目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
懸念

『-おはようございます。帝国国営放送が朝のニュースをお伝えします。

 まずは、イエロトルボ星系での-安全保証-に関する話題をお伝えします。

 先月、同星系で発生した-害獣騒動-にて一部企業の杜撰な安全保証が露見しました。これを受けて帝国政府は該当企業に業務改善命令を発令。

 具体的には、エネルギープラントの警備員を-社内育成-から-外部委託-に切り替えを命じました。…尚、それに合わせて該当企業の経営陣も軒並み退陣し新たな体制に切り替わった模様です。

 次は、ブルタウオ星系での海洋調査に関する話題をお伝えします-』


 -さて、そろそろ着く頃だな。

 春の盛りは過ぎ、もうすぐ『雨期』になろうかという頃。いつもの日課を終え朝食を済ませた俺は、『アドベンチャーカノープス』のリビングでニュースを見ていたが途中で止めてソファーから立ち上がりコクピットに向かった。

「-あ、マスター。ナイスタイミングです」

 そして、コクピットに入ると青いショートヘアーのナイスな改造メイド服を纏ったナイスなプロポーションの美女…この『カノープス』号の『管理人格』にして俺専属の『ガイノイド』のカノンが、微笑みながら出迎えてくれた。

「ありがとう。…『オート』解除」

「了解。『オートパイロット』解除します」

 シートに座りオーダーを出すと、彼女は『ゆっくり』とモードを切り替えた。…ふう、ようやくノーマルスペースでの『作業』も慣れて来たな。

「マスター。『ファストムージ』第2宇宙港より通信です」

「繋いでくれ」

『-こちらは、イリタリミ防衛軍宙域警備隊です。初めまして、キャプテン・プラトー三世』

 直後、メインモニターにベテランの雰囲気を醸し出した男性…恐らくトップかそれに近しい役職の方…が映し出された。

「こちらこそ初めまして」


『それでは、直ぐに誘導船を向かわせますので船の後に続いて第2港に入港して下さい』

「ありがとうございます」

「マスター、誘導船が来ました。続いて、誘導コールを受信」

 通信が切れるのとほぼ同時に、2隻の中型船が接近してきた。そして、『合図』が来たので直ぐにメインブースターを止める。すると、2隻の船はアドベンチャーカノープスの前に移動しゆっくりと進み始めたので、俺もを軽めにスラスターボタンを押しゆっくりとついて行った。


 -さて、何で今日此処に来たのかと言うと実はかの銀河連盟防衛軍の新設部隊…すなわち『独立遊撃部隊』の御披露目兼顔合わせが、今から行く『ファストムージ』で行われるのだ。

 ちなみに、『こういうイベント』はこの星系…銀河連盟防衛軍の総本部がある『護人の銀河』と呼ばれる『イリタミリ』で良く行われるそうだ。


『ー改めて、ようこそイリタミリへ』

 それから1時間後。第2宇宙港…すなわち『政府関係者用』の港に着いた俺は規則に従っていつもより厳しいチェックを受け、そしてそれが終わると管制官から歓迎の言葉を貰った。

「ありがとうございます。

 ー…さて、それじゃ行ってくる」

「はい。お気をつけて行ってらっしゃいませ」

 いつものようにカノンからトラベルバックを受け取り、彼女に見送られて船を降りた。

『ーっ!』

 そして、軌道エレベータールームに向かうと複数の人物達…各国の『先輩エージェント』達と出くわした。

「(…良し。)初めまして、『新米エージェント』のプラトー三世です。どうぞ、お見知り置きを」

『……』

 とりあえず挨拶すると、全員戸惑いながら会釈してくれた。…良かった、スルーされないで。

『ー間もなく、地上行きエレベーターが到着します』

 それからさほど時が経たずにエレベーターが到着し、その場に居た全員が自然と整列して乗り込んで行った。勿論、俺も最後尾に並び乗り込んだ。


『ー地上ステーションに到着しました』

 そして、数10分の降下が終わりエレベーターのドアが開くとまたも全員順次迅速に出て行った。…まあ、観光は明日だな。

 俺はその後ろに続きながら、エレベーターステーションを出る。すると、建物の前には既に防衛軍の手配してくれた迎えの車が列をなして停まっていた。…えっと、確かー。

「ーっ!エージェント・プラトーっ!こちらですっ!」

 乗せて貰う車の所に向かっていると、物凄く嬉しそうな聞き覚えのある女性の声が聞こえて来た。…おいおい、マジかよ。

 目を凝らしてそちらを見ると、日焼けしたアッシュブロンドのショートヘアーの女性…ウェンディ少尉が手を挙げていた。

「ーお久しぶりです、エージェント・プラトーっ!さ、どうぞっ!」

 そして、車の横に立つスーツ姿の彼女に近くと彼女は敬礼し直ぐ様後部座席のドアを開いた。

「ありがとうございます。少尉。…それと、お久しぶりです(…『第1分隊』の人が迎えに来てくれるとは聞いていたけど、まさか彼女が来るとはな)」

 お礼と敬礼を返しつつ、車に乗り込んだ。


「…っと。それでは、出発致します」

「お願いします」

 そして、彼女も素早く乗り込み前の車に続いて車を発進させた。

「…改めて、お久しぶりです。オリバーさん」

「ええ。…そうだ。

 遅ればせながら、選抜試験の合格おめでとうございます」

「…っ!…ありがとうございます」

 ふとお祝いの言葉を言うと、少尉は分かりやすく照れた。…余程、嬉しかったようだ。

「…っ、そ、そういえばあれからお変わりありませんか?」

「…そうですね。…まあ、強いて言うなら長期渡航用の『母船』と『後ろ盾』を得られたぐらいですかね?」

「……。…確か、『高速渡航船』の名前を持つ船でしたね。

 …しかも、次に何か起こるとしたら『その船』のシステムが関わって来るのでしたね」

「…でしょうね。…というか、既に『予想』は共有して貰っているようですね?」

「…はい。試験合格の翌日には、遊撃隊の全分隊に情報共有がなされました。

 …勿論、『何が原因』で起こるのかも」

 少尉は、表情を険しくして言う。…まあ、無理もないか。

「…まさか、貴方『だけ』が受け取る筈の『ロストチップ』を『報酬』として要求する不届き者が居るとは思いもしませんでした。

 …しかも、その連中が原因で『事件』が起きるかも知れないなんて……」

「(…なんか、ちょっと会わない間に随分と変わったな……)まあ、確かに不愉快極まりませんが貴女達が居てカノープスも『最善の状態』ですから、『大した問題』にはなりませんよ」

 だんだんと不機嫌なオーラを放つ少尉に、俺は少し驚きつつ自信満々に告げた。


「…っ!…す、すみません……」

「いえ。…むしろそこまであの船を『大切な存在』として見てくれて嬉しいですよ」

『未熟さ』を出していた事に慌てる彼女に、俺はお礼を言った。

「……。…実は部隊配属の際に『資料』として『プレシャス』を読む事を推奨されていまして……」

「…なるほど。『ファン』になった訳ですか」

「…はい。…と、ところで『後ろ盾』と」

 すると、彼女は少し恥ずかしそうに頷き直ぐに話題を変えた。

「…まあ、それは『顔合わせ』の時にお伝えしましょうかね」

「……え?…あ」

 気が付けば、目的地である銀河連盟防衛軍の建物が見えて来た。

「…何から何まで、すみません……」

「お気になさらず。…それに、四六時中硬いよりかは全然良いですから」

「…ありがとうございます」

 そんな和やかな空気のまま、車は会場に入るのだったー。


コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?