『ー助かりました、ヴォルス中尉』
『…いえ。…というか、私の援護がなくとも貴方ならば切り抜けられたのでは?』
敵を引き連れて来たせいか、中尉から若干刺を含んだ言葉が返って来た。
『…あはは。…まあ、出来なくもなかったですが-貴重な装備-をダメにしたくなかったので……』
『…確かに、-あれだけ-のパワーを出せばスーツの方が持ちませんか。
…これは、一刻も早く-職人-に来て貰う必要がありますね。その為にはー』
『ーマダムを助け出し、職人が居るというかの学術機関との仲介役になって貰う必要があります。
…ところで、中尉は大丈夫でしたか?』
中尉の雰囲気が仕事モードに切り替わったので、一応負傷等はないか聞いてみる。
『…大丈夫です。…-待ち受け-されているかと思ったのですがどういう訳か比較的安全に来れました』
『そうですか…(…-女性-は分かるが、何でこっちサイドも?…頭数が少ないとも思えないし。…まあ、今考えても仕方ないか)ー』
疑問が浮かぶが、一旦スルーしヘルメットの『サウンドサーチ』をワイドモードで起動する。
『ーっ!…上のフロアで、数人の移動音していますね』
『…味方、でしょうか?』
『(…カノンが居れば直ぐ分かるんだけどな~)…-軽い音-だけでは、判断が付きませんね。…せめて、武装を使用してくれていれば分かるのですが』
『…ならば、一応-敵-と判断して行動しましょう。その方が心構えが出来ます』
『(…流石頼りになるな。)分かりました。…っと、どうやら-彼ら-は下に移動するようです。
ー…方向は、あっちです』
『…了解です』
通路の奥を指指すと、中尉は頷き気を引きしめてたので俺もシューターを抜き素早く全身する。
『ーでは、私は右を』
『お願いします』
…そして、『階段』出入口を挟んだ場所に身を潜め待ち伏せした。
『ー…っ』
…まあ、余程の馬鹿じゃない限り嫌でも気付くか。
それから少しして、『相手』は階段を降り始めるが直ぐにこちらに気付いた。…さあ、どうする?
『……、……』
『……』
すると、相手は『耳』でようやっと聞こえる程の小声で『準備』を整える。…て、これは……っ!
ハッと『気付いた』瞬間、中尉に『離脱』のハンドサインを送った。
『ーっ!』
そして、同時に壁から退避した。直後、先程まで居た場所の足元に『ゲート』が展開した。
『ーっ!?』
『ストップッ!ストップッ!』
相手は避けらた事に驚くが、すかさず『次』を発動しようとしたので俺は制止した。
『ー……え?』
『この声は…。…っ!』
相手は一瞬気を緩めるが、直ぐには降りて来なかった。多分、『偽装』を疑われているのだろう。
『(…ホント、助かるな~。)…-コネクト-』
『ー……嘘~』
『……』
なので、俺は手っ取り早く壁に向かってトリガーを引く。直後、白とオレンジの混ざったビームが発射された。…すると、階段に留まる3人の人物と『顔を合わせた』。
『…ホント、デタラメな装備を持ってるッスね~』
『…右に同じくだ』
『…まあ、この上ない-証明-ですけどね』
彼ら…アレイスターさん、アームストロングさん、アンダーソンさんの3人は警戒を解いて素早く降りて来た。
『…良かった。皆さんご無事のようですね』
『…その声はヴォルス中尉さんッスね。…ええ、なんとかギリギリでしたッスけど……』
『…そちらは、-待ち伏せ-を受けたんですか?』
『…いや、まずアームストロングのアニキさんと合流した直後に数人の敵と遭遇したんス』
『…それを君に借りた-デバイス-でとりあえずは凌げたんだが……』
『…問題は、その後-直ぐに-増援-が来たんスよね……』
アレイスターさんは、げんなりしながら言った。…俺の場合は待ち伏せ、2人は遭遇の後増援か。
『…いや、2人を見掛けた瞬間仰天しましたが直ぐに-工作-に入りました』
…そして、アンダーソンさんは中尉と同じく遭遇無しか。…まあ『基準』はなんとなく分かるが、どうやってー。
『ーどうした?』
『…なんか引っ掛かるんスか?』
なかなか『仕組み』が理解出来ずにいると、アームストロングさんとアレイスターさんが聞いて来た。
『…あ、すみません。
…そうですね。とりあえずー』
俺は再度『サウンドサーチ』を発動し、周囲を確認し次に『ヒートサーチ』をヘルメットの上から装着し最初の目標でもある『ジェネレーター』を探索した。
『ー…どうやら、私の-ターゲット-はまだまだ下にあるようですね』
『…そうか』
『…では、向かいがてらお話しましょう』
『分かったッス』
俺はそう言って、先陣を切って歩き出した。
『ー…では、そろそろお話ししましょうか』
そして、4人で階段を降り1フロア下に出た所で再度手分けして『サウンドサーチ』を行い、『ヒートサーチ』で細かい位置を探知し直した後に俺は切り出した。
『…まあ、簡単に言うと-どうやって敵は、驚異度による振り分けを行っているのか-です』
『…なるほど。私やキャプテン・アンダーソンに-直ぐに-襲撃がなかったのはそれが理由ですか……』
『…なんか、複雑です』
『…ま、まあ、2人はそれほど-人気者-って訳でもないッスからね』
言葉の通り、複雑な様子の中尉とアンダーソンさんにアレイスターさんはフォローを入れた。
『…確か、作戦開始事にマダムがコネクトフロアを無力化してくれたのだったな?』
『…ええ。ホント、女史って凄いメンタルですよね…』
『…我々軍人以上ですよ。いや、流石は-かの時代-を生き抜いてこられた女傑ですね』
『…そうッスね~。…で、にもかかわらず-敵-は何らかの手段でこっちの戦力を判別していると。更には-振り分け-し適宜-手持ちの戦力-までも振り分けまでしていると。
…それが気になるんスね?』
『…はい』
『…そういえば、-ドラゴン-のシステムって凄いエネルギーを消費するんでしたよね』
『…そもそも、-その名-にあるように-瞳-を主軸にしたシステム。…つまり、-見ない事-には-ターゲット-を指定出来ない』
『…まあ、エネルギーは-トリ-と-分割-しているしワープしているのは人ですからそんなに消費はしないでしょう。…ただ、それにしたってどうしても-引っ掛かる-んです』
『…となると、-認識方法-と-エネルギー源-。その両方に-特大級の何か-が仕込まれている可能性があるという事ですね』
『…ええ。非常に厄介な事に…』
アンダーソンさんの簡潔な纏めに、俺は気が重くなりながら小さく頷いた。
『…フフ、流石は名うてのトレジャーハンターだけあって危機管理能力はなかなかのレベルだ』
『…ま、一応-お三方-のお眼鏡にかなった身なんでこのくらい予想出来て当然です』
アームストロングさんの称賛に、アンダーソンさんは少しばかり照れた。
『…さて、それでは-作戦-にー』
俺は気持ちを切り替え、『サウンドサーチ』を起動……する直前で思わず手を止めた。
ー何故なら、わざわざ『それ』を使うまでもなくアホ程長い通路の右奥から轟音が聞こえて来たのだ。
『っ!』
それを聞いて、他の3人こちらを見たので階段を指差した。…『音の発生理由』から、そうした方が良い気したからだ。
そして、俺達が階段に戻った直後『予想通り』聞き覚えのある音が『複数』聞こえて来た。
『…おい、これって……』
『…つくづく-規格外-ッスね~』
『…一体、-どうやって-……』
『…まあ、-そういう意味-でも機密ー』
3人が唖然とする中、『音』はだんだん大きくなりそれに合わせて『別の音』も聞こえて来た。
『ー…どうやら、-何か-に追われているようですね。…なるほど。だから、-強引にドアをこじ開けた-のでしょう
ーセットアップ・-グラビティ&ワープ-』
…そして、『それ』に猛烈な『不快感』と『嫌な予感』を感じたので念のため『強力』な組み合わせのオーダーを出した。
『……っ』
『…一体、何がー』
『ーっ!マスターッ!』
その数秒後、いつもは冷静沈着なカノンのひっ迫した声が聞こえて来た。
『任せろっ!
ー…っ!?』
そして、直後に数10台の『リトルレッグ』が通過して行き俺は通路に飛び出した。…すると、『マジックアーム』の大群が迫っているのが見えた。
『(…『なんだ』?)…セーフティーアンロックッ!
-イクリプスバレット-ッ!』
すかさず『最大出力』にして、『真っ黒』なエネルギーバレットを放った。…すると、『それら』は急に追跡を止め高速で引き下がったのだ。…甘い。
しかし、次の瞬間。再び『それら』の動きが止まった。…いや、エネルギーバレットに『引き寄せられて』いるのだ。
ーだが、突如『それら』は『抵抗』を止めた。…『切り捨てた』のか?
そして、『それら』は呆気なくエネルギーバレット…『リトルブラックホール』に吸い込まれて行った。