「…？……まさか、君が新たに手に入れた『ロストチップ』の指し示した場所の中に『外』のモノがあったのか？」

　すると、博士は直ぐにこちらの言わんとする事を察してくれた。

「…ええ。…まあ、幸いと言うべきか1枚だけでしたが」

「……なんて事だ。…ちなみに、場所は？」

「…『トオムルヘ』です」

「…『サーシェスカンパニー』の本拠地ではないか。…確か、『あの会社』は君の『船』の『劣化コピー』をばら蒔いている所だったな？」

「…ええ。

　…しかし、『一体何処から』仕入れているのでしょうね？」

「…そう。そこが一番分からないんだ。

　…前に君が確保に尽力した『元幹部』も、詳細までは知らなかったようだし」

「……『元』？……『切られた』のですか？」

「…そうか、まだ聞いていないんだな。…そうだ。

　…実は、彼は既に『権限』を失っているのだ」

「…情報漏洩防止の為とはいえ、あっさりと重役を切るとは。…恐ろしくらい思い切りが良いですね」

「…まったくだ。

　…ただ、『未確定』だが彼は気になる事を言っていたらしい。…なんでも、『コピー』は受注して僅か数日で『注目した数』届くようなのだ」

「……。…どうやら、私の『予想』は当たってしまったようだ」

「…私も、その話しを聞いた時君と同じ予想が立ったよ。

　…『敵の手中』には、『手掛かり』より生まれた『副産物』があり、それが『コピー』を生み出してかも知れない…という恐ろしい予想がね」

「……。…となると、敵はかなりの数の副産物を所持しているでしょうね。

　－何せ、『現代技術』でも解明出来ないシステムを持つ『サポーター』達の『量産コピー』を大量にかつハイペースで『製造』しているのですから。

　…いくら『データ』があるからとはいえ、『そんな事』が出来る理由はそれしかありません。

　それに－」

　すると、俺の言葉を遮るように部屋のインターフォンが鳴る。…誰だ？

「…どうしましたか？」

『ご歓談中に申し訳ありません。ハイアームズ博士、-本部-よりお電話が入っておりますが如何致しますか？』

　素早くゴーグルを装着していると、部屋の外にいるメンバーが報告してきた。…どうやら博士は多忙の中面会してくれたようだ。

「…『折り返し連絡する』と伝えてくれ」

『畏まりました』

「…どうやら、ここまでのようだな。

　…とても有意義な時間だったよ」

「恐縮です」

「…それでは、また会える日を楽しみにしている」

　そう言って、博士は応接室を出て行った。…はあ、しかしとんでもない事になったもんだぜ。

「－…どうかされましたか？」

　博士と入れ替わるように、メンバーの１人であるキャンベル少佐が心配した様子で入って来た。

「…実はですね－」

　俺は、先程『ほぼ確定』した『予想』を彼女にも教えた。…すると、彼女は顔を青くした。

「－…そんな。素晴らしいモノになり得る『副産物』が『悪用』されているかも知れないだんて……。…しかも、『悪名高い』かの企業とも繋がっている可能性もあるですね」

「やっぱり『悪い意味』で有名なんですね。…ひょっとして『調査』をした事があるのですか？」

「…さすがに『直接』はないですけどね。…でも、『噂』の大半が『事実』である事の裏は取れてしまったんです…」

「…マジですか。…あれ、でも『大半』って事はまだ他にも良くない噂があるんですか？」

「…はい。

　…実は、かの企業は『トオムルヘ』は勿論、周辺星系の軍と深い『パイプ』があるらしいのですよ」

「……そうか。だから『タダ』で海賊達に……。…そして、『完成品』を軍に売り付ける。

　－全ては、甘い汁と『秘宝』の両方を得る為に」

「…政府と我々も同様の考えです」

「…はあ～。…どいつもこいつも、『秘宝』に一体『何』を求めているのやら。

　…あ、ところで何か用事ですか？」

「…っと、失礼しました。…『見学』の準備が整ったのでお呼びに来たのでした」

「…お忙しいのにありがとうございます」

「いえ。…それでは参りましょう」

「はい－」

　－そして、俺は少佐の案内の元一般公開されているエリアを見て回った。…そう、なんとこの城は民衆に開かれた城なのだ。これも帝国…ひいては銀河連盟の治安が良いからだろう。

「－さて、次がいよいよ最後のエリア……？」

　長い通路の移動途中、ふと奥からなにやら慌ただしい声が聞こえた。…何だ？

「－っ！」

　すると、こちらに気付いたメイドが早足で近いて来る。…こういう時でも、『走らない』あたりさすがだな。

「そちらの方々、すみませんが『こちらの御方』を見掛けなかったでしょうか？」

　メイドは開口一番データフォトを見せて来た。…あれ、『この方』って……。

「…いえ、申し訳ありませんがお見掛けしてはいませんね。

　－…しかし、『また』ですか」

『見覚えしかない』フォトを見せられ困惑していると、少佐はため息を吐いた。……え？

「…っ。…あ、あの、失礼ですがもしやお二人は『城勤め』の方々ですか？」

「…正確には、私は情報局所属でこちらの彼は『出向先の責任者』の方です」

「…っ。なるほど…。…あの、お二人は今お忙しいでしょうか？」

　更に困惑する俺をよそに、メイドと少佐は話しを進めていた。……。……うわ、これって完全な『内部事情』だよな～。

「…っ！…やっぱり恐ろしい方ですね。『今の会話』でおおよその『事情』を把握するなんて」

　なんとなく『察して』いると、少佐はかなり驚いた。

「…え？……あの、どうか『この事』は－」

「－勿論、私の胸の内に秘めておきますよ。…ああ、それと『気持ち』等も『いつも余る程頂いてい』ので不要です。

　…ですから、遠慮なく頼って頂いて構いませんよ？」

「…っ！」

「……はあ。貴方がそう言うのでしたら、私『達』も手伝いましょう」

「…あ、ありがとうございますっ！…では、この先の『控え室』に『臨時本部』を設置していますのでご案内致します」

　メイドは心からの感謝の言葉とお辞儀をして、俺達を案内してくれた。

「－失礼します。『協力者』の方々をお連れしました」

『っ！入ってくれ』

「はい」

　許可が出たので中に入ると、メイドや近衛兵更が慌ただしい様子で会議をしていた。

「…っ！…おやおや、『とんでもない方々』を連れて来たようですね」

『……？』

「……え？」

　直後、会議の中心人物である身なり良い格好の高官らしきオレンジの髪をハーフアップにした女性が少佐と俺を見て唖然とした。…当然、連れて来たメイドも他の人達も同じ様子でこちらを見る。

「…ですが、今回に限っては正直有難いです。

　…とりあえず、私は二人に『諸々』を説明してくるので会議は一旦中止です」

『…了解』

『畏まりました』

　その言葉に、彼らは頷きテーブルから離れて行った。

「…では、お手数ですが私の執務室に行きましょう」

「「はい」」

　こちらに来た彼に同意し、少佐と俺は直ぐ隣にある執務室に案内された。

「－…さて、まずは自己紹介をさせて頂きます。

　私は、帝国第一皇女殿下付き近衛騎士のオリビア=オーガスと申します。お見知りおきを、『プラトー』殿」

「…貴女のような方にまで名前を知って頂いているとは。光栄です、オーガス卿」

「こちらこそ光栄です。

　…出来れば、『違う場』で出会いたかったですがね……。…えっと、プラトー殿は『何処まで』ご存知ですか？」

「…そうですね。

　－帝国の『至宝』と謳われた、『リーリエ=ラロア=バーンスタイン』皇女殿下が『行方をくらませた』…というところまでは存じ上げています」

「…流石は数々の事件を解決に導いただけあって、見事な洞察力です。…はあ、まさか貴方にまで知られてしまうとは」

　オーガス卿は頭を抱えた。…どうやら、式典ムービー等で見せるイメージとは真逆のなかなか『アクティブ』な方のようだ。

「…それでオーガス卿。…姫様は『いつから』居ないのですか？」

「…そうですね。…少佐はご存知かと思いますが、殿下は『本日午前』に首都に戻られました。その後、特に問題なく皇城に戻って来たのですが1時間後に専属の使用人が姫様愛飲の紅茶をお部屋に持って行った時には、既にもぬけの殻だったようです」

　…なんだろう。…『イヤな予感』がするな～？

　オーガス卿の話しを聞いて、俺は何故だか冷や汗を流した。