲れた-だけです……』

 彼女は、たどたどしくそう答えた。…どうやら、『外』でかなりの事態が発生したようだ。

『…無理はするな。…っと、後は休んでいろ』

『……はい』

『-レッグ・レストトランスポート-』

 優しくそう言いながら彼女を抱き抱え、彼女の乗っていた『ウマ』にオーダーを出す。すると、『ウマ』はバイクモードから自走式の『仮眠ベッド』に変形した。

 そして、俺はその上に彼女を横たえた。

『ーあ、あの、もしかして、-ウマ-とかを出したりするって負担が……?』

 それを見ていたチームの誰か…確か、女性傭兵の人が不安そうに聞いて来た。


『…すみません、-詳細-は-機密-に関わるのでお答えする事は出来ません。

 …ただ、-休息-を取れば回復するのでご安心下さい』

『…そうですか』

『……』

 それを聞いて彼女は少しほっとするが、他の面々からは『疑問』の空気がひしひしと伝わって来た。

 ーまあ、ぶっちゃけると『船の-超絶システム-』を使っているせいで『エネルギー不足』に陥ってるだけなんだけどね。…そして、そのせいで船に『帰還』がしにくくなっている訳だがなんとかなりそうで良かった。

『ー…っ。…ロック解除、完了っ!』

 俺自身も少しほっとしていると、ドアロックを解除していたアンダーソンさんが全員に聞こえるように言った。

『…では、クルー2人とアール(ウェンディ)少尉を残して突入しましょう』

『…分かりました』

『…了解』

『…っ!お任せ下さい』

『……』

 俺は再度気を引き締めてメンバーに告げる。すると、彼女達はカノンの傍で円陣を組み残りのメンバー気持ちを切り替えて武装を構えた。


『ー3カウント。

 3、2、1、GO!』

 そして、俺はカウントの後先陣を切って突入しジェネレータールームに突入した。……おいおい、『マジ』かよ。

『……』

 直後、俺とメンバーは困惑する。…実は、例によってきちんと事前に『中』を調べたのだがどういう訳かジェネレーター以外の『反応』がなかったのだ。…最初は、『上手く誤魔化して』いるのかと思ったが改めて確認しても『反応』はなかった。

『…警戒しつつ、ジェネレーターを停止させます』

『……』

 メンバーは静かに頷き、『ウマ』に乗ったまま周囲を警戒した。

 そして、俺は端末を操作し『とある図面』…この偽装船の『元になった貨物船』のジェネレーター部分の情報が記載されたデータを開く。

 ー…『非常停止スイッチ』は裏手か。

 俺はエアウィンドウを閉じ、すぐにそこに向かった。…そして、不気味なほど何の妨害も受けずにスイッチの元にたどり着き一旦『ウマ』から降りた。

 ー…これだな。

 ベッドライトでスイッチの場所を確認し、カバーを強引に外して強めにそれを押した。


『ー非常停止スイッチ、起動。-エネルギードレインシステム-ヲ強制終了シマス』

 ー………は?

 直後、アラートがルーム内に鳴り響くと共に『凄く不穏』なアナウンスが流れた。…『エネルギードレイン』……。……っ!

『ーっ!マスターッ!

 直ぐに-そこから-離脱をっ!』

 直感的に『最悪の結論』を導き出した直後、ルームの外に居るカノンから通信が飛んで来た。

 ー次の瞬間。巨大なジェネレーターの上部から『嫌な予感しかしない激しい音』が聞こえて来た。…それも、一ヶ所だけではなく複数の場所から『何度』も聞こえて来た。

『ー総員、撤退っ!』

『ーっ!ら、ラジャーッ!』

『…な、何が……』

『良いから急げっ!』

 俺は『ウマ』に股がりながらメンバーに指示を出し、直ぐ様その場から離れた。

 ーその数秒後、先程まで聞こえていた音は『一瞬』止まる。…そして、直後複数の箇所から『轟音』が聞こえた。

『……っ!?あ、あれは……』

『…嘘……』

『…なんて、モノを……』

 メンバーは、『飛び出したモノ』を見て唖然としていていた。

 ー…それは、巨大なジェネレーターに匹敵する赤黒く極太な『触手』だったのだ。


『ー…まさか、あれは、-生体エネルギー式-ジェネレーター……』

『…嘘、それって-禁忌-扱いの……』

『ー直ぐに-全チーム-に連絡をっ!』

『『ッ!ラジャーッ!』』

 最後なかルームから離脱した俺は入口付近に居た遊撃隊メンバーにオーダーを出す。すると、2人は敬礼の後直ぐに『ウマ』に乗り通信を始める。

『ーエージェント・プラトー、準備完了ですっ!』

『分かりました。では、撤退っ!』

 直後、ヴォルス中尉が報告したので俺はメンバーにオーダーを出した。そして、全員で速やかにジェネレータールームを離脱した。

『ー…マスター、-皆様-。30カウント後、皆様の近場に-ダイレクトコネクト-を実行します。

 …-リミット-は、120秒です。

 …それと、申し訳ありませんが-乙女-の奪還はー』

 走り出して数10秒後、更に変形した『ウマ』の中で休むカノンから報告が来た。

『ー…謝る必要はないさ。

 大丈夫。彼らなら、-マニュアルコントロール-を上手に扱えるさ。

 ーそうでしょう?』

『ーお任せ下さいっ!』

 俺は彼女の言葉を遮り、確信を持って言った。すると、『船』に居るメンバーは自信満々に答えた。


『…左様ですね。マスターが信じる方々ならば、何の心配も要りませんでしたね』

『そういう事だ』

『…っ、マスター、間もなく-ダイレクトコネクト-を実行します。

 カウント10。

 ー10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0』

 そんなやり取りをしていると、カノンはカウントダウンを始める。…そして、その終了と同時に数10メートル先のドアから『轟音』が聞こえた。

『ーっ!?エージェント・プラトーッ!』

『…ああ、そういえば-具体的-には説明していませんでしたね。

 ー…-ダイレクトコネクト-とは、その名前の通り-直接的な移動手段-の事です』

 そんな説明をした直後、鋼鉄のドアは吹き飛んだ。…豪快だなー。

『…っ!マジッスか……』

 そして、そこから更に『通路』が伸びて来た。…あれこそが、『ダイレクトコネクト』、正式名称『ドラゴロード』である。

『あ、中は-ストレート-なんでこのまま全速力でー』


『ーこちら、インスタント・チャーリーチームッ!緊急事態発生ッ!』

 そのまま飛び込もうとした時、レンハイム少佐の声が聞こえて来た。

『(…やれやれ、思うように行かないな。)こちら、インスタント・アルファチーム。プラトーッ!』

『…っ!エージェント・プラトー…。

 …こっちは、たった今『ドラゴン』に到着したのだが……友軍からとんでもない情報が来た。

 ー…-後1人-足りないようだ』

 ………マジかよ。

 彼の報告に、思わず頭を抱えそうになった。

『(…多分、『責任者』だな。)…分かりました。

 ー直ぐに、-ブリッジ-にその事を連絡して下さい』

『…ラジャーッ!』

『……不運な人ですね』

『…いや、もしかすると-自ら進んで-陥ったんじゃ~?』

『…どっちにしても、こちらにしてみれば厄介極まりない存在だ』

 通信が切れると、メンバーは遠慮なくコメントをした。

『全くです…』

『ー皆様、間もなく-アドベンチャーカノープス-に到着しますので減速をお願い致します

 』

 ため息を吐いていると、カノンがアナウンスを流したので俺とメンバーはゆっくりとブレーキを掛け始めたー。


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