『ー第1フェーズクリア。…それでは、第2フェーズ開始と行きましょう』
『了解ー』
無事に大型貨物船…に偽装された『サーシェスカンパニー』の武装母船に突入した俺と混合チームは、まず二手に別れて無駄に広いそのフロアの中でドアを探した。
『ーキャプテン・プラトー、あったぜっ!』
『こっちもです』
それからさほど時間を置かず俺の率いる『プレシャス』チームとレンハイム小佐の率いる第1分隊チームのメンバーがそれぞれドアを発見した。…うん、どうやらちゃんと『真ん中』辺りにワープ出来たようだな。
『了解です。…ロックは解除出来そうですか?』
『…ちょっと待ってくれー』
『少々お時間を下さいー』
すると、今度は別のメンバー…『電子解除』を得意とするビル=アンダーソンさんと工作チームのアーニャ=ミルスティン中尉が応答しドアの電子ロックの解除を始める。
『ー…良しっ!』
『クリア』
『…ではー』
『よっとー』
2人はものの数分で電子ロックを解除し、そして入れ替わるように別のメンバーがドアの前に『とある物』を置きドアを開ける。
『ー来たぞっ!』
『喰らえっ!』
直後、ドアの向こうに集まった敵船のクルー達が一斉にグレネードを投げて来た。
『-イーグルチーム-…ー』
『ーウェイクアップ』
しかし、グレネードは『イーグル』達によって『何処か』に飛ばされた。
『ーっ!?』
すると数秒後、船全体が僅かに揺れた。先程飛ばされたグレネードが船内の至るところ…勿論人が居なくこれから『制圧』するのに支障の出ない『駆動系』の場所で爆発が発生したのだろう。
『残念~っ!想定済みさ』
『……』
『ーやってくれたな』
『…テメェら、全員-星-にしてやんよ……』
こちらの反応に敵クルー達は唖然としていた。…しかし、そいつらを率いる一際ゴツいパワードスーツを装着した2人のリーダーは怒りに満ちた声で返して来た。
『…-近接-用意っ!』
『ツブせーーっ!』
『っ!おぉーーーっ!』
そして、リーダー達の怒号に唖然としていたクルー達は勢いを取り戻し手にコンバットナイフやらハンマーなどの鈍器やらを何処からか取り出し、こちらに突進して来た。
『…やれやれ、随分と甘く見られたモノですね。
迎撃用意っ!』
『-シールド-構えっ!』
『応っ!』
『了解っ!』
直後、ドア枠に合わせるように分厚い『シールド』が展開した。
『ーはっ!んなフツーのシールド、意味ねぇよっ!』
『オラッ!』
『ふんっ!』
こちらの対するリーダーが馬鹿にしたように笑い、それとほぼ同じタイミングでクルーの持つハンマーが『深紫のエネルギーフィルム』に包まれた。…ほう、『グラビティフィルム』か。なるほど、調子に乗るのも当然か。
そして、そのままハンマーはシールドに当たり……本体のボールはシールドに『飲み込まれた』。
『ーガバスッ!?』
『…な、何処からっ!?』
次の瞬間、投げて来た数人のクルーにボールが命中しそいつらは通路の端に吹き飛ばされた。
『馬鹿だなぁ~。…俺達みたいな-特殊チーム-が-普通のシールド-なんて使う訳がないだろう?』
『っ!…どうやら、余程苦しみながら-星-になりてぇようだなっ!』
すると、今度はリーダー自身が手の部分に『ライトグリーンのエネルギーフィルム』を展開しながら突っ込んで来た。…ほう、やっぱり『そう来たか』。
『想定通り』の流れに、俺はニヤリとしながら『大型ビームガン』を取り出しそいつに向けた。
『ーくたばりやがれっ!』
そして、そのままリーダーはシールドを殴る。すると、直後にシールドは突破されー。
『ーいぎゃっ!?』
『あびゃっ!?』
しかし、次の瞬間。2人のリーダーは情けない悲鳴を上げてその場に崩れ落ちた。
『…いやー、面白いくらい引っ掛かってくれるな~』
『…な、な……ん……で…ー』
『ー…-何で、エレキショック対策をしているのに痺れるんだ-……かな?
…簡単さー』
床に這いつくばるそいつに、俺は白銀の大型ビームガンを見せてやる。
『ー…こいつで、スーツの中に直接エレキショックを飛ばしたのさ』
『…な、そ……ん…いぎゃっ!?』
信じられない様子のそいつに、再度ショックビームを放ち完全に気絶させた。
『……』
『…さあ、次はお前らだ』
『…う、うわぁーーーっ!?』
すると、敵クルー達は一斉に逃げ出し始めるがー。
『ーう、うわっ!?』
しかし、奥のドアの手前で連中の先陣は『何か』…『ワープシールド』に飲み込まれ何処に飛ばされた。
『と、とまー』
『ーおわっ!?』
それをみた後続は止まろうとするが、後から来る同僚に押され次々と飲み込まれて行った。
『…ああ、ちなみに-行き先-は近くにいる軍艦のどれかだ。
ーさあ、選べ。此処か向こうで-制圧-されるか、-降伏-するかを』
「ーこ、降伏するっ!」
『俺もだっ!』
ビームガンを向け勧告すると、連中はあっさりと武装を解除し両手を挙げた。
『懸命は判断だ。
…じゃあ、お願いします』
『了解だ』
『了解しましたっ!』
すると、分隊とプレシャスのメンバーの数名は即座に行動を開始し敵クルー達を次々と拘束して行き……そのまま『シールド』まで連行した。
『ー…な、なんで……?』
『決まっているだろう?
ー貴様らは、銀河連盟の平穏を乱した-罪人-だからだよ』
『……っ』
レンハイム小佐は、淡々と事実を告げた。…まあ、本当の理由は『この船から退避』させる為なんだけどね。
…実は-上-からのオーダーで、この船は『完膚なきまでスクラップ』にする事になっているのだ。でないと、『連盟』の信用が失墜しかねないからな。
何故なら、厳重なセキュリティを突破された挙げ句『模造品』を作られそれがテロに利用されたんだ。もし、真実が明るみに出たら世間は大騒ぎだし…なによりこいつらの会社を始めとする『外』の得体の知れない企業に付け入る隙を与え、やがて銀河連盟の平穏は崩れ去る最悪な流れになるかも知れないのだ。
…故に、この船を海賊船として『銀河の闇』に葬らなければならないという訳だ。だが、いくら『悪徳企業』のスタッフとはいえ流石に『星』にするのは『アウト』なのでこうして退避せているのだ。
ーちなみに、現場でこの事を知っているのはエージェント達と俺とレンハイム小佐だけになる。…艦隊は普通に海賊討伐だと聞かされている筈だし『協力者』に至っては知る由もない。
『ーう、うわっ!?』
『…良し、移送終了』
『こっちも、終わりました』
『(…まあ、プラチナの2人は薄々感付いているだろうな。)ありがとございます。
…では、このまま2手に別れて制圧を開始しましょう』
『了解だ』
『ラジャー』
…さて、『あっち』はどうなっているかな。
『ーはい、こちら-救助チーム-です』
ヘルメットの通信機能を起動すると、すぐさまカノンの声が聞こえた。
「状況を」
『現在、下部コンテナより後部スペースに移動中です。尚、マダムの居場所ですが未だ確認出来ていません』
「(…カノンがてこずるか。今までと違ってなかなか『強力』じゃないか。)分かった。
…引き続き、気をつけてー」
そう言った矢先、向こうから『警告音』が聞こえた。
『ー…通信を閉じます』
「ああ。…十分気をつけてな」
『御意』
『ープラトーさん、もうすぐ開きます』
彼女との通信が切れた直後、メンバーから通信が来た。
『分かりました』
俺は急いでそちらに向かい、そしてドアの前に立つ。
『(…おや?)…変ですね。-気配-がしません』
『感知ゴーグル』でドアを見ると、先程と違い『その向こう』に敵は待ち構えていなかった。
『…-隠れている-って事はないんだよな?』
『…その筈です。…まあ、念のため構えー』
ー直後、全員の手首に装着されたデバイスが『警告音』を発した。
『…なんだ?』
『…とりあえず、-布陣-をー』
ー…そして次の瞬間。数人のメンバーが目の前から忽然と消え失せた。