-かつて、『過負荷の銀河』と呼ばれていたポターランだがそんな環境の中でカール=ファロークスはどうやって宇宙に行く事が出来たのか?
…実は、その時の記録は『何故か』残っていないのだ。故に、今でも様々な『仮説』が立てられている。
その主流は、半世紀前までは必需品だった『重力軽減バリア』を船と『マスドライバー』に組み込みそれで宇宙に出たというものだ。
実際、ポターランの宙域には装置の肝となる成分を多く含有する小惑星群が数え切れない程ある。そして、時折それが隕石となって地上に落ちて来るので『論理的』には問題はない。
…しかし、『頻度』も少なければその数も含有量も落下と共に減少するので原則は『家』や未成熟の幼児の為に回される事がほとんどだ。つまり、『道楽に使う余裕』はないのだ。
…では、他の説はどうかと言うと実際どれも似たり寄ったりで中には『眉唾』なモノまである。だが、その『眉唾』な中に『コアな支持者がいる』説がある。
-ポターランの第一惑星には、過負荷を打ち消す獣が眠っている。カール=ファロークスはそのチカラを借りて宇宙に出た。
…果たして、その獣とは一体どんな姿をしていてどんなチカラを持っているのだろうか?
そして、その獣は『一体いつから』そこにいたのだろうか?
その答えは、カール=ファロークスでさえも知らない-。
◯
「-お待ちしておりました、マスター」
「ただいま、カノン。そして、ご苦労様」
一度『トリ』に到着した俺は、初日から宙域で待機して貰っていた『高速輸送船』の中を移動し、ファストイボコで再会した『ウシ』…『EJ-02:アサルトホーン』とカノープスが一体化した『強襲突撃船-アサルトカノープス-』のコクピットに入った。すると、カノンは『いつものように』出迎えてくれたので俺も『いつものように』返し、ここまでの粘りを労う。
「ありがとうございます。…さあ、どうぞ中へ」
彼女は再度お辞儀をし、俺を中に案内した。
「…それで、状況は?」
「現在、友軍海賊共に拮抗状態です。…どうやら、敵は『ガードスワン』と『アシストホーク』を初めとした『中身』もコピーしているようです。ただ、私見ですが『完全』にはコピー出来ていないです」
「…というと?」
「…おそらく、『トリ』にはそれぞれ『パイロット』が搭乗しています。根拠は『こちら』をご覧下さい」
そう言うと、彼女はモニターに記録映像を表示した。……なるほど。『出て来る』のが少し遅いな。…っと。
内容を見て彼女の言わんとする事を察していると、輸送船から通信が入る。
「-こちらカノープス号、プラトーです」
『っ!お久しぶりです、キャプテン・プラトー』
すると、モニターにイエロトルボで会った女性船長が映し出された。どうやら、同じ人を派遣してくれたようだ。
「ええ、お久しぶりです。…それでは、『行って来ます』」
『…っ。はい、お気をつけて。
-フロントハッチ、オープンッ!』
「-カノン、出撃と同時に『道』の形成を」
「了解しました」
『タイミングをキャプテン・プラトーに譲渡しますっ!』
「了解。
-『アサルトカノープス』、発進」
「『スターロード』展開」
直後、カタパルトによって射出され同時にコンソール前に座るカノンが『システム』を発動させた。…すると、文字通り小惑星群が『道』となりアサルトカノープスはその上を駆け抜けた。
『-…な、なんだありゃっ!?』
『小惑星の-道-をデカイ-ウシ-が駆け抜けてるっ!?』
『ま、まさか-実在-していたというのかっ!
-剛力の猛牛-がっ!』
直後、驚愕の通信が次々と入って来た。…つうか、本当に『ファン』が多いよな。
「-こちら、『アサルトカノープス』号。プラトー三世ですっ!大変お待たせしましたっ!」
『-っ!ま、マジかっ!』
『…て事は、地上は片付いたのか。…こりゃあ、負けてらんねーなっ!』
『ああっ!
そっちは、-自滅-させた後の-補給-の奴らをどうにかしてくれっ!』
「任せて下さいっ!」
-すると、さほど時間を置かずして高速機動…『ラピッドムーヴ』モドキを搭載した船団は次々と動きが鈍くなった。…すると、敵の母船から補給の為に2種の『トリ』が飛び立つ。
「-『スタービット』、セット」
「了解。『グラビティホーン』、効果エリアを『追加』します」
カノンがそう報告すると、小惑星は『道』を作るモノと『シールドビット』のように周囲を浮遊するモノの2種に別れた。…いや、ホントどうゆう仕組みなんだろうな。
そんな事を考えながら、俺はガードスワンモドキの一団に突っ込んで行く。
「-『スターハンマー』、1投目っ!」
「了解」
そして、充分に接近したタイミングで『ビット』の1つを『モーニングスター』のごとく端の船にぶつけた。当然、『物理シールド』を搭載してないそのモドキ船はモロに食らい真横に吹き飛ばされた。…すると、隣に並ぶ船は『ビリヤード』のように飛ばされ更に隣に居る船にぶつかり、それが連続で続いていき防衛ラインはあっさりと崩れた。
「-防衛ライン、崩壊っ!続いて、補給部隊への攻撃を開始するっ!」
『…っ!頼んだっ!』
友軍に報告した後、俺はサポートホークモドキの元に突撃する。しかし、既に2対の翼は高速機動船に向かって飛んでいた。
「-『グラビティフィールド』、カウント10」
「了解。
10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、ストップ」
だが、直後『翼』と『船』は10秒だけ纏めてこちらに引き寄せられ体勢を崩した。すると、『古いのと新しい』のはぶつかり合うという『狙い通り』の現象が起きた。
「(…ちゃんと『掃除』しないからそういう事になるんだよ。)『スターハンマー』、3連」
そして、念には念を入れ損傷した『羽』を連鎖的にそして徹底的に破壊した。
すると、すかさず友軍が翼をなくしたモドキ達に攻撃を開始した。…さあ、後は母船だけだが-。
『-っ!?な、なんだ…アレ…?』
モニターに海賊の母船を映し出したその時。なんと、三隻の母船の内二隻が直列にドッキングをしてその上に一番大きな母船がドッキングした。そして、最後に先頭の船に『角』が生えた。…まあ、搭載してるよな。
まるで『カタツムリ』のような姿をしている合体船を見ていると、角の先端が怪しく光り出す。
「-『アンチシールド・ワイド』」
「了解」
すると、即座に広域の『防御シールド』を展開された。
『な、なんだっ!』
『っ!す、すまない、助かった』
直後、周囲を飛行する友軍は僅かに『カタツムリ』に引き寄せられた。…エンジン3基分だから、かなりのパワーだな。…だが-。
『-っ!と、止まった…』
数分後、向こうの『グラビティフィールド』は停止する。…まあ、言ってみればエンジンも『ドッキング』している訳だからな。当然、『負担』もかなり掛かる。
『-っ!全機、今の内に撤退だっ!』
『り、了解っ!』
俺もシールドを解除し、『カタツムリ』に向かって突進する。それを見た友軍の誰かが味方全員に指示を飛ばした。
すると、再び向こうの『ツノ』が怪しく光った。
「(…クールタイムが短い。…ここで俺だけでも潰す気だな。…だが-。)『アンチシールド』展開、『スターロード』、『スタービット』解放。それから『ブーストコンドル』、射出準備っ!」
「了解」
俺はあえて『道』と『ビット』を解放する。直後、大量の小惑星が『カタツムリ』に向かって飛んでいった。
…しかし、『物理シールド』に阻まれ小惑星群はことごとくチリとなった。
「-やはり、『2つ同時』には展開出来ないようだな?」
だが、『グラビティフィールド』を止める事は出来たのでその隙に先程呼んだ『ブーストコンドル』と一時的にドッキングし、急速に距離を詰めた。
「『ブーストコンドル』、パージッ!
-『グラビティスタンプ』ッ!」
そして、『真上』に来たタイミングでコンドルを切り離し『貝殻』目掛けて『飛び降りた』。
しかし、再度シールドは展開し防がれてしまうが…。…直後、『カタツムリ』は『下』に落下した。
当然だ。何故なら、ブースターによる『踏ん張り』がないのだから。
「-『アンチフィールド』、『カウンタープリズン』」
そして、俺は『ブレーキ』を足から展開し直後に『カタツムリ』を閉じ込めた。すると、再び向こうは『ツノ』を光らせるが…。
-数秒後、か細い『ツノ』は本体に『引っ込む』…ように見えた。しかし、『本物』のように再び伸びて来る事はなかった。…要するに、『ぺしゃんこに』されたのだ。
「…『スターサイクロン』」
そして、トドメとばかりに『カタツムリ』を『ウシ』の周囲で数10回『振り回した』。…そして-。
「-友軍全機に報告。敵母船の無力化成功っ!
『ミッションコンプリート』ッ!」
一回止めてみて、中に『ネズミ』を送ると完全に『沈黙』していたので俺は高らかに宣言したのだった-。