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万能の眼

『-おめでとうございます、マスター』

 すると、船内スピーカーからカノンの声が聞こえた。…あれ、何で直接来ないだろう?

『できる事なら直接お伝えしたかったですが、少々-問題-が発生してしまい大変不本意かつ申し訳ありませんがこのような形を取らせて頂きました』

 ふと疑問を抱いていると、彼女は直ぐに答えた。…まさか-。

 ほぼ確信に近い予想を立てていると、ツールからコール音がした。…『当たり』だな。

『-同志ブライト、ブラウジスだ。…どうやら、無事に手元に戻ったようだな?』

「はい。…ところで、『何がありました』か?」

『っ!…そうか、既に-彼女-から報告が来たか。…実はな、いつものように君の船を地上に運ぼうとしていたのだがその作業が滞っているようなのだよ』

「『船の周囲』に、『良からぬ事を考えている人間』が集まっているからですね?」

 案の定、『連中』は船で待ち構えるつもりのようだ。閣下は、非常にうんざりした様子で頷く。

『…その通りだ。…なので、保安上の理由から輸送作業に移れないのだよ。…はあ、困ったものだ』

「…ならば、『エサ』で釣って『引き剥がして』しまいましょう」

 しかし、俺は大して気にはならなかった。…まあ、カノンからの賛辞をすぐに受けられない事にはかなり不満があるがそれは改めて貰えば良い。…それはさておき、俺は『予想』を立てた時同時に『解決策』も立てていたのだ。


『…そうか。もう-彼ら-は君の一存で動かせるのだったな。…ならば、直ぐに召集を掛けておこう。

 …しかし、-エサ-はどうするのだ?連中の食指を刺激するには、それ相応……。…そうか、君の手元には-丁度良い-のがあったな』

「その通りです、閣下。

 …そして、『この船』が手元に戻った今『一切不信感を抱かせない』完璧なプランが打てます」

『…やれやれ。…本当に-そっくり-だな』

 俺の『ステキな笑顔』を見た閣下は、やれやれといった表情になった。…ああ、ホントに『楽しみ』だ。

『…では、心苦しいが-奪還-は君に任せるとしよう』

「ええ。…では、『召集場所』を教えて頂けますかな?」

『…ちょっと待ってくれ。……良し、今君の船達を直前まで輸送していた『高速輸送船』にデータを転送した』

「ありがとうございます。…それではまた」

『ああ-』

『-マスター、座標を納庫内のコンソールに転送しました』

 通信が終わると、カノンが言うように格納庫内のコンソールが起動しモニターに座標を表示した。

「ありがとう。…それじゃ、『ちょっとだけ』待っていてくれ」

『はい。お待ちしております』

「(…さて。)

 -リンク、『レスキューウィング』」

 嬉しそうなカノンの声が消えると、早速オーダーを出した。すると、『トリ』は銀色のバリアフィールド…『リンクフィールド』に包まれた。

「『ピンポイントドライブ』-」


『-っ!?』

 直後、俺は『ドラゴン』の中から『ごく普通の小オフィス』に移動していた。当然、中に居た『工作チーム』の人達は驚愕する。

「…ど、同志ブライト。驚かせないで下さいよ…」

 すると、カーバイド大尉が冷や汗を流しながら近いて来た。…いかん、冷静さを欠いていたな。

「…まあまあ、大尉。彼も気が気ではなかったのでしょう。…それに、これからは『多々見る事』になるでしょうから今の内に慣れておきましょう?」

「…それもそうですね。…ただ、出来れば次からは『連絡』をくれるとありがたいです。

 …でないと、『毎度毎度で気疲れ』してしまいます」

 反省していると、キャンベル少佐がフォローしてくれた。すると、大尉は諫言をしてくれた。

「…気を付けてます。…あ、皆さんも驚かせてしまい申し訳ありませんんでした。

 -それでは早速ですが、『顔合わせ』がてら『奪還作戦』を開始します」

『……』

 全員にも謝罪し、そして直ぐさま気持ちを切り替えると部屋の空気は戸惑いから真剣なモノに変わった。

「(やはり、プロは違う。)…まず、皆さんには『とあるビッグニュース』を『宇宙港』に流して貰います。…それと同時に、『政府』を通して『傭兵ギルド』や『デイリーウォーカー斡旋所』に『協力要請』を出して下さい。…そして、肝心の2つの『中身』ですが-」


『-……』

 それを聞いた工作チームは、唖然としていた。…ん?『最初』は分かるが、『2つ目』はそんなに驚く事か?

「…やはり、貴方の立てる『プラン』は素晴らしい。…ただ『目的』を果たすだけではなく、『協力者』が動き易くなるような配慮がされ、尚且つ『無関係な人達』を巻き込まないとても『スマート』なプランを、どうしてこうも…。

 …正直に言うと、『あれ』以来『組み立て』が若干億劫になってしまったんですよ?そんな時、『あの話』を頂いたので即決しました」

「…私もです。そして、今此処に集ったメンバーも同じなんですよ」

『……』

「…そうだったんですか。…だったら、『更にスマート』に行う為の『ツール』を皆さんにお渡ししましょう

 -『コネクト・ツールエリア』」

 メンバーの同意を見て、俺は『倉庫』から2つのケースを直接取り出した。

『……』

「…やはり、『心の準備』は必須でしたね。…察するに片方は『小さな兵団』を呼ぶツールですか?」

 またもやメンバーが驚くなか、少佐は驚きつつ中身を言い当てた。


「おや、『トラブル』の事をご存知なのですね。…ええ、その通りです」

 俺は早速ケースを開き、中身の『チーズのイミテーション』を出した。これが、『トルパー』を呼ぶツールである。

「…複数の『種類』があるんですね?」

「はい。…とりあえず、少佐と大尉には『リサーチトルパー』用の『ノーマル』を渡しておきます。

 そして、もう1つは-」

 俺は残りのケースを開いて、中身を見せる。そこには、『ウォッチツール』が2つ入っていた。

「これが、トルパー用のオーダーツールです。…ちなみに、『皆さんの分』は後日お渡ししますね」

「…え、マジですか?…てっきり私と少佐の分しかないと思っていたのですが」

「ははは、まさか。

 -『トルパー』は『チーズ』と『ツール』のワンセットにつき、『10』までしかコントロール出来ないんですよ?」

「…っ!…なんと」

「…なので、2人は基本的に『本部』に居てください」

「…分かりました」

「了解です」

「-さあ、それでは『ミッションスタート』としましょう」

『了解-』

 すると、まず2人が『リサーチトルパー』20機を呼びメンバーに1匹ずつ配って行く。それが終わると、少佐と大尉は『連絡』。残りは宇宙港に向かった。…そして、俺は彼らを見送った後『軽く変装』して市街地に出た。


「-…っ。…どちらへ?」

 すると、今回『協力』してくれている『特殊調査班』の人達の内の1人が少し驚きつつ、自然に近付き小声で聞いて来た。

「『仲介センター』に行きます。…確か、『歩いて数分』でしたよね?」

「…どうやら、『阻害』のみに集中出来るようですね。…ありがたいです」

「…どういたしまして-」

『-っ!』

 直後、『俺を探しているやつ』の1人がこちに気付き駆け寄って来る。…しかし、『自然』に彼らに阻まれなかなか近付けないでいた。なので、俺も気付いていないフリをしながら歩き出す。

『っ!居たぞっ!』

『…ちいっ!相変わらず人が多いっ!』

 それから数分間、俺は『自ら囮』になりながら、『仲介センター』に着いた。

『-受付番号102でお待ちのお客様。3番相談室にお向かい下さい』

 そして、受付を済ませてからさほど時間は経たずに俺は呼び出されたので『そこ』に向かった-。


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