ーSide『カノン』
(ーっ!)
気付いた瞬間には、同行していたランスター姉妹は目の前から消え更にカノン自身もさっきまで居た場所とは違う場所に居た。…つまり、完全に分断されたのである。
(ー…周囲に敵性反応無し。…それと、相変わらず『反応無し』ですか)
彼女はまず周囲の安全を確認し、それから探索デバイスを起動する。…しかし、未だに突入直後の結果と変わらなかった。
(…どうやら、随分強力な『キャンセラーチーム』が居るようですね。
さてー)
敵船で孤立しているというのに、彼女は冷静に分析する。…そして、『ヘビ』の描かれたシールタイプのデバイスを壁に付けた。
(…良し。
とりあえず、どなたかと合流を優先しましょう。マスターの『予想』が当たっているなら、他の方々もー)
方針を固め前進を始める彼女だが、直ぐに足を止めた。…『ネズミ』の反応を直ぐ近くのドアからキャッチしたからだ。
『ーチュッ』
『(…まさか、『彼ら』も飛ばされていたとは。)…居るのでしょう?マダム』
そして中に入り、一見すると何もない所に声を掛けた。
『ー…ええ』
すると、突如そこにスーツとヘルメットを装備した人物が現れた。
『…まずは、お待たせして申し訳ありませんでした。マダム』
『…全くだわ。…っ。
…じゃあ、手を貸してくださるかしら』
すると、相手は緊張が緩んだのか立てないようだった。
『畏まりました』
彼女は相手の元に素早く歩み寄り、手を差し出した。
『…ありがとう。
ーお馬鹿さん』
相手が手を掴んだ直後、『背後』からスチルネットが飛んで来た。
『ー甘いですよ。-お馬鹿さん-』
しかし、ネットは彼女を『すり抜け』直後に足元に居た『敵』は『フロート』を受けあっさり無力化された。
『……』
『ー…-信じられない-といったご様子ですね。…-ネズミも装備も、そして背格好や声すら完璧に複製-しているのに何故見抜かれたのか?-』
そして、彼女は『再び』ドアから室内に入って来た。
『…答えは、-本物を熟知しているから-ですよ』
『…っ!』
相手…クルーガーに成りすましていた敵クルーは、瞬時に複数のショックナイフを手元に出現させ素早く投げて来た。
『…っ!?』
しかし、投げたナイフはまるでマジックのように全て途中でピタリと止まった。
『…-リターン-』
『…な……。…ぃぎゃっ!?』
そして、彼女が一言呟いた直後にはナイフは忽然と姿を消し数秒後に敵クルーは自らの『ショックナイフ』によって気絶した。
『-ゲートオープン-』
彼女は淡々と右手を相手に向け、再度呟いた。…すると、相手は先程の彼女のように忽然と消えた。
(…本当、マスターの『予想』は良く当たりますね。流石は『私』のマスターです)
彼女はほんの僅かに微笑みを浮かべ、心中でオリバーを称賛した。…そして、彼女は気持ちと表情を引き締め部屋を出た。
『ー……っ!?』
直後、ぎょっとした何者かはすかさず『特殊なビームガン』を構えた。
『お待ち下さい、-海の星の少尉殿-。
私は、-導きの船のメイド-でございます』
『……え?』
彼女は慌てずに『独特の呼称』で相手…ウェンディを呼んだ。すると、向こうは唖然としながら警戒を解いた。
『…何で自分が-そう-だってわかるのですか?貴女とは直接顔を合わせた事はないのですが……』
『それは、私が-かの船のメイド-だからです。…-そのスーツを着ている-から、分かるのですよ』
『…只でさえ凄いスーツなのに、-そんなシステム-までインストールされているのですね……。…ホント、凄い所に転属しちゃいましたね』
『…ところで少尉殿。道中は大丈夫でしたでしょうか?』
『…ええ、不気味な程襲撃は受けませんでした。…そちらは?』
『…実はー』
カノンはアルスターに先程の事を伝えた。
『ー…いや、本当にエージェント・プラトーの予想通りになりましたね。…っ!…まさか、私が飛ばされてから一度も襲われなかったのは……?』
彼女の予想に、カノンは頷く。
『…マスターは明言こそしませんでしたが、恐らく-それ-を見越して私を作戦に参加させたのでしょう』
『…なんと。……何処までも-下衆-ですね。
…っ、という事は他の-方々-の所にもー』
『ー可能性はあります。…ですから、-急い-で向かうとしましょう』
『………へ?』
カノンがそう告げた瞬間、2台の『ソロレッグ』と1体の『フレンドノーズ』が転送されて来た。
『…さ、どうぞお乗り下さい』
『…っ!あ、ありがとうございます』
アルスターは唖然としていたが直ぐにハッとし、片方の『ウマ』に跨がった。
『-サーチモード-』
『BOW!』
カノンも準備を整えると、『イヌ』にオーダーを出す。すると、『イヌ』はくるりと後ろを振り向いた。
『BOW!BOW!』
『…どうやら、-さほど離れては-いないようですね。参りましょう』
『…了解』
アルスターは凄く『聞きたい』衝動を抑えながらカノンと共に疾走を始めたー。
○
ーっ!…っと。
不意の転送を喰らった直後、左右から『熱烈な歓迎』が飛んで来たので『スーツ』…『EJ-04:フリーダムスーツ』の力を借りて思い切り『ジャンプ』し天井付近まで跳んだ。
『っ!チィッ!』
『-グラビティ-急げっ!』
しかし、連中はすかさず『グラビティグレネード』をこちらに向かって投げて来た。
『(…とうとう、-小型のモノ-までも。)-セットアップ・グラビティ-』
俺はビームガン…『ドラゴン』のシステムがインストールされた『ドラゴシューター』にオーダーを出した。
そして、銃口を真下に向けてトリガーを引いた。
『ーっ!?』
直後、そこに『紫』の大きなエネルギーフィールドが展開し俺目掛けて飛んで来たグレネードは全て引き寄せられ無意味になった。
『セットアップ-ワープ-』
俺は再度オーダーを出して同じ方向に向けて撃つ。すると、エネルギーフィールドの上にそこに『ワープホール』が展開した。
そして、俺は落下しながら右グループの後ろにワープした。
『ー…っ!こっちだっ!』
…まあ、そう簡単には行かないか。
連中は一旦見失い掛けるが直ぐに近くにいた奴に見つかってしまう。なので、俺はあえて逃げずに素早く『迎撃準備』を整えた。
『オラッ!』
数秒後、さっそく『グラビティフィルム』仕様のグローブを装着した奴が襲い掛かって来た。
『っ!?』
俺は躊躇なくそいつに向けてトリガーを引く。すると、『黄と紫』のビームが発射された。
『…っ!ハッ、無駄だっ!』
『耐エレキ』コーティングだからか、そいつはそのまま突っ込んで来た。
『ーそれはどうかな?』
『…あぐっ!?』
次の瞬間。ビームはまるで『ネット』のような形状となりそいつを捕らえた。そして、直後にそいつ壁に叩きつけられた。
『…なんだ、これっ!取れ…ねぇっ!』
『さあ、どんどん行こうか』
『っ!-ワープカット-っ!』
こちらの宣言に、連中は『白』のシールドを構えた。…まあ、当然用意しているか。
なので、俺は素早く身を翻しそこから離脱を始める。
『…なっ!?』
『…っ!待てコラーーッ!』
すると、連中はシールドを構えたまま追って来た。…っ!『ナイスタイミング』。
とりあえず逃げでいると、反対側から『反応』を感知した。
『ーっ!?』
数分後、『味方』と再会した。…まあ、当然向こうは驚くが直ぐに『グローブ』を起動させた。
『ーそいやっ!』
そして、俺とすれ違った直後『彼』はグローブで床を殴った。
『ーっ!?』
次の瞬間、俺を追っていた連中は突如足元に展開した『ワープゲート』に落下して行った。