ーはあ、予想よりも『速かった』な…。
軍との通信が終わり、俺は深いため息を吐いた。
『ー…まさか、『彼女』が真っ先に襲撃されるとは……』
すると、別の場所で通信を聞いていたレンハイム少佐が呟いた。
「…まあ、彼女は『言い出しっぺ』でしたからね。一番『向こう』の恨みを買っていもおかしくないでしょう」
『…でも、なんであの人だけだったのでしょうか?』
「…多分、『遠隔操作』に出力を割いているせいでしょうね」
『…なるほど。…それならば、-対策-は可能ですね』
「ええ。…では、-残り-の方はお願いします」
『お任せ下さい。それではー』
レンハイム少佐は敬礼し、通信を切った。…はあ、しかし『分裂』も最速とは思わなかったな。
『ーこちら、調査チーム。カノープス号応答願います』
やれやれと思っていると、またもや通信が入った。相手は、キャンベル少佐だった。
「こちらカノープス。…どうでしたか?」
『-当たり-です。エージェント・プラトーの予想通り、彼女の所持品の中に-模造品-がありました』
「…やはりでしたか。…ちなみに、『何個』でしたか?」
『-3つ-確認されました。…そのどれもが、装飾品に偽装されていました』
「(…全く、驚く程狡猾だな。…となるとー)…キャンベル少佐」
『…どうやら-別のプラン-を思いつかれたようですね?』
「ええ。…どのみち、回収は難しいでしょうし。
だったら、いっその事『そのまま』にしてしまいましょう。…そうすれば、業を煮やして『直接』来てくれるでしょう。…そしてー」
『ー情報…-所在-を特定するのですね。…ならば、しばらくは-待機-していると……おや?』
そんな中、ふと彼女の映るウィンドウにカーバイド大尉が映った。
『こちら、情報チーム……って、すみません。打ち合わせ中でしたか?』
「いえ、あらかた『方針』は決まったので大丈夫ですよ。…どうかされましたか?」
『…あ、はい。…実は、被害者…-プレシャス-のキャプテン陣に-エージェント・プラトーに取り次いでくれ-…と頼まれたのですが……。…どうしますか?』
……?
『…彼らは、なんと?』
『…それが、-彼に直接話したい-の一点張りで教えて貰えないのです』
「(…まあ、女史が推薦した人達だから『変な話し』ではないと思うが。……あ、まさかー。)…分かりました。
ー彼らに、『直接お聞きします』と伝えと下さい」
『…っ!了解しました』
大尉は敬礼し、エアウィンドウから消えた。
『…一体、彼らの目的はなんなのでしょうね?』
「…もしかすると、『臨時の戦力』が増えるかも知れないですよ?」
『…っ。…なるほど。
では、我々は送迎に従事するとしましょう』
「お願いします。…カノンー」
「ー『ミドルレッグ』。発車します」
『…では、また後程』
「はい」
そして、彼女との通信も切れた。…さてとー。
一息ついた俺は、『内線』を起動させる。
『ーあ、キャプテン…。…なんか、凄い事になりそうですね?』
『…私達はどうすれば良い?』
すると、プライベートエリアに居るランスター姉妹が映し出された。
「勿論、2人にも働いて貰いますよ。…とりあえず、第2格納庫に来て下さい。
詳しい説明は、そこでします」
『はい』
『イエス・キャプテン』
「…ふう。
カノンー」
「畏まりました。『同盟』の皆様がお越しになられたらお知らせします」
「頼む。…さてー」
ーそして、俺は2人の元に向かい『新たな装備』を渡すのだが…その際アイーシャさんは前回と同様に興奮してしまうが、今回は心行くまで『ツーショット』を撮らせた事で直ぐに冷静になりそして羞恥に悶えるのだった。…しかし、なんで前回は平然としてたけどなんで今回はこんな状態になったんだ?
…この時の俺はまだ、『その答え』を知らずにいるのだったー。
◯
ーそれから、数時間後。第2格納庫に送迎に出した『ミドルレッグ』が到着し、中から『プレシャス』のキャプテン陣が降りて来た。
「ーようこそ。我が『アドベンチャーカノープス』へ」
『……』
「…初めましてだな、キャプテン・プラトー。私は、ウィリアム=オルランドだ」
他の人達が唖然とするなか、1人の男性…確か『世界』で10人しかプラチナランクの称号を持つ超有名な傭兵が前に出て来た。
「…まさか、貴方のような有名人とお会い出来る日が来るとは思いませんでした」
「…私もだ」
握手を交わし、そして未だに固まる傭兵とトレジャーハンター達を見る。そのほとんどは、ポターランカップで競いあった人達だった。
「…お久しぶりですね、皆さん。出来れば、こんな形では再会したくはなかったですが。
…さ、ブリーフィングルームにご案内しましょう」
『……』
俺が歩き出すと、彼らは未だ唖然としながらついて来た。
「ーそれでは、どうぞ『お話』下さい」
そして、全員が着席し送迎を引き受けてくれた調査チームの面々が彼らにお茶を出し終えたタイミングで切り出した。
「…話しと言うのは他でもない。
ー我々に、『マダム・クルーガー』の救出を手伝わせてくれないだろうか?」
「(…やっぱりな。)良いですよ」
「…勿論、足は引っ張ー……って、本当に良いのか?」
『……』
あまりにあっさりと許諾したせいか、彼らはぽかんとした。
「むしろ、こっちからお願いしたいくらいですよ。…それと、女史が推した貴方達の事を『足手纏い』なんて言える人はこの宇宙…少なくとも銀河連盟の領域内の何処にも居ませんよ」
「…ありがとう、キャプテン・プラトー」
『…感謝します』
『ありがとう…』
「…どういたしまして。
…では、只今より皆さん達とクルーの方々の事は私の『臨時協力者』として扱わせて頂きます。どうか、宜しくお願いします」
「ああ」
『こちらこそだ』
『ええ』
「ーじゃあ、早速『手伝って』貰いましょうか」
『…っ!』
「…まさか、既に『手掛かり』を掴んでいるのか?」
「ええ。…これを見て下さいー」
俺はエアウィンドウを展開し、とある映像を見せた。
『……っ』
「…こいつ等は……」
すると、彼らは不快感を顕にする。…そりゃそうだ。だってこの『アウトロー』達が敵を引き連れて来たせいで、彼らはとばっちりを受けてしまったのだから。おまけに、連中は離脱の最中『特別な離脱ゲート』に入ろうとする彼らの船を『コピーシステム』の力で押し退けて、次々とゲートに割り込んで行ったのだ。
…その結果、彼らを逃がす為にクルーガー女史は自分の『ゲート』を彼らの為に使いそして囮となったのだ。
しかもだ。真っ先に逃げた連中の船はギリギリ無事だったのに対し、彼らの船はリペア不可になってしまったのだ。
…要するに、ランスター姉妹や彼らにとっては叶う事なら今すぐ『星』にしてやりたい程恨んでいる相手と言って良いだろう。
ー実際、俺もなんとか冷静を保てている。
「ー…まさかとは思いますが、この連中が『手掛かり』なんて事はないですよね?」
すると、女性傭兵…最年少でプラチナランクに上り詰めたマクシミアさんが凄い『圧力』を放ちながら聞いて来た。
「…非常に残念な事ですが、この連中が唯一の手掛かりなんですよ。
…私だって、出来ればこんな連中の顔を映したくはありません」
「……っ」
こちらも圧力を放つと、彼女は冷静になった。
「…それで、この連中が『どう繋がる』んだ?」
「なに、簡単な事ですよ。
彼らの『追っ手』から、情報を入手します」
「…まさか……」
「…ひょっとして、連中を『囮』にするって事?」
「ええ。…まあ、本音を言えば『もうちょっと』痛い目にあって欲しいくらいですが下手すると『星』になりかねません。…それは、エージェントの肩書きは勿論『帝国』に威光に傷を付ける行為です。
だから、念入りに『準備』はしますが…いや本当、皆さんが『立ち上がって』くれて良かった。
ーおかげで、『完璧』な計画が立てられます」
『………』
「…それは何よりだ」
自信に満ちた俺の言葉に、彼らは唖然とするのだったー。