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『導き』の縁

-数時間後。『斡旋所』と『傭兵ギルド』には、目にギラギラとさせた連中が大量に集まっていた。

『-っ!』

 そんな欲に目が眩んだ連中の集まる別々のフロアの大型モニターに、一目で高級だと分かるスーツを着た金髪の男性…に『変装』した俺が映し出された。…まあ、要するに『録画』だな。

『-お待たせしてしまって申し訳ありありません。…あ、私は『オリバー=ブライト』様より代理の任を受けましたビダンと申します」

『……』

 彼が名乗ると、連中はより一層『ニタニタ』した。…うわ、鳥肌立った。

 その様子を『高速渡航船-アドベンチャーカノープス-』のリビングフロアのデカソファーにて見ていた俺は、『横』になりながら顔をしかめた。

『…さて、既に皆様お聞きの通りブライト様は大勢の『臨時の調査補助スタッフ』をお探しです。…ですが、『なにぶん未知のエリア』ですので安全面と効率面を考慮し皆様の『実力』を試させて頂きます』

『……』

 すると、連中は特に文句も言わずにいた。多分、『ライバル』が減ってラッキーくらいの感覚なのだろ。…あ、ちなみに『工作チーム』のメンバーも『サクラ』として参加している。

『…では、皆様。どうぞ後ろのドアにお進み下さい』

『……』

 すると、彼らはぞろぞろとフロアを出て行った。…はあ。『根回し』をしっかりしているとはいえこうも『順調』だとはな~。

 俺は呆れつつフロアを監視していた『コウモリ』に帰還命令を出し、寝返りをうつ。…すると、こちらを慈愛に満ちた表情で見つめるカノンと目があった。…まあ、要するに彼女に『膝枕』をされているのだ。…何でも、祖父ちゃんに教わった『癒し方』らしいが…正直祖父ちゃんには感謝しかないな。


「…ところでマスター。彼らは『どうなさる』おつもりですか?」

 自覚できる程だらしない顔をしていると、ふと彼女は聞いて来た。

「…大丈夫だよ。『次』の手配はもう『同志』の皆さんがやってくれている。

 -連中には、最終的に『連盟領域』の『最果て』に行って貰う事になった」

「…それは、なかなかに『愉快』ですね」

 すると、彼女はクスリと笑った。…いや、ホント最高だな。何より-。

「-っ。マスター、宰相閣下より通信が来ております」

『とある事』を考えていると、彼女は表情をいつもの凛としたモノに変えた。…つまり、『至福』の時間はここまでという事だ。

「-はい、こちらカノープスです」

『やあ、同志プラトー。どうやら、無事に奪還出来たようだな』

 俺は素早く起き上がりテーブル席に移動し、通信ツールを起動した。すると、なにやら『真剣』な雰囲気を纏った閣下がエアウィンドウに映し出された。

「はい。『彼ら』のおかげで、順調に行きました。…ところで閣下、『何か御用』でしょうか?」

『…やはり分かってしまうか。

 実はな、君のアイデア…-同盟-の件なのだがつい先程合同調査チームより正式に協力要請があった』

 …来たか。

『それでだな、話しの流れで先方…調査チームのブレーンたる専任調査班の班長を務める-ヒューゴ=ハイアームズ博士-は君に興味を持ったようなのだ。…そして、出来れば面会したいとも言っていた。…どうだろうか?』


「私は構いませんが…。…この場合『どちら』でお会いするべきでしょうか?」

『…それなんだかな。…なんと、博士は-君-の事情を見抜いているのだよ』

「…え?」

『…どうやら、博士は同志ヴィクターとなんらかの関わりがあったようなのだよ。ただ、その詳細はまず君に…すなわち彼の孫であるオリバー=ブライトに話したいと言っているのだ』

「(…こりゃ、『ただの知り合い』に収まらないかも知れないな。)…分かりました。

 それでは、至急『戻ります』」

『ああ』

「……」

 通信を終えると、カノンはなにやら引っ掛かりを覚えていた。

「…もしかして、聞き覚えがあるのか?」

「…あるにはあるのですが、『データベース』には該当する名前が無いのです」

「…じゃあ、それを解明する為にも会わなきゃ行けないな」

「…お手数をおかけします。

 それではマスター、お気をつけて」

「ああ。

 -『ドライブ』」

 俺は再びカノンと別れ、一旦応接室に戻った。すると、中に待機していた『工作チーム』の人達が別の応接室に案内してくれた。

「-失礼します、博士」

『どうぞ』

 …あれ?なんかこう、閣下的や老師みたいな重鎮ボイスだと思っていたけど随分と気さくな方のようだ。

 インターフォン越しに聞こえ来た声に、少し意外性を感じる。


「-こんにちは、『プラトー』殿。お会い出来て光栄だ」

 そして、ドアが開かれると老齢の男性が待っていた。

「…初めてまして、ハイアームズ博士。こちらこそ、お会い出来て光栄です」

「…それでは、私はこれにて失礼致したす。どうぞ、ごゆるりとお過ごしください」

 案内してくれたメンバーは一礼して出て行きドアが閉まった。なので、俺は『素顔』に戻る。

「…っ!……ああ、本当に『先生』に聞いていた通りだ」

 すると、博士は懐かしむようそう言いゆっくりとこちらに近付いて来た。…関係者の『後継者』って所か。…でも、何で最初からそれを言わなかったんだ?

「…改めて、名乗らせて頂こう。

 銀河連盟『秘宝』合同調査チーム専任解析班班長ヒューゴ=ハイアームズだ」

「…では、こちらも改めて名乗らせて頂きます。

 帝国政府直属特務捜査官の、オリバー=ブライトと申します」

「ははは、お互いなかなかに凄い肩書きだな」

「いやいや、博士には敵いませんよ」

 俺と博士は固い握手を交わした後、対面でソファーに腰を降ろした。

「…それにしても、まさか『ブレーンの中心者』の方にお会い出来るとは思いませんでした」

「まあ、私はあくまで『先生』…前任者の後を継いだだけなのだがね。

 それに、私からすれば君のほうがよっぽど凄いと思うよ。…何せ、『あれ程素晴らしいアイデア』を思い付くばかりかたった1ヶ月の間に『幾つもの事件』を解決に『導いて』いるのだから」


「…良くご存知ですね。全ての事件には情報統制がされているのに」

 気付けば、少し警戒心を出していた。すると博士はポケットからメガネケースを出して中を開いた。…っ!

「その答えは『コレ』…『眼の船』のシステムをインストールした『リンクグラス』だ。…これは元々、君のお祖父様が私の『先生』…ガエリオ=アルバレア博士に渡したモノだ」

「…祖父が?……そうか、『直ぐに調べる』為ですね」

「その通り。…これのおかげで、『チップ以外のモノ』を回収したカノープスの元に『直接飛び』そして直ぐに『持ち帰れる』れたので素早く解析を行えたんだ。

 そして、その分『結果』は調査チームに素早く共有出来るので『早く無駄なく動け』け『悪用しようとする者達』より先じて『別のモノ』を回収出来るようになったのだ。

 その結果、アルバレア博士は専任解析班の初代班長に任命されるに致ったのだ」

「……」

「…だから、先生に代わり『直接』お礼を言いたかったのだよ。…何せ、就任の前年に『当人』は引退してしまいついぞ伝えられなかったのだから」

「…そうだったんですか。

 …となると、『2つのモノ』を受け継いだ博士はよほど『2人』に信頼されていたようですね」

「…有難い事だ。…私はただ、『偶然』2人を引き合わせただけなのに」


「…もしかして、『初代』に助けられたのですが?」

「…ああ。…本当に『あの時』は星になるかと思ったよ。

 …そういえば、『彼女』は壮健かな?」

「(…そうか、カノンに会ったのか。…だが-。)…ええ」

「…まあ、彼女が『おぼろげにしか覚えていないのも』無理はない。

 -何せ、『あの時』名乗った名前と『今』の名前は違うのだから」

『デリケート』な気配を察していると、博士は自ら答えを口にした。…まさか。

「…そうだ。私の今のファミリーネーム『ハイアームズ』は、私の『もう1人の父と母』から貰ったモノなんだ」

「……」

「…ヴィクター氏には感謝してもしきれない。…命を助けて貰ったばかりか『家族』と『師匠』に出会わせくれたのだから。

 …本当、『こちら』に来て良かった」

「…やはり、『外』の方だったのですね。…しかし、『当時』から随分と『荒んで』いるようですね。

 …これは、『なかなか』に骨が折れそうだ」

 改めて『あちら』の現状を知った俺は、深いため息を吐いた。


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