ーSide『インスタント・チャーリーチーム』
『ー…この足音は、-ネズミ-達ですっ!」
『……そうか』
『…ふう』
『耳』で確認したハウは、味方に告げた。すると、全員僅かに気を緩めた。
『……』
『…お姉様?』
…しかし、クルーガーは疑問の表情を浮かべていた。
「…おかしいですわね。私の放った『兵団』はそんなにいなかったと思うのですが…?」
『……え?』
『……っ!まさか、-フェイク-なのですかっ!?』
『……』
彼女の言葉に、全員が気を引き締めた。…そして、さほど時を置かずに『兵団』は姿を見せた。
『…なんて数……』
『…総員、-ヴァイオレット-・セット』
『『イエッサーッ!』』
『…了解です』
レンハイムのオーダーに、クルーガーを除くメンバーは『グラビティガン』を構えた。…直後、こちらを発見した『兵団』は突如『2つのグループ』になり『少数のグループ』がこちらに向かって来た。
『……?』
「……っ!お待ちになってっ!
ー『彼ら』は『本物』ですわっ!」
その行動もさることながら、少数のグループが『ゆっくり』と迫って来る事にメンバーは疑問を抱く。…すると、クルーガーは直感的にそう告げた。
『…本当ですか?』
「…ええ。…あ、念のため『こちら』をお使いになってみて下さい」
彼女はそう言って、レンハイムに大きく丸いメカを渡す。
『…これは。…ー』
彼はそれを床に置き、てっぺんにあるスイッチを押した。すると、前面部分が開き小さな『出入りスロープ』が出て来た。
『……っ!』
直後、少数のグループは急に駆け出し素早くメカ…『ホーム』に入って行った。
『ー帰還ヲ確認シマシタ』
『…本当に-本物-だったんですね』
『…良く分かりましたね、マダム』
電子音声が聞こえた事で、ルーシュはホッとした。…一方、オークレーは感心したようにクルーガーを見た。
「…まあ、-メイド-さん程ではありませんが私も-本物-を見分けられる目は持っていますから」
『…そういえば、お姉様は-初代-と面識があったのでしたね』
『ええ。…それにしても、どうして-本物-と-偽物-が行動を共にしていたのでしょうか……』
『…もしかすると、-連中-を捕らえた事がきっかけに?』
クルーガーの疑問に、マクシミリアはチラリと後ろを見る。…そこには、『偽装』の上に『ショックワイヤー』が巻き付いた敵船のクルー達が居た。
『…それか、-異常-故でしょうか?』
「…推測が出来ませんわね。-兵団-を含めた諸々に関しては私でも知らない事がまだまだありますから」
『…そうですか』
『…けれど、このままという訳にもいきません。…とりあえず、-味方-という事で対応します』
『…分かりました』
『ー兵団ノ休憩ガ終了シマシタ』
レンハイムが『レプリカ』達の扱いを決めると、タイミング良く『ホーム』からメッセージが流れた。
「…そうだ、『ツーオ』さん。『レプリカ』の方は『オリジナル』に任せましょう」
『…大丈夫なのですか?』
「…少なくとも、-離反-はしないと思いますわ。
…私見ですが、『レプリカ』達を率いて来たのは『オリジナル』達でしょう」
『…マジですか……。…本当、どうゆう-プログラム-を搭載しているんでしょうね?』
「…まあ、だからこそ『カノープス』は『シークレット扱い』を受けているのでしょうね」
『…なるほど』
『…分かりました。では、オーダーをお願い出来ますか?』
「お任せをー」
クルーガーは、素早く新たなオーダーを入力した。…すると、再びスロープが出来上がり『兵団』が出動して行くのだったー。
◯
ー新たな『戦力』を得た俺と『インスタント・アルファチーム』は、道中襲い掛かって来る『敵』を撃退しながら進軍し遂にジェネレーターの2ブロック前辺りまでたどり着いた。
『ー…KEE……』
『…確認しました。
ーどうやら、-2種類-のエネミーがかなりの数居ます』
そして、ドアの前で『ネズミ』達にチェックをさせていると彼らは独特の『警告音』を発した。…まあ、当然『結集』しているか。
『…エージェント・プラトー、どうしますか?』
『そうですねー(…凶悪な『マジックアーム』と敵クルーの混成チームか。…厄介だな。
…『ブラックホール』は無差別に飲み込むし、『ショックやワープ』だと無限に再生されてジリ貧になる。…本当、打つ手なしだ。
ー…と、普通なら『敗け確』な状況だが残念ながら最後に笑うのはこちらだ。)
ー…どうやら私は、敵を甘く見過ぎていたようです。…まさか、-あんなモノ-を生み出していたとは』
『…ええ。恐ろしい連中ですー』
俺の言葉に、カノンは同意しつつ『準備』を始める。当然、俺同様彼女も微塵も諦めていなかった。
『……』
『…おかげで、-とっておき-のモノを使うハメになりそうです』
『…っ!』
ヴォルツ中尉達は、重い雰囲気を漂わせるがこちらが明るく告げるとその空気は霧散した。
『…本当ッスか?』
『…びっくりなんですけど~?』
『…それで、その-とっておき-とやらは?』
『まあまあ、そう慌てないで下さい。…何せ、-ブラックホール-同様慎重に扱わないといけないモノなので、少しお待ち下さいー』
俺はアレイスターさん達にそう言い、カノンの方を見た。…すると、ホントに『あと少し』で準備が終わりそうだった。
『…そういえば、なんでレプリカ達も-真新しいホーム-に回収したんですか?』
『…まあ、見ていて下さいー』
『ー大変お待たせしました』
アイーシャさんの質問を先送りにしていると、カノンは『2つのホーム』から手を離し深く一礼した。
『…では、お見せしましょう』
『トルーパー、ゴー』
カノンにアイコンタクトを送ると、彼女はオーダーを出す。すると、2つのホームから『ネズミ』達が出動して来た。
『……変わったようには見えないんだけど?』
『…-彼ら-で、一体何を?』
『……』
アインさんやウェンディ少尉等の女性陣は、困惑の雰囲気をこちらに向けた。
『まあ、-はっきり-と変わっているって分かったら警戒されますからね。
ーマウスオープン』
『……っ!』
『ネズミ』達はオーダーに従い一斉に口を開けた。…その中にある特徴的な『前歯』を見たメンバーはぎょっとする。
『…なんか、-凄いコト-になってますね』
『……-どうなる-かは、実際見た方が早いのかな?』
『その通りです。…では、始めましょう。
ーカノン』
『イエス、マスター。
トルーパー、-ミッションスタート-』
『KEE!』
彼女がオーダーを出すと、まず『オリジナル』達がドア…ではなく手前の床に向かった。
ーすると、彼らは床を瞬く間に穴だらけにして行った。
『KEE~』
『キーッ!』
そして、数体がこちらに向かって叫ぶと『レプリカ』達は直ぐ様そちらに向かった。…そして、『オリジナル』がその穴に『レプリカ』がその後に続いた。
『ーモニタリングを開始します』
直後、俺達の前に複数のエアウィンドウが展開した。…うん、やっぱ『黒の前歯』は早いな。
ちょうどその時、彼らの真上に『熱源』があった。
ーそして、次の瞬間。それぞれのウィンドウいっぱいにゴツいブーツが『上』から映り込んだ。そして、間髪入れずに『レプリカ』達がブーツに飛び掛かる。
『ーっ!?』
そして、『レプリカ』達がそのブーツ…パワードアーマーのレッグパーツに噛みついた瞬間それを装着している敵クルーは悲鳴を上げた。…『前歯』が『対エレキ装甲』を容易く削って行き、中に直接『エレキショック』を流されたからだ。…良い『素材』使ってるな……お。
感心していると、気絶したクルー達の足が次々とウィンドウから消えていった。お恐らく、マジックアームがどかしているのだろう。
ーそして、今度はマジックアームがウィンドウに映った。…うわ。
直後、マジックアームは『手を細分化』させその『小さな手』を恐ろしく早い速度で伸ばして来た。…当然、後退等出来る訳がなく『何体』かは捕獲されてしまった。
『ーっ!?』
そして、捕まえた『手』は再び変貌を遂げる。…なんと、『手のひら』の中心に『口』のようなモノが出現したのだ。…キモッ!
ドン引いていると、『口』から舌が伸びて来て『レプリカ』を完全にホールドし『中』へと引き摺り込んでいく。
ーそのまま成す統べなく飲み込まれていくかと思ったら、『そのレプリカ』達は『青白い前歯』…特別な『エネルギートゥース』で舌に噛みついた。
『ー……嘘』
直後、舌はその動きを止める。…『-アイストゥース-』によって『全体』が凍結したからだ。
『ーっ!?』
すると、10秒も経たない内に『予想通りの事』が発生するのだったー。