目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
カウンター③

ーSide『アンダーロード』



-その頃地下通路では、観客を乗せたバスが列をなしてシェルターに向かっていた。…その二台目では『厄介なトラブル』が発生していた。

「-どうやら、貴方達は今の状況が分かっていないようだな?」

 片方は、その屈強な身体から静かな怒りのオーラを放つファロークスの常務取締役『ゼクス=アストレイ』。

『……あ、……う』

 もう片方は、『先程の勢い』が完全に消え失せ全身から滝のような冷や汗を流すとある星系のテレビクルー…今日の朝オリバー達を尾行していた連中だ。…さて、何で彼らまで避難用のバスに乗っているのかと言うと-。

「-『しつこく』会場付近で待っていた貴方達も『体験』しそして『見た』筈だ。…今、この地は危機に瀕していると。

 …にも関わらず、『強引に割り込み』した挙げ句『勝手に』インタビューを始めようとするとは。

 …これ以上、我々の『テリトリー』で勝手を続けるならばこちらにも『考え』がありますよ?」

「………あ、……う、……あ」

 ディレクターと思われる小肥りな男に、彼は無表情で迫った。それがかえってクルー達に恐怖に与えた。

『-っ!30秒後に停車します。お気をつけ下さい』

『っ!』

 しかし、その悪い空気は車内に流れたアナウンスによって一変する。

「…どうやら、この話は『一旦』終わりにしなければならないようですね」

『……っ』

 ようやくプレッシャーから解放されたかと思ったクルー達は、その言葉で青ざめた。そんな彼らを放置して、彼は運転席に向かう。


「-…大変でしたね、常務。…っと。すみません、停車します」

「…全くだ。…次からは、『弾く』よう政府に意見書を出しておこう。

 …『敵』は?」

 彼はなんとか怒りを収め、状況を確認する。すると、運転手は小型モニターを起動した。

「ありがとう。…っ!これは-」

 映し出された映像を見て、彼は驚愕した。何故なら大量のイヌの姿をした『厄介者』達が『こちら』に向かって来ていたからだ。

「-…き、『キラーディンゴ』……。…『第3種危険生物』じゃないですか……」

「…何というモノを……。『害獣』の中でも人を襲うタイプを持ち込んで来るとは。…っ」

 すると、キラーディンゴ達は間もなくこちらに到着しようとしていた。

「…『彼ら』は?」

「…はい」

 運転手は画像を切り替え、先頭のバス付近のカメラの映像を映し出した。そこには、『警護チーム』が道端一杯に隙間なく並んでいた。

『-カウント、10っ!

 10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、スタートッ!』

 直後、1列目に並んだ人達の中心に立つ人…警護チームの中心人物たるカール=レーグニッツ少佐がカウントを始めそれが終わると同時に1列目の全員で『対物理攻撃』の『壁』を発動した。

『-グウォンッ!……グキュッ!?』

 次の瞬間、クロスロードの左右からキラーディンゴの群れが飛び出し真っ直ぐ彼らに迫った。しかし、大群の先頭はシールドに阻まれ後続達は先頭に衝突していき大群はめちゃくちゃになった。 


『ーシールド範囲、ならびに1班と2班は高さ下げっ!』

 それを見た彼は、すかさず次の指示を出す。すると、最前列のシールドの高さが低くなり隙間が生まれた。同時に一番後ろの列全員が膝立ちになる。

『準備良しっ!』

『3班、行動開始っ!』

『了解っ!』

 一番後ろの列の女性の軍人が合図を出すと、彼は指示を出した。すると、3班は一斉に立ち上がり『バズーカ』を構え隙だらけの大群に攻撃を始める。

『-ギャウッ!?』

 直後、キラーディンゴの大群を『過負荷』が襲う。…そう、太いビームではなく特大サイズの『グラビティグレネード』が発射されたのだ。

『2班、行動開始っ!』

『了解っ!』

 すると、今度2列目に並ぶ2班が一斉に立ち上がり身動きが取れなくなったキラーディンゴの大群に攻撃…制圧を始める。

『ーグキャーーーーッ!?』

 直後、キラーディンゴの大群は大型の『スタングレネード』によって無力化された。

『-総員、回収に掛かれっ!』

『了解っ!』


「-…なんて、素晴らしい『配慮』だ」

「…ええ、あれなら乗客の皆様に『精神にダメージ』がありません」

 警護チームによる一連の『掃討』を見ていたアストレイ常務と運転手は、気絶したキラーディンゴの大群を迅速に回収する警護チームの手並みと『作戦考案者』の気遣いに感動していた。

「…『駆除』はなかなかに『ハード』だからな(…つまり、作戦考案者たる『かのエージェント』は『それ』を知っているという事だ。…やはり-)」

『-1号車より、全車へ。警護チームの乗車完了。間もなく出発します』

「了解」

『了解』

「(…やれやれ、とんでもない事に気付いてしまったな。…まあ、これは『宙の彼方』まで持っていくとしよう)間もなく発車しますので、『お立ちの方』はご着席下さい」

 彼は生涯秘密を守る事を決めつつ、クルー達に座るよう言った後自分の席に座るのだった-。


 ○


 -Side『スペース』



 -その一方で、星間の状況はあまり芳しくなかった。何故なら、連合防衛隊と傭兵による混合チームは完全に防戦一方だったからだ。

『-っ!敵機追加、更に20っ!』

『クソッ!…すまない、高速機動船に抜けられたっ!』

『っ!おいっ!後ろっ!』

『しま-』

 怒涛の勢いで猛攻してくる海賊の船に、混合チームは手も足も出ず次々と航行不能に…なってはいなかった。

『-なぁんてな』

『トラ』の超加速を持つ敵船に、背後から『トリ』のワープビームを喰らった筈のその船は何事もなく飛行を続けていた。

 -理由は単純。『白鳥』型の無人船『ガードスワン』がその船を守ったからだ。…しかし、敵船も『カウンター』を回避し逃げ延びた。

(-地上は今の所、『フェイント』の方達が半分離脱。地下は間もなく第2シェルター到着ですね)

 だが、『カノープスの女神』…カノンはその事に大して気にした様子を見せず『下』2ヶ所の状況確認をした。


(…マスター達は、後20分程でタワーに到着。…ですが、そろそろ『バレる』でしょうね)

『-艦隊より、友軍全機に告げる。間もなく-限界-が来るっ!』

『マジかっ!』

 不安を抱いていると、防衛隊から友軍に『良い』通信が来た。…すなわち、『戦局』が動こうとしていた。

『-来たぞっ!』

 再び通信が聞こえた直後、高速で動き回っていた海賊の船は次々と『減速』して行く。そして、友軍は一斉に反撃を始めた。

(…まあ、『動きっぱなし』でしたからエンジンやブースターに掛かる負担も相当です。…やはり、マスターの予想通り『システム』だけをコピーしたのでしょう)

『-っ!何処から攻撃を受けたっ!』

『…クソ、ステルス船が出て来やがったか』

 その時、友軍から『厄介』な報告が来た。そして、彼らが阻まれている内に故障した船は次々と撤退して行った。

(…『乗り換え』するつもりですね。…全く、どれだけ『持ち込んで』いるのやら-)

 ややうんざりしつつ、彼女は『ヘビ』のシステムを一時的に『ペリカン』にインストールした。

「(-良し。)ハッチ解放。『スプラッシュペリカン』発艦」

『-っ!艦隊より、全機へ。たった今、サポーターがやって来るっ!友軍全機、その船の誘導に従えっ!』


『了解っ!』

『来た来たーっ!』

『待ってましたっ!』

 歓声が聞こえた直後、『ペリカン』達は『熱反応』を感知し『誘導ビーム』を照射した。

『-っ!そこかっ!』

 直後、友軍はビームが指し示す方向にビームやらミサイルを発射した。すると、次々とステルスしていた敵船が損傷した状態で姿を現した。

『おっしゃーっ!』

『ザマア見やがれっ!』

『良し、このまま撤退する奴らを叩くぞっ!』

『おおっ!』

 そして、彼らは勢いそのまま撤退途中の敵船に向かって行った。…しかし、そんな状況なってもカノンは気を緩めなかった。

(…上手く行き過ぎていますね。…それに、まだ『残り』が出てきていません)

 -そう。『残りの獣』のシステムを悪用している敵船がまだ出て来ていないのだ。

(…今までのパターンだと、次に来るのは『手元に戻ったばかり』の『ネズミ』とそれを収納していた-)

『-っ!?友軍全機に通達っ!敵母船より新たな戦闘船追加っ!その数30っ!』

(…『そう来ました』か)

 通信を聞いた彼女は、モニターに映る『翼の生えた』船を見てため息を吐いた。そして、直後-。


『-っ!?射撃中止っ!-カウンターシールド-持ちが居るぞっ!』

 先頭を飛ぶ『大きな翼』を持つ10の船が友軍と敵船団の間に割り込んで来た。その瞬間、『カウンターシールド』を警戒した戦艦から通信が入る。

『なっ!?-外付け-しやがったっ!?』

 その間に残りの『四つの翼』を持つ船達が、撤退していた船に次々と翼を『半分渡して』行った。

(…やってくれますね。

 -まさか、『中身』をコピーして来るとは)

 直後、敵の高速機動船は息を吹き返しまたもや手が出せなくなった。

(…しかし、何故直ぐに出さなかったのでしょうか?わざわざステルスタイプで時間稼ぎしなくとも、充分に間に合う筈…。…っ)

 その瞬間、とある予想が彼女の頭に浮かんだ。…もし、これが当たっていれば『次の修復』は確実に防げるだろう。

(…マスター、『お待ちして』おります)

 彼女は、オリバーの居る地上をじっと見つめるのだった-。


コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?