-…良し。
「…『グリン』さん、こっちは終わりました」
目の前の敵を倒し拘束していると、近くで制圧していたアイーシャさんとアインさんがこちらにやって来た。
「ありがとうございます。『ニュケルー1』、『ニュケルー2』」
アイーシャさんは、念のため『コードネーム』で呼んできたのでこちらもコードネームで返した。…ちなみに、『由来』は言うまでもなく互いの出身地だ。
「…いやしかし、『プロ』が居ると捗りますね~」
「…まあ、ほとんど『アイテム』のおかげですがね」
「…ホント、凄く便利。…というか、凄くフィットして使い易い」
「それは良かった。…さて、それでは-」
『-こちら、エスケープサポーター。会場内の観客の避難完了』
『第一目標』を果たすべく目の前のコンソールに立つと、『会場警備チーム』から通信が入った。…良し、『フェーズ3クリア』。
俺はコンソールを操作し、敵によって停止させられた『システム』を復旧した。
「-こちら、『インスタントサポーター』。建物のシステムの復旧完了」
『-っ!助かった、感謝する』
「どういたしまして」
「…うわ。マジで復旧させちゃいましたね…」
「…どういう『教材』を使ったの?」
通信を終えると、二人が驚いた様子で近付いて来た。
「『機械系』は大概『先生達』に持参して貰ったシミュレーターですね」
「…ホント、どういう方々に鍛えられて来たんですか……」
『-ナイヤチ1より、インスタントサポーター各員へ。至急一階ロビーに集合せよ』
「-…まあ、続きは落ち着いた時にしましょう」
「…ですね」
「…了解」
そして、俺達三人は集合場所に向かい『フェイク』を受け取り会場を出た。
「-…なんか、静か過ぎませんか?」
外に出た直後、開口一番アイーシャさんが不安な声で聞いて来た。…そう言えば、ちゃんと説明はしてなかったな。
「…もしかして、これも『予想通り』なの?」
「ええ。会場付近の市民は『別動チーム』によって避難をしています。…それに、あくまで連中の目的は『コレ』ですからね」
俺は胸ポケットを指差した。…まあ、まさか連中も『直に持っている』とは思うまい。その上でフェイクも持って来ているのだから、『ほぼ』完璧だろう。
「…なるほど。観客や民間人に構っている暇はないって事か。…けど-」
「-勿論、『それ』も想定済みです。…まあ、多分此処よりも対処は『楽』でしょうね。
-さて、それではそろそろ『第四フェーズ』を開始しましょう」
「「了解-」」
俺達は、裏口から『S.S.ロード』の制御端末のある『カウンタータワー』に向かって走り出した。
「-っ!接近注意…」
しかし、数分後早速『出くわし』た。…まあ、流石に簡単には行かせてくれないか。
「予定通り、近場の『軽減装置』の場所まで引っ張ります」
「…っ。此処からだと、『ダイニングロード』の東側の入り口でしたねっ!?」
「その通りっ!(しかし、昨日の夜渡したのにもう暗記したのか…。…いや、ひょっとすると-」)
「-っ!こっちにもいやがったっ!」
「こちら『ウルフ2』っ!イーストエリアに『クジ』持ち確認っ!数は『他』と同じく3人っ!」
そんな事を考えていると、交差点の左から大型バイクに乗った二人組の海賊が現れた。…そう、連中は『過負荷環境』なのにビーグルに乗っているのだ。つまり、今回も『船のシステム』が悪用されているのだ。
「オラーッ!止まりやが-」
すると、後ろで通信をしていた男はこちらにビームガンを向け即座に撃って来た。しかし-。
「「-なっ!?」」
ビームは俺達に当たる直前で『シールド』に阻まれた。
「残念っ!」
「…っ!『オートバリア』持ちかっ!?」
「クソっ!」
前の男はブレーキを掛け、すぐさまUターンをして再度追い掛けて来た。…っ!
「-居たぞっ!」
「みぃ付けたーっ!」
「…っ!はっはっはっ!残念だったなっ!」
直後、前方から数台のバイクがやって来た。やはり、『想定通り』相当な数が入っているみたいだ。…それはどうかな?
「-行きますよっ!」
「…了解っ!」
しかし、既に『軽減エリア』に入っていたのでアイーシャさんとアインさんは『迎撃』に移る。
まず、アインさんはグローブでアイーシャさんにタッチした。すると、彼女に掛かる『負荷』が更に減る。
「ハイジャンプッ!」
『-……は?』
直後、彼女はブーツを数十メートル上まで跳躍し近くの建物の上に降り立った。そしてすぐさま『準備』を始める。
「-よそ見は良くないぞ?」
「…隙アリ」
当然海賊達は唖然と上を見上げたので、すかさずアインさんと共に『コイン』をばらまく。
『-っ!?止まれっ!』
『っ!』
直後、コインから放電が始まるが海賊達の乗るバイクは一斉に急停止した。…でも、足は止まった。
「-来て下さい、『ブレイクトルーパー』っ!」
『-っ!?』
彼女がそう叫んだ次の瞬間。何処からともなく機械の『ネズミ達』…『ブレイクトルーパー』が現れ海賊達…の乗るバイクに襲い掛かった。
「このっ!…っ!?」
「喰らえっ!…クソっ!」
海賊達は応戦するが当然オートシールドをインストールしているので、『兵団』は易々とバイクに接近した。…そして、前を走っていたモノ達は小さなタワーを築いて行き、後から続くモノ達はそれを伝い次々とバイクに飛び乗った。
『-っ!?止めろっ!』
直後、『兵団』はバイクを鋼鉄の前歯で『かじり』始めた。当然海賊達は必死にバイクから『兵団』を追い払おうとするが、抵抗虚しく次々と『粗大ゴミ』が生まれて行った。
「-…まさか、お前は……。…こうなりゃ……うわっ!」
後ろから追って来た海賊が、こちらの『正体』に気付き直ぐに応援を呼ぼうとするが『兵団』の小隊によってツールは破壊された。
「悪いが、応援は呼ばせないよ-」
「っ!…ガッ!?」
「っ!この………は?」
そして、怯んだ隙にそいつに近付きバトンでど突く。直後、運転していた男が俺を撃とうとするがその手に持つビームガンは既に『スクラップ』になっていた。
「ハイ、残念~」
「ガフッ!?」
俺はすかさず殴り倒し、素早く二人の海賊を拘束した。
「…さてと-」
『-っ!?』
すると、アインさんがグローブでそいつらの乗っていたバイクを『持ち上げ』た。…まあ、当然『フロートグローブ』なのだが良いリアクションをしてくれるな。
「…ほいっと」
『-うわぁっ!』
そして、彼女はそのままバイクを海賊達に向かって放り投げた。しかし、連中は一斉に避けてしまうが…目的は『誘導』だ。
『アビャッ!』
直後、海賊達の多くは『兵団』が仕掛けた『コイントラップ』に引っ掛かり一斉に気絶した。
「-…クソがっ!」
すると、武器もパワードスーツも使い物にならなくなった一人の海賊がキレつつも『軽減装置』に向かって走り出す。…ほお、『生身は襲われない事』に気付いたか。…しかし-。
「-アバッ!?」
装置のハコに触れる直前、そいつは背後から俺の放った『ショックビーム』を受け悲鳴を上げて気絶した。
「…さあ、そろそろ終わりにしようか?」
『-っ!』
そして、その間にアインさんは残党に接近し右のショックグローブで敵を次々と制圧して行った。
「-…っと。…いや、本当気持ち良いくらい上手く行きましたね」
すると、アイーシャさんが『フロート』しながら降りて来て拘束を始めるアインさんの方を見た。
「…ですね。さあ、俺達も連中を拘束しましょう」
「了解です-」
-そして数分後。俺達は再びタワーに向かって走り出した。