『ー……っ』
ついにジェネレーターフロアにたどり着くというところで、不意にカノンが膝をついた。
『…っ!?ど、どうしたんですか?』
『……?』
当然、『インスタント・アルファチーム』の面々は動揺するが俺は慌てずに彼女な寄り添った。
『…-大丈夫-か?』
『…はい、-問題ありません-。…少し、-疲れた-だけです……』
彼女は、たどたどしくそう答えた。…どうやら、『外』でかなりの事態が発生したようだ。
『…無理はするな。…っと、後は休んでいろ』
『……はい』
『-レッグ・レストトランスポート-』
優しくそう言いながら彼女を抱き抱え、彼女の乗っていた『ウマ』にオーダーを出す。すると、『ウマ』はバイクモードから自走式の『仮眠ベッド』に変形した。
そして、俺はその上に彼女を横たえた。
『ーあ、あの、もしかして、-ウマ-とかを出したりするって負担が……?』
それを見ていたチームの誰か…確か、女性傭兵の人が不安そうに聞いて来た。
『…すみません、-詳細-は-機密-に関わるのでお答えする事は出来ません。
…ただ、-休息-を取れば回復するのでご安心下さい』
『…そうですか』
『……』
それを聞いて彼女は少しほっとするが、他の面々からは『疑問』の空気がひしひしと伝わって来た。
ーまあ、ぶっちゃけると『船の-超絶システム-』を使っているせいで『エネルギー不足』に陥ってるだけなんだけどね。…そして、そのせいで船に『帰還』がしにくくなっている訳だがなんとかなりそうで良かった。
『ー…っ。…ロック解除、完了っ!』
俺自身も少しほっとしていると、ドアロックを解除していたアンダーソンさんが全員に聞こえるように言った。
『…では、クルー2人とアール(ウェンディ)少尉を残して突入しましょう』
『…分かりました』
『…了解』
『…っ!お任せ下さい』
『……』
俺は再度気を引き締めてメンバーに告げる。すると、彼女達はカノンの傍で円陣を組み残りのメンバー気持ちを切り替えて武装を構えた。
『ー3カウント。
3、2、1、GO!』
そして、俺はカウントの後先陣を切って突入しジェネレータールームに突入した。……おいおい、『マジ』かよ。
『……』
直後、俺とメンバーは困惑する。…実は、例によってきちんと事前に『中』を調べたのだがどういう訳かジェネレーター以外の『反応』がなかったのだ。…最初は、『上手く誤魔化して』いるのかと思ったが改めて確認しても『反応』はなかった。
『…警戒しつつ、ジェネレーターを停止させます』
『……』
メンバーは静かに頷き、『ウマ』に乗ったまま周囲を警戒した。
そして、俺は端末を操作し『とある図面』…この偽装船の『元になった貨物船』のジェネレーター部分の情報が記載されたデータを開く。
ー…『非常停止スイッチ』は裏手か。
俺はエアウィンドウを閉じ、すぐにそこに向かった。…そして、不気味なほど何の妨害も受けずにスイッチの元にたどり着き一旦『ウマ』から降りた。
ー…これだな。
ベッドライトでスイッチの場所を確認し、カバーを強引に外して強めにそれを押した。
『ー非常停止スイッチ、起動。-エネルギードレインシステム-ヲ強制終了シマス』
ー………は?
直後、アラートがルーム内に鳴り響くと共に『凄く不穏』なアナウンスが流れた。…『エネルギードレイン』……。……っ!
『ーっ!マスターッ!
直ぐに-そこから-離脱をっ!』
直感的に『最悪の結論』を導き出した直後、ルームの外に居るカノンから通信が飛んで来た。
ー次の瞬間。巨大なジェネレーターの上部から『嫌な予感しかしない激しい音』が聞こえて来た。…それも、一ヶ所だけではなく複数の場所から『何度』も聞こえて来た。
『ー総員、撤退っ!』
『ーっ!ら、ラジャーッ!』
『…な、何が……』
『良いから急げっ!』
俺は『ウマ』に股がりながらメンバーに指示を出し、直ぐ様その場から離れた。
ーその数秒後、先程まで聞こえていた音は『一瞬』止まる。…そして、直後複数の箇所から『轟音』が聞こえた。
『……っ!?あ、あれは……』
『…嘘……』
『…なんて、モノを……』
メンバーは、『飛び出したモノ』を見て唖然としていていた。
ー…それは、巨大なジェネレーターに匹敵する赤黒く極太な『触手』だったのだ。
『ー…まさか、あれは、-生体エネルギー式-ジェネレーター……』
『…嘘、それって-禁忌-扱いの……』
『ー直ぐに-全チーム-に連絡をっ!』
『『ッ!ラジャーッ!』』
最後なかルームから離脱した俺は入口付近に居た遊撃隊メンバーにオーダーを出す。すると、2人は敬礼の後直ぐに『ウマ』に乗り通信を始める。
『ーエージェント・プラトー、準備完了ですっ!』
『分かりました。では、撤退っ!』
直後、ヴォルス中尉が報告したので俺はメンバーにオーダーを出した。そして、全員で速やかにジェネレータールームを離脱した。
『ー…マスター、-皆様-。30カウント後、皆様の近場に-ダイレクトコネクト-を実行します。
…-リミット-は、120秒です。
…それと、申し訳ありませんが-乙女-の奪還はー』
走り出して数10秒後、更に変形した『ウマ』の中で休むカノンから報告が来た。
『ー…謝る必要はないさ。
大丈夫。彼らなら、-マニュアルコントロール-を上手に扱えるさ。
ーそうでしょう?』
『ーお任せ下さいっ!』
俺は彼女の言葉を遮り、確信を持って言った。すると、『船』に居るメンバーは自信満々に答えた。
『…左様ですね。マスターが信じる方々ならば、何の心配も要りませんでしたね』
『そういう事だ』
『…っ、マスター、間もなく-ダイレクトコネクト-を実行します。
カウント10。
ー10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0』
そんなやり取りをしていると、カノンはカウントダウンを始める。…そして、その終了と同時に数10メートル先のドアから『轟音』が聞こえた。
『ーっ!?エージェント・プラトーッ!』
『…ああ、そういえば-具体的-には説明していませんでしたね。
ー…-ダイレクトコネクト-とは、その名前の通り-直接的な移動手段-の事です』
そんな説明をした直後、鋼鉄のドアは吹き飛んだ。…豪快だなー。
『…っ!マジッスか……』
そして、そこから更に『通路』が伸びて来た。…あれこそが、『ダイレクトコネクト』、正式名称『ドラゴロード』である。
『あ、中は-ストレート-なんでこのまま全速力でー』
『ーこちら、インスタント・チャーリーチームッ!緊急事態発生ッ!』
そのまま飛び込もうとした時、レンハイム少佐の声が聞こえて来た。
『(…やれやれ、思うように行かないな。)こちら、インスタント・アルファチーム。プラトーッ!』
『…っ!エージェント・プラトー…。
…こっちは、たった今『ドラゴン』に到着したのだが……友軍からとんでもない情報が来た。
ー…-後1人-足りないようだ』
………マジかよ。
彼の報告に、思わず頭を抱えそうになった。
『(…多分、『責任者』だな。)…分かりました。
ー直ぐに、-ブリッジ-にその事を連絡して下さい』
『…ラジャーッ!』
『……不運な人ですね』
『…いや、もしかすると-自ら進んで-陥ったんじゃ~?』
『…どっちにしても、こちらにしてみれば厄介極まりない存在だ』
通信が切れると、メンバーは遠慮なくコメントをした。
『全くです…』
『ー皆様、間もなく-アドベンチャーカノープス-に到着しますので減速をお願い致します
』
ため息を吐いていると、カノンがアナウンスを流したので俺とメンバーはゆっくりとブレーキを掛け始めたー。