目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
奪還⑤

『ーセーフティ・リ・ロック』

 そして、数分後には完全に『それら』は全て吸い込まれたので俺は『終了』のオーダーを出した。

『…スッゴ~』

『…とんでもないわね……』

『ー…マスター、お手数をお掛けして申し訳ありありませんでした』

『ウマ』に乗る女性陣が唖然とするなか、先頭を走っていたカノンは申し訳なさそうにしていた。

『謝る事はない。むしろ、良く皆さんを無事に此処まで連れて来た。

 流石は俺のメイドだ』

『…恐縮です』

『…ええ。その通りです』

『…彼女の素早い判断がなかったら、かなり危なかったと思う』

 すると、アイーシャさんとアインさんも同意した。

『…良かった。2人も合流していたんですね』

『はい、わりかし早めに。…すみません、まだ-お姉様-は保護出来ていません……』

『…無理もありません。多分、カノンが予想している筈ですが-ストーカーチーム-は強力な-キャンセラーを装備しています。

 ーだから、決して焦ってはいけませんよ?』

『…っ、はい』

『…了解、キャプテン』

 姉妹の心境を察し忠告すると、2人はしっかりと頷いた。


『…あの、キャプテン・プラトー。これから、どうしますか?』

 すると、フォローが済むのを見計らいサクルさんが挙手をして聞いて来た。

『…そうですね。

 ーカノン』

『……。…周囲の安全確認。

 …では、先程起きた事を-お見せ-しますー』

 そう言うとカノンは、俺と男性チームに『ムービー』を見せた。

 ー…『それ』は、突然だった。まず、天井と床の複数箇所が『開い』たのだ。それも、小さなサイズではなくかなり大きなサイズが。

 なので、彼女達は急停止しようとするがカノンは『反転準備』を強く進言した。

 …その直後だ。穴から大量の『あのマジックアーム』が飛び出して来た。

『ー…災難だったな、少尉』

『…ホント、同じフロアにエージェント・プラトーが居てくれて良かったです。…しかし、-アレ-は一体なんだったのでしょうか?』

 中尉と話していたウェンディ少尉は、ふと疑問を口にした。


『…そうですね……。

 ーカノン、率直に聞きたいんだが-アレ-を見て君は-どう感じた-?』

『……。…最初に感じたのは、-異常-でした。…穴が開いた瞬間、暗闇の向こうから何か得体の知れないモノが迫っているのを感じ即座に皆様に-撤退を進言を致しました。

 …そして、-アレら-が出て来た瞬間に感じたのは途轍もない-不快感-でした』

『…やっぱり、君もそう感じたのか。…となるとー』

『ー…こりゃ、-特大級にヤバいモノ-の予感がしますね』

『……っ』

『…ど、どういう事ですか?』

『…実はですねー』

 俺は女性陣に『推察』を話した。…すると、彼女達から不安な様子が伝わって来た。

『ー…なるほど。…つまりは、-それ-をなんとかしない事には作戦の続行は難しいという事ですか……。…ホント、どうしたら……』

『とりあえず、先程出した方針は私の担当である-ジェネレーターの停止-を優先的に行う事です。…まあ、確実に-妨害-は受けますがー』

『ーっ!』

 話している最中、再び『アラート』が鳴り響いた。どうやら、また『分断』するつもりらしい。


 ーしかし、いつまで経っても『飛ばされる』事はなかった。何故なら、俺達の周囲には『ドラゴン』と『イーグル』達が協力し『アンチワープバリア』が展開していたからだ。

『ー……あれ?』

『……っ、このバリアが防いでくれているんですね?』

『ええ。…とまあ、-分断-に関してはこのように心配はありません。ただ、これだけだと-アレ-に対して心許ないのでー』

『ー皆様、-ソロレッグ-の内部トランクをお開き下さい』 

『……?…っ!』

 女性陣は言われた通りシートを開き、中のトランクから大きなグレネード…『ドラゴグレネード』を取り出した。

『あ、中尉達の分もありますよ』

 俺はサイドバックから1つずつ同じ物を取り出し、3人に渡した。

『…これって、もしかしなくても?』

『ええ。…基本は私が対処しますが、一斉に来た場合は臨機応変に投げて下さい』

『分かった』

『…そうなると、迎撃が終わる度に-入れ替え-が必要ですかね?』

 …ふむ。


『…あの、宜しいでしょうか?』

 どうしようかと考えていると、ふと中尉が挙手をした。

『何でしょうか?』

『…いっその事突入時と同様に隊列を組んで行くのはどうでしょうか?それなら、スムーズに行軍出来ると思うのですが…』

『…っ!それで行きましょう。…あ、皆さんはそれで良いですか?』

 すると、全員は直ぐに頷いた。

『決まりですね。…いや、マジで-団体行動のプロ-が居てくれて良かったです』

『恐縮です。…それでは、一旦私の仕切りで隊列を組みたいと思いますー』

 中尉はそう言って、全員にてきぱきと指示を出していった。

『ーでは、行きましょう』

『了解っ!』

『はいっ!』

 それから数分後。俺達はきっちりとした隊列を組んで作戦行動を再開するのだったー。



 ◯



 ーSide『ハーミット』


「ー……っ(…少し、休憩しますか……)」

 薄暗い船倉にたどり着いたその人物…オリバー達の『第1目標』であるフレイ=クルーガーは『ヘビ』で周囲の安全を確認した後、コンテナの物陰に入り腰を降ろした。…その顔には、はっきりと疲労の色が浮かんでいた。

(……。…『突入』から大体30分位は経った頃ですかね……)

 固いコンテナに背中を預けながら、彼女は目を閉じる。…しかし、眠りに落ちないように頭だけは動かしていた。

(…それにしても、こんな『状況』は随分と久しぶりな気がします。…とりあえず、『彼』は『あの船』に乗って来ているでしょうから無事この件が片付いたら『アッパーバス』で疲れを取り『彼女』の作るディナーでお腹を満たし、そして『あの空間』で心行くまで眠りましょう)

『助かる』…と確信しているからか、彼女は『後の事』を考える余裕があった。

(…ああ、そういえば『彼女』の居る『イデーヴェス』に連絡を取らないといけませんね。…まあ、それは『スピカの後継船』をこしらえてからですから、彼には少し待っー)

『ー……っ。……とに………なの……』

 そこまで考えていた彼女の耳に、『話し声』が聞こえて来た。


(ー休憩はここまでですね)

 彼女は気を引き締め、『ステルス』を再起動した。…そして、その状態のまま愛用のギミックナイフを構える。

『……っ。……ら……付けろ』

 すると、中に入って来た『誰か』は他の誰かに注意を促した。…恐らく、向こうも彼女の気配に気付いたからだろう。

(…数は『3』。…なんとか、行けますー)

 次の瞬間、気付けば彼女は膝を着いていた。

『ーお、やっと見つけた~』

 直後、彼女の背後にあるコンテナの上から軽薄な声が聞こえた。

(…ま、まさかあの3人は『フェイク』……。

…でも、『どうやって』……)

『…さぁて、随分とてこずらせてくれたなぁ?』

 男は素早く彼女の目の前に降り立ち、狂喜的な声を出しながらゆっくりと近く。

(…マズイ……ー)

『ーっ!?な、なんだっ!』

 そして、男が何かを彼女に向けて放とうとした時。ふと、陽動役の3人に異変が起こった。

『ーっ!』

 直後、男は後方に飛び退いた。その数秒後、男の立っていた場所にショックナイフが突き刺さった。


『…っ。…っ!?』

 しかし、退避した先で男は驚愕した。…どうゆう訳か『自分達の使っていた-モノ-』が足元に広がっていたからだ。

『ー……ぃぎゃっ!?…がはっ!?』

 時既に遅く、次の瞬間男は『天井に向かってまっ逆さまに叩き付けられた』後に床に叩き付けられた。

(…まさか……ー)

『ー大丈夫ですか?-お姉様-』

 ゆっくりと顔を上げると、そこには白銀のスッキリしたデザインのパワードスーツを装備した人物が居た。

『…助かりました。エリィさん』

『ーマクシミリアさん、キャプテン・クルーガーは…あ、初めまして。

 自分は、銀河連盟防衛軍第1独立遊撃隊隊長のツーオであります』

 ほっとしていると、同じデザインのスーツを来た『ツーオ』を名乗る男性…レンハイムが2人の元に来た。

「…独立遊撃隊……。…なるほど、『彼』は随分と強力な味方を得たようですね。……っ」

『…っ!お姉様、大丈夫ですか?』

 彼女は立とうとするが、再び膝を着いてしまった。


「…す、すみません」

『お気になさらず。

 ー…-ルージュ-曹長-オーレ-曹長。今大丈夫か?』

 彼は首を振り、部下の2人…ルーシュとオークレーを通信を入れる。

『こちらルージュ、大丈夫であります』

『こちらオーレ、同じく大丈夫であります』

『良し。では、至急合流してくれ』

『『イエス・マイロードッ!』』

 2人は即答し、それから数分後に彼らの元にやって来た。そして、レンハイムは2人にクルーガーの警護を命じた。

『ー…失礼します。キャプテン・クルーガー。…っと』

 ルーシュがクルーガーを背負うと、ルーシュのスーツの背中から特殊な『ベルト』が出現しクルーガーの身体を固定した。

「…ありがとうございます。…けど、驚きました。確か貴女達は、ポターランで会場警備をしていましたよね?」

『…覚えて頂いていたとは』

『恐縮です…』

 2人は、少し嬉しそうにした。…多分、任務中でなければ歓喜していただろう。


「…となると、第1分隊の皆様は『あの場』に居た方々なのですか?」

 ふと興味を持ったクルーガーは、2人に聞いてみた。

『…えっと……』

『…それはー』

『ー申し訳ありません、キャプテン・クルーガー。隊員の詳細については、-現時点-では控えさせて頂けないでしょうか?』

 すると、2人は口ごもり直後に女性…ハウがフォローを出した。

「……っ。…失礼致しました。

 確かに、-此処-で話す内容ではありませんでしたわね」

 直ぐに察したクルーガーは、速やかに謝罪した。…そう、何処で『聞き耳』を立てられいるか分かったモノではないのだ。

『ご理解頂き、誠にありがとうございます。

 ー申し遅れました。私は、第1分隊隊長補佐のユリと申します』

『…宜しくお願い致しますわ』

『それでは、そろそろ参りましょう。…本来なら、直ぐに-戻りたい-所ですがしばらく-ご辛抱-下さい』

「(…そう言えば、敵は-アレ-で飛ばしたのにどうして彼らは…?)分かりました」

 そんな疑問を抱くクルーガーを連れ、彼らは船倉を出て上を目指すのだったー。


コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?