『-それではこれより、-授与式-を執り行わせて頂きますっ!』
実況がアナウンスを流すと、観客席から歓声が聞こえた。それを聞きながら、俺は会場の中心に出来たステージに向かう。
『-オリバー=ブライト選手。貴方は今大会において数多の強者達や我が社の門番を打ち倒し、尚且つ大会を大いに盛り上げてくれました。よって、その実力に敬意と感謝を込めてこれを贈ります』
「ありがとうございます」
社長はアタッシュケースを取り出し、俺に手渡した…次の瞬間-。
『-っ!?』
天井のライトは一斉に消え、瞬く間に会場は闇に支配された。
『-……っ!?』
そして、突如『会場全体』に負荷が掛かった。…そして、暗闇の中で『得体の知れない何か』が正確にこちらに向かって来て数秒後には俺に『何か』を-。
「-っ!?」
しかし、『そいつ』は驚愕する。…まあ、『丸腰』だと思っていた相手が武器を持っているだから驚くわな。
「-ギャッ!?」
直後、後ろから声が悲鳴が聞こえた。どうやら、『ブービートラップ』に引っ掛かったようだ。
「-……。…っ!?」
すると、俺に襲い掛かって来たそいつはすかさず距離を取った。…しかし、そいつは更に慌てる。何故なら、『非常警報』が会場中に鳴り響いたからだ。
『-緊急事態発生、緊急事態発生。係員は速やかに観客を避難させて下さい。
緊急事態発生、緊急事態発生-』
『……っ!』
「……」
非常アナウンスが流れた瞬間、会場から『ざわめき』が聞こえて来た。…良し、『第1フェーズ』クリア。
『-警備隊ですっ!皆様、誘導に従って冷静に避難して下さいっ!』
そのタイミングで、誘導灯が観客席の至る所で光った。
「-……っ!?」
そして、『負荷が消えた』事に唖然としていたそいつは『俺達』がいつの間にかフィールドから消えている事に気付く。…練度が足りないな~。
「-がっ!?」
俺は呆れながら、『ステルス』で悠々と背後に回り込み任務用のバトンでそいつを無力化した。
『-っ!』
すると、今度は観客席の出入口ゲートから爆発音が聞こえた。…たく、悪党ってのはどうしてこう爆破が好きなのかな?
『-っ!?』
テンプレートな行動をする侵入者達に呆れていると、連中は暗闇の中で避難しようとしている観客達に迫った。…おっと-。
俺は背を背け、社長と共にダッシュで非常用ドアに駆け込み急いでドアを閉めた。
「-こちらプラトー、社長と共に退避完了」
『了解。
-総員、派手にやれっ!』
『ラジャーッ!』
退避を現場の責任者に伝えると、警備隊は『迎撃』を始めた。…すると-。
『-……ッ!?』
ドアの向こうから、阿鼻叫喚の声が聞こえて来た。…良し、あっちは問題なそうだしこれで-。
「-アビャッ!?」
奥に進もうとした瞬間、気配を感じコインを弾いた。すると、少し先から悲鳴が聞こえた。…やれやれ、随分と満員御礼な状況だ。
「…予選の時も思いましたが、凄い察知能力ですね……。…これも、『故郷での経験』ですか?」
「ええ。…それに、『アーツトレーニング』の最初に叩き込まれましたから」
「……本当、貴方が来てくれて良かった」
「それは何よりです」
そして、暗闇の通路を駆ける事数分。俺と社長は待ち合わせ場所…『専用ラウンジ』に到着した。
「-っ!来たようだな、プラトー」
「お待たせしました」
『……っ』
すると、非常灯の下に集まった有志達は一斉にこちらを見た。…おわ、予想していたとはいえ『フルフェイス』集団に見られるとちょっと怖いな。
「…さて、『リーダー』も来た事ですし我々『遊撃チーム』も行動するとしましょう。
まずは、この建物内部に侵入した『愚か者』達を先程渡した『アイテム』を使って排除します」
「…それが済んだら、先程伝えた『スリーマンセル』でこの『ダミー』を出来るだけ遠くに運んで貰う」
『……』
マオ氏は、全員に『空の』アタッシュケースを見せた。…良し、『第三フェーズスタート』だ。
「ちなみに、しつこいようですが『危ない』と思ったらダミーは途中で捨てて構いません」
『了解』
最後にクルーガー女史は念を押した。すると、全員は即座に頷く。
「…皆様、どうかお気をつけて」
すると、ガードアンドロイドに囲まれた社長が心配そうな表情をしていた。
「ありがとうございます。
-さあ、行こうか」
『おおっ!』
そして、お三方を筆頭に遊撃チームは順序良くラウンジを出て行った。…その最中、一番後ろに居た『二人』が近付いて来る。
「…二人共、頼りしてますよ?」
『任せて下さい』
『…任せて』
「-っと。それでは社長、失礼します」
「…プラトーさん、それにお二人もどうかお気をつけ下さい」
『ありがとうございます』
『…どうも』
「ええ。…それでは、行動開始ですっ!」
『了解』
そして、俺達もラウンジを出て『目的地』に向かって駆け出した-。
○
-Side『ガーディアン』
「-せいやっ!」
「ィギッ!?」
暗闇の中、会場警備班の一人であるウェンディは迫り来る敵をショックナイフで押し返しすかさず腹部に蹴りを叩き込む。直後、ブーツの底に仕込まれた『ショックシステム』が発動し、敵はその場に崩れ落ちた。
「…良し。
-こちら-ブルー5-。ウェストエリアゲート3-3の安全を確保」
そして、彼女は敵を拘束しヘルメットの通信機能を使い味方に報告する。
『こちら-ホワイト5-、了解した。
ウェストエリアC20~C30までの退避を開始する』
『了解』
「ブルー5、了解」
すると、別の誰か…『ホワイトメル』から来たメンバーの一人が応答した。それから少しして、そのメンバーは観客達をゲートまで誘導し会場の外に連れて行った。
「-ブルー5、ホワイト5による誘導確認。引き続き、制圧行動をします」
『了解』
「……(…今の所、戦況はこっちに軍配が上がっているみたいね。…っ!)」
彼女が暗視スコープで周囲を確認していると、ふと小さなアラート音が聞こえた。なので、すかさず彼女はその場から全力で退避した。
『-っ!?』
直後、彼女が直前まで居たゲートに小規模の爆発が発生した。もし、アラートがなければ巻き込まれていただろう。
『ゲート3-3で爆発発生っ!近くに誰も居ないかっ!』
「こちらブルー5。直前で無事に避難しました」
『…そうか。
-総員に通達っ!-エラーインビジル-が侵入しているっ!-対策チーム-が連中を制圧するまで、敵に注意しつつ観客を警護せよっ!』
『了解っ!』
(…とりあえず、近くの人と合流しよう…っ!?)
彼女はほふく前進での移動を始めた直後、再び爆発音が二回聞こえた。
(…やっぱり、『退路』を塞ぎに来たか。…となると、『プランB』に移行だな)
しかし、彼女は焦らずに移動を続け階段の所まで着いた。そして、階段のすぐ隣にある椅子の下をまさぐった。
(-あった)
彼女は、そこにあった『スイッチ』を押しながら椅子を持ち上げた。そして、その下にあるレバーを手前に起こし『蓋』を外した。
『-こちらイエロー7。サウスエリアD20下の-エスケープルート-を解放っ!』
「こちらブルー5。ウェストエリアC30下のエスケープルートを解放っ!」
『こちらポターラン9。イエロー7に感謝するっ!』
『こちらブルー8。ブルー5、助かったっ!』
「-っ!ブルー8、注意して下さいっ!」
応答を受けた直後、彼女は味方に敵が迫っているのを見た。同時に、彼女は身体を起こし敵に向かって『コイン』を投げた。
『-…っ!残念…っ!?』
直後、味方の攻撃を避けた敵の背中にコインが命中し『放電』が始まった。
『ブルー5、重ねて礼を言うっ!…良し、拘束完了っ!』
『-っ!?』
ほっとしたのもつかの間、またもや爆発音が聞こえた。
(……?何で『何もない所』を?…あ-)
『-すみませんっ!さっきの所誰も居ませんよねっ!?』
『大丈夫だ。あそこは既に避難済みだ。…対策チームの者だな?』
『っ!は、はいっ!こちらら-カウンター9-ですっ!たった今、エラーインビジルを一人無力化しましたっ!』
(-良かった)
『助かった。…まあ、素早く無力化出来なかった事は課題にすれば良い』
『は、はいっ!精進しますっ!』
(…なんか、随分と若い人だな。同い年位かな?)
彼女がそんな事を考えているうちに、『エラーインビジル』達は次々と無力化されて行った。そして、程なくして会場内の敵も掃討され観客達は無事に会場を避難するのだった-。