-襲撃が始まってそろそろ1時間が経つ頃。俺達はようやく、『S.S.ロード』の制御端末のある『カウンタータワー』に到着した。
「…はあ、やっとですね」
「…マジで『長かった』」
近くでは、ランスター姉妹が小休止をしていた。…まあ、道中かなりの回数エンカウントしたからな。…っ。
そんな時、ふとヘルメットの通信機がコールした。…このメロディは-。
『-こちら、エスケープサポーター。観客のシェルター入りを報告します』
通信をオンにすると、レーグニッツ少佐の声が聞こえた。…良し、最大の懸念材料が取り払われた。
しかし、その喜びは直後に来た通信で消える事になる。
『-こ、こちら、インスタントサポーターッ!…不味い事になったっ!』
「-っ!?…気を付けて、『何か』来る」
焦りまくった通信が聞こえるのと同時に、アインさんが反応した。
『お、同じくインスタントサポーターッ!こ、こっちも-多分同じ-だっ!
-連中、俺達を無視して-何処-に向かって行ったぞっ!』
「…二人共、これを」
そんな緊迫した状況のなか、俺は小ボトルを渡した。
「…これは、『チャージドリンク』」
「…ホント、準備が良いね」
そして、二人も特に慌てた様子もなくドリンクをゆっくり飲んでいった。
「…っく。……良し」
「…ふう。…うん」
そして、回復ドリンクを飲んだ二人からは疲労の気配が消え瞳にやる気が宿った。
「…それじゃ-」
それを確認した俺は、ロングバトンの『白い方』を下へ向かう階段を守るように展開するシャッターに近付ける。そして、ゆっくりとバトンを上げて行くと連動するようにシャッターも上がって行った。
「-行きましょうか」
「「了解」」
二人が通った事を確認し、俺はバトンを離した。すると、シャッターは派手な音を立てて落ちた。…その瞬間、入り口から大量の海賊達が入って来た。
『-っ!』
「じゃあね~」
俺は満面の笑みを浮かべながら手を振り、既に駆け出した二人の後を追い掛けた。直後、上から怒号が聞こえた。
「-……っ。…この先、気を付けて」
そして、数10秒で二人に追い付くとアインさんが床に頭…をヘルメットをピッタリと付けていた。
「…『ネズミ』を使いますか?」
「やめておきましょう。何せ、『物理シールド』は展開出来ないので。
…なので『これ』を使いましょう」
「…こ、これは……」
「…驚いた」
バックパックから取り出したモノ…小さな『トラ』を見せると、アイーシャさんは興奮しアインさんは驚いた。
「-『コイツ』の名は『ファングチルドレン』。…つまり、『トラ』の子機です」
「…カ、カワイイ……」
「…今回ばかりは、姉さんに同意する。…これって、『トラ』と同じなの?」
「勿論。コイツにも、『インフィニットシステム』が搭載されていますし、『高速機動』も可能です。…そして、『放電』に関しても『親』同様一度使うと数時間のクールダウンを必要とします」
「…ワオ」
「…はあ~。…っ、す、すみません」
すると、アイーシャさんがハッとしキッドから顔を離した。…余程お気に召したようだ。
「-『ウェイクアップ』」
少し和んだ俺は、気持ちを切り替えるように『コール』をする。すると、その『瞳』に黄色い光が灯った。
「『ラピッドムーヴ』、カウント60」
そして、オーダーを出すとその全身に『黄色のバリア』を展開し直後にそこから消えた。
『-っ!……っ。……っ』
数秒後。下から怒号と悲鳴が聞こえた。…あーあ、狭い所で密集してるから。
-そして、1分が経った時子機はこちらに戻って来た。
「…凄いね。『下』は完全に沈黙したよ」
「…マジですか」
「当然ですよ。さ、行きましょうっ!」
「「…っ!了解」」
驚く二人に俺は自慢げに言い、そして駆け出した。二人も、直ぐに切り替えて付いて来た。
「-…っ!上が開いたみたい。…けれど、何か『変』だ」
しかし、それからさほど時を置かずして今度は上から敵が迫って来た。…そして、なにやらアインさんは違和感を覚えたようだ。
「…多分、『対策』の装備を持っているんでしょう。…全く、相当に厄介な『ブレーン』ですね」
「…もう、『フィールドバック』をしているの?」
「…まさか、『トリ』のコピーシステムで瞬時に転送したのですか?」
「でしょうね。…っ!」
質問に答えていると、ふと子機がアラートを鳴らしたので二人に停止サインを送る。
「…っ。これは……」
「…嘘でしょ」
二人は直ぐに後ろの踊り場で手前で止まり、その先を覗いて驚愕した。…なんと、その先には『黄色のシールド』が幾重にも重なって下まで続いていたのだ。…しかし、焦る二人をよそに俺はバトンをビームガンに戻し『白い』方を新たな武装…『グラビティガン』と組み合わせ『足場』にした。
「-『スタンドオン』。次に、『コネクターテイル』、『コネクターネイル』展開」
すると、オーダーを受けた子機は踊り場の数段上に設置した足場に乗り『シッポ』を伸ばしシールド…を発生させている装置に突き刺し、それから土台の隙間…『コネクター』に『ツメ』を差し込んだ。
「-…来るっ!」
『-っ!見つけたぞっ!』
『そこまでだっ!』
「『インフィニット・サイクル』」
『-っ!?』
そう告げた瞬間、その前面…すなわち俺達よりも上に『白と紫』の『バリアフィールド』が形成された。
「『アップ』」
『…う、うわっ!』
『か、身体が…』
俺のオーダーに合わせ、『その中に居た全員』は『重そうな装備ごと』一斉に浮遊した。…が、直後-。
「-『ダウン』」
『ヘブッ!?』
『グヘッ!?』
海賊達は、一斉に段差に叩き付けられた。…そして-。
「『アップ』」
『うわっ!』
「『ダウン』」
『グヘッ!?』
再び海賊達を浮遊させ、そしてまた叩き付ける。…お、『一枚目』が消えた。
すると、一番手前の『黄色のバリア』が消えた。間違いなく、『過剰出力』で緊急停止したのだ。
直後、子機の『シッポ』は『二枚目』の発生装置に伸びて行った。
「さあ、どんどん行こうか-」
「-っ!グリンさんっ!」
俺が三度目の『アタック』をしようとすると、アイーシャさんが呼んだ。…ほう。『判断が早い』な。
彼女が指す方を見ると、先程まで展開していたバリア群は既に消えていた。…どうやら、ブレーンが『解除』を指示したようだ。…ならば-。
「…っ!了解-」
アイーシャさんを見ると、彼女は直ぐに『兵団』を呼び寄せた。…すると、『兵団』は直ぐさま駆け付け海賊達の武装を『壊して』行った。
「-『ラピッドムーヴ』。カウント120」
『-イギャッ!?』
『ギャーッ!?』
直後、子機は視界から消え数秒後には上から悲鳴が聞こえて来た。…さて-。
『-っ!グリンさんですかっ!?』
そして、2分後。子機が戻って来たので『遊撃チーム』に向けて一斉通信した。…すると、真っ先にクルーガー女史が応えた。
「はい。…すみません、ご心配をお掛けして」
『…良かった。皆さん、ご無事なんですね?』
「ええ。…で、すみませんがどなたかこちらにこれそうな方は居ますか?」
『っ!…すみません。駆け付けたいのはやまやまですが、タワー入り口に-敵-と-複合バリア-が展開していて突入出来ないのです…』
すると、女史は申し訳無さそうに言った。
「(…増援を防いだか。…まあ、敵に追い掛けられないだけマシか。)いえ、お気になさらず。
-逆を言えば、貴女達も敵の増援を防いでいるのですから」
『…っ!はい、絶対にグリンさん達の元に敵は行かせませんっ!』
「頼みます。…それでは、失礼します」
『はいっ!お気をつけてっ!』
「-…てな訳で、『互いの』増援は来ないから『気を付けて』行くとしよう」
「「…了解」」
俺は3つのビームガンを回収し、そして再び3人で階段を降り始めた-。