ーSide『ライヤー②』
(ー…な、なんだ、あの馬鹿げた武装は……。)
『特別なルーム』のその中で、男は『先程の光景』に唖然としていた。
(…小規模の『ブラックホール』に高出力の『ワープキャンセラー』だと?未だ、どの『ファクトリー』も実現出来ていない事をあの男は簡単に……。…マズイ、いくら『この武装』といえどアレは防ぎようがないぞ……。
…く、とりあえずー)
男は焦りながら、再び船内を『視た』。…そう。通信機能は潰されているにも関わらず、男ははっきりと船内を『見回し』ているのだ。
(ーっ!?くそっ、どんどん減っている…。……っ、『合流』されたかっ!)
改めて船内を見ると、部下の減少に歯止めが掛かる様子がない事に更に焦り出す中ふと下層付近を見ると、忌々しい特殊部隊が固まって動いているのを見つけた。…そして、その1人の背中にそもそもの原因である憎きキャプテン・クルーガーが背負われていたを見てしまい男は激しく『武装』に包まれた手で近くの壁を殴った。
ー…すると、『視界』に映る彼らは何故か足を止めた。
(…っ!……いや、ダメだ。『足止め』程度にしかならないしなによりあまりやり過ぎると『壊れて』しまう。
…っ!またか……)
それを見た男は、一瞬喜ぶが直ぐ浮かんだアイディアを否定した。…すると、その時向こうサイドの『行動』が映し出された。
(…全く、『こちらの組織』と違って反吐が出る程『お優しい事』………そうか、『その手』があったか)
男は『偽善的』な無力化行動をしている敵に苛立ちを覚えるが、その瞬間『最適解』が浮かんだ。
(…ハハハハハハッ!『その甘さ』が貴様らの敗因だっ!)
男は勝利を確信しながら『ワープシステム』を起動し、『偽装チーム』を『3部隊』に分けて敵の近場に転送する。
ーそして、直後に『特別なマジックアーム』を『偽装チーム』の直ぐ近くで発動させる。…すると、『それら』は『味方』である筈の彼らを捕獲しそのまま敵の元に向かって行ったー。
◯
ーSide『インスタント・ブラボーチーム』
『ーっ!…今のは……』
『…嫌な予感のする音だな』
狭い通路を走る『最後の即席チーム』の耳に、派手な音が聞こえた。
『…どうする、スターリン大尉』
先頭を走るオルランドは、並走するスターリンに訪ねた。
『…近くに階段があれば、そこに退避を。
無ければ迎撃しましょう』
『ラジャーッ!』
『了解っ!』
マグナスはじめ、トレジャーハンターのランペルージに傭兵のファルムとセイランドの面々…『インスタント・ブラボーチーム』は返事をして走りながら武装を取り出した。
『ー…ぅわぁーーーーーっ!?』
『…んでーーーーっ!?』
直後、進行方向から悲鳴が聞こえて来た。…その原因は直ぐに分かった。
『ーっ!?あのスーツは…』
『……救出を優先しますっ!
全員、-ホワイト-セットッ!フォーメーション-ツヴァイコネクト-ッ!』
『了解っ!』
『自分達と同じスーツ』を来た『彼ら』を見てスターリンは数秒考るが、即座に指示を出し『ドラゴガン』を構え脇にある白いボタンを押した。すると、残りの5人も同じ動作をしつつマグナス、ランペルージ、ファルムの3人は即座に後ろを向き、オルランドとセイランドはスターリンの両脇にポジショニングした。
『ーっ!?た、助けてくれーーーーっ!』
『フルファイアッ!』
『マジックアーム』に捕獲されたままこちらに突っ込んで来た『彼ら』は、スターリン達を見つけ救援を求めた。
直後、スターリン達は『前と後ろ』に向けて一斉にビームガンのトリガーを引いた。
『ーっ!』
すると、ビームは2つの大きな『ゲート』となり…数秒後に『彼ら』とマジックアームの大群は前方のゲートに飲み込まれる。
『ー…ぅおおおーーーっ!?』
そして、更に数秒後には後方のゲートから『彼ら』とマジックアームの大群が出て来た。
『…-フロント-、セーフティ・アンロックッ!
-ワープ・シャットアウト-ッ!』
『『オーケーッ!』』
そのタイミングで、スターリンは両サイドの2人とその手に握るビームガンに特殊なオーダーを出した。
『ー…どわっ!?』
すると、ビームガンによって発生した前方のゲートは『強制的に消滅』した。…当然、マジックアームも『物理的に切断』され『彼ら』は解放された。…その直後、チーム全員は驚愕する事になる。
『ー…っ!』
『…うわ……』
切断されたマジックアームの断面は、まるで『生物』のようなグロテスクなモノだったからだ。…しかし、それは『序の口』だった。
『……っ、-バック-、キャンセルッ!』
『『……』』
しばらく唖然としていたマグナスは、ハッとして両脇の2人にオーダーを出す。…2人は無言でゲートを閉じた。
『……っ!?おいおいおいっ!』
『冗談キッツいぞっ!?』
『それ』を見た前と後ろに居る面々は、ほとんど同時に良く似たコメントをした。
ー後ろでは、床の数十箇所に穴が開き『彼ら』を捕らえていたアーム部分が『別』のアームによってそこに落ちた。…その穴の中では不気味な音が聞こえて来た。
そして、前では切断部分が荒ぶりはじめ……『再生』を始めたのだ。
『ー…-エスケープ-ッ!』
『っ!ラジャーッ!』
スターリン達は直ぐに、『彼ら』の元に駆け寄りビームガンを床に向ける。
『ー下フロアの安全確認っ!』
『ファイアッ!』
走りながら『耳』で下を確認したマグナスが叫ぶと、スターリン達は床に向かってトリガーを引いた。
ーすると、床にゲートが展開し全員は下フロアに落下した。
『…げふっ!?』
『ぶへっ!?』
スターリン達は華麗に着地したが、『彼ら』は着地に失敗した。
『キャンセルッ!……ー』
そして、直ぐにゲートを閉じスターリン達は協力して周囲の安全を確認した。
『ー反応、なし』
『こっちもだ』
『…ふう。…さてー』
スターリンはホッと息を吐き、ビームガンの『エネルギー残量』を確認した。…すると、大幅に減っていた。
『ーやはり、人数が多かったのでかなり減っていますね…』
『…全く、-なんでボケッと-してたんですかねぇ……』
『ー…す、す…ない。-装備バック-…落とし…しまった…だ』
ファルムとセイランドに苛立ちを込めてじっと見られた『彼ら』は、『やや壊れた音声』で弁明した。
『…そうか。
ーなんて言うと思ったか?』
『…残念だが、-今の発言-でお前達が-偽者-である事が確定した』
しかし、スターリン達は即座に『とあるビームガン』を向けた。…着地の時点で疑っていたが、そもそも『そんな事』は起こりにくいからだ。
『……っ!』
『じゃあ、そう言う訳でー』
そして、スターリン達はショックガンのトリガーを引いた。
『ー…っ!……?………っ』
連中は身体をビクッとさせたが、いつまで経っても『夢の世界』へのトラベルが始まらないで唖然とした。…そして、自分達の身に起こった事を把握する。
ー連中の身体には、『黄色いワイヤー』…『ショックワイヤー』が巻き付いていたのだ。
『…立て』
『…っ!……な…で?』
俺の言葉に、連中は『察し』立ち上がった。そして、1人が疑問を口にした。
『…どうやらアンタ達は、-捨て駒-されたようだしな。非常に気は進まないが、放置して-何か-あったら目覚めが悪いからこうしながら-連行-してやるよ』
『……っ』
『…ハッ、…優し…事で』
『なんとでも言え。…それが、-こっち側-のルールだ。…おら、さっさと乗れ』
別の誰かが悪態を付くが、俺は気にせずにカノンが用意した『護送用レッグ』にそいつらを詰め込んだ。
『ー…しかし、向こうもなりふり構って来なくなりましたね』
『…ああ。まあ、-この程度-でどうにかなると思っている時点で大した事はない……とは言い難いかな』
俺は、先程の光景…『生体兵器』というべきマジックアームを思い出した。
『…謎が解けてしまいましたね』
『…-最悪の解答-だがな。…はあ、なんてモノを……』
『…他の皆様は、大丈夫でしょうか?』
『…そうだなー』
『ー…キャプテン・プラトー。出発準備完了しました。……』
カノンと話していると、アイーシャさんが声を掛けて来た。…その顔は見えないが、はっきりと『不安』を抱いていた。
『…焦りは禁物ですよ』
『……分かっています。……本来なら、-お姉様-は私達がお助けする筈だったのにー』
『ー大丈夫ですよ。…きっとクルーガー女史は無事です。
その証拠に、未だ敵は-それを見せつけて来ていない-んですから』
『……っ』
俯いていた彼女は、ハッとして顔を上げた。
『…それに、彼女には-とっておき-の味方がいます。…それでも、信じられませんか?』
『…とんでもないです。
ーだって、-私達-が此処に乗り込めているのは-それら-のおかげなんですから』
彼女は首を振るい、明るい声で言った。
『そうです。…でも、なるべく早くー』
『ーっ!マスター、皆様。ご注意下さい。…複数の-熱源-が接近しています』
『……っ』
『やれやれ、忙しいな。
ー…どのくらいで来る?』
『…おおよそ、5分程かと』
…少し、『遅い』な。
『…え?……て事は、-キモいヤツ-じゃないって事ッスか?』
『…どうでしょうね。…-フェイク-の可能性もあります。…とりあえず、いつでも動けるようにしていて下さい』
『…そうッスね』
『…了解』
直ぐ後ろに居たアレイスターさんとアイーシャさんは、直ぐにグレネードを構えた。…当然、最前列の俺とカノンも備えておく。
『ーっ!』
そして、待ち構える事5分後。いつまで経っても派手な音は聞こえて来なかったが、その代わり『独特の足音』が聞こえた。…なるほど。
『……これって』
『…いや、-それこそ-ですよー』
『ー……?』
ちらりと隣のカノンを見ると、どういう訳かカノンは疑問の雰囲気を纏っていた。
『…どうした、カノン?』
『…申し上げます。
ー近付いているのは、-こちら-と-あちら-の-兵団-です』
カノンは間を置き、途轍もなく不可解な事を口にした。