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漆黒の嵐

ーSide『トライアングル』



ーファストピタルの空に、夜の帳が降り始めた頃。『アウトロー』達は、数時間前とはうって変わって呑気に格安居酒屋で酒盛りをしていた。

「ーいや~、しかし随分と『彼』はあっさり引き受けてくれたな~?」

「そりゃ~、『彼』は天下の帝国サマのエージェントだからな~。ホント、慈悲深いぜ~…」

 誰かがご機嫌な感じで言うと、別の誰かがこれまたご機嫌に答えた。

「しか~も、泊まるトコばかりか『ここまで』してくれるた~なっ!」

「あははっ!キャプテン・プラトー最高~っ!」

『最高~っ!』

『本人』が聞いたら凄く不愉快なオーラを放つであろう言葉を、彼らは何度も叫んだ。

「ー申し訳ありませんが、これで終わりです…」

「…あ?

 お~いっ!今日はこれで終わりだってさ~っ!」

『うーいっ!』

 それから、1時間して酒と料理がなくなったが彼らは不満も言わずに店を後にした。


「ー…ういっく……。…っと、えっと~?ホテルはどっちだ~?」

「こっちじゃねぇの~?」

「いや、あっちだろ~?」

 しかし、彼酔っ払っている彼らは真っ直ぐホテルに帰れないでいた。

「…あ~も~っ!…くそ、デバイスさえ無事だったら良かったんだがな……。

 …とりあえず、誰か案内所に行って来いよ~」

「…んじゃあ、俺が言って来るよ~」

 すると、誰かの言葉にまたもや誰かが手を挙げた。

「頼んだ~。…じゃあ、それまでどっかで時間潰すか~」

 その1人がふらふらしながら街の中に消えて行くのを見届けると、誰かは辺りをキョロキョロ見渡す。

「…あ~、それなら来る途中に小せぇ公園を見つけたぞ~」

「…マジで~?んじゃあ、そこに案内してくれ~。

 ほら、行くぞ~」

『うーい』

 そして、別の誰かの案内で彼らはゆっくりと移動を始めたー。


 ○


「ー…うい…っく。…はあ、最高だったな~」

 案内所に向かっていた『アウトロー』の1人は、浮かれた様子で街中を歩いていた。

「…明日も、また飲め……っ!?」

 そんな時、そいつの履く靴がふと『地面から離れ』そいつはそのまま宙に浮かび始めた。

「ーっ!?…とと……」

 しかし、数秒後にはそいつは地面に降り立った。

「……なんだ?…いや、まさかな……ー」

 そいつは唖然とし、そして一瞬『嫌な予感』がその頭を過るが直ぐに否定して再び歩き出した。

 ーすると、路地裏から別の誰かが出て来てツールを起動させる。

「こちら、『サポーター6』。これより『対象』の保護に入るッス」

『こちら本部。了解しました』

「…っと」

 短い通信を終えた誰か…『プレシャス』のメンバーであるマルコ=アレイスターは素早く路地裏に向かい『バイク』に股がった。


「『ソロレッグ』スタート。『インビジブルフィールド』オン」

 事前の説明に従って、彼はバイク型ビークル…『ウマ』の1つである個人用ビークル『ソロレッグ』と『ヘビ』の指輪を音声認証で起動させる。

 すると、彼はビークルごと『消え』直後にゆっくりと発進した。

(…マジで『スパイ』になった気分スね~……)

 まさかこんな体験が出来るとは思っていなかった彼は、恐縮と責任感…とほんの少しの幸福を抱いていた。

(…いけないッス。…はあ、でもまさか『プレシャス』と親父もハマっていたデータスパイノベルの『シークレットナイト』の主人公が『同一モデル』だったとは……)

 彼は気を引き締めるが、直ぐに別の事…先程知った驚愕の真実を思い出していた。…尚、知ったのは『プラチナ』の2人の呟きに『プラトー三世』があっさりと認めたからである。


(…てか、何で彼はあっさりと認めたんスかね?…いくらなんでもー)

「ーヒックションッ…ヒック…」

 思考の海に落ちていると、不意に『対象』からクシャミが聞こえた。

(ーっ!…いけないいけない)

 そして、彼の追跡対象である男は右に曲がったので今度こそ彼は気を引き締め、少し遅れて曲がった。

(…っと)

「ーっ!……な、なんなんだ?」

 それとほぼ同じタイミングで、男はまた浮遊しかけるが彼はそいつを『凝視』する。するとそいつは直ぐに地面に降り立った。そして、怪訝な様子でまた歩き出した。

(…しかし、ホント『チート』ッスね~……。一体どんなプログラムが組んであるんスか?)

 彼も追跡を再開しつつ、『ウマ』の中に居る『小型のウシ』…『アサルトチルドレン』の性能に改めて驚愕するのだったー。


 ○


「ー…うい~……ヒック」

 一方その頃。公園にたむろしていたアウトロー達の1人は、呑気に夜空を見上げていた。

「……んあ?」

 すると、不思議な事に夜空が『近づいて』来ていた。

「……?……ヒック」

 しかし、頬をつねってからもう一度見ると『普通』の距離になっていた。だから、男は気のせいだとスルーした。

「…っ!?……っ?」

 すると、少し離れたベンチにだらけた姿勢で座る別の誰かが『慌てた声』を出したのでそちらを見る。…が、『特に何も起こった』様子はなかった。

「……うおっ!?………あれ?」


「…ん~?なんだ~?……て、マジでどうしたんだ~?」

 それから少しして、また誰かが『慌てる』がやっぱり何事もなかった。…すると、アウトロー達のリーダー的な男が不思議なモノを見るような顔で確認する。

「…い、いや、多分『悪いユメ』でも見てたんだと思う。

 …多分、原因は『ポターラン』での『アレ』だろうな……」

「…そうか。…まあ、実際『アレ』はマジモンの『悪夢』だったよな……。…ったく、『ちょっとした仕返し』にあんなに『キレる』って普通じゃねぇよな~?」

「…全くだ。……っ!…お、おい……」

 ふと、リーダーの男を見ると『浮いている』気がしたの誰かは慌てる。

「…んあ?どうした?」

「……あれ?……なんか、スゲー酔ってるみたいだ」

 しかし、数秒後には『何事もなく』男は地面に座っていた。だから、そいつは『そう考える』事にした。

「…?まあ、『タダ酒』だったし当然だろ~」

 そして、リーダーの男も深く気にせず適当に返した。


『ー…たく、呑気なモノですな~……』

『右に同じく…』

 …その様子を、同じく園内の茂みから見ていたゴールドランク傭兵のシドニー=ファルムとウェイン=セイランドは、若干イライラしながら見ていた。

『…はあ、今まで-いろんな-ボディーガードをして来たけど今回は1位2位を争うくらい精神に来ますな……』

『……っと』

 フィルムの言葉に、セイランドは同意しようとするが『また誰か』が浮かびそうになったのでそいつを凝視する。

『ーBMO!』

 すると、隣に陣取る『アサルトチルドレン』の1体が鳴き直後にそいつは地面に戻った。

『…こっちは多いから、かなりの頻度ですね』

『…まあでも、-そろそろ-終わるだろう……っと』


『BMO!』

『ええ。だってー』

 そんな事を話していると、またもや誰かが浮かび始めたのでそいつを凝視し地面に戻した。

『ーこちら、本部です。お疲れ様です、皆さん』

 そんな時、ヘルメットから遊撃隊のリーダーであるレンハイムの声が聞こえた。

『いや、ほとんど-チルドレン-がやってくれてるからそこまで大変じゃないですよ』

『…だな。…っと、-そろそろ-かな?』

『はい。間もなく、現地の地上警備隊がそちらに-巡回-に行きます』

『了解』

『じゃあ、警備隊が彼らを移動させ始めるのを確認次第帰還します』

『お願いします。それでは、引き続きお願いします』

『…しかし、見事な根回しだな』

 通信が切れると、セイランドは改めて感心する。

『…ですね。まあ、優秀な人達でなければプラトーさんの足を引っ張ってしまいますから当然なんでしょうが』


『…本当、-当日-はプラトーだけでなく彼らの足も引っ張らないようにしないとな』

『…ですね。…はあ、こんなにも緊張するクエストは生まれて初めてですよ』

『…それは、多分だがプラチナの2人も同じだろう』

『…ですかね?……あ』

 そうこうしている内に、地上警備隊が公園に到着しアウトロー達を車両に乗せて行った。

『ー…良し。では、-本日-は此処までだ』

『ういっす』

 そして、警備隊が出発するのを見届けた2人は『本部』…カノープス号へ帰還したー。


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