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最終日-エキシビション-

-……。……っ。

 騒動の翌々日。微睡みの中にいた俺はモーニングコールで目を覚ました。…あれ?………あ、そうか。会長のお宅に泊まらせて貰ったんだったな…。

 ゆっくりと起き上がりぼんやりとしていると、ふと部屋の内装が豪華な感じになっている事に気付いた。しかし、直ぐに昨日の記憶が呼び起こされる。

「…くあ~っ」

 大きな欠伸をして、俺はベッドから出る。そして、身だしなみを整えお借りした部屋を出る。…えっと、確か今日の予定は-。

「-…おはよう、オリバー」

「…あ、おはようございます、オリバーさん」

 スケジュールを思い出していると、進行方向の途中にある2つの部屋からマオ氏とジュール氏がほとんど同じタイミングで出てきた。

「おはようございます。老師、ジュールさん。…もしかして、お二人も『トレーニング』ですか?」

「ああ」

「ええ。…というか、君もこの時間からやっているのですね」

「はい」

 そして、自然と俺達3人は並んで1階に降りて中庭を目指す。…すると、奥からクルーガー女史とアインさんがやって来た。…あれ?

「-あら、おはようございます」

「…どうも」

「おはよう、クルーガー、アイン」

「「おはようございます」」

「…あ、姉さんは朝弱いからまだ寝てるよ?」

 疑問を抱きながら共に中庭に入る最中、アインさんが教えてくれた。…そうなんだ。…という事は-。

「-でも、ちゃんと後でトレーニングはしてますよ」

「(…顔に出てるのかな?)そうなんですか。…そういえば2人のいつもの武装って何ですか?」

「…私は、大会よりも高出力のヤツを使っている。…ただ、姉さんは『非力』になっちゃうから護身用の『ショックガン』を使ってる」

 …なるほど。相当な工夫をしているんだな。

「…さて、まずはウォーミングアップだ」

 すると、マオ氏は手を叩き指示を出す。どうやら、主導してくれるようだ。



 -それから1時間後。トレーニングを終えた俺はお三方と共にゲストルームで『打ち合わせ』をしていた。

「-…なるほど。なかなか面白いプランだな」

「ええ。これならば、観客の皆様は大いに盛り上がるでしょう」

 お二人は、クルーガー女史に提示されたプランを見て賞賛した。…流石、『元』プロは違うな。

「フフフ。ありがとうございます」

「-…あ、おはようございます……」

 そんな時、ぼんやりとした様子のアイーシャさんが入って来た。…なんか、今回は良く『別の顔』を見るな。

「おはようございます。…あら、今日はちょっと『良い』感じですね?」

 すると、最後に挨拶を返した女史は立ち上がり彼女の顔を近くで見た。…良く分かるな。

「…多分、オリバーさんと行動を共にしたからだと思います。…そのおかげで、昨日はぐっすり眠れました」

「…あら?」

 その言葉を聞いた瞬間、女史は『興味津々』にこちらを振り向いた。

「…まあ、昨日は実際に『コントロール』をお任せしたり沢山『アイテム』をお見せしましたからね(…というか、多分初めて船の外で戦ったのにも関わらず何で『調子が良いんだ』?普通は、『逆』…『怖がる』と思うんだが…)」

 とりあえず無難に返しつつ、不思議に思う。…すると、クルーガー女史は再びアイーシャさんを見た。…そして、なにやら耳打ちした。


「-っ!……」

 直後、アイーシャさんは何故か眠気が吹き飛びぎょっとしながら女史を見る。…しかも、その横顔は若干赤くなっていた。

 そして、しばらくして彼女は頷いた。

「…フフフ、やっぱりね」

「……っ。…と、ところで、皆さんはどうしてこちらに」

 その反応に、女史は凄く嬉しそうな笑みを浮かべる。すると、彼女は話題を変える為か質問してきた。

「…なに、毎年恒例の『エキシビション』の打ち合わせだ」

 …そう。実は今日『有志』とお三方と『優勝者』…つまり俺は『エキシビション』をする事になっているのだ。…まあ、本来は『授与式』の後にやるんだが『騒動』のせいで延期になったのだ。だから、昨日はこちらに泊まらせて貰う事になったのである。

「…なるほど」

「-…あ、居た」

 彼女が納得していると、アインさんがやって来た。勿論、彼女もエキシビションに出る。

「…っ。…すみません、ちょっと席を外させて貰います」

 すると、瞬時に察したアイーシャさんはこちらに断りを入れた。…流石双子だな。

「…ああ」

「気にしないで下さい」

「ええ」

「大丈夫ですよ」

 そして、2人はお辞儀をした後リビングを出て行った。…さて-。

 俺達はその後も入念な打ち合わせをして、そして朝食を食べ『イアン』さんを含めた5人で会場に向かった-。


 ○


『-さあ、それでは皆様。次はいよいよ-レジェンド-と-新たなチャンピオン-による夢のコラボですっ!』

 エキシビションタイムが始まって、数分後。『有志』達のパフォーマンスが終わると、次はいよいよ『俺達』の番だ。

『マオ老師ーーーっ!』

『ジュールの旦那ぁーーっ!』

『フレイお姉様ーーっ!』

 まず、先にお三方がステージに上がると凄い声援が聞こえた。…なんか、『ファン』が増えている気がする。

『さあ、それでは皆様。いつものコールを-いつも以上-にお願いしますっ!

 -せーのっ!』

『-チャンピオーーーーッン、ブライトォーーーーーッ!』

 会場のコールに応え、俺は一気に駆け出す。そして、道中でアクロバットな動きを挟み最後に派手な宙返りでステージに上がった。

『うぉーー!チャンピオン・ブライト、やはり期待以上のパフォーマンスを見せてくれますっ!

 さあ、果たして今日はレジェンドのお三方と共に一体どんなコトをやってくれるのかっ!』

 すると、それを合図としてまずは老師が俺の前に立つ。

 -直後、老師は素早く拳を突き出す。なので、タイミングを見計らいロングバトンを構えた。…っ!これで『軽め』ってマジかよ。

 バトンから伝わる衝撃に若干引いていると、老師は回し蹴りを放つ。


『-っ!こ、これは、-エクストリームバトル-だっ!』

 バトンを素早く右側に移動させると、実況が俺達の『パフォーマンス』を説明した。…そして、老師は一旦俺から離れ直後に駆け出し俺の直前でジャンプした。

 俺はそれを目で追わず、踏ん張りつつ後ろにバトンを回す。すると、数秒後に衝撃が来た。…っ!

 俺はすかさず身を翻し、老師に突きを放つ。すると、老師も俺の腹目掛けて蹴りを突き出す。…そして、互いに『寸止め』をした。

『-っ!た、互いに手を抜いているのに、なんて素早くそして素晴らしい攻防だっ!私、思わず実況を忘れてしまいましたっ!』

「…やはり、問題なかったな。…そのまま研鑽を続けると良い」

「ありがとうございます」

 そして、老師は一旦ステージから降り入れ替わるようにジュール氏が俺の前に立つ。すると、ステージ上に全身をプロテクターで堅めデカイ『ミット』を持ったガタイの良いスタッフが2人やって来た。

『ま、まさか、-マッスルプッシュ-をやろうというのかっ!』

「「はっ!」」

 俺とジュール氏は同時に駆け出し、俺は右のスタッフに。ジュール氏は左のスタッフに迫った。


「-剛突っ!」

「せいやっ!」

 突く瞬間、俺は数秒だけ『リミッター』を外した。…直後、2人のスタッフは大きく後退した。

『ぬわぁーーーっ!ジュール氏もチャンピオンも凄まじい剛力だっ!…というか、チャンピオンは一体どういうトレーニングを積んでいるんだっ!?』

「…いやはや、『彼』に勝るとも劣らない見事なパワーです。…また、何処かでお会いしましょう」

「はい」

 そして、彼も一旦ステージから降り今度はクルーガー女史が俺の前に立つ。

 すると、ステージ中央に円柱が出現した。

『や、やはり次は-フォールストライク-だっ!』

『カウント3。

 -3、2、1、GO』

 実況がアナウンスしていると、耳に着けた通信機からカウントダウンが聞こえ終了と同時に1つのゴムボールが落ちて来る。

「-ほいっ!」

 そして、俺は落下して来たゴムボールを掛け声と共に再度打ち上げた。すると、『目隠し』した女史はピンポイントでナイフをゴムボールに命中させた。

 すると、今度は2つのゴムボールがタイミングをずらして落ちて来る。

「-ほいっ!ほいっ!」

 再度打ち上げると、またもやピンポイントで『2つ』命中した。


 -すると、今度は10個のボールがバラバラに落ちて来た。

「-ほいっ!……ほいっ!………ほいっ!ほいっ!………ほいっ!…ほいっ!……ほいっ!ほいっ!ほいっ!」

 それらを的確なタイミングと方向に打ち上げると、女史は1つ残らず的確に命中させた。

『…っ!お見事っ!なんてテクニックだっ!?それに、見事なコンビネーションだっ!』

「…非の打ち所のない『エスコート』でしわ。…決めました。私は今日より貴方も『応援』させて頂きますわ」

「光栄です」

「-…驚いたな。『彼』一筋だったお前が『もう1人』追い掛けるとは」

「…これは、なかなかに『コト』ですよ」

 女史が極上の微笑みを見せていると、老師とジュール氏が心底驚いた様子で再度ステージに上がって来た。

「…だって、ここまで『心が踊らされて』しまってはそうせざるを得ませんわ」

 女史はそう言いつつ、俺から離れる。…すると、ステージ中央の円柱は引っ込み代わりに4方向に大人の頭ぐらいの大きさの『銃口』がくっついた、大きな『箱』が出現した。

『-出た~っ!今年のクライマックスを飾るのは-カウンターブレイク-ですっ!』

 すると、箱は回転を始め数秒後に大量の『ショックボール』が俺達目掛けて飛ん出来た。


「-烈火」

「ラッシュフィスト」

 しかし、俺とジュール氏はボールを的確に打ち返して行く。勿論、老師は蹴りの風圧で吹き飛ばし女史はアクロバットな動きで回避しながらナイフを投げた。

 -すると、カウンターされたボールは新しく飛んで来たボールを阻害していきそしてその内のいくつかは銃口に戻された。

 それから、少しして4つの銃口の攻撃はピタリと止まった。

『早いっ!なんて早い攻略だっ!お三方とブライト氏、あっという間に攻略したぞっ!

 今年はなんてヤバい年なんだーーっ!皆様っ!素晴らしいパフォーマンスをした四人にどうか盛大な拍手をお送り下さいっ!』

『うぉーーっ!』

『サイコーーーッ!』

 実況のアナウンスで、会場は凄まじい熱気と興奮に包まれたまま『終わり』へ向かって行くのだった-。


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