『-ありがとうございました。…おかげで決心が付きました』
大会の熱気が冷め始めた午後。俺はウェンディ少尉から相談を受けていた。
「それは良かった。…では、『また会える』日を楽しみにしています」
『はいっ!それでは失礼します』
最後に彼女はとても良い笑顔を見せ、通信を切った。…いやしかし、まさか少尉が『担当』になるとはねぇ。
巡り合わせに心底驚きつつ、俺は早足でリビングに向かう。
「-来たか」
すると、そこには旅立つ準備を整えたお三方とランスターズ『姉弟』が居た。
「…あ、すみませんお待たせしてしまって」
「なに。急ぎの旅でもありませんし」
「ええ。…それに、なにより貴方の呼び出しですからね」
…まあ、要するに全員を呼んだのは他でもない俺なのだ。…で、なんで呼んだのかと言うと-。
「-……それで、『私達』に渡したい『モノ』って何ですか?」
「それはですね…」
アイーシャさんの問いに、俺はエアウィンドウを展開した。すると、ちょうど『ファロークス』専用ドックの巨大なゲートが開き『20のコンテナ』が運ばれて来た。
「…っ!あ、あれって私達の船ですよね?」
「…我々のもあるな」
「…何あれ?」
「あの中に入っているのが、皆さんにお渡ししたいモノです」
『-あ、お待たしましたっ!
「それでは、『準備』に取り掛かりますっ!」
画面の向こうではコンテナが床に降ろされ、コンテナカーと共に来たワゴンから『ファロークスではない人達』…船専門の『技術スタッフ』がやって来た。
「ありがとうございます。…まあ、簡単に言うと『今後の備え』ってやつですよ。
…というのもですね-」
俺は事情の知らない2人に、『近い内に起こるであろう事件』をいきさつから説明した。
「-…最悪ですね。…それってつまり、連中の『自業自得』のとばっちりを受けるって事じゃないですか……」
「…勘弁してほしい」
「…つまり、『アレ』はそれを『回避』するモノという事か」
話を聞いた二人は、心底うんざりした表情をした。そして、老師はこちらの意図を察する。
「ええ。
-1つ目は『アサルトホーン』のシステムより、『グラビティフィールド』をインストールした『ヴァイオレットミサイル』」
「…ファッ!?」
俺は別枠のウィンドウを展開し、全員に実物を見せた。すると、真っ先にアイーシャさんが驚愕のあまり変な声を出す。
「2つ目は『インフィニットファング』のより、『インフィニテットサイクル』をインストールした『イエローブースター』」
「…あらまあ……」
次のモノを見せると、クルーガー女史は口を押さえつつポカンとした。
「3つ目は『ダイビングスケイル』より、『インビジブルシールド』をインストールした『ブルーシールドマシン』」
「「……」」
…ちょっと『刺激』が強すぎたかな?
「…続けてくれ」
すると、2人は完全に言葉を失った。そして、老師も少し驚きながら促す。
「…はい。
-そして4つ目。『レスキューウィング』より、『レスキューエスケープ』をインストールした『ホワイトカノン』。…これらを皆さんにお渡しします」
『……』
そして、老師やジュール氏さえも言葉を失った。…やっぱりこうなっちゃったな~。
「……ま、マジでくれるんですか?」
「…まあ、さっきも言いましたがそれだけ厄介な『相手』が出てくるかも知れない事ですよ。だから、このくらいの『備え』は当然です」
「…っ!…そういえば、敵は『偽装』と『強奪』を『あの船』を使って行う知れないんでしたね……。…はあ、抜かりがないですね……」
「…まあ、『受けない』って手も取れなくはないけど『後々弊害』が出てくるからね。…マジで厄介」
「…こちらも、なかなかに厄介だ」
「…ええ。何せ、『彼ら』と『共にやって来る』可能性があるのですから」
「…ホント、トラブル『しか』呼び寄せない連中ですわね。…はあ、何か画期的な『ルール』でも作られれば良いのですが……」
「……。…っ!」
全員がうんざりする中、ふと女史はポツリと呟いた。…それを聞いた俺の頭に、『アイディア』が浮かんだ。
「…どうした?」
「…いや、まさに女史の言う通りだなと思いまして。…確かにそういうモノがあれば、『トラブル』は減少するでしょうね。
…なので、『その準備』もしておきます」
「…まさか、『妙案』が浮かんだのかな?」
「…輪郭しか出来上がってませんがね」
「…ホント、どういう頭してるの?」
「…マジで、どんな『教師陣』だったんですか?」
すかさずランスターの2人はツッコミを入れて来た。
「…確かにそれもありますが、祖父から『受け継いだモノ』が大きいですかね」
「…そういえば、『あの方』は時折『理にかなった』手段を思い付きますよね」
「しかも、『道筋のたて方』も凄い『独特』…まあ『時の運』ありきでしたが」
「……。…もしかして、『今回』の事が関係していますか?」
女史とジュール氏が懐かしむように言う中、ふとアイーシャさんが的を得た予想をした。
「(…へぇ。)正解です。…まあ、要するに『信用のある人達』と『同盟』を組んでしまえば良いんですよ。勿論、『銀河連盟公認』のね」
「…そうか。『連盟』との『合同調査』をする訳だな?」
「ええ。それならば、連中は『ロストスポット』に寄り付かないでしょう。…仮に、侵入や妨害をしようものなら『強制送還』並びに『入国制限』は避けられません」
「…はあ。やっぱり素晴らしいですわ…」
「…そうだな。…では、今の内に『表明』をしておくかの」
「…ですね」
すると、お三方は背筋を伸ばしてこちらを見る。
「…もしもそれが実現したあかつきには、是非我々も参加したいと思う」
「それと、『声掛け』も任せて下さい。…今回居なかった『友人』が沢山いるので」
「…だから、必ず呼んで下さると嬉しいですわ」
「…いやはや、とても有難いです。
…それで、2人はどうするんだ?」
「…参加したいのは山々ですが、せめて『ゴールド』になってからですね」
「…だね。…実際、『あとちょっと』だし」
「…分かりました。…それじゃあ、申し訳ありません整備完了までしばらくお待ち下さい。
…あ、私は『所用』があるので失礼します」
俺は断りを入れてリビングから出る。そして、待って貰っていたガイドの人と共に防衛軍の地上本部に向かった。
『-やあ、同志プラトー』
「『おはようございます』、閣下」
『ああ。…さて、それでは報告を聞こう』
「はい-」
それから俺は、閣下に事件の『データファイル』を送り詳細を伝えた。
『-…ご苦労だったな、同志プラトー』
「いえ。…今回は『頼もしい援軍』がかなりいましたので、さほど疲れてはおりません」
『…それはなによりだ。…そういえば、こちらからも伝えておかなければならない事があった』
すると、モニターにとあるリスト…俺の『サポート』をしてくれる『遊撃チーム』が表示された。
「…この人達が、そうなんですね?」
『ああ。…まあ、今日話したばかりだしなにより-選抜-があるからあくまでも仮定だ。…まあ、一応は頭に入れておいてほしい』
「了解です。…他に何かありますでしょうか?」
『いや、今の所は大丈夫だ。…ところで、君はこの後はどうするのかね?』
「『帝国の首都』に行く予定です。…ようやく、『4つの船』が手元に戻ったので」
『っ!…そうか、いよいよ-アレ-を目覚めさせるのか……。…分かった。直ぐに申請と手配をしておこう』
「…あ、閣下。…実は1つ『相談』があるのですが」
『…?何だね?』
「…それはですね-」
俺は閣下に、先程の話を伝えた。…すると、閣下はみるみる真剣な表情になる。
「-…という事を考えているのですが、実現は可能でしょうか?」
『…素晴らしい-アイディア-だ。…そして、実はその-問題-は合同調査チームの悩みの種でもあるのだよ』
「(…うわ、とことん迷惑な連中だな。)そうでしたか」
『…だが、あの3人と彼らの推薦する者達ならば安心して調査を任せられるというものだ。…そちらの件も併せて準備をしておこう』
「お願いします。…それでは、これにて報告を終わらせて頂きます」
『ああ。…それでは、また』
「はい」
そして、通信は終わり俺は基地の人達に挨拶をしてから宇宙港に向かうのだった-。
-この時はまだ、後に『あんな事件』が待ち受けているなんて知る由もなかった。