ーSide『ライヤー』
「ー……ええい、まだ『見つけられない』のかっ!?」
『も、申し訳ありませんっ!』
男の怒りに、モニターに映る部下と思わしき人物もは焦りながら答えた。
「いいか…。もしジェネレータにたどり着かれたら我々はおしまいだ。…つまり、『今まで』同様『切り捨て』られるのだ」
『……っ』
「…『今の生活』を続けたいのなら、死力を尽くして『あの女』を探し出せっ!」
『了解っ!』
「…くそ……」
通信の後、男は悪態を付いてモニターに映るボロボロの船…『この間』の件で回収した『マダム・クルーガー』とその『メンバー』が乗っていた母船『スピカ号』を忌々しい目で見た。
(…腹いせに捕らえたは良いモノの、まさか『ヘビ』のスーツに『ネズミ』達までも所持していたとは……っ!)
ーそう。男が乗る『偽装船』は現在『ブレイクトルーパー』によって中からゆっくりと破壊されていたのだ。そして、さんざん『八つ当たり』をするつもりだったフレイ=クルーガーも『インビジブルメイル』で姿をくらましているのだ。
(…このままでは、『こちらの所在』が連盟サイド伝わってしまう……。…そうでなくとも、『ネズミ』にジェネレータを潰されれば……っ!…くそ、『-瞳-の再現度』がもう少し高ければ直ぐにー)
『ーき、キャプテン・ヘルムートッ!』
…その時だった。男が『無い物ねだり』をしていると、なにやら『喜び』の通信が入って来た。
「…どうした?」
『…-彼ら-が戻って来ましたっ!』
すると、モニターには複数の見覚えのある武装船…『ヒットマンチーム』の船団が映し出された。
「…そうかっ!…『アレ』の確認はしたか?」
『はいっ!彼ら、契約通り-5枚のコピーチップ-をきちんと回収していますっ!』
「…そうかそうかっ!……そうだ。
ー彼らに、『新たな仕事』を頼むとしよう」
『…っ!分かりました、直ぐにお繋ぎしますっ!』
『ー…なんすか?』
すると、またモニターの映像は切り替わり『纏め役』であるスキンヘッドの男が映った。
「まずは、『塵の清掃』ありがとう。報酬は『いつもの方法』で渡そう。
…でだ、仕事終わりで恐縮だが新たな『仕事』を頼みたいのだが引き受けてくれないか?」
『…たく、人使いの荒い御仁だぜ。…まあ、アンタらのくれた-オモチャ-のおかげで大して疲れてはないから、別に良いんだけどな』
「『我が社の商品』が役立って何よりだ。…では、『内容』を説明しようー」
男は、現状と『ターゲット』の事を伝えた。
『ーなるほど。…まあ、あの-女傑-が大人しくしている訳はないか。
…こりゃ、久々に-楽しめそうだ-』
「…ククク、実に頼もしいな。…では、誘導ビームを出すのでそれに従ってくれ」
リーダーの凶悪な笑いを見て、男も先程とはうって変わって悪どい笑みを浮かべながらそう言った。
『…分かったー』
『ー誘導ビーム、照射しますっ!』
リーダーが頷くと、画面は先程の部下に切り替わった。
(…ヤツの命運も此処までだー。
………は?)
しかし、直後にけたたましいアラートが鳴り響き勝利を妄想していた男は呆気に取られた。
『ーき、キャプテンヘルムートッ!大変ですっ!
-嗅ぎ付け-られましたっ!…っ!?…そ、そんなっ!?』
すると、先程とは違う部下がモニターに映り到底信じられない報告をした。そればかりか、どうやらもっと信じられない事が発生したようだ。
『れ、連盟軍戦艦続々とワープアウト確認っ!か、艦隊クラスですっ!』
「…ば、バカな(…どうなっている?まだ『通信室』は落とされていない筈なのに……。)…っ!」
あり得ない報告を立て続けに受け、男は混乱仕掛ける。…だが、『とある推測』が脳裏に浮かんだ。
『ーっ!?…な、なんで……っ!?』
「…あの『塵』共、やってくれたな……」
直後、誘導をしていた部下の驚愕の声を聞いた男は『確信』し憎悪の形相になった。
『…っ!ま、まさか、あの船団に乗っているのは……?』
「…ああ。『本社』がクビにしたアウトロー連中だ……。…まさか、此処まで我々をコケにしてくれるとはな……。
ー『殲滅布陣』展開…。…『敵』を全て潰せっ!」
『っ!ら、ラジャーッ!』
(…バカな奴らだ。…おめおめと『星』になりに戻って来るとはな)
男はモニターを切り替え、外の様子を映した。すると、丁度船から武装船団が飛び出して行くところだった。
(…しかし、連中はどうやって『ヒットマンチーム』を退けたんだ?
ホワイトメルの地上部隊が協力したとしても、かなりの数『星』になる筈だ。…っ!そうか『あの男』か…。…実に忌々しい。
…だがー)
男はコンソールを操作し、戦闘宙域に『サーチ』を掛けた。
「(ーどうやら、『あの船』は居ないようだな。…という事は、あの艦隊は『先行部隊』の可能性が高いな)…『撹乱部隊』に通達しろ。『あの艦隊に取り付け』とな」
『っ!ラジャーッ!』
すると、こちら船から再度『トリ』を模した船が飛び出して行った。
(…良し、これで連中は『まとも』な通信が出来なくー)
『ーっ!?ほ、報告っ!新たに10隻の大型船がワープアウトッ!…って、嘘だろっ!?』
再度、部下が慌てた様子で全体に通信を出した。…その理由は直ぐに分かった。
(…な、なんで、あの船団から『反応』が……)
なんと、男の目の前に置かれた装置は増援の船団から『あの船』の反応を感知したのだ。
「ー直ちに撹乱部隊を下がらせろっ!」
『り、了解ー』
猛烈に嫌な予感がした男は、即座に命令を出す。しかしー。
「ー…バカな……」
モニターの向こうでは、増援に現れた船団が『超広範囲の深紫のエネルギーネット』だったり『ワイヤレスの純白のエネルギークレーン』を駆使して撹乱部隊を『捕獲』している光景が繰り広げられていた。
(…『グラビティネット』に『フロートクレーン』だとっ!?…一体どうやってインストールをー)
『ーほ、報告っ!攻撃部隊、高速機動部隊間もなく-エネルギー切れ-ですっ!』
「っ!(…は、早過ぎる。…まさか、『掃討部隊』が来ているのかっ!?)交換部隊、出動っ!」
『了解っ!』
「(…まて、まてまてっ!まさか、襲撃から『僅か2日』で全て『準備』したというのかっ!?
…と、いう事はー。)…っ!全速で『此処から』離れろっ!」
『り、了解っ!』
直後、モニターに映る光景は高速で流れ始めるがー。
『ーぶ、ブースターに異常発生っ!出力低下っ!』
数分後に船全体は揺れ、別のアラートが鳴り響いた。
(…や、やられた……。…最初から『ブースター』狙いだったのかっ!?…っ!いやそれよりもー)
『ーっ!?な、なんだっ!?』
数秒後、船は更に揺れた。…そして、モニターには『白銀のドラコン』の頭が映し出された。
『ーこ、これは-アドベンチャーカノープス-ッ!?』
『バカな、一体何処から…っ!?敵船より-マルチショートワープ-確認っ!』
「ー可能な限り、部隊を呼び戻せっ!」
『りー』
男が指示を出したその時。モニターに映っていた部下の顔が消えた。
(…な、なにがどうなっているんだ?)
…ただ1つ言えるのは、『通信室』と男の居る『船長室』とを繋ぐ通信システムが潰されたという事だ。
(…マズい、マズいマズいマズいマズい……。…っ!いや、『まだだ』っ!)
男は焦るが、ふと『打開策』を閃き椅子から立ち上がった。…そして、すぐ近くの壁の前に立つ。
(…私を『本気』にさせた事を後悔させてやる)
男は、凶悪な笑みを浮かべながら『壁の中』に入ったー。